あの女───檀綺乃の技術は危険だ。私の計画に支障を来す前に排除しなくてはならない。それなのに、なぜだ?あの女を見ていると期待してしまう。
あの力を利用すれば、あの人に会えるんじゃないだろうか?そんなことばかり考えてしまう。
そんなモノでは到達することは出来ないと思っていても予想外の行動を起こす檀綺乃の行動には意味が有るのでは?等と考えてしまう。ダメだ、ダメだダメだ。あの女は危険なんだ。早く…あの女を消さなければ狂ってしまいそうだ……。
「了子君、大丈夫か?」
「え?あ、えぇ…大丈夫よ」
はぁ…。今は櫻井了子の身体という事を忘れていた。しかし、この風鳴弦十郎という男は櫻井了子(フィーネ態)の僅かな違和感に気付いたのか。
どれだけ
あの女の『バグルドライバー』には未発見のウィルスが詰まっていた。だが、人間に害を与えるタイプの物とは違うのか。ドライバーを多用している風鳴弦十郎には疲労や減退は見られない。
むしろ強くなっているような気がする。
…なんで私は、あの男を気に掛けているんだ!?違うだろ、私はあの人に会うために転生を繰り返しているんだぞ。そんな、まさか、これは、あの人に感じていたモノと一緒なのか?そんなことを頭の中で自問自答を繰り返していると「了子君、本当に大丈夫なのか?」と顔を近付けられた瞬間、鼓動が早くなり顔が熱くなってしまった。
違う。これは、あの男に向けるべきモノじゃないんだ。これは、あの人に向けるべきモノだ。
「了子君、やはり体調が優れないんじゃ……」
「へ、平気だから顔を近付けないで…」
「…す、すまん……」
バクバクと脈動している心臓を押さえるように胸の前で手を組んでいるとニヤニヤと笑う藤尭や友里が視界の端に映った。慌てて姿勢を正しつつ、風鳴弦十郎から離れると「帰るなら送っていくぞ?」と言われてしまい。変な反応を示しそうになってしまった。
◆◆◆◆
最近、了子君の様子が可笑しい。
藤尭や友里に聞くと「さあ、彼氏にでもフラれたんじゃないですか?」と言っていた。まさか、本当に交際相手にフラれたのか?等と考えていると了子君が出社してきた。それとなく聞いてみたが顔を赤くして離れてしまった。
やはり、交際云々ではなく病気なのだろうか。
そのことを藤尭に聞いてみると別の生き物を見るような目で見てきた。それは失礼だろ?等と思いながらも隣で笑っている友里に尋ねると「ラブですね」と言われた。
ラブ?なにが愛なのだろうか。そんなことよりも了子君が心配だ。二人に了子君を送ってくることを伝えると「がんばれ!」と言われた。よく分からんが頑張るとしよう。
「了子君、やはり送らせてくれ」
「……じゃ、じゃあ、頼める?」
「ああ、任せろ…!」
地下駐輪場に繋がる通路を並んで歩いていると、了子君からチラチラと変な視線を向けられた。顔に何か付いているだろうか?それとなく顎や頬を触ってみたが、変な物は付いていなかった。
一体、なにを見ているんだ?