この素晴らしい世界に鍵使いを!   作:アセどん

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第7話 新たなるクエスト

カズマの賠償金への金策として、ギルドの職員たち助力を求めに向かったツカサだったのだが、結果は芳しい策は出なかった。

 

1、高難易度のクエストによる大量の達成金。

2、危険が少ないクエストを片っ端からやりまくりコツコツ貯める(書類整理とか、手続きとかメチャクチャ増えるがやってほしい)。

3、博打ではあるもののギャンブル(オススメはしない)。

 

と言った感じでゆんゆんたちと案を出し合ったときと似た内容であった。後、何故か他の冒険者に対する愚痴、領主に対する愚痴、婚活が上手くいかないことへの愚痴、書類整理の際に生じる後輩の記述ミスに対する愚痴といった愚痴という愚痴を二時間近く聞かされる羽目にもなってしまった。また、この時から密かにギルド職員たちの間では、紳士に話を聴くツカサに今度けら色々ぶちまけようと思う者が増えたのは余談である。

 

ギルドからカズマの屋敷へ向かう途中で、カズマ、アクアと見知らぬ金髪の女性がいた。

 

「お、ツカサじゃん。どした?」

「昨日ぶり。ところで、そこの金髪の女性はどうしたの?拉致ったの?」

 

「するかよ、こんなドM。コイツは、ダクネスって言うウチのパーティーメンバーだ。後、ドMかつ変態クルセイダーだ」

「…お、おう。そ、そうか」

 

普通に美人な上にまともそうに見えたのだが、どうやらカズマの目が死んでいく辺りからマジなようだ。

 

「ンンッ!! おいカズマ、初対面の相手に対してまで妙なことを吹き込んで……だ、だが、この男の珍獣を見るかのような視線にゾクゾクするのだが私はもう末期かもしれない」

 

完全に自分のことを珍獣と認めているにも関わらず、身悶えてしているダクネスを見てしまい、手遅れと認識してしまう俺は果たしてマトモであるのか。見た目は本当に美人なのに、ここまで中身が残念とは、世の中は本当に不条理だな。そんなことを思っていると、カズマが何も言わず、そっと肩に手を置いてくれた。

 

「……カズマ…お前とは昨日会ったばかりだが、よく頑張っているんだな!」

「うぅ…分かってくれるのか!友よ!!」

 

「暇があれば、俺が奢ろう。色々ぶちまけてくれていいぞ」

「お前が男でなく、女の子なら俺はお前に飛びつきにいくところだぞ……」

 

「それはヤメロ。友達になれるそうなお前でも飛びつきに来たら、キーブレードで叩き斬る」

 

今にも泣き出しそうなカズマを胸の中で何とか宥め離し、変態もといいダクネスにきちんと自己紹介をする。

 

「俺の名前はツカサ、黒塚士だ。キーブレード使いって言うシークレットみたいな職業で、俺以外誰もいないクラスだ。分類的に言えば、魔法も使える前衛職だ。あと、一昨日冒険者になったばかりのペーペーだ。改めてよろしく」

「うむ、珍しい職業もあるのだな。私はダクネス、クルセイダーを生業としているものだ。これからよろしく頼む何か分からない事があれば聞いてくれ」

 

紅魔族みたいに変な名乗りもなく、一見すると普通の常識ある人に見えるのだからなおさら残念さが際立つ。本当に残念だ。

 

「ところでさ、何でツカサはウチの屋敷に来ようとしてるの?」

 

今まで、黙っていたアクアがひょっこりカズマの後ろから不思議そうに話しかけてくる。

 

「めぐみんとゆんゆんが金策を練ってるんだよ。俺は途中でギルドの職員さんたちに何かいい案がないのか、意見を聞きに行っていたんだ。で、用が済んだから戻ろうと思って、歩いているカズマたち御一行に遭遇という感じだ」

「そうか、悪いな。知り合ったばっかなのに」

 

「いいよいいよ。ウチのゆんゆんがそっちのめぐみんにお世話になってたみたいだし、カズマとはコレからも付き合いは長そうだから困った時はお互い様だよ」

「……アカン、めっちゃツカサがイイ男に見える…顔はフツメンなのに」

 

「オイコラ、喧嘩売ってんのか?キン◯バスターかけんぞコラ?」

「すいません、死んでしまいます」

「ねぇねぇツカサ、やるんならバイキン◯バスターもやってみせてよ!もちろん、カズマで」

「あのカズマが恐るほどの技だと……!?ぜ、是非私で試し撃ちを!」

 

「「うるさいドM」」

「くぅー!!会って間もないツカサとの連携プレイとは!これはこれで……ぃぃ!」

 

ちょっとウキウキし出すアクアを置いて、興奮したように荒息を上げるダクネスをカズマとともに残念な者を見るかの様な眼差しを向ける。そして、4人の間に微妙な空気が流れていると、アクアが別の話を切り出す。

 

「そう言えば、さっきダクネスに凄い要求をするって言ったけど、どんな事をさせるの?ねえ、ダクネスが心配かけた事でイライラしてたのは知ってるけど、あんまり凄い要求 はしないであげてね 」

 

凄い事とは首を傾げている俺と、期待に満ちたダクネスの視線、非難するようなアクアの視線に晒されたカズマが、

 

「そ、その辺は、屋敷に帰ってからゆっくりと……」

 

目を泳がせつつその場しのぎなセリフを吐きながら屋敷のドアを開ける。

 

「うぅ〜!……ぐすっ!あ、あんまりよぉぉぉぉ!!めぐみんのバカぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「いい加減泣き止んでください そろそろカズマたちが帰ってくる頃です、こんなタイミングで帰ってこられて見られた日には、どう見ても私が悪者に……あっ」

 

玄関で泣きじゃくるゆんゆんと、それをなだめるめぐみんがいたのでカズマはそっとドアを閉めた。

 

「な、なぁツカサ、お前達は金策を練ってくれていたんだよな……」

「そ、そのはずなんだけど………」

 

呆然とした様に聞くカズマになんとか答えてると、ドアがバン!! と開けられる。

 

「見なかったことにしないでください ちゃんと説明しますから 」

「いやいいよ、お前がいじめっ子なのは今更だし」

 

慌てて出てきためぐみんに、全て分かっているとばかりにカズマが言うと、

 

「違いますよ!むしろ私は学生時代ゆんゆんを……いえその事は、今はどうでも良いのです ゆんゆんの事で騒いでる場合では……」

「どうでもいいって何よ!どうでもいい…私のことで騒いでる場合じゃないって、うわ、わああああああーんっ!!」

 

「ああっ まったくもう、なんて面倒臭い!ちょっとすいません、しばらく2人にしてくださいね 」

 

めぐみんが言いながら再びドアを閉め、ゆんゆんと2人で屋敷の中で何やら話をしている。しばらくすると、やがて再びドアが開き、鼻をグズグズいわせるゆんゆんが出てきた。

 

「お、お騒がせしました……」

 

そう言いながら、ぺこりとお辞儀をして去っていくゆんゆん。 俺がいない間にナニがあったんだよ( ゚ー ゚* )

そんな光景に顔を見合わせる俺達が改めて屋敷に入ると、そこにはグッタリとした様に絨毯に座り込むめぐみんだったが、カズマ達の顔を見るとバッと起き上がると、

 

「大変です、大変なのです 」

「いや、色々大変なのはさっきの様子を見れば大体わかったが」

 

うんうんと頷く俺と全て分かっていると言わんばかりのカズマを見て、

 

「ち、違います 今はゆんゆんの事は置いといて下さい!これはまあ内輪揉めみたいなもので、あまり気にしなくていいですから 」

 

顔を真っ赤にし、否定してくるめぐみんであった。

 

「(…今度そっとゆんゆんにナニがあったか聞いてみようか)」

 

そんな事を呑気に考える俺とは対照的にめぐみんは、それどころではないといった焦った様子で、

 

「今は本当に、それどころではないのです!!例の検察官がセナとかいったあの人が、現在こちらに向かっています!今度こそ、カズマを逮捕するとかなんとか息巻いて 」

 

カズマの危機を知らせるのであった。

 

「うそ———————ん!! ヾ(0д0∥)ノ!!?」

 

 

その事実にカズマのココロの底から叫びが屋敷中に響き渡る。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「サトウカズマー!サトウカズマはいるかあああああ!! 」

 

 

先ほどのめぐみんの予告通り、怒声とともにやってきた司法系の服を着た黒髪の女性セナが屋敷に飛び込んできた。というか、昨日アクアとともにカエルに喰われかけていた女性であった。

 

「なな、何だよ!?またカエルか それとも、別の問題でも起こったのかよ!?」

 

若干気圧された気味にカズマが尋ねると、

 

「ダンジョンだった街の近くのキールのダンジョンから謎のモンスターが大量に湧き出しているそうだ」

 

疑い眼差しをやめないセナは説明をきちんとしてくれる。

そして、キールのダンジョンのことを知らないツカサはどこだそこはとめぐみんに視線を投げて尋ねると、

 

「街から少し離れたところにある初心者用ダンジョンですよ。そして、私たちは前にそこに行ったことがあるのですが……特に何事もなくダンジョンの主であるキールを浄化し、クエストを達成させたのです」

「なるほど、だから最後にクリアしたカズマ達に疑いの目を向けるのか」

 

そんなやりとりをする俺たちの前ではカズマが、

 

「いや待てよ、確かに潜ったが俺たちには関係ないぞ!何でもかんでも俺たちのせいにされちゃたまらないな!!」

 

いい加減疑われ続けることにイライラしているのか、キレ気味に怒鳴り返す。

更にカズマは聴き、他の3人も何もしていないと頷いているあたり覚えはないため、コレは清廉潔白であることがわかる。

 

「そうは言っても、最後にあのダンジョンに潜ったのはあなた方だという話なのですが。前例から言ってとてもあなた達以外が原因だとは考えにくいのですが……」

 

セナの言葉にどんだけぇぇぇ評判が悪いんだよと思ったが、

 

「そんな理不尽な事言われてもと言うか、今回はまったく心当たりが無いぞ」

 

カズマの言動には全く嘘は感じられないことから、カズマたちのヤラカシではないことが見て取れる。そんなカズマ達の言動を訝しげな顔をしつつも、一様納得したようである。

 

「そうですか、そうなると困りましたね。てっきりあなた達がまた何かやらかしたかと思っていたもので。となると、誰か人を雇って調査をしなくてはならないのですが……」

 

と言いながらカズマ達を見ていたセナと視線が重なった時、セナの目が怪しく光った気がした。何を考えたかは大体わかる。わかるからこそ勘弁してほしい。

 

「そこの貴方、この屋敷にいましたがサトウさんのパーティーメンバーではありませんね」

「そうですよ。というか、昨日おたくの命を救ったこの子のパーティーメンバーです。あと、ついでに一昨日冒険者になったペーペーですけど」

 

露骨にセナの視線に対し嫌そうな表情をするツカサは、ゆんゆんの頭にポンと手を置きつつ、どうにかしてセナから巻き込まれないよう策を練ろうとする。

 

「そうでしたか、その説はありがとうございました。申し訳ありませんが、謎のモンスターの調査に協力していただけませんでしょうか?」

「どうしますか、ツカサさん?」

「メンバーは俺達だけなら、やりませんよ。俺はまだまだ初心者なのでゆんゆんにおんぶに抱っこの状態です。そんな状態のまま彼女に負担が掛かるようなクエストはご遠慮しますよ」

 

出来る限り、トゲが無いようありのままの事実を述べて、お引き取り願おうとする。そして、心なしかゆんゆんがモジモジする様に照れ始めたをめぐみんだけが気づき、ゆんゆんに杖をグリグリと当てつつチンピラの様な悪そうな笑みを浮かべ始める。

 

「いえ、他の冒険者の方々にも声をかけさせていただきますので、お二人に負担を集中させませんので安心してください。それに報酬もきちんとした価格でお支払いさせていただきます」

 

ゆんゆんへの負担にならないのであれば、大いに越したことはない上に他の冒険者がサポートに来てくれるのであれば彼女への危険も減るというもの。後、他の冒険者と連携してゆんゆんのボッチ体質を解消するのにもいい機会かもと思ったのは余談とする。そして、念のためにめぐみんに弄られていたゆんゆんにどうするのかを訊く。

 

「ゆんゆん、受けても構わないかい?」

「は、はい!ツカサさんの他にも冒険者さん達が一緒なら、心強いですので受けましょう!!」

 

「という訳で、ウチのパーティーはクエストに受けることとします」

「ご協力くださり感謝します。私はこれから他の冒険者にも声をかけに行きますので、お二人のタイミングで調査メンバーに合流してください。では、自分はこれで」

 

ドタドタと来た時とは違い丁寧に帰って行ったセナを見送りつつ、ツカサとゆんゆんもそれぞれ支度をするべく屋敷を後にする。

 

「という訳だから、俺達は行くから」

「お邪魔しました」

「またなぁ〜お前ら〜」

 

 

宿へ戻ったゆんゆんを送ったツカサは、馬小屋にある装備品を早々に身につけレベルが上がっていることを確認していた。そして、冒険者カードには自身のレベルが既に10まで上がっており、スキル習得欄にも新たなる魔法があった。魔法説明を深く読んだツカサは、興味深い効果を持つ『タイム・コンテニュー』という魔法を覚えらのであった。

 

 

 

後に、この魔法によってツカサはキールのダンジョンにいる謎のモンスターを創り出す“見通す悪魔”との闘いにおいて、大きな活躍を見せることとなる。

 








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