鬼連れ獪岳   作:はたけのなすび

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感想、評価、誤字報告下さった方々、ありがとうございました。

三章、『鬼狩り獪岳』です。

では。


三章 鬼狩り獪岳
一話


 

 

 

 

 鬼殺隊に入ってからは、人を助けたことは何度もある。

 鬼に喰われかけていた者、鬼に追われていた者、鬼に襲われた村の者。

 間に合ったときもあれば、間に合わなかったときもある。

 助けてくれてありがとう、と大いに感謝されたこともあれば、何故もっと早く来てくれなかったのかと罵倒され、恨みをぶつけられたこともある。

 鬼に人間を差し出し、生き延びていた里人たちに襲われたことは────胸糞悪いので早々に忘れたい。

 あれは運が悪かっただけだ。あのような集落に毎度毎度出くわしては堪らない。

 

 ともかく、獪岳がこれまでの人生で人から感謝されたのは、鬼殺隊の仕事絡みばかりだ。

 指令が来たから、強くなりたいから、生き延びたいから、刀を振る以外たつきの立てようがないから、獪岳は鬼と相対するのであって、別に見ず知らずの人間を助けるためではない。

 獪岳が人を助けるのは結果論でしかなく、感謝にも罵倒にも揺らがない。

 確かに罵倒されればむかつきはするし、感謝されれば面倒がなかったと思いはするが、自分の生命がかかれば人間などどうとでも醜悪に転ぶ。

 端から期待など、していない。

 

 善逸からすると、そういう獪岳は捻くれているそうだ。

 それを聞いて、獪岳は盛大に顔を歪めた。

 自慢の耳で嘘が見抜けるから、そんなおめでたいことが言えるのだ。

 大勢の女に騙されたとは言うが、騙される道を選んだのは善逸自身だろう。

 少なくとも善逸は、この人間にならば騙されてもいいと、信じる相手を選ぶことができた。

 獪岳には、選ぶ自由すらなかった。

 出会う人間すべてを疑ってかかって、一瞬たりとも気など抜けない。

 親もきょうだいもない子どもは、まともな暮らしをしている人々からすれば、野良犬や鼠にも等しい。

 何も盗っていなくとも、物がなくなれば、綺麗なものに触れれば、それだけでたちまち盗人扱いになる。

 そんな存在なのだ。

 同じ人間に与えられるような上等な感情を向けられるのは、死んで骸を道端に晒したときだけだ。

 死んでようやく、嗚呼、幼いのに生命を失うなんて、不幸で可哀相な子どもがいたものだと、吐き気がする一欠片の憐れみを垂れる。

 生きている自分が近寄れば、彼らは醜く汚いものを見たように顔を背け、着物で鼻を覆うというのに。

 

 先生のときだって、同じだ。

 大した用がないのに先生に近寄っても、じいちゃんなぞと呼んで甘ったれても、ただ縋るためだけに手を伸ばしても、払い除けたりなどしない人間かどうかなんて、どう見分けたらよかった。

 あの人も、獪岳に剣の才能があったから、拾ってくれたのだ。

 獪岳に刀を振るう才すらなかったならば、生き物を殺せるだけの力が備わっていなかったならば、どうしていたかなんてわからない。

 基礎となる型ができない才能であったとしても許されるのかどうかすら、弟子であり続けられるのかすら、あのころはわからなかった。

 わからないままに、痛みで腕が上がらなくなるまで木刀を振って、何度も何度も肉刺を潰して、それでもどうにもならない焦りで焼け付くような毎日の中で、後から来たやつに抜かされたときの自分は、きっと凄まじい『音』を立てたことだろう。

 

 獪岳には、何も聞こえない。

 善逸と同じ世界なんて、見えていない。

 

 息をするように簡単に、生まれつきの才能だけで人間を聞き分けられる甘ったれのお前が、俺と同じであるものか。

 

 だというのに、善逸は兄弟子だからと獪岳へ歩み寄って来ようとするのだ。

 ふざけている。

 同じ師に習っていたからと、それだけの理由でべたべたと側によるな。

 

 そういう獪岳の苛立ちを間近で見続けていたのは、幸だった。

 実の親に捨てられたとはいえ、こいつはすぐに悲鳴嶼に拾われているから、路上で人の顔色を伺いながら暮らしたことはない。

 だから善逸のように頭が能天気なのかといえば、そうでもなかった。

 

「できないことは、できない」

 

 未練がましい諦めというには、あまりに冷めきった瞳で、そう言い放った。そこには、後ろめたさもなかった。

 この世には、わかりあえない人間はいる。

 親でもきょうだいでも、無理なものは無理だと割り切っていたのだ。

 

「わたしがもっと優しかったら、父さんと母さんのことも許せたかもしれない。だけど、できなかったから。同じことを他人にやってみせろなんて、言えないよ」

 

 獪岳がどうしても善逸君と仲良くできないなら、それはそれでそういうものとしておけばいい、と、あっさりしたものだった。

 

「あなたたち、生命がかかっているときは、いっしょに戦えているんだから」

 

 桑島のお師匠さんもみとめてくれるでしょう、と淡白である。

 そして、自分が善逸と仲良くすることをやめるつもりは、さらさらないようだった。

 あれはあれそれはそれこれはこれ、自分は獪岳のように善逸君を嫌っていないし、修行時代の獪岳の話が聞けるから、とけろりとしている。

 同時に幸は、獪岳が捻くれているという意見に関しては、善逸と一致したらしい。

 

「だって、他人に期待なんてしていないなら、他の人のことなんてどうでもいいなら、どうして獪岳は、みとめられたいっておもうの?」

 

 本当に他人のことがどうだっていいならば、人からどう思われようが気にする必要はない。

 誰に憚ることなく、己だけの求道を行けばいいのだ。

 できないというならば、つまり。

 

「獪岳は一人が好きだけど、独りにはなりたくない」

 

 ちがうかな、と首をちょっと傾げるいつもの仕草と共に問い返されて、獪岳は答えられなかった。

 

「ひとりぼっちは、よくないからね。心を、くわれてしまうよ」

 

 獪岳の額を、長く鋭い鬼の爪が当たらないよう手のひらで撫で擦り、幸は微笑んで、言った。

 

「だけど、誰かに認められたいなら、自分の裡にもいる誰かをみとめないと、はじめられるものもはじめられないよ、獪岳」

 

 と、これが数日前のやり取りである。

 

「……お前、結局なんも聞けてねぇな。てか絶対それはぐらかされてるだろ」

 

 夕暮れ時、蝶屋敷の縁側にて箱を作る獪岳の隣に座る不死川玄弥は、呆れ顔でそう溢す。

 幸は籠に入って眠っている。まだ、西日の残滓が辺りを橙に染めているからだ。

 

「……うっせぇ」

 

 だんだんだん、と釘を打ち込みながら、獪岳は返した。

 幸の本心、何があって何を想って生きているかを、聞かなければならないと決心したはいい。

 したはいいのだが、逆に獪岳が善逸に抱いている苛立ちを指摘される始末。

 肝心要のことは、まったく聞き出せたものではなかった。

 どう足掻いても口で勝てないし、こういうときに向こうの勘はすこぶる良くなるらしく、話の矛先ごとぐいっと逸らされた形だ。

 

 玄弥はぼそぼそと続けた。

 

「悲鳴嶼さんは、お前らが来てすげぇ喜んでたよ。あれはお前がさ、あいつが鬼になっても人を喰ってなかったのは、悲鳴嶼さんが人を傷つけてはならないって教えてたからだって言ったからだろ」

 

 鬼喰いの定期検診だからと蝶屋敷を訪れ、獪岳の隣にまで来た玄弥は、あいつ、と言って幸が入った籠を指さした。

 

「悲鳴嶼さん、喜んでたのか?」

「喜ぶだろ。だからその……来てくれて、ありがとな」

 

 そうか、と返して獪岳は箱を作るのに戻った。

 刀を振るって生き物を殺すこと以外で、獪岳が誰かに感謝されたことなどほとんどない。

 まして、ただわかりきっているはずの事実を告げるだけで、自分が誰かを喜ばせることができるなんて。

 凡そ、意識の埒外だ。

 かん、と一際高く音立てて、金槌で箱に楔を打ち付けた。

 

「あんたはいつ任務に戻れるんだ?」

「三日先ってとこだな。お前は任務あるんじゃねぇのか」

 

 蝶屋敷で、自分にかかずりあって油を売ってる暇などなかろうと言外に言えば、玄弥には伝わったらしかった。

 現在竈門と嘴平はまだ眠っているが、獪岳は三日後、獪岳が綺麗に肋をへし折った善逸は、五日後に任務に復帰することが認められている。

 怪我の深さでは獪岳のほうが善逸よりひどかったのだが、常中を長く続けていた分勝っていた回復力が出た格好になる。

 

「あら、二人ともこんなところにいたんですか」

 

 相変わらず薄い気配で声をかけてきたのは、蟲柱・胡蝶しのぶであった。

 途端に背中に定規でも当てられたように背筋を伸ばして赤面する玄弥を、獪岳はしげしげ眺める。

 不死川玄弥は、女と名のつく生き物に照れまくる人間だった。

 看護婦三人娘にちゃんとご晩を食べてくださいと迫られていたときすら、真っ赤になってにっちもさっちも行かなくなっていたほどだ。見かけたときは、面白すぎて少し笑った。当然助けなかったが。

 そんな玄弥にとって、胡蝶しのぶも、例外ではなかった。

 いきなり背後から現れた彼女に対し、真っ赤な石になった玄弥を放って、獪岳は軽く頭を下げた。

 

「どうも」

 

 顔だけで食っていけそうなほど見目が良い女だとは思うが、初対面で首元に刃を当てられた獪岳はと言えば、しのぶに関しては美しさより怖さが印象として先に立つ。

 照れるようなことは特段なかった。

 

「何か用ですか、蟲柱様?」

「ええ。二人に少し用があって。獪岳くんは、既に機能回復訓練もほぼ終えていますよね?」

「はい。……刀、三日後には持っていいんですよね?」

 

 入院期間を、これ以上伸ばされては堪らない。

 機能回復訓練ということで、連日師匠の杏寿郎と木刀打ち込み稽古はしているが、真剣とはやはり諸々が違うのだ。

 警戒心も露わに目を吊り上げる獪岳を見、蟲柱はくすりと微笑む。

 

「そんな顔をしなくとも、いいじゃありませんか。今回は悲鳴嶼さんの家へ行ったくらいで、脱走の常習犯である獪岳くんにしては、大人しくしていたほうですから」

「お前……」

 

 常習犯だったのかと言いたげな玄弥の視線である。

 病室にいたらいたで、あの弟弟子が見舞いに来たり菓子を食おうと誘いに来たり、鬱陶しいのだ。

 夜だったら幸と禰豆子を一緒にしたところに善逸を押し付けるが、竈門が毎回蝶屋敷にいるわけでもないし、昼間だとそうは行かないのである。

 稽古に励んでいる間、善逸は話しかけてこないから、獪岳がちょくちょく抜け出して鍛錬に励むようになるのは当然のことだった。

 怪我の治りが遅くなるほど鍛錬に踏み込む一歩手前で幸に止められるから、支障はない。何も、悪いことはしていない。

 

「大丈夫ですよ。獪岳君は、三日後には勤務に復帰できます。ですがその前に提案があって」

 

 にこやかなまま、胡蝶しのぶは提案とやらを口にした。

 蟲柱の継子に、栗花落カナヲという剣士がいる。

 花の呼吸を使う彼女が今手隙なので、実戦形式の稽古をしてみないか、とのことである。

 獪岳も栗花落カナヲの顔や名前は知っているし、無限列車後の機能回復訓練では世話になったこともあるが、それきりになっている相手だ。

 その相手と、稽古をしてみないかと蟲柱は言うのだ。

 

「玄弥君もどうでしょうか?任務はまだ入っていませんよね」

 

 鬼喰いの効果が今は抜けているらしい玄弥は、何か躊躇っていたようだが頷く。

 満足げな蟲柱は、藤色の瞳を獪岳に向けた。

 

「では獪岳くんは、どうでしょうか?」

 

 断る理由は、なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからっつって、なんでテメェがいんだよ」

「いいじゃん!俺も修行して強くなるって言っただろ!」

「いちいちうっせぇ。声を下げやがれ」

「イデッ!」

 

 裏拳を脳天に落とすと、いつものように我妻善逸は喧しかった。

 なんでこうなったんだと青筋立てる獪岳がいるのは、蝶屋敷に近い空き地だ。

 栗花落カナヲに玄弥、それに幸がいるのはまだいい。今は夜だから、いつもの古着物を着た幸が箱から出てきているのはわかる。

 だが、善逸がいるのは聞いていない。まだ入院中だったはずなのに。

 睨むと善逸は手をぶんぶん振って声を張り上げた。

 

「俺も頑張ったの!呼吸やったしにっがい薬も全部飲んだしずっと大人しく寝たよ!!おかげで言われてたより早く動いていいって言われたんだよ!!」

「えっと、つまり善逸君は……獪岳と稽古に入りたくて、回復につとめて、がんばった……って、こと?」

「俺の言いたいことまとめてくれてありがとう幸ちゃん!」

 

 こくんと頷いた幸は、ちょんちょんと獪岳の羽織の袖を引いた。

 

「善逸君の、霹靂の一閃、獪岳よりはやいよ」

「……知ってる」

「自分よりはやい人と、稽古したほうがいいでしょう?」

「お前よりは遅ぇけどな」

「わたしは、鬼」

 

 最初から比べるものではないと、金色の瞳がみるみる縫い針のように尖った。

 こうなると、折れるのは獪岳のほうだった。舌打ち一つをこぼして、善逸を睨む視線を外す。

 

「あー、もういいか?」

「ああ」

 

 兄弟子と弟弟子から少し離れ、カナヲからはさらに離れつつ様子を伺っていた玄弥に、獪岳は頷いた。

 蟲柱の継子、栗花落カナヲは隊服を着て木刀を手にしているが、どこか視線が茫洋と彷徨っていた。

 獪岳の視線に気づいたのか、カナヲは音もなく近寄ってくる。

 

「あなたは獪岳ね。そっちの子は幸。……師範と、よく毒を試してる鬼の子」

「そうです。花の呼吸の人は、会ったことがないから……よろしくお願いしま、す」

「私も、あなたみたいな鬼は見たことない。とても脚が速いって聞いた」

「あなたは、目が良いって」

 

 一度も話したことがないはずの少女たちは、割合あっさりと挨拶を交わして馴染んだ。

 顔立ちは特に似たところもないのに、同じ髪飾りをつけているからなのか、表情の動かし方がどことなく似ているからなのか、衝突はしそうにない。

 それを見計らってか、玄弥が手を上げた。

 

「稽古っつってもさ、どうすんだ?俺、特に何かの呼吸ができるわけじゃねぇんだけど」

「わたしは……銃弾、よけられるか試したい、けど」

 

 玄弥が、木刀を取り落としかけた。

 獪岳はとりあえず、幸の後ろ頭に手刀を落とした。

 

「なに?」

「なにじゃねぇ。無駄弾撃てるような銃か、あれが」

 

 呼吸を扱えない不死川玄弥が使う武器は、色が変わっていない日輪刀と銃だ。

 銃は大口径の特別製。

 言うまでもなく銃弾もまた特別で、日輪刀の鋼と材質は同じらしく、鬼の頸すら撃ち抜ける。

 あれで頸を撃たれれば鬼は再生できず、殺せるのだ。

 そういう弾丸でない限り、鬼は頭の半ばを熟れ過ぎた柿のように吹き飛ばされようが潰されようが、元の通りに再生する。

 それが致命的な怪我になる鬼は目の前にいるが。

 言うまでもなく、特別製の弾はほいほい作れるものではない。

 じゃあさ、と声を上げたのは善逸だった。

 

「お、俺たち五人いるから、二人組で組み手して、余った一人に戦い方見てもらうってやり方はどう?玄弥の銃のことは……うん、後で考えるとしてさ」

「あ?」

「ヒェッ!!だ、だだだだってカナヲちゃんと幸ちゃんめっちゃ目がいいんでしょ!悪い癖とか見てもらいたいじゃん!俺、知らない呼吸とか戦い方してる人とかと組み手とかやったことあんまないし!」

 

 かなり上背のある玄弥を微妙に盾にしながら、善逸が言い募る。

 玄弥は迷惑そうだが何も言わず、獪岳は喉の奥で唸った。

 非常に、非常に不本意だが、現在それが悪くはない方法に思えた。

 とりあえず戦えば、何かはわかるだろう。

 栗花落カナヲの『眼』というのがどういうものかは知らないが、蟲柱が言うからには余程なのだ。

 

「……順番はどう決めんだ?クジでも作るか」

「え゛っ!?」

「何絞め殺される鳥みてぇな声出してやがる。お前が言い出したんだろ」

「えっ、え、いやそうだけどさ!獪岳はそれでいいの!?」

「うるせぇ」

 

 多少なりともびぃびぃ泣かなくなったと思ったらこれだ。

 根本的に声が喧しくなって、獪岳は両耳を覆った。

 

「クジ……これでいい、かな?」

 

 地面にしゃがみ、足元の枯れ草を細長く千切った幸が、先端に結び玉を作る。

 

「むすび玉一つのが二本、二つのが二本。むすび玉がないのが一本。……これで、どう?」

「いいと思う。器用ね、幸は」

「……ありがとう」

 

 少し嬉しそうに、幸は口の端をやや持ち上げた。

 

「規則は、参ったって言うか頸に木刀が当たるかでいいか?」

「当てたら駄目だろ。そこは寸止めにしろよ。あんたと善逸だって、まだ患者と言えば患者なんだから」

「刀に触んな任務に行くなって言われてるだけだ。怪我人扱いすんじゃねぇよ」

 

 

 そういうわけで、枯れ草でできたクジは引かれる。

 獪岳が引いたクジには、結び玉が一つあった。

 

「……私と獪岳ね」

 

 同じものを持っていたのは、栗花落カナヲである。

 幸の手には結び玉が二つの枯れ草があり、同じクジを持って百面相をしているのは善逸だった。

 

「嘘過ぎない!?幸ちゃんじゃん!」

「……うん。やりにくい?」

「当たり前じゃん!」

「そう、なんだ。それなら手合わせ、しよう」

 

 にこ、とあまりきらきらとした光がない目で幸が口元だけで笑った。

 善逸が兎のように跳ねた。

 

「待って今のそれどういう音!?ワケわかんなくて怖いんですけど!怖いんですけど!?」

「だって、やりにくい相手のほうが稽古になるときもあるよ?……わたしも、善逸君には気になることが、あるから」

「何それぇ!」

「四の五の言わない。男の子でしょう」

 

 やけに流暢な物言いでばっさりと言い切った幸に、善逸はがっくり肩を落とした。

 獪岳にはどうにもできないし、どうにかするつもりもまったくない。

 

「……よろしく」

「ああ」

 

 それよりも、この栗花落というやつのほうがよほど気になると、獪岳は目を細めるのだった。

 

 

 

 

 




三章ですが、本誌の続きを待ったりする影響などで、更新が遅れがちになると思われますが、ご了承ください。

また、しの様より新たな挿絵を頂き、あらすじ欄に掲載しました。
是非!!ご覧下さい!!

以下は新章用の簡易人物設定第二弾です。

獪岳

本作の主人公。
煉獄杏寿郎の弟子。最近は槇寿郎とも話はできる。千寿郎とは出逢えば挨拶はきっちりする。
外から見える分では、特に変化はない。
妓夫太郎に斬られたところは傷が残っているが、隊服の下なので見えていない。

雷と炎の呼吸を混ぜて使っているが、型の名前なぞはない。
炎の呼吸も全て修められたわけではないが、一番よく鬼の頸を飛ばせるように自分なりのやり方を探し中。
整理のため、型をつくるならば名を決めたほうがいいと言われたので、筆片手にぶつぶつ唸っている。

自分が自分でありさえすれば肯定してくれる人たちがいたこと、今も側にいることが実感できた。
受け取ったものは溜められる。

それはともかく上弦の弐は早く死ね。




獪岳の幼馴染み、鬼。
金色の目は生まれつき。

新しい着物を貰ったが、汚したくないらしく普段は獪岳の荷物の中に一緒に仕舞っている。大事なものは仕舞い込む。
蝶の髪飾りは、他の鬼と区別する目印でもあるので毎日つけている。

人間であった時間より、鬼になってからの時間が長いことを結構気にしている。
が、気にしていることをほとんど人に悟らせない。

本当は喋るのは疲れるからとても苦手だが、幼馴染みに伝えたいことと伝えなければならないことがあったため、頑張って言葉を真っ先に取り戻した。
獪岳以外の前では吃る。悲鳴嶼の前でも吃る。

上弦の弐は殺す。何があっても。


雷右衛門

獪岳の鎹鴉。
ついに名前が判明し、らいくん、えもんくんなどと一部から呼ばれるようになりドヤ顔が増えた鴉。
ただし、担当隊士からは相変わらずクソ鴉呼ばわりなのが許せん。

煉獄家によく飛んでって任務報告していたが、最近は時々岩柱邸にも向かう姿が見かけられるようになった。
煉獄家でよく薩摩芋をもらうので、最近は芋がお気に入り。

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