『ZIONノ物語』新訳UC0079   作:ふわってーさん

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『ZIONノ物語』第三話 「専用機」

遥かに続く虚空を背景に、岩影が動いていた。

岩壁には所々穴が空いており、覗き込むと赤く光る半球が確認出来た。

ウァッペン親衛隊本艦・クラウンプリンス

後方の岩壁がスライドし、金属光沢の目を引く空間が現れた。光線が輸送船を導き、レールに接続され火花が飛び散った。巨大な立方体が次々と下ろされ奥へと運ばれる中、一際目立つ積荷が慎重にMSデッキへと降ろされていった。

「しっかしよぉ、何だかMS部品にしては量が多くないか?もう5つは運んだぞ」

生命を保つために一回り大きくなった身体で、通路を浮いていく。

「少将が直々に製造を命令したらしいからな、特別な機体何だろ。それに……ここだけの話なんだが、フラナガン機関が絡んでるらしい」

口元に手をかざし、呟くように話していた。実際にはマイクを介している為、意味は無いのだが……。

「ほぉー、まだ完成してないって言われてたのにな……。あのチビッ子も災難なこってぇ」

いつの時代でも人間は噂話が好きなものである。小声で話しながら次の荷物へと取り掛かっていった。

 

背丈の数十倍はあるであろう無骨な空間に、未だ四肢が揃っていない人影が佇んでいた。剥き出しの鈍く光る骨格に、様々な色の血管が巻き付き、油圧式の筋肉が身体を構成していた。

「これが…私の…私だけの……」

目前の異形な贈り物は、主君が自分に抱く期待が体現されている様に感じた。

自分は認められている。この事実は自らの幼い姿を呪った過去を、全て消し去る程の衝撃を秘めていた。

「そうさ、君だけの、君にしか操れない機体だ」

囁く声が、彼の心魂を震わせた。

「私にしか……操れない機体に御座いますか」

高鳴る鼓動を抑え、逸る気持ちを押し留めた。

「乗れば分かるさ、ランデブーポイントへ入る前に試して置くといい。整備も今日中には終わるだろう」

翠色の瞳は潤み、乱反射した光は未来を示していた。

 

宇宙世紀0079現在の全体人口は179億人、地球圏が87億人、サイドに92億人となっていた。しかし開戦から半月、連邦側に着いていたサイド5ルウムが消え形勢が逆転した。サイド側人口が16億人減り、76億人となったのである。

無人の箱となったサイド5には大宇宙共栄圏同盟軍の前進基地が置かれ、地球圏に対しての抑止力となっていた。共栄圏同盟に批准した各サイドにMSの配備が求められたジオン共和国は、連邦の新技術の実験も兼ねて新型量産機を開発した。そしてMS-05ザク1に準え、MSfl-05(fl=連邦・Federal)と名付けられ、各サイドに配備された。関節部には独自改良されたフィールドモーターシステムが採用され、熱核融合炉も新たに設計し出力増加を施していた。この機体は無論サイド5にも多数置かれ、周辺宙域では哨戒と併行し軍事演習も行われる事となった。

 

旧サイド5ルウム 周辺宙域

暗く沈む、自由な空間に細身の機影が5つ浮かんでいた。オリーブドラブに塗られた装甲に、同盟軍の紋章が刻印され誇らしげに光沢を放っていた。

「15:32ルウムD503地点、熱源探知問題無し」

「15:33ルウムD503地点、中範囲レーダー敵反応……

「アンディ、どうした。敵か」

困惑した様に黙り込んだ随伴者に応答を求める。。

「いや、今は異常無いんだが……一瞬反応があった気がしてな…。不具合だとは思うのだが」

元々新型機のエラーは珍しい事では無かった。

帰ったら見知りのメカニックに伝えておこう。そう思うに留まっていた。

時は刻々と進み、時代も移り変わっていく。




Twitter→ふわってぃ
本業は絵描きです。
IMG57105
MSfl-05 製作途中ですが、載せときます。
9月14日現在、3話まで更新してます。
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