ポケットモンスター虹 ~Foever bonds~   作:入江末吉

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There is always light behind the clouds.

 最悪だ。ボクは今、一桁最後の年齢にして既に人生のピークを迎えている気がしないでもなかった、悪い意味で。

 というのもポケモンハンターから逃げるためにラティアスの背に乗り、結果的にユキワラシを学校に送り届ける形になった。しかもそれを、運悪く校庭にいた教育指導の先生に見つかってしまい、今こうして教育指導室に押し込まれ三人の大人にガミガミと小言を言われているからだ。

 

「全く、お前とユキワラシはなんだって問題を次から次へと起こすんだ……」

「だから……ボクはユキワラシを連れ出してません」

「しかしだなぁ、結論から言って朝から行方不明になっていたユキワラシをお前が連れてきた。事実がこうである以上追求するしかないんだよ」

 

 心底面倒くさそうな顔で学年主任が言う。面倒くさいなら放っといてほしい。ボクは無実なのに、いちいち目くじらを立てられるのはイヤだ。

 現に教育指導の先生も学年主任もボクの話をまるっきり信じていないみたいだった。唯一穏やかそうに場を見守っているお爺ちゃんの理事長先生だけがボクの味方とも言えた。いや、味方と結論づけるのもちょっと早いかな。

 

「ともかく、こうも連続で問題を起こされたのではなんのお咎めも無しとはいかないぞ」

「とはいえ既に停学処分中ですよ。どうするというんです?」

 

 学年主任と指導部長の話を聞きながらボクは最悪の先を覚悟した。せっかく父さんと母さんが飛び級の手続きまでして、この学校の中等部に入れたのに退学になってしまう。それだけは避けたい、だけどどうしたらいいのか……

 

「──失礼します」

 

 万事休す、そう思っていたその時だった。重苦しい部屋の中にもう一人の先生が入ってきた。その人はここにいるおじさんたちとは違い、女性だった。

 彼女のことはよく知っている。ボクと違い、学問とポケモンバトル両方のエリート故に十六歳という年齢で既に院卒レベルのカリキュラムを修了し、ここリザイナとレナーズアカデミーで教育実習を行っている──

 

「ハルシャ先生……」

 

 三つ以上も飛び級して周りとの年齢差に不安を覚えていたボクに気を使って、よく話かけてくれた。ボクとしても、ハルシャ先生からポケモンの話を聞くのは好きだったし、数少ないこの学校での好きの一つだった。

 

「どうしたのかな、ハルシャくん」

「少し気になることがありまして。アズミさん、あなたユキワラシにわざマシンを使った?」

「いいえ、使ってません。ボクはまだわざマシンを購入できる年齢じゃありませんし、父と母に借りたこともないので」

 

 だってそうだ、ボクはついさっきようやく自分のポケモンを捕まえたばかり。わざマシンを買う意味も持っている意味も薄い。ハルシャ先生もそれがわかっているからだろう、笑顔で頷いてから少し困ったようにハの字の眉を作った。

 

あの子(ユキワラシ)ね、以前の育成記録に無い技を覚えていたの。もしかしてお出かけ中に覚えたのかなとも思ったんだけどね……」

「ハルシャ先生、お出かけという表現はいかがなものかな」

「すみません、でもユキワラシも随分楽しかったみたいですから……それでですね、あの子がその新しい技を覚えたのは、アズミさんと一緒にいたからじゃないかと思って」

 

 ボクと一緒にいたから、ユキワラシは本来覚えない技を覚えたということ? そもそも、なんの技を覚えたんだろうか。

 思い返してみると、ハンターのキノガッサを一撃で戦闘不能にするあの技がそれに該当している気がした。

 

 けれどその技が何かは分からなかった。ボクが頭を悩ませていると、ハルシャ先生が手を合わせて言った。

 

「そこで提案があるんですが、ユキワラシを彼女に預けてみませんか? アズミさんにはポケモンの真価を引き出す才能があるかもしれません」

 

 ハルシャ先生が学年主任と指導部長と理事長先生に訴える。理事長先生は面白そうだ、と笑顔で頷いていた。

 けれど、ボクは。

 

「先生、ボクは────」

 

 

 

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 二日後、ボクはまたしても()()に停学処分を免除され復学した。ボクと接したポケモンがどうポテンシャルを引き出すのか、観察してみたいというハルシャ先生の提案を学校側が受け入れたんだ。

 

 だけどボクは、ボクを取り立ててくれたハルシャ先生に罪悪感を抱いていた。

 というのも、結局ユキワラシを引き取ることをボクが断ったからだ。

 

 あの子にはズバットを捕まえるために力を貸してもらったり、ハンターから助けてもらったりした。

 だけどボクは既に、二匹のポケモンを連れている。ボクは現状二匹しかポケモンを連れられない規則だから、ユキワラシを預かることは出来ない。

 必要があれば規則を変えるとも言ってくれたけれど、流石にそこまではさせられない。ボクはもう既に、何度も特別に救われてここにいるんだから。

 

 午後の授業、ボクは再び校庭に立っていた。ポケモンバトルの実習授業だ、先日は三馬鹿のせいで受けられなかったから、随分と久しぶりな気がする。

 既に自前のポケモンを連れているけど、停学免除の条件がレンタルポケモンでの実習だからズバットは戦わせられない。

 

 それと、ボクの手持ちはもう一匹。ボールの中でこちらに手を振ってくるラティアス。

 一時凌ぎでボールに入れたつもりだったけれど、ラティアスはボクの元を離れることはなかった。

 

『しばらくはあの人達がウロウロしているだろうし、アズミの側は居心地がいいから』

「そっか、それならいいんだけど」

 

 ただ噂のすごいポケモンを捕まえてみんなの度肝を抜くという計画はご破算になった。

 相手が善良な競争相手(ポケモントレーナー)なら良かったけれど、もっとやばい連中がラティアスを探している。ラティアスを手に入れるために、相手のトレーナーに対して躊躇なく攻撃を仕掛けられるような相手がいる中で、ラティアスを見せびらかすのは襲ってくださいと言ってるようなものだろう。

 

 念の為、PGに通報もしておいた。あの様子だと、もしかすると保護区域のポケモンまで乱獲している可能性も考えられたから。

 

『でも残念だなぁ、わたしもバトルしたいなぁ』

 

 見た目に似合わず好戦的なことを言うんだなぁ、なんて思っていると視界の端で光が弾けた。見ればハルシャ先生がポケモンバトルをしていた。

 しかも先生も学校側で育成されているポケモンを使っていて、それなのに相手に何もさせずに圧倒していた。

 

『あの人、すごい強いねぇ』

「噂だけど、ポケモンリーグ四天王の候補者らしいよ。だけどハルシャ先生の実力なら四天王、それも四人目ぐらいじゃないともったいない」

 

 普段から一緒にいるポケモンじゃないのに、あれだけポケモンの能力を引き出しているのはトレーナー自身が優れているからだ。

 ボクもバトルの腕を見込まれて同年代より先にこの場所にいるから、ハルシャ先生はボクにとって憧れだ。

 

「アズミちゃーん、わたしらもそろそろ始めようよ〜!」

 

 その時だ、クラスメイトの子がコートの奥から声を掛けてきた。ハルシャ先生の観察に夢中になっていてすっかり忘れていた。ちなみに、当然だけど彼女もまたクラスメイトでありながらボクよりも年上だ。普段から何かと目をかけてくれる人で、今日の実習も一緒にやろうと彼女が提案してくれた。

 

「ネイティオ、行ってらっしゃい!」

 

 彼女が繰り出してきたのはネイティオ、ひこう・エスパータイプを持つ鳥ポケモン。対してボクが今日実習用に預けられたポケモンは"ベトベトン"だった。

 一見、この勝負ボクがとことんまで不利に見える。相手はエスパータイプで、ボクたちはどくタイプだ。さらに相手はひこうタイプ故に素早く、ベトベトンは鈍足だ。まず上から念力で叩かれて終わり、というのが一般的に思い浮かべるビジョンだろう。

 

 しかし、ボクが連れているベトベトンは普通のベトベトンじゃない。教導用にわざわざ"アローラ地方"から取り寄せたベトベトンで、所謂リージョンフォームという個体だった。環境の違いで生態とタイプが変化したベトベトンはエスパータイプに対して強く出られる。

 

「見た目が柔らかそうだからね、【サイコショック】いってみよう!」

「確かに、原種のベトベトンに対してこれ以上無い有効打。だけど……」

 

 ネイティオが放つ物理干渉出来る念力の塊がベトベトンを押しつぶすが、彼は微動だにしないままスルリと間をすり抜けてネイティオへと迫る。

 RFベトベトンは環境変化に伴い、あくタイプを複合するポケモンになった。つまり今まで煮え湯を飲まされてきたエスパータイプを無効化するどころか、逆に有利を取れるようになった。

 

「こっちの番だよ、【しっぺがえし】!」

 

 棒立ちのネイティオ目掛けて突進したベトベトンがその重たそうな腕を持ち上げ、一気に振るい落とす。上からのしかかられるように叩かれたネイティオが倒れ込み、そのまま真顔のまま戦闘不能に陥った。【しっぺがえし】は後攻で撃つことで威力を倍増させる技、元よりベトベトンという種がエスパータイプに対抗するためにカウンター技として使っていたけれど、RFベトベトンはあくタイプを持つようになったため主力技として運用できる。

 

 ベトベトンの鈍足と高い耐久力を活かし、確実に【しっぺがえし】で仕留める戦法。尤も、相手の勉強不足のおかげでベトベトンはダメージを受けずに済んだけれど。

 

「一撃でやられちゃった、アズミちゃん小さいのにすごいねぇ」

 

 小さいのには一言余計だ。今に見てろ、ボクだってすぐに大きくなるからな。

 するとベトベトンが彼なりに急いでいるのか、それでものそのそとボクの方へ駆け寄ってきた。そしてその大きな腕を持ち上げた。

 

「アズミちゃん危ないよ!」

「平気だよ。ね、ベトベトン」

 

 RFベトベトンの身体にキバやツメのように生えているのは彼が身体に溜め込んだ毒素が結晶化したもの。確かに触れば危ないけれど、彼らはそれを自在に身体の奥底にしまっておける。ベトベトンとハイタッチを交わすけど、ボクの身体はまったく汚れない。

 ベトベトンやベトベターは案外人懐こいポケモンで、人間と接するときは悪臭を出さないようにすることだって出来る。

 

 だけどそれでも忌避する人が多い、所謂見た目で判断されてしまっているポケモン筆頭だ。こんなに可愛いのに。

 

「どう、ベトベトンになにか変化はあった?」

 

 その時だ、教導を終えたハルシャ先生がやってきた。正直、ピンとはこない。本当にボクにポケモンの隠れた能力を引き出す才能があるのか、怪しいところだ。

 だけどユキワラシがキノガッサをやっつける場面を実際にこの目で見た。だからこそ、ハルシャ先生もボクに目を掛けてくれるわけだし……

 

「そっかぁ、となるとあのユキワラシちゃんが特別だったのかしら……?」

 

 先生は人差し指を立てて首を傾げ仮説を立て続ける。そういえば、今日の実習にあのユキワラシも参加しているんだろうか。

 そう思って周囲を見渡してみた。すると小さな雪笠は案外簡単に見つかった。

 

「あっ、三馬鹿……」

 

 ユキワラシのパートナーは先日ボクがバトルした三馬鹿の一人、メタングを連れているはずのホスだった。

 対して、相手が使っているポケモンは"ガントル"、タイプ相性で言えば不利だけれどユキワラシがその相性不利を覆せるポテンシャルを秘めていることは、彼も身を以て知っている。

 

「【がんせきふうじ】だ!」

 

 だけど相手も上手い。ユキワラシは特性"ムラっけ"を発動させるために【みがわり】で試行回数を稼ぐ必要がある。だけど【がんせきふうじ】で機動力を削がれてしまうと、【みがわり】を先んじて使うことが出来ない。いわタイプ相手に先手を取られると、能力の上下具合によってはユキワラシは耐えきれない。

 

「【こおりのいぶき】!」

 

 しかしホスも負けじと、ガントルの高い防御力を無視する特殊攻撃で確実にダメージを与えに行っている。

 先に張っておいたのだろう分身(みがわり)は健在、これならガントルの攻撃を一回だけなら防ぐことが出来るはず────

 

「【ロックブラスト】! 逃さないよ!」

 

 ッ、その手があったか。【みがわり】を起点とするユキワラシに絶対的効果のある連続技だ。ユキワラシの回避率によっては避けることも出来るか。

 いや、多分もうユキワラシは()()()()()と、ボクは悟ってしまった。

 

 それはガントルの目に円と十字の照準のようなオーラが浮かび上がっていたからだ。技の当たるうちに【がんせきふうじ】で機動力を削ぎ、秘密裏に【ロックオン】で次の攻撃の確実性を高めた上での連続砲弾(ロックブラスト)でフィニッシュ。

 よく組み立てられた戦術だと思うし、仮にボクがユキワラシと戦っていてもこの戦術を抜け出せるか怪しいと思う。

 

 放たれた岩石の砲弾が分身を排除、次弾がユキワラシに直撃してしまう。吹き飛ばされたユキワラシは目を回して戦闘不能になっていた。

 

「よし、勝った!」

 

 ガントルを連れていたクラスメイトがガッツポーズをする。ホスは黙ってモンスターボールにユキワラシを戻して、視線を向けていた。

 それを見ていた三馬鹿のうち二人がヘラヘラ笑いながら歩み寄っていった。

 

「ドンマイ、ホス。気にすることねえよ!」

「そうそう、いつものメタングなら負けなかっただろうよ!」

 

 確かに、メタングならガントルに対して有利を取れる。彼が普段どおり自分のポケモンを使っていたなら、手堅く勝つことは出来ただろう。

 だけどその物言いに、ボクはユキワラシをバカにされたような気がして少し腹が立った。

 

「やっぱ弱っちいな、こいつ」

 

 三馬鹿の一人がユキワラシのモンスターボールを叩きながら言った。

 どうして、ボクの口は思わずその音を零していた。だけどそれは彼らに届かない。

 

「俺が自分のポケモンを捕まえることになってもこれは選ばねえなぁ〜」

 

 嘲笑いながら、もう一人が言った。

 なんで、そんなことを、悪びれもせずに、言えるんだ。

 

「やっぱ強いポケモンが一番だわ、ホスお前もそう思うだろ?」

 

 

 

 

 

「────いい加減にしろッ!!」

 

 

 

 

 

 気がつけば、ボクは怒声を張り上げていた。三馬鹿が、ハルシャ先生が、周りのクラスメイトが驚いたようにボクを見る。

 だけどボクはそんなことも構わずに、三馬鹿に向かって叫んだ。

 

「どうして弱いポケモンがいちゃいけないんだ!! なんで負けたのが全部ポケモンのせいにされなくちゃいけないんだ!! 

 一緒に戦ってるのに、なんでポケモンだけが馬鹿にされるんだ!! おかしいよ、そんなの……」

 

 ボクは、きっと悔しかった。

 知らないくせに、そのユキワラシがすごく強いことを。すごく優しいことを。

 

 それなのに、好き勝手言うことが、許せなかった。

 

「だけどよぉ、聞いたぜ? このポケモン、お前が引き取るって話が出たのに断ったんだろ?」

「それって、お前がこいつを弱いと思ってるからじゃねーの? 違うなら言い返してみろよ」

 

 その言葉に、ボクは口を噤んでしまった。違う、ボクはユキワラシが弱いから拒んだんじゃない。

 だけどそれを誰が信じる。誰も信じないだろう、彼らのように。

 

「結局お前もポケモンを強さ基準で測ってるってことだろ。それは選ぶ側の傲慢じゃねーのかよ」

 

 我慢できなかった。これ以上無いくらい腹が立った。だけど、言い返せない自分が一番腹立たしかった。

 ボクは目尻から涙が溢れるのを抑えきれず、その場にいるのも辛くなって逃げ出した。学校の外へ、リザイナシティの外へ。

 

 泣きながら、制服のまま走った。道行く人が心配して声を掛けてくれたけど、ボクは構うことなく走り去った。

 息も絶え絶え、涙で顔中ぐしゃぐしゃにしながら走っているうち、足はハルザイナの森へ向かっていた。

 

 気がつくと、ボクがいたのはハルザイナの森の湖畔だった。先日のハンターに襲われる可能性も忘れて、今はただ静かに過ごせる場所にいたかったんだ。

 見れば先日逃げる時に置いていったボクのバックパックがそのまま放置されていた、帰る時に持って帰ろう。

 

 だけど、帰りたくなかった。今は家よりも、ここでただ心を鎮めてしまいたかった。

 

『アズミ、大丈夫?』

「……うん」

『──には、見えないんだけどなぁ』

 

 そう言うと、ラティアスは勝手にボールから飛び出してどこかへ飛んでいってしまった。一人になりたいというボクに気を使ったのか、呆れたのか。

 後者なら、彼女は戻ってこないだろう。ハンターなんて連中に追い回されて、ヒトに絶望する手前まで来ていたんだから今度こそ愛想を尽かすかもしれない。

 

 モンスターボールの中からボクを見上げるズバットと目が合った。ズバットには目が無いから、正確に目が合ったとは言えないけれど。

 キミはボクがトレーナーで満足出来るかい、そんな言葉が飛び出す。三馬鹿の一人が言った言葉が、ナイフのように心に突き刺さっていた。

 

 あの時、ユキワラシの放った【ふぶき】をやり過ごす強かさや、動きの素早さを見て、このズバットを捕まえようと思った。

 それは確かに、このズバットが()()()()()()()()()()()()()から捕まえたということになる。

 

 ラティアスにしたってそうだ。結局ボクは知らず知らずのうちに強いポケモンに拘っていたんじゃないか、そう思えてならなかった。

 自分でさえ気づけなかった自分を他人に、それも小馬鹿にしていた人に言い当てられて、悔しいと同時にショックだった。

 

 どの口が「ポケモンを強さで決めるな」なんてえらそうに言うのだろう。

 

「ボクは、きっとユキワラシを憐れんでいたんだ。可哀想だって、勝手に思い込んでたんだ」

 

 持論だけど誰かのことを勝手に可哀想と憐れむのは、見下していることになると思う。

 

「正解だ、あの子を引き取らなくて。ボクなんかがトレーナーじゃ、それこそ可哀想だ……」

 

 膝に顔を埋めて、鼻を啜ったその時。

 

 

 

「────本当にそうかな」

 

 

 

 顔を上げた。見上げると、そこにいたのはまだ学校で授業をしているはずの、ハルシャ先生だった。

 傍らにいるポケモンは、フルーツポケモンの"トロピウス"。紛れもなく、ハルシャ先生が得意とするくさタイプのポケモンだった。

 

「そんなことないと、私は思うな」

 

 そう言いながらトロピウスの背から降りたハルシャ先生の腕の中には、あのユキワラシがいた。そしてトロピウスの後ろからは、ラティアスが手を振っていた。

 

「あの子がアズミさんの場所を教えてくれたのよ。今、この森は治安も良くないから心配してたんでしょうね」

「……すみません」

「ううん、謝ることないよ。あんなこと言われたら、誰だってショックだろうし。ちゃんと怒っておいたからね」

 

 ハルシャ先生の手がボクの頭に振れる。今のボクには、先生の優しさが辛かった。

 

「だけどね、アズミさんが走っていった後、彼……ホスくんがね、言ったのよ。「今回の負けは俺が悪い、ユキワラシは頑張った」って。それはきっと、アズミさんが彼の心を動かしたんだと思うな」

 

 意外だった。負ける寸前に、メタングに自爆を命じるようなヤツだと思っていたのに、そんなことを言うなんて思ってなかった。

 先日の戦い以降、恐らく考えを改めていた彼に対してもボクは冷たい態度を取り続けていたんだ。

 

 なんだか申し訳無い気持ちになって、目頭が熱くなった。

 

「本当のこと、話しておかないとね」

 

 ボクの隣に腰を下ろしながらハルシャ先生が言った。ボクとハルシャ先生の間に、ユキワラシが入ってくる。

 それはユキワラシがボクと接することで、なんの技を覚えたかの話だった。確かに先生は、ボクにそれを頑なに言おうとしなかった。聞いてもはぐらかされてしまったからだ。

 

「先に言っちゃうと先入観を持たせちゃうかなって思ったから、暫くは言わないつもりだったの」

「先生、ユキワラシは何を覚えていたんですか」

 

 ボクが名前を呼んだからか、ユキワラシはちょんと飛び跳ねてボクの膝の上に収まった。

 その光景を見て、ハルシャ先生は笑顔で頷いてから、やがて口を開いた。

 

「その子が覚えた技はね、【おんがえし】だったの」

 

 おんがえし、ポケモンがトレーナーに報いるために使う技で、懐いているほどダメージは増すという技だったはず。

 

「一部のポケモンを除いて、この技はわざマシンで殆どのポケモンが覚えることが出来るの」

「だからボクに、わざマシンを使ったか聞いたんですね」

 

 だけど前にも言った通り、ボクはユキワラシに手を加えていない。だからユキワラシはその技を覚えようがない。

 

「トレーナーが人為的な技習得を補助するわざマシンを与えることで、ポケモンは野生のポケモンと違って"人に報いるための技"を使えるようになるの、なんだかエゴを感じてしまうわね」

 

 ハルシャ先生は苦笑いを浮かべながら言った。そういう考え方もあるだろう。

 言われてみれば、おんがえしを覚えさせるということはそれを強要させているようにも思える。

 

「だけどね、このユキワラシは誰の補助も受けずに()()()()()()()()()()()()()のよ。普通なら、そんなことはありえない」

 

 膝の上にユキワラシがキョトンとした顔でボクを見上げる。だけど、ボクもきっと同じ顔をしていただろう。

 一部のポケモンは【おんがえし】を自力習得出来る、例えばミミロップがそうだ。

 

 だけどユキワラシはわざマシンを用いない限り覚えるはずがない。

 

「今日、あなたと組んだベトベトンに変化が無かったのは、ユキワラシとはある違いがあったからだと私は思ってるの」

「ある違い……?」

「それは、これまでのポケモンバトルの教習での勝敗よ。ベトベトンは、今日のように勝つこと自体は何度かあったの。むしろ彼は学校のポケモンの中でもかなり勝率の高い方ね」

 

 そういえば、何度か授業であのベトベトンを見かけたことがある。確かに、原種との違いに戸惑った相手を翻弄する形で勝利を修めていた気がする。

 ちょうど、今日のボクがそうだったように。ハルシャ先生は「だけど」と言葉を続けた。

 

「ユキワラシは違った。この間のアズミさんと一緒に戦った時以外は全敗、一回も勝ったことが無かった」

 

 メタングとの戦いを思い出す。あの時、ボールから出てきたユキワラシが震えていたのは、寒かったからでも癖だからでもない。

 たぶん怖かったんだ。メタングというよりは、また負けてしまうことが。

 

「ところが、あなたはユキワラシを勝利に導いた。それがこの子にとってはすごい嬉しかったのね、アズミさんにとっては一つの勝利でも」

 

 ──ユキワラシにとっては、最初の勝利だった。

 

 ボクの中で一つの感情が湧き上がった。それは、後悔だ。

 なんで、どうして気づかなかったんだろう。ユキワラシが停学中のボクを追いかけてハルザイナの森に来たのは、食べ残しのおやつをもらうためなんかじゃない。

 

 何より、この子がキノガッサをやっつけた技が【おんがえし】だとわかった以上、事実は一つしかない。

 

 

 

 

「この子はね、あなたに「ありがとう」を伝えたくて【おんがえし】を覚えたのよ」

 

 

 

 

 ハルシャ先生がその事実を口にした。風が心を吹き抜けるような感覚。

 そしてさっき以上に、猛烈に目頭が熱くなった。堪えきれなくなった涙が、まるで真珠の玉のようにボロボロと零れ落ちる。

 

「キミは、ボクでいいのかい……? 本当にいいの……?」

 

 ユキワラシに向き合った。彼女はボクの胸の中に飛び込んでいつものようにかさかさと震えて見せた。

 それは親愛のモーション、意味するのはたった一つ。

 

『「あなたがいいんだ」って。わたしも、今はズバットも同じ気持ちだよ』

 

 小さな雪笠が愛おしくて、強く抱きしめた。零れ落ちる涙はもう、悲しいからとか悔しいから流れるんじゃない。

 嬉しいから、涙が溢れることがあるとボクは初めて知った。心地の良い嗚咽がただただ漏れる。

 

「ありがとう……っ、ボクも、キミがいい。キミたちと一緒がいい……っ!」

 

 泣きじゃくるボクを、ハルシャ先生は優しく見守ってくれていた。

 顔を上げる、もう目に涙は浮かんでいない。残滓を袖で拭って、空を仰いだ。

 

 空と湖に、虹の橋が架かっていた。その虹は今までに見たどの虹よりも綺麗だった。

 だけどこれからの人生、これほど素晴らしい虹は今後見ることは無いと思った。

 

 その虹が、ボクたちの始まりを祝福してくれていると、わかったから。

 

 

 

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

「────イーブイというポケモンは多様な進化の可能性を秘めており、その進化条件は多岐に渡ります」

 

 ホワイトボードの前でマイクを前に喋る。最初こそ声が裏返りそうなほど緊張したけれど、話しているうちにだんだんと慣れてきた。

 今、ボクはしんかポケモン"イーブイ"についての講義を行っている最中だった。

 

 実のところ、この分野はボクの専門ではない。だけど今所属している『超常現象研究機関CeReS』の七つ下の同輩から少し知恵を借りたいと頼まれた故、ボクなりに纏め上げてこうして大学の一室で講義を行っている、ということだ。

 

「前述のブースター、シャワーズ、サンダースにおいては、他にも石のエネルギーによって進化するケースがあるため割愛します。今回の本題としては、"ブラッキー"と"エーフィ"に焦点を充てていきたいと思います」

 

 テーブルについている学生たちが一斉にタブレットの画面をスクロールする。さすがはリザイナシティの大学、高スペックのタブレットが全学生に支給とは相変わらず気前が良い。おかげでこっちも講義がしやすくて、助かる。レジュメなんてもう古い古い。

 

「ブラッキーとエーフィの進化条件はかなり漠然としていますが、今までの調査からイーブイと共に過ごした時間と、時間帯が条件と言われています。それぞれが朝と夜でしか進化タイミングが確認されていない。これは日光と月光がイーブイの体内外の遺伝子を活性化させ、それによって進化先を変えるためとボク──私は考えています。事実、イーブイの進化先にいるリーフィアとグレイシアも──」

 

 またやってしまった、講義中は出来る限り一人称を矯正したいところだ。

 そうして、イーブイの進化について一頻り語った後質問を促したところ、一番前の席についているメガネの少年が目に入る。

 

 彼こそ、今回この講義を頼んできた張本人。十五歳ながらこの街(リザイナシティ)のジムリーダーを任されている天才、またの名を『超常的頭脳(パーフェクトプラン)』のカイドウ。

 

「ブラッキーとエーフィがそれぞれ異なる時間帯の光を受けて進化することはわかった。実際、異邦の地"オーレ地方"の知り合いに、"たいようのいし"以上に日光線が強い"たいようのかけら"を用いて夜間でもイーブイをエーフィに進化させたケースが有ると聞いたことがある。だが、トレーナーと過ごした時間が関係しているという条件の根拠を、どう証明する?」

 

「ふむ……ここにはポケモン図鑑に記載されたブラッキーとエーフィのページデータがある。これによるとブラッキーは汗腺から毒を発し、エーフィは予知能力でトレーナーの身を守るとある。ブラッキーの場合はトレーナーの体調に関わる非常に重要な要素と言える。共に過ごした時間で、トレーナーがこの要素を持つ形へ進化しても大丈夫か、進化する前に試しているとしたらどうかな」

 

「なるほど、セーフティというわけだな。エーフィの場合はさしずめ、守るに値するかどうか値踏みしていると言ったところか」

 

「表現は少し過激だけれど、そう考えるのが妥当だろうね。その段階を経ているからこそ、エーフィがトレーナーに対し非常に忠実である、というポケモン図鑑の記述も納得できる」

 

「見えたな。これは論文にしておくことを勧める。尤も頭の硬いお上連中が馬鹿正直に発表を許可するかは疑問だが」

 

「テープ起こしは苦手なんだけど、キミが言うのなら考えておくよ。まだ質問はあるかい」

 

「そうだな……では今度はこちらの専門分野についてそちらの見解を聞きたい。今しがた、トレーナーと過ごす時間で進化する種について議論を重ねた。便宜上、これを"なつき進化"と呼称する。そこで、これらのなつき進化を経たポケモンは"キセキシンカ"が可能であるか、証明したい」

 

「キセキシンカ、確かカイドウくんが解明したReオーラが関係しているという話だったね。どうしてそれがなつき進化によって引き起こると考えたのかな」

 

「この地で確認されたキセキシンカ、そのケース1とケース2が共に"ルカリオ"だったからだ。ルカリオは波動によってヒトの感情を読み取り知りたくないことならばストレスになるとデータが有る。進化前のリオルが心を読み取っても大丈夫なトレーナーか進化前に試しているとすれば、これもなつき進化に該当すると言える」

 

「見えたよ、キセキシンカもまたメガシンカと同じようにトレーナーとポケモンの精神同調や絆を必要とするなら、なつき進化に該当するポケモンはその他のポケモンに比べ、キセキシンカを発動させやすいかどうか、ボク好みのテーマだ」

 

 そうして、ボクがカイドウくんと議論を交わしていると隣から「あの」と声が掛けられた。そちらに目を向けると冴えない眼鏡の男性が立っていた。

 

「おっと、なにか質問かい」

「いえそうではなくてですね、だいぶ講義から脱線してると言うか二人の世界に入られてしまうと困るというか」

 

 そうだった。そう言えば今はイーブイの進化についての講義を行っている途中だった。

 

「すみません、脱線しました。今話した種の他にも、イーブイはニンフィアというポケモンに進化することが確認されています。ですがこちらへの進化方法はエーフィとブラッキー以上に不明瞭です。二人のトレーナーと二匹のイーブイに同じ時間過ごしてもらい、同じ時間にレベルアップを行った際、片方はニンフィアへ進化出来たものの、もう一匹はエーフィに進化したという報告が上がっています」

 

「条件を揃えた、だが進化先が分岐したとするならさらに別の条件があるということか」

 

「そう、ボクが目をつけたのはイーブイが覚えていた技だ。それと、トレーナーとの過ごし方もまた考慮する条件だと思う。エーフィに進化した方は毛繕いやポケモンバトルを積極的に行っていたが、ニンフィアに進化した方はバトルよりは一緒に遊ぶ時間を多く取っていたことがわかったんだ」

 

「つまりは、ニンフィアはなつき進化には該当しない。該当はしないが、触れ合いが鍵ということか?」

 

「さっきのエーフィがトレーナーに忠実である、という点をニンフィアに置き換えるとニンフィアはトレーナーに対し非常に距離が近い。表現を噛み砕くと非常に甘えん坊な子が多い。これはやはりイーブイの時にトレーナーが彼らとどう接したかが関係していることの証左となるんじゃないかな」

 

「ああ、恐らくこれはイコールで繋がる。とするなら、ニンフィアもまたトレーナーとの絆が平均以上であることを考えれば、キセキシンカしやすい個体であるか、また議論の余地があるな」

 

「そうだね、少し話を戻すと、ケース1とケース2のルカリオの性格や育ち方も視野に────」

 

 

 

『いい加減にしろー!!!!』

 

 

 

 

 

『先日の講義、脱線こそしたがかなり参考になった』

「脱線したのは七割キミのせいの気もするけど」

『覚えてないな』

 

 後日、ボクは"セシアタウン"にある()()()()()にある寮の自室でヘッドセット越しにカイドウくんとの議論の続きを行っていた。

 やはり慣れないテーマの講義は肩が凝る。ボクの専門は『ポケモンのなつき度がバトルや普段の生活にどう影響を及ぼすかの研究』だからだ。

 

 そういう意味では、なつき進化の可能性を秘めたイーブイもまた専門の部類に入るとは思うけれど。話が逸れた、閑話休題。

 

『ところで、そちらはどうだ』

「うん、ようやく役職にも慣れてきたよ。だけどやっぱりルールがちょっと特殊すぎるな」

 

 ボクがいるのは、ラフエル地方が誇るポケモンバトルの殿堂"バトルキングダム"。

 五つからなる施設において、挑戦者を待ち受ける七つの頂点。またの名を"王国七星(キングダムレギオン)

 

 その中の一つ、"バトルフォートレス"レギオンの席をボクは今預かっている。

 

「『参加者のポケモンをランダムにトレード、他人の育てたポケモンでトーナメントを勝ち進め』なんて酔狂なルールだよね」

 

 だけど五つある施設の中で、ボクに最も相応しい施設であるとも言える。

 他人の育てたポケモンだろうと関係ない。どんな子であろうと、ボクが必ず強みを見つけ出し勝利に導く。

 

「さて、そろそろ切るよ。十連勝してきたトレーナーと、シンボルを掛けてバトルしなければならないからね」

『……ああ、待て。お前のルームメイトから言伝を預かっている。ただそれを記したメモが見つからん……あった。毎朝ちゃんと食事は取っているか、部屋は片付いているか。夜きちんと眠れているか。部屋は片付いているか。初対面の人に冷たい態度を取っていないか。部屋は片付いているか……待て、二回に一度は部屋の心配がされているぞ。どういう部屋をしているんだ』

「女性の部屋の内装を尋ねるのは感心しないな」

 

 彼女も大げさだ。ボクの部屋が片付いているか、全くもって愚問だ。

 ため息を吐いてから、周囲を見渡す。

 

 テーブルの上、空の缶コーヒーの山。

 

 ベッドの上、着ようと思って結局着なかった肌着の数々。

 

 床、研究資料の山。

 

 

 …………結論、きちんと片付いているな。よし、これなら怒られないだろう。

 

「次はCeReSのカフェでゆっくり話をしよう」

『ゆっくり出来るか、お互いの保証出来ないのが痛いところだがな』

 

 ぶつり、それだけ言い残してカイドウくんは電話を切る。ボクもそろそろ支度をしないといけない。

 研究者として白衣は外せない。そしてポケモンが十全に戦えるように、アームカバーとニーソックスを身につける。

 

 準備オーケー、後は窓枠の上に転がったモンスターボールに手を伸ばす。

 

「────おはよう、みんな」

 

 

 

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 この要塞は、知恵無き者を阻む砦だ。

 

 ボクは要塞君主(ロード)として挑戦者の前に立ちはだかる。

 

『バトルキングダム建国以来、未だ無敗! 難攻不落の要塞を体現する支配人! 

 砦の君主(フォートレスロード)、アズミの入場です!』

 

 今日の挑戦者は賢者か愚者か。

 後者ならば、ボクに辿り着けたのは運だと言える。別の施設で活かすべき、運だ。

 

『続きまして挑戦者の入場です!! 異邦よりはるばるやってきた風来坊! 

 そしてヒヒノキ博士よりポケモン図鑑を託された、選ばれし者!』

 

 万雷の拍手の中、キミたちはやってくる。

 不敵な笑みは何を意味するか、ボクはアナライズする。

 

『それでは入場していただきましょう! タイヨウ選手────ッ!!!』

 

 ボクと彼がコートの中で対峙する。トーナメント戦である以上、ボクもまたポケモンをシャッフルして戦ってきた。

 そして勝者は、バトルの後に相手の手持ちから一匹選んで既存の手持ちと入れ替える事が出来る。

 

 つまり、最後の戦いに挑むのは自分が信じた他人のポケモンか、それとも────

 

「その顔、キミの手の中に切り札がいるんだね」

「やっぱわかります?」

 

 最初から信じる、自分の相棒(パートナー)か。

 

 尤も、それはこちらも同じこと。やはりキミたちがいなければボクの戦いは、本当の意味で始まらないんだ。

 

「――さぁ、知恵比べと行こう!」

 

「知恵比べか、頭使うのは苦手なんでね。俺はただ信じるだけさ、今までそうしてきたように!」

 

 お互いがモンスターボールを放り投げる。その瞬間、場は一瞬だけ静謐が支配する。

 誰もが固唾を飲んで見守る。

 

 

「────"オニゴーリ"!!」

 

「────"ジュカイン"!!」

 

 

 

 

 あの日、キミがボクを選んでくれた。

 

 だからボクもまたキミを選ぼう、あの日のように。

 

 

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