鬼連れ獪岳   作:はたけのなすび

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お久しぶりです。

では。


十三話

 

 

 

 

 

 何と言うべきか、風柱の稽古は厳しかった。

 無限に手合わせを繰り返し、気絶して吐くまでやってようやく一度休憩という苛烈さなのだ。

 これまでの稽古を担当した柱は、皆休憩を挟んでくれていたのだが、疲れで失神するまで休憩が実質存在しないのだ。

 たまたま稽古先の重なった善逸が、最も逃げ出しそうな稽古であった。

 元々、桑島の師匠のところにいたときも、やれ稽古がつらいの苦しいのと言って、善逸は逃げ出していた。

 その都度、捕まっては引き戻されていたのは無様で、それを見る度獪岳は苛立ちつつ、若干憂さが晴れていたが、しかし、ここでは善逸は日が経っても食らいついていた。

 厳しい痛いもう嫌だ無理だと喚く割に、一通り喚いたら木刀をまた握って稽古からは逃げ出さないのである。

 おかしなものでも食ったかと、獪岳はつい二度見してしまうほどだった。

 獪岳も獪岳で、風柱には散々叩きのめされるのだ。

 嗚呼そう言えば、風柱はあの柱裁判のときに一等鬼に対して敵意がひどかったなと思い出したのは、何度目かの気絶から覚めてからのことだ。

 井戸端で善逸に頭から井戸水をかけられたときに、思い出したのだ。

 ちなみに、心配そうに見下ろしている善逸の顔がいきなり見えたため、獪岳はつい反射的に鼻面に頭突きをかました。

 

「いっった!獪岳、お前いつ炭治郎になったの!」

「うるせぇ。いきなりツラ見せるテメェが悪い」

「ひどくない!?そんなに言うなら幸ちゃんに起こしてもらえよ!あの子には獪岳頭突きできないだろ!」

「うるせぇ」

 

 べしゃ、と獪岳は濡れた手ぬぐいを善逸の顔面に叩きつけた。叩かれまくって、善逸の顔はぼこぼこになっている。

 見ていないが、獪岳も恐らく似たようなものだろう。冷やしてもまたすぐに稽古で元通りにされるから、当分はこのままだ。

 すぐに戻るには、手足から力が抜けすぎていて獪岳は井筒に背を預けて座り込んだ。

 当然のような顔をして善逸が隣に座り、獪岳は顔を背けた。

 

「あのさ、獪岳、調子どう?」

「良いふうに見えてんのか」

「み、見えてないです。風柱のオッサンがきつ過ぎて死にそうだし……」

 

 余りに太刀打ちできなさ過ぎて、頭に血が上り、剣を持ち出して戦いたいという輩が出る始末である。

 獪岳も最初こそ動きが見えていたのだが、疲労が重なるとどうしても動きが雑になって、そこを叩きのめされてしまう。

 見えてはいても、体が追いついてこないのだ。

 それは、あの上弦の壱のときも言えたことだ。鬼は基本消耗しないが、人間は時間がかかるほどに弱くなる。日が出るまでの消耗戦は、最悪の手段だ。

 斬撃すら見えずに斬り刻まれたあのときよりはマシだが、獪岳の体力は風柱には追いつけていなかった。

 

「獪岳?あのさ、ちょっとその、提案っちゃ提案なんだけど」

「……」

「ふた、ふ、二人で戦ってみないか?風柱のオッサンから、俺、一本取りたいんだ」

 

 誰だコイツ、と獪岳は目を眇めて善逸を見た。

 勝ち負けに拘るような気概を、善逸が獪岳に見せたことなどなかった。獪岳が善逸の顔をまともに見たことが、そもそも少ないのだが。

 

「や、だって俺たち爺ちゃんに習ってただろ。俺、獪岳の動き覚えてるもん。今は獪岳も違う型も使えてるけどさ」

「……同門だから、動きも併せられるだろうってか」

「そう。勝ちたいんだ。……えと、獪岳が良ければ、だし」

「いい」

「へ?」

 

 頼んでるのはお前だろうが、と獪岳は善逸の脇腹に肘を突きこんだ。

 

「他にも似たようなことしてるやつらはいるだろ。全員床に沈んでるけどな」

 

 風柱に叩きのめされまくり、風柱に勝つことが目的になっているのが多いのだ。

 別にそれでも支障はないと思うし、元々血の気が多いのばかりがいる鬼殺隊だ。そうもなるだろう。

 全員、風柱に叩きのめされて道場に積まれるのが関の山であるが。

 

「え、いいの?」

「いいっつっただろうが。手間かけさせんなグズ」

「いった!わかった!わかったから耳引っ張んな馬鹿兄貴!」

「お前なんぞの兄貴になった覚えはねぇ」

 

 弟弟子で、動きが似ているからだ。構う理由はそれだけだ。

 そもそも、あちこちから人間と共に戦うというやり方をもっと覚えてこいと言われている。幸からも、師匠からも、何なら鴉からも。

 かなり長い間、獪岳の言うことに黙って従う幸や、戦いのときには役に立たない鴉としか過ごしていなかった弊害だった。

 柱合裁判までは、鬼殺隊とそもそも出くわさないようにして、普段は藤家紋の屋敷すら避けるようにしていたほどだ。

 ふん、と獪岳は鼻を鳴らして善逸の耳を引っ張っていた手を離す。

 

「だけど、後にするぞ。力がまだ戻ってねぇからな」

「わかった」

 

 それにしても、死にたくないならともかく、こいつが勝ちたいと言い出すのは、珍しいことだった。

 白茶けた地面に点々零れた、汗とも水ともわからない水滴の黒い染みを見ながら思う。

 そう言えば、この弟弟子が強くなりたいとは言っていたと獪岳は思い出した。

 獪岳が、幸の頸を刎ねて責任を取るようなことが起きないように、と。

 善逸に言われたことは、大半覚えていたくないのでさっさと忘れることにしているのだが、思い出したら止まらなかった。

 

「お前、新しい型はどうなったんだよ」

「あ。あー……まぁ、ぼちぼちと」

「できてねぇのか」

「完成してないだけだし!絶ッ対に柱稽古の間で完成させてやるんだからな!」

「俺に吠えても仕方ねぇだろうが。先生か柱か鬼にやれ」

 

 この、『鬼のいない時間』はいつまで続くかは誰にもわからない。

 今日終わるかも知れないし、十日後かもしれない。それまでに、蟲柱や薬師の鬼や幸は薬を完成させられるのだろうか。

 完成したところで、幸は鬼から人へは戻らないだろう。童磨を倒すまでは、絶対に。

 

 顔を上げれば、まだ太陽は空高くにあって、日向に投げ出した獪岳の足先をあたためていた。

 まだ刀の持ち方も知らなかった頃、こんなふうに過ごしていたときもあったと、ふと思い出した。

 水汲み当番をさぼってだらけていたら怒られて、薪割りまでやらされた。

 遊んでいた沙代と幸が苦笑いしながら手伝ってくれたが、小さいのと足が悪いのとではろくな手伝いにならなかったものだ。

 うるさかったし煩わしくもあったが、あの寺は居場所だった。帰ることが、許されていた。

 馬鹿な理由で馬鹿な餓鬼が飛び出しても、連れ戻しに来てくれた。

 帰ることは二度とできなくなってしまったが、そんな場所もあったのだ。

 

 最近は、忘れていたことが、時々浮かび上がる泡のように還って来るときがある。

 いや、忘れていたというより、思い出さないようにしていたが正しかった。

 

「なぁ獪岳、獪岳と幸ちゃんってどんなとこに住んでたんだ?」

 

 そこへ来てこいつは、またも心を読んだようなことを言いやがる、と獪岳は額を押さえたくなった。耳が良いにしたって、察しが良過ぎであった。

 暇潰しにはなるかと、口を開く。

 

「寺」

「それは前聞いたよ?」

「うっせぇ黙れ。ぼろい寺だ。悲鳴嶼さんがいて、わらわら子どもが集まってた」

 

 何故、あの寺に集まっていたかは知らない。だが、身寄りがないから境遇は似たりよったりだったのだろう。

 

「やっぱ、岩柱さんてお坊さんだった……」

「見りゃわかんだろ。いっつも南無南無言って、尺八吹いてんだから。羽織りも経文だらけだろうが」

「そうだけど、やっぱちょっと想像できないっていうか」

 

 あのころの彼と、今の悲鳴嶼行冥は似ても似つかない。柳か枯れ木のようであったのに、今や岩を削って作られた仁王のようだ。

 中身にも、鬼への憎悪が焼き付いている。それでも幸と口喧嘩したときに悲鳴嶼から向けられる、あの見られるとむずむずするような眼差しは、変わっていなかったが。

 口からは、するすると言葉が流れて来た。

 

「俺は、あの人に怒鳴られたことも殴られたこともねぇよ。俺たちが喧嘩してたって、おろおろうろうろしてこっちが止まるまで手出しができねぇくらいだった。テメェの食いもん削っても、俺たちの皿数は減らせねぇお人好しだ」

「……」

 

 声を荒らげることがとにかくできなくて、しかも盲目で気弱だった。それでも、皆懐いていたし、大好きだったのだ。一番懐いていたのは、幸だ。

 獪岳は、自分が最も懐いていない自覚があった。

 

「そこにいた子たちは、どうしたの?」

「死んだ」

 

 ひぅ、と善逸の喉が窄まって滑稽な音がした。聞こえないふりで、獪岳は空だけを見上げた。日差しが、目に痛い。

 

 

「俺と幸と悲鳴嶼さんと、沙代っていう小さいやつ以外、全員鬼に殺された。夜になると鬼が出るって言われてたのに、信じてなかった」

 

 鬼避けの藤の香は面白がっただろう童磨に消され、幸を食った鬼が寺へ入った。

 その鬼は悲鳴嶼に殴り殺されたが、子どもは三人しか残らなかった。あとは皆、殺された。

 獪岳は、そこにいなかった。

 夢中で逃げて生き延びて、帰り着いてみたら寺はもう駄目になっていたのだ。

 悲鳴嶼が子どもを殺すわけ無いと言ったのに、誰も聞いちゃくれなかった。

 その場にいなかったから、獪岳が孤児だったから、身なりがぼろぼろで錯乱しているように見えたから。十分な理由だった。

 

 今更なことと割り切った過去を、我妻善逸に語ることは初めてだった。

 

「沙代は、多分誰かに引き取られた。悲鳴嶼さんは、お館様に助けられるまで人殺しで牢屋に入れられてたとさ。幸のことは説明しねぇぞ」

「なんで……子どもたち殺したの、鬼なんだろ?」

「日が出ちまえば、鬼は死体が残らねぇ。残ってたのは人の死体と、拳が血まみれの坊主と、錯乱したガキだけだ。誰も、言い伝えの化けモンが殺したとは思わなかったんだろ」

 

 鬼避けの香を炊く習慣ばかりが残って、本物の人食い鬼を誰も信じていなかったのだ。獪岳も幸も、皆が。

 そんなものいないだろうからと、獪岳は夜に外に飛び出して、幸はそれを追いかけた。沙代たちは、目の見えない悲鳴嶼が来ないように、二人はもう帰って来ていると誤魔化していたらしい。幸がそうしてくれと、頼んだから。

 帰れていたら、きっと、少し怒られるだけで済んだろう。

 

 

 こんなもの、全部抱えていても仕方ない未練なのだと、獪岳はかぶりを振る。

 疲れているから、こんなことまで考えるのだ。風柱のせいである。

 

「寺がなくなったから、俺はあちこちうろついて先生の財布スろうとして捕まって弟子になった。後はお前も知ってるだろ」

「獪岳が爺ちゃんの財布スろうとしてたこと、初めて聞いたんだけど……」

「テメェも、女に騙された借金の肩代わりしてもらったんだろうが。似たようなもんだろ」

 

 その弟子も、片や壱ノ型だけが駄目、片や壱ノ型以外が駄目という尖り具合だ。

 こうまで凸凹なら、もう笑うしかない。

 

「結局、ロクデナシな弟子しか見つけらんねぇんだよ、先生は」

「そ、そこまでかなぁ……。爺ちゃんに聞かれたら、また鉄拳飛んでくるよ」

「上等だ。今度は避けてやる」

 

 言った瞬間である。

 どこからともなく飛来してきた石礫が、善逸の額に当たった。獪岳が咄嗟に首を傾けたのが、直撃したのである。

 ダンッ、と重いものが叩きつけられる音がして顔を上げれば、風屋敷の屋根の上に、木刀片手の、人相目つきの悪い傷だらけの男が、こちらを見下ろしていた。

 言うまでもなく、風柱である。

 どこからどう見ても、不死川実弥である。

 休憩で姿を消していたのに、もう帰って来たのだ。

 

「クソ兄弟弟子共ォ、テメェらの師匠の話をグダグダする前に、やることがあるだろうがよォ。殺されてェのかァ?」

 

 殺される予定は、これまでもこれからもまったくない。

 石礫であっさり気絶した善逸を蹴っ飛ばして、獪岳は横っ飛びに跳んだ。

 直後に、屋根の上から飛び降りてきた風柱の木刀が、井筒を叩き壊す。

 獪岳が地面に転がしていた木刀を掴んで両手で構えるのと、不死川実弥の木刀が振り下ろされるのが、ほぼ同時。

 凄まじい衝撃に、受け止めた木刀が軋む音がする。

 馬鹿力も大概だ。

 炎と風の柱同士の手合わせで、木刀が枝のように圧し折れるわけだと、獪岳はどこか冷静な頭で思った。

 体格でも力でも負けている相手と、鍔迫り合いなぞしていられない。

 

「……ッ!」

 

 一瞬だけ木刀から片手を離し、砂をすくって投げつける。諸に目に浴びた風柱が僅かに仰け反った瞬間、獪岳は離れようとした。

 だが、引き換えに目の前に星が散った。

 頭突きを叩き込まれたと認識できたのは、蹴り飛ばされた後である。ごろごろ転がり受け身を取って立ち上がれば、今度は突きが飛んで来た。

 しかも、喉元である。

 殺す気かと、頭が冷えた。見えているものが、急に鈍くなる。

 真っ直ぐ伸びてくる鋒を、木刀で逸してかち上げる。突きを逸らされた風柱の腕が上がった隙に、獪岳は飛び込んだ。

 避けるだの防ぐだのは、最早考えない。前へ出ねば、嵐の前の木の葉のように吹き飛ばされて終いだ。

 懐に飛び込み、体を捻って横薙ぎに木刀を振るう。当たれば肋骨を折るだろう一撃は、素早く木刀を引き戻した風柱に上から押さえられた。

 

「馬鹿力かアンタッ……!」

「ハッ。攻めが浅ェんだよ、テメェはなァ。雷の呼吸を齧ってるってのに踏み込みが甘ェ。ンなんだから払われんだよォ。それでも煉獄の弟子かァ?」

「知って、らァッ!」

 

 無理やりに木刀を持ち上げ、再び打ち合う。

 

 井戸をぶち壊した風柱の一撃から始まった稽古は、頭をしたたか打たれて獪岳が地面に倒れたところで終わった。

 毎回毎回、失神するまで一区切りなのは変わらないのか糞ったれと、獪岳が苛立ちながら起きたときには、日が傾いていた。

 

「打ち合いになるだけいいだろ。俺なんか、気づいたときには吹っ飛ばされて目ぇ回してんだぜ」

「そーそー。相手になるだけお前すげぇよ。てか、なんでそんな全身刻まれてんのに生きてんの?」

 

 そんなことを宣ってくるのは、日向で叩きのめされてぶっ倒れた獪岳を、日陰にまで引っ張りこんでくれた隊士たちだ。

 丸坊主と角刈りという二人組で顔に見覚えはないが、どちらも疲労困憊という体だった。

 目の前では、相変わらず風柱によって木っ端のように隊士たちが吹き飛ばされていた。

 

「あ、そう言えばさ。お前の弟の……」

「あ?」

「弟弟子の!我妻な!あいつ、なんか竈門と一緒に乱闘騒ぎ起こして、出ていかされたぞ」

「ハァ?」

 

 聞けば、なんでも獪岳が気絶して寝ている間にあの竈門炭治郎がやって来て、その後から不死川玄弥もやって来た。

 そこまではまぁ良かったのだが、風柱が、話しかけた玄弥を目潰ししかけ、それを咎めた竈門炭治郎とたちまち大乱闘。

 元々反りが合わなそうな二人であったのだが、止めようとした隊士を巻き込んで殴るわ蹴るわ障子を吹っ飛ばすわと、それはもう凄まじかったようだ。

 とまぁ、炭治郎に巻き込まれる形で善逸も乱闘に加わってしまい、三人まとめる感じで叩き出されたという。

 聞くだに頭が痛くなって、獪岳は顔をしかめた。何をちんたらやって逃げ損なっているんだか。手を貸してほしいと獪岳に言っておきながら、できずに追い出されている。

 とはいえ今回ばかりは、寝ていて巻き込まれずに済んで心底助かった。

 不死川玄弥とは、悲鳴嶼を通じてなんだかんだ縁がある。

 そいつが実兄にすげなくされるどころか、重傷を負わされかけるのを放置していたら、後で幸や鴉に睨まれそうであった。

 さすがに獪岳が気絶している間に起きたことに関しては、あいつらもうるさく言えないだろう。

 それにしても。

 

「目潰し、な」

「そーだよ。俺チビるかと思ったね。風柱様スゲえ剣幕だったし」

「でも我妻に風柱様を悪く言われて、不死川のほうも怒ってたよな」

「……兄貴のことが好きなんだろ」

 

 だが、風柱は実弟に随分な対応である。

 不死川玄弥は、見た目の厳つい印象さえどうにかすれば、そこまで人から嫌われる人間には見えない。まして、身内から。

 それに、目を潰しても玄弥は堪えないのではないだろうか。鬼喰いで、体質まで変化しているらしいし。

 とはいえ、血の繋がった兄弟のことならお互い同士で何とかしろと、獪岳が欠伸をしたときだ。

 一通り隊士をあしらった風柱の三白眼が、ぎろりと獪岳たちを睨めつけた。

 炯々光る眼つきは、なるほど玄弥と似ていた。

 稀血のあの人には二度と近づきたくない、と幸は言っていたが、まず目つきの怖さで大概の女子どもには逃げられそうだと獪岳は思う。

 

「いつまで休憩してやがんだクソ共がァ」

「はいっ!!」

「すんませんっ!!あっ、俺ちょっと走り込みして来ます!」

 

 そんなことを言って、足早にどたどたと角刈りと坊主頭はいなくなる。一緒に走るべきかと獪岳が立ち上がったところで、風柱がその道を塞いだ。

 

「……何スか。俺も走ってこようと思ったんですけど」

「テメェにそれは要らねェ。構えろ。もう一度だ」

 

 空恐ろしい目つきと殺気に、獪岳はやるしかないかと木刀を構える。やられっぱなしは嫌いだ。どうせやられるにしても、盗めるだけ盗んでやると開き直った。

 その日、獪岳の腕が持ち上がらなくなるまで稽古は続いたのだった。

 

 

 

 




久しぶりで、何か忘れているかもしれません。

作者の精神的な問題と、その他私事で遅れました。
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