ベーコンは良いぞ   作:酸化クロム(弐)

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ベーコンはいいぞ

 ああ、ああ、この街に着いてからの私は運が良い。

 

 適当に当たりを付けて入った店で旨いのが食べれたのもそうだが、なによりハグレとは言え飛竜に遭遇、討伐できて、なにより素材の権利をとどめをさした私に多めに貰えたのだ。

 

 とはいえ、飛竜という生き物はあまり素材として価値が高くない。鱗にはそこそこあって、鎧にすると鎧の中ではそれなりにはなるが、どうも飛竜鱗の鎧は動きづらいし、肌に合わないから鱗の権利をもらっても仕方ない。あまり知らない街だから加工の当てもないしね。

 

 え? じゃあなんで喜ぶのかって? そりゃあもちろん、その身、有り体に言えば肉が目当てだからだ。

 

 突然だが私は肉が好きだ。だがしかし、いわゆる”肉!”というのはあまり好かん。肉は、そう、ベーコンに限る。

 

 燻した煙の香り。

 

 硬く引き締まってながらも噛み締めればほぐれる肉質。

 

 あ、脂身さんは帰ってください。多少ならば存在を許す。

 

 まあそこはいったん置いておいて、いままで数々の町でベーコンを食べてきたが飛竜のベーコンなど、食べたこともなければ聞いたこともない。

 そもそも飛竜の住まうという辺境よりの地域に足を運ぶ機会がなかったと言えばそうなのだが、さまざまなものが集まる都に近く、そこと物流も盛んな拠点の町で保存の効くベーコンがなかったのなら、流通量が極端に少ないか、流通していないかのどちらかだろう。

 

 そこに降って湧いたハグレの飛竜、しかも素材の権利を多めにもらえた。これはもう、作るしかあるまいて。

 

 

 

 

 そう、飛竜肉のベーコンを。

 

 

 

 というわけで最初に話したおいしいベーコンを提供してくれた店の主人に肉を渡して「ベーコンに加工して欲しい」とぶん投げて、あとはしばらく待つだけ。

 

 え? 試作とかに付き合わないのかって? 無理無理。私にはそんな表現できるような舌は無い。味わう舌しかない。こういうのは専門家か、それに近しい人に”任せた”という方がお互いにとって絶対に都合がいい。専門の人は自分の思う究極を、外に煩わされることもなく追い求めることが出来るし、私は一人の人が目指した極致を思う存分味わうことに集中できる。

 最近聞いた新しい言葉の、”うぃんうぃん”ってやつじゃないかと思う。

 

 さてさて、まあ渡した主人さんも初めて扱う食材と言っていたし、それなり以上の時間がかかることは重々承知している。

 

 まあ、しばらくは他の素材の競りに茶々を入れつつ、適当な魔獣でも狩って、それを肉屋に卸して、そのお金でうまいベーコンを食べて、ゆったりと過ごすとしようか……え、何? 指名の依頼? 加工待ちとは言えあんまり遠くに行きたくないんだけど……。

 あ、馬車でも片道一日程度の場所に現れた? それならいいかな。いいよ、その依頼受けるよ。あ、受けるって言ってからあれだけど明日出発でもいい? ああよかったじゃあ明日の朝に出てささっと済ませてしまいますかー。とりあえず今日の夜は一等のベーコンを食べよう。なになに? 依頼主が用意してくれてる? 最高じゃん、その依頼主さん。それじゃあ御呼ばれしようかな。案内をよこしてくれるんだね。了解。じゃあ私は三毛猫のしっぽっていう宿に居るから、よろしくね~。

 

 

 




閲覧ありがとうございます。

短いですが主人公視点←→周り視点で行こうと考えています。
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