鬼連れ獪岳   作:はたけのなすび

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では。


五話

 

 

 

 山を越えて駆けつけたとき、その家は既に襲われていた。

 

 

 家屋は戸を蹴破られ、中は踏み荒らされ、人の食いかけが二つ、転がっている。

 蹴とばされた膳、転がっている箸と飯粒、茶碗。倒れた男と老女の背中には、拳大の穴が開いている。

 血臭がひどく、息が絶えた体も頭や手足、胴体のどこかが食い千切られ、転がる彼らの体を、冴え冴えと冷たい月の光が照らしていた。

 

 いつかどこかでも見て、そして何度も見てきた光景だった。

 決して慣れない、化物たちの食事の後の風景だった。

 

 濃厚な血と臓物の臭いに手で鼻を覆いたくなるが、そうはいかない。 

 びちゃびちゃと、何かを啜る音がしていた。

 刀の柄に手をかけ、走る。家と家の隙間の暗がりにうずくまる影が、ぎょろりと血走った眼を向けた。

 

 ─────炎の呼吸

─────壱ノ型、不知火

 

 突進し、すれ違いざまに刀を一閃。

 ごろりと頸が落ち、胴体が枯れ木のように倒れて崩れる。鬼が食いつき、抱え込んでいた死体が、ぼとりと土の上に落ちた。

 まだ若い女の、虚ろな眼がこちらを見る。

 

「獪岳、こっち!」

 

 反転して駆けだす。

 人の気配の絶えた往来の真ん中で、鬼の背を膝で押さえて腕を捩じ上げる幸がいた。

 小柄な男のように見える鬼の口は血で赤く濡れ、眼が爛々と光っている。額の肉を突き破って、角が生えていた。

 

「おマエ、お前、鬼ノくせニ、鬼狩リ、ト」

 

 それ以上の言葉が紡がれる前に、獪岳の刀が振り下ろされる。

 打ち首のような形になった一撃に、鬼は絶命した。

 

「もう、いねぇか?」

「……この村には、いない」

 

 軽く眼を瞑った幸が、かぶりを振って言う。

 確かに、鬼の気配はなかった。

 村外れに建てられていた一軒を襲い、次を喰おうとしていたところに獪岳たちが駆け付けた格好らしい。

 珍しく複数の鬼を殺すことになったわけだが、連携して襲っては来なかった辺り、大方二体が運悪く鉢合わせしたのだろう。

 これから村を襲う前に、腹ごなしでもするつもりだったか。

 

「家の人は?」

「死んでた。裏手でも、一人喰われた」

「……」

 

 どれだけ急いでも、肺が潰れるかと思うほど走っても、間に合わないときはある。

 村の中心部に踏み込まれる前に倒せはしたのが、唯一僥倖と言えば僥倖だった。

 他の住民はまだ惨劇に気づいてすらいないのか、気配はあれど静かなものだ。そのままでいてくれたほうが、有り難い。

 戻るぞと腹に力を入れて声を出し、刀を鞘に収めようとしたところで、ふと空を見た。

 望月がやけに大きく、眼に痛いほどだ。

 眩しすぎる明かりというのは、ろくでもない誘蛾灯に見える。

 立ち上がって、袴の泥を叩いていた幸の動きが、ふいに縫い留められたように止まった。

 鞭のような勢いで、体ごと振り返る。

 闇夜の猫そっくりに光る縦に割れた金色の瞳は、たった今駆け抜けてきた村の入り口を凝視していた。

 

「どうし─────」

 

 た、の最後の一文字をいうより先に、獪岳も気づいた。

 鬼の気配。それも、肌が粟立つほどの気配が、もうすぐ、そこにあった。

 直前まで、何の気配もなかったというのに。

 ひゅ、と不自然な音が聞こえた。

 聞こえたそれが、自分の呼吸する音だと気がつく前に、獪岳の体は飛んでいた。

 遠くなった地面を、斬撃が駆け抜ける。

 次の瞬間には、たった今まで立っていた地面と空間が、背後にあった家屋諸共切り裂かれ、吹き飛んでいた。

 

「な、にが」

「しらない!」

 

 獪岳の胴を抱えて跳び、地面に転がるように着地した幸が吠える。

 内臓が浮き上がる不快さを感じたと思うと、獪岳は再び礫のように放り投げられていた。

 辛うじて地についた足裏に力を込め、なんとか踏み留まる。握った刀は、落とさなかった。

 その足元に、ぼとりと落ちたものがある。

 切られた黒髪の束と、半分に切られた蝶の髪飾りだった。

 は、は、は、と夏の痩せ犬のような浅い息の音が耳に届く。

 ざんばらに切られた黒髪のまま、幸が肩で息をしていた。左肩の着物が赤く染まり、開いた瞳孔は血走っていた。

 先程の一瞬で肩を斬られ、修復したのだ。

 

「獪岳、息をして!」

 

 張り飛ばされるような鋭い語気に、恐怖で詰まっていた肺と喉の強張りが解ける。

 胸を殴られたときと同じ、笛のような息が漏れた。

 それでも、二度繰り返せば常と変わらない呼吸ができた。

 狭まっていた視界が戻り、目の前がようやく見えるようになる。

 

「ほう…時をかけたとはいえ…もう動揺を…鎮めたか…」

 

 開かれた視界にいたのは、鬼、であった。

 刀を腰に差し黒い髪を束ね、纏っているのは紫の着物と黒の袴。

 時代遅れな、絵でしか見たことがないような侍の装束だった。

 だが、放たれている威圧感が、何とも比べものにならない。

 立つことに集中しなければ、呼吸がままならなくなって膝を折ってしまいそうなほどの圧が、雷を孕んだ暗雲のようにのしかかってくる。

 鉛の衣のような、重い気配だった。

 弐が、童磨が持っていた、あの何処か人を小馬鹿にしたような酷薄で軽薄な無邪気さは、ない。

 ひたすら、格上の者が放つ気配が、人の形をしてそこにいた。

 

「勾玉の鬼狩りと…蝶の飾りをつけた…金眼の…鬼。…間違いは…ないようだな」

 

 顔の左に三つ、右に三つの瞳。

 三対六眼の、真中の二つの瞳には、上弦と、壱の文字が刻まれていた。

 

─────死、ぬ。

 

 刀を振るおうとすれば、殺される。

 動こうとしても、殺される。

 何をしても、どう足掻いても、殺そうとした刹那に斬られて死ぬ様しか、思い浮かばなかった。

 

「ふむ…斬りかかっては…来ぬのか…雷の呼吸の使い手ともなれば…相応の立ち回りが…あろうに」

 

 鬼の手が、腰の歪な刀にかかる。

 上弦の壱の抜刀と、幸が小石を掬いとり目にも止まらぬ速さで空へ投げるのが、同時だった。

 夜空の一角で、ぎゃあ、という甲高い音が────鴉の鳴き声が響いた。黒い塊が地に落ちる。

 再び刀を鞘に収め、ゆらりと立つ壱は間延びしたような口調で続けた。

 

「童磨との…戦いの折には…お前たちの鴉が…柱を呼んだのだろう。だが…邪魔な翼はもいだ。……最早…あれは飛べぬ」

「おまえ……よく、も!」

 

 斬られた髪を伸ばすこともなく、幸が牙を剥いて唸る。

 人をかなぐり捨てるかのようなその形相に、獪岳の手足に力がようやく戻った。

 鬼はと言えば、幸の激昂など見えてすらいないように語るのをやめなかった。

 

「やはり、鬼だけに…眼が良いのだな…。一瞬で…私の狙いに気づき…鴉に礫を当てた…。首を落とし…胴を両断するつもり…だったのだが…。僅かな血しか与えられなかった身で…よくもついてくる…」

 

 幸が投げた石ころが鴉に当たり、鴉はほんの僅かに斬撃から逸れることができた、らしい。

 それでも、鎹鴉が飛べなくなった事実は揺るがない。助けは、来ない。

 

「鬼狩りのお前は…柱ではないが…素質はある…と言ったところか」

 

 言い終えそれから、ふ、と鬼の姿が目の前からかき消える。

 ぞ、と首筋に怖気が走った。

 気配に対して、体が半ば反射で動く。日輪刀を、幸の隣の空間に振り下ろした。

 細い頸を狙っていた横一閃が、獪岳の刀にぶつかった。

 瞬時に腰を落として放たれた幸の低い蹴りを、鬼は軽々と避ける。刀は木の葉のように弾かれた。

 力を込めて押さえていただけに、刀が引かれた途端に獪岳の体勢が崩れる。

 全身が粟立つと同時に、腹へ打たれたような衝撃が走り、体が後ろに飛ばされた。

 

「ッ!」

 

 背中から、獪岳は倒壊した家屋へ突っ込んだ。

 受け身を取り立ち上がれば、目の前が赤く染まっていた。

 斬られた額から流れた血と、頭にかかった血が、目を塞ぐ。口にも滴り落ちてきたものを、飲み下した。

 拭った視界に見えたのは、地面に倒れているひとかたまりの何かだった。

 右腕と右脚は体から離れて折れた枝のように転がっている。

 その喉元には、刀が卒塔婆のように付き立っていた。

 

 声にならない声を噛み殺し、獪岳は刀を手にした。

 動け、と脚を叱咤する。

 

────息を吸え、

─────吸って、取り込んで、吐け。

 

─────脚を、前へ。

 

 炎と雷が、闇夜に尾を引いて奔る。

 炎の肆ノ型、雷の弐ノ型が混ざりあった、出鱈目な斬撃は、すべて避けられた。

 刀から手を離し、無手となった鬼は、やはり余裕綽々と跳び退った。 

 喉元を貫いていた刀を自力で引き抜き、幸が片脚のまま立ち上がる。

 紅雷と共に血鬼術が発動し、二の腕から先と膝から先が再び生えた。

 地面に投げ捨てられた刀身は、脈打っているかのような赤い筋が走り、不気味な目玉がびっしりと貼り付いていた。

 

「今の呼吸は…炎と雷の合わせか…。お前も…派生した呼吸を…使うのだな…。雷を…極められなかったか」

 

 戯れのように宣う鬼の手には、失われたはずの同じ刀が握られている。血鬼術なのだろうとしか、判断できなかった。

 どうして、としか考えられない。

 何故また、こうなる。

 無理に決まっているだろうこんな相手。柱も鴉もおらず、人里も近い。

 斬撃が、()()()()()()

 氷の血鬼術を操った童磨とも違うのだ。

 これは恐らく、体術が図抜けている。

 鬼でありながら、呼吸を使った剣術を極めた、鬼狩りの鬼だ。

 

「お前たちが…柱と共に倒した上弦の陸も…今の上弦の弐によって鬼となり…二人でひとつとして…成立していた…鬼であった。奇妙に符号しているお前たちならば…欠けは…埋められるであろう」

 

 刀を、鬼が構える。

 折れそうになる脚を支えているのは、少し離れた隣で全身から血鬼術の紅雷を迸らせている、幸の光があるからだった。

 全身に力を漲らせ、身構えている。

 上弦の壱の動きは獪岳には捉えられず、反応ができない。 

 だが、幸は辛うじて反応ができていた。

 三度、獪岳を鬼の攻撃範囲から弾き飛ばしているのだから。

 生きるためには、逃げるしかない。戦うという考えは、とうの昔に消えていた。

 

「……お前()と、言った。あなたは、なら、()()()()に……縁壱さんに、届かなかった、ひと?」

「何?」

 

 脚に力を込めたまま、幸が低く問いかける。

 鬼の纏う空気が、変化した。

 いきなり何を言い出すのかと、獪岳は心底ぎょっとして幸を見やる。

 幸は、手繰るように言葉を続けていた。

 

「あの人とにた痣。六つ腕ならぬ、六つ目。日ではない、月の呼吸。……あなたは、()()()()()()ん、だ」

 

 言い終わるか終わらぬかのうちに、音が、大気ごと切り裂かれた。

 無音の踏み込みと抜刀。月のような刃を纏った斬撃が、真っ直ぐに幸の頚目がけて走る。

 頸が斬り落とされる寸前、幸の手が動いた。

 鬼の刀が、懐から幸が抜き出し宙に放った紫の分厚い布袋を微塵に切り裂く。

 瞬間、袋から漏れたのは、きつい藤の花の香りを放つ、紫の粉だった。

 粉塵を、六つ目の面貌にまともに浴びた鬼が、瞬きの間仰け反る。

 その瞬間に、幸は獪岳の胴に手をかけ、全身をばねにして跳んでいた。

 弾丸のように道を外れて、山に飛び込む。

 木を飛び越し、枝を次々と蹴り飛ばす。

 びゅうびゅうと顔を叩く風で、獪岳は我に返った。

 

「おまっ、今、何、をっ!」

「しゃべるな、舌を噛む!」

 

 着物の襟が、血で染められていた。

 あと半歩ずれていれば、幸の頚は落ちていた。

 それだけでなく、口の端から黒い血がこぼれ、片方の眼球から出血している。

 毒を喰らって、腐れたかのように。

 

「しのぶ、さん、の藤の、毒、当てられた、けどっ……そんなに、もたないっ!」

 

 言い終わるより前に、背後でばきばきと木が薙ぎ倒されて行く音がしていた。

 幸が微かに首を捩じって背後を伺う。

 獪岳の胴に回された腕に、いっそう力が籠るのがわかった。

 

「獪岳、今から、なげるよ。あの鬼はもう、わたししか、ねらわないだろう、から」

 

 大丈夫だよ、と耳元で囁かれた。

 

「がんばって、生きて。逃げて、よあけまで」

 

 一際高く、大きく月が見えた。

 次の瞬間、獪岳は背中から宙へ放り出され、落下していた。

 月を背にした幸の、こぼれ落ちそうなほど大きく見開かれた瞳が、刹那だけ見えた。

 手を伸ばして掴む前に、全身を衝撃が打ち据えた。枝を何本も伸ばした木に、背中からぶつかる。

 ぶつかって枝を折り、叩きつけられながら、落ちていく。

 数度腕や手足を打ち据えられ、全身に細かい傷をつくりながら、獪岳は地面に転がり落ちた。

 刀はまだ、持っていた。

 だが、持っているその手が、小刻みに震えている。

 耳障りな音を立てて、手から刀が落ちた。

 息が、吸えない。

 冷たい土の上に蹲り、腹を蹴られたときのように、芋虫のように身を丸めた。

 知らぬ間に斬られていた脇腹の傷から、血が流れて行く。今すぐ死にはしないが、浅い傷ではなかった。

 

 ─────怖い。

  ──────怖い。

 

 ─────恐ろしい。

 

 闇に光る六つ目が、目を閉じていても睨んで来る。

 カチカチと歯が音高く鳴った。

 身につけたはずの呼吸が、上手くできない。吸っても吸っても、酸素が逃げて行く。

 肺が、縮んでしまったかのように痛かった。

 喉の奥からせり上がって来たものを吐けば、僅かな胃液だけが地面にぶちまけられる。

 口の中一杯に、気持ちの悪い苦さと酸っぱさが広がった。

 

 鬼から、逃げた。

 上弦の壱から、逃げられてしまった。

 断続的な破壊音は、遠くで起きている。

 上弦の壱は、確かに幸だけを狙っているのだ。獪岳への興味は、失せたかのように。

  

 獪岳だけ逃げることが、できてしまったのだ。

 そのことに、どうしようもなく安堵する。

 恐怖で吐こうが蹲ろうが、刀が持てなかろうが、鬼から逃げようが、己は生きている。

 生の実感そのものが、果てしない安堵感を齎していた。

 

「く、そ……が」

 

 吐瀉物と血が混じった土に爪を立てる。

 がりがりと土が削られる様が、ぐにゃりと涙で歪んだ。

 安堵と同じだけのどろどろとした熱が、水に垂らした墨汁のように腹の底に広がる。

 

 ─────悔し、い。

 

 鎹鴉は、羽を斬られて落とされた。

 生きているかも定かでなく、救援を呼ぼうにも刀鍛冶の里へは山を越えなければたどり着けない。

 日が出るまで、どう見積もろうが数時間はある。

 その時間まで、幸は一人で逃げ回れるのか。

 あの化物じみた強さの鬼は、幸の言葉に激昂していたように見えた。声も発さなくなるほどに。

 そうなるとわかっていて、幸はああ言ったのだ。狙いを引き付けるために。

 考えに考え抜いただろう幸の当てずっぽうが、きっと、見事なまでの()()()()を踏み抜いてしまった。

 

 ─────これから、どうすべきなのだ。

 

 そんな疑問が己の中から生まれたこと自体が、驚きだった。

 逃げろと言われたなら、逃げればいい。

 所詮敵うわけがないのだから、そうすることに何の躊躇いがある。

 鬼を前に逃げ出すなど鬼殺隊にはあるまじき行いなのだろうが、それがどうしたのだ。

 あれには到底、太刀打ちできない。柱でもないのに、戦えなどしない。

 生きるために鬼殺隊に入った。刀を取った。何も、死ぬために入ったわけではない。

 だから、逃げたって構わない。躊躇う必要はどこにもありはしない。

 他でもない幸に、()()()と言われたのだから。

 

「……ああ」

 

 逃げろというその言葉を、あの日の夜にも、聞いたのを思い出した。

 頭の中で、記憶が暴れ出す。

 血のにおいと、四方から押し潰さんと迫るような闇を孕んだ山。

 そうだ。あの日もこんな、夜だった。

 小さな手に突き飛ばされて転がって、見上げた視界に映った化物。

 恐怖と痛みで揺れる金色の瞳がそれでもつくった、壊れてしまいそうな、あの、微笑み、は。

 

 ここで逃げればもう、二度と、戻っては来ない。

 今度こそ永遠に、失われる。

 

 それは予感ではなく、確信だった。

 あのときも、そうだった。

 転がるように逃げて逃げて逃げて生き延びて、引き換えに何かをあの日に失った。

 

 のろのろと顔を上げれば、目の前には刀が転がっていた。

 獪岳のために鍛えられた、日輪の力を宿す刀。黄の刀身を走るのは、黒い雷。

 あのときには振るい方も知らず、持つこともできなかった、鬼を滅するための武器。

 汚れ切った柄と逆に、曇りのない刀身には、月が映っている。

 不吉なほどに鮮やかで、決して目を逸らせない金色の光が、そこにあった。

 

「……」

 

 地を這う蚯蚓のように、刀へ手を伸ばした。握ったそれをほとんど杖にして立ち上がり、鞘に収める。

 吐瀉物と涎と涙でべたつく口元を拭い、しくじりながらも呼吸でわき腹の傷を止血し、言葉を吐き捨てた。

 

「これで俺が死んだら、お前のせいだからな」

 

 一生、死んでも、何があっても、お前が忘れたとしても、地獄に行こうがどこに行こうが、恨んでやる。

 今、そう決めた。

 どうしてお前は、俺を逃げさせてくれない。

 どうしてまた、刀を握らせようとする。

 どうして、諦めることさえ許してくれないのだ。

 ここにはいない少女の影に、毒にも薬にもならぬ恨み言をぶつける。

 応えなどあるはずもないと、自分でもわかっている。

 この暗闇の中、獪岳は今、本当に一人きりだった。

 

 手負いの獣のように、くそったれと夜の月に吠えた鬼殺の剣士は、暗い山の中へと、一人疾風のように駆け出す。

 向かう先は、破壊音が響き鬼の気配がする、山の中腹だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




人材探しに引っかかった話。

鬼っ娘の挑発は、煉獄槇寿郎の言動、縁壱零式の話、上弦壱の顔と風体と言葉からの当て推量です。
鬼でなかったら、多分5回くらいは既に死んでます。

そういえば、原作の獪岳の鎹鴉ってどうなったんでしょうね?
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