『ZIONノ物語』新訳UC0079   作:ふわってーさん

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『ZIONノ物語』第二話 「ルナツー」

戦いはルウムより始まった。

0079.1.15 ルウム戦役

地球圏との関わりの強かったサイド5・ルウムは、共栄圏からの勧告を無視し続け、連邦軍の配備・強化を進めた。この事を皮切りにサイド5を全宇宙民の敵と宣言し滅ぼしたのである。

そう、言葉通り、滅ぼした。

ルウムの赤い泉は神々しく光っていたと聞く。

 

msの恐怖に震えた連邦軍は、ガンキャノン最初期型の改良やレビル将軍主導の「V作戦」が急ピッチで進められる事となった。こうした連邦軍のMS急造により、開戦早くも共栄圏の優位性は失われていったのである。

開戦より10ヶ月……戦力は拮抗し泥沼化した戦況は困窮を極めた。

ジオン共和国率いる大宇宙共栄圏は地球圏に及ばないものの、発達した軍事機構を保有していた。その中でも目を引くのはキャスバル・レム・ダイクン親衛隊、通称ウァッペン親衛隊であった。

 

波打つ木目調と銀の装飾に囲まれたこの空間は、彼らの血に濡れた日常を忘れさせた。

「リュカ君、君に専用機を贈らせてくれないか」

予想外の言葉だったのか、小柄な男は紅茶を零しかけていた。

「キャ、キャスバル様、有難いお言葉ですが……少尉の私には荷が重すぎますゆえ……」

専用機を持つと言うのは、通例大尉以上の特権であった。出る杭となる未来を見たのか、愛らしい容姿に動揺の色が浮かんでいた。

「そうか、なら先日の戦果の報酬としよう。君にはその価値がある」

仰々しく口元に指を触れさせ、微笑を浮かべていた。

「ご期待に添えるよう努力させて頂きます」

敬愛する人物に認められたという事実が、雑念を消す程に男の心を染めていた。

「期待しているよ」

呟くような、感情の包み隠された声だった。銀色のベールで隠された蒼色の瞳には、鈍い光が灯されていた。

 

「しかしねぇ、フラナガン機関を呼ぶとは……上は何を考えてるのやら」

油に汚れた手をツナギに塗り、溜めた息を吐き出した。

「さてな、俺達機械工には到底分からんことよ。いつ連邦と鉢合わせるかわかんねぇんだ、手動かすぞ」

剥き出しの電飾が、灰色の世界を淡く照らしていた。

 

この頃より、同盟軍の兵士にある噂が流れていた。「2つ目のMSに殺られた」こう息も絶え絶えに繰り返すのだという。光線を飛ばし、光の剣を振りかざし、圧倒的な性能で殺戮を尽くす。

「2つ目の悪魔」彼奴等の通り名である。

 

ルナツー、見渡す限り続く暗がりの中に岩壁が独り佇んでいた。岩の右手には人工物が突き刺さっており、所々が点滅していた。

一時期は地上まで押し込まれた連邦軍であったが、多大なコストと人材を消費し大気圏外の此処まで辿り着いていた。前進基地としての意味合いの強いこの場所では、日夜金属音が鳴り響き機械工達の怒号が飛び交っていた。

 

技術仕官テム・レイもその中にいた。

コストは考えなくて良い。と、レビル将軍よりを任された彼は、既に開発していたガンキャノン(初期型)やガンタンク(初期型)を素に新型MSを練り直していた。その名をV作戦という。

 

息子であるアムロ・レイもこの地にいた。機械工や研究員の家族が住む住居スペースには、学校もあり他コロニーと変わらない生活が営めた。親の影響か機械工学に興味を引いた彼は、入るなと言われた資料室に夜な夜な閉じこもっていた。

 

戦時中とは言え、彼らに今有るのは宇宙移民への嫌悪感と希望であり、時が来るまで憎悪と危機感は無いのであった。

時代は無常に動き、時には幸せを、時には恐怖を運ぶのである。彼らは未だ知る由も無かった。

 

 

 

 




絵も描いてます。
9月14日現在、3話まで更新してます。
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