キナコ・ヘルマト
18歳 O型
深い青い髪を腰まで伸ばし、肩の辺りで紐を使い纏めている。青緑色の瞳。
紺色のスーツ姿で、黒色のジャケットを羽織っており、一本の小太刀を腰に差している。
中世的な顔立ちをしているが性別は女。本人は男に見られたら女だといい、女に見られたら男だと言い張る天の邪鬼な性格をしている。
AカップよりのBカップな為、下着の類は身に着けずサラシを巻いている。
小さくなっていくタクシーを見送りながら、運転手の言葉を思い出す。
『ザバン市を目指しな。そこに数百人規模で人が集う美味しい定食屋がある、今度会ったらそこで飯でも食わせてやっからよ』
ザバン市か。
確かここから直通のバスが出ていた筈だがバス停の方に視線を向けてみれば、人。人。人。
バスが来たとしても全員が乗れそうではない。それに、
「なあ、聞いたか?ザバン市行のバスはどれも、ザバン市まで着いてないらしいぞ」
「まじか!なら、どうすればいいんだよ」
…バス停の行列に並ぶ青年らの話を盗み聞きした限りでは、バスでの移動は難しいらしい。
腹ごしらえを兼ねてどこかパソコン喫茶に入る。席に座る前に、サンドイッチを注文。
運ばれてきたサンドイッチを食べながらパソコンに電源をいれた。
(まずはザバン市の位置から…ん。この距離なら2,3日走り続ければ間に合いそうだな。今日が4日、急ぐか。)
店主にお代を払い、店を出る。
定食屋のことを調べ忘れてきたが問題ないだろう。
バスが信用できないことが分かったので走ることが最適解だろう、時間もないし少しでも早めについて会場を探すほかないな。
食料品を買い足し、地図を見る限り森を抜けることが早いと判断し森に入ると、駆け出して徐々にスピードを上げていく。こまめに休むことをせず、木々を避け、岩を飛び越え谷を越えて最短ルートで走り続けた。
日が昇り、日が沈み。再び昇る。太陽がちょうど真上に来た辺りで、ザバン市にたどり着いた。
門をくぐり、ザバン市に足を踏み入れたとき、
「よお、キナコまってたぜ」
不意に声を掛けられた。
最近聞いた声であったが以前のような訛りはないが、癖がある話口調だ。
「運転手…さん。どういった御用で?」
「なあに、飯を奢る約束をしてたろ?
オラも暇じゃねぇ…が少し匂うぞ、オンナに言うことじゃないが汗臭いな。ちょっと風呂でも入って着替えて来いよ。
まだ今日は6日。試験にはまだ余裕があるからな、宿でも取ってゆっくりしてくるがいいべ。そうだな、メシを奢るのは昼前でいいだろう
明日の11時にここで集まろうぜ」
運転手は言うだけ言って満足したのか、私の答えを聞かずに人ごみの中に消えていった。
(確かに、彼の言うように汗臭いかもしれないな。少し早いが、休みなしだったんだここは宿をとって…金も尽きそうだから食事は明日運転手の奢りで食べればいいだろう。
そうと決まれば、まずは宿探しだな)
ヘタクソな鼻歌を歌いながら、キナコもまた人ごみに消えていった。
翌朝10時30分
キナコは昨日運転手に言われていた門の前に来ていた。
街は既に活気づき、至る所に人がわんさか集まり作業しており、その中から運転手が現れる。あった時と変わらぬ制服姿での登場。
「よう、オラも早く来たつもりだったが随分と速かったじゃねぇか。
よっぽど愉しみにしてくれてたってことか?」
笑いながら軽口を叩く男を尻目に、こちらも軽口で返す
「昨日から何も食べてお腹がすいてるんですよ。
それに、食後に試験会場を探さなければダメですしね」
「なあに、そんな心配する必要ねぇべ。飯も会場探しもオラに任せな、大船に乗ったつもりでついてくるがいいべ」
(泥船じゃないことを祈っておきますよ)
心の中で愚痴をこぼし、運転手の後について歩、一軒の店舗に案内された。運転手は何も言うことをせず、扉に手を視線だけをキナコに寄越す。
キナコの目にはこの街には似つかない廃れた定食屋にしか見えなかったが、運転手の視線に急かされる様に運転手に続く。
「ここは本当に有名な定食屋なのか?私にはどうもそうは見えないのだけれども…」
「あぁ、もちろんここだ。それにおめぇさんが探している場所でもある。」
「と、いうことは」
運転手はキナコの返しを聞き終えるより先に扉を開け、中に入った。
言いかけた口をそのままに、キナコも中に入る。中も普通に定食屋で、何の変哲もない。昼前だというのに店内には既に数名の客もいた。
「いらっしゃい! ご注文はお決まりで?」
中に入れば若い店員が水を片手に注文を問う
「ステーキ定食1つ」
「……焼き方は?」
間髪入れずに答える運転手に対し、厨房で料理をしていた店の主人らしき人物が少し間を置き訊ねる。
「弱火でじっくり」
「あいよ! レイモンド奥に案内しな」
「へい、こっちに…」
レイモンドと呼ばれた若い店員が案内し、奥の小部屋へと進む。
どうやら、先ほどのは合言葉だったようで、運転手はニヤリと笑いながら振り向く。
「奥の部屋で座って食ってりゃ会場に着くだろうさ。
これでおめぇさんの探し物も見つかったようだな、もし落ちてそれで生き残ってたなら、オラを探すんだな。
まあ、審査員やナビゲーターをやってるとは限らねぇけどな」
「口調がブレブレで統一感がない運転手で探せば見つかるかな?」
「それじゃあ、難しいんじゃないか?」
運転手はキナコの脇を抜け片手を上げながら去っていった。
(さーて、後は鬼が出るか蛇が出るか、かな)
運転手を見送り、奥の小部屋に入る。
レイモンドの姿は既になく、鉄板が設置されたテーブルが置かれおり、肉が焼かれていた。
席に着くと扉が閉まり、下に降りていく感覚がした。
「よっぽど金を持っているんだな、…悪趣味な。」
大分手の込んだ仕掛けに愚痴を零しながら、肉を食べ始めた。
昨日から食事を摂っていなかったキナコからすれば、少し物足りない感じがしたが食べ終えたキナコはちびちびとお冷を飲みながら到着を待った。
3杯ほど飲んだところでポーン!と地下100階に到着したことを示す案内音が鳴った。
扉が開き、足を進める。
地下空間はかなり広く、それを埋め尽くさんばかりの人で溢れかえっていた。
(おぉ、これはこれはかなりの数がいるんもんだ。運転手の言ってた通りなら個々の人間のほとんどがステーキ定食を食べてきたってことか?)
一斉に近くにいた者たちがキナコに見定めるような視線を向けるが、それを全て無視しキナコも周りを見渡す。
自分の身長以上の槍を担いだ者。
連れてきたサルと戯れる者。
持参したであろう食料を食べる者。
(彼は食べてきたのに、まだ食べているのか?)
見当違いな考えをしていたキナコに対し、小柄な男番号の書かれたプレートを差し出される。
「ようこそ、ハンター試験へ。
これがあなたの番号になります。試験期間中はなくさないように」
「ありがとう」
番号は『377』と書かれていることから、つまりは377人目ってことだ。
「運転手が言ってた割には多いか少ないか、中途半端な数だな」
「よぉ、新顔だね」
プレートを胸元につけていると。茶髪で鼻の大きさがチャームポイントであろう小柄の中年男が声を掛けてきた。
「俺はトンパ。よろしく」
「こちらこそ」
「俺、ハンター試験のベテランなんだ。よかったら、いろいろ教えてやるよ」
「それは助かります、トンパさんが言われたように初めてでして、右も左もわからず困ってたんです。
早速なんですが一つ聞きたいんですけどよろしいですが?」
「もちろんだ、何でも聞いてくれよ。
これ、お近づきのしるしだ、飲みなよ。」
トンパは人受けのよさそうな笑みを浮かべ、缶ジュースを差し出してきた。
キナコは笑顔で受けとると、トンパも満足したように懐から缶ジュースを取り出して飲み始める。
それを確認して、キナコは切り出した。
「こういう試験では、新人潰しという輩がいると聞きましたが心当たりありませんか?
ベテラン と自称されるトンパさんなら何か知りませんか?」
ここまで言うと、トンパは口に含んでいたジュースを吹き出しせき込みだしたが気にせず続けた。
「新顔の私に声を掛けてくださる行為は、とても嬉しいのですが周囲の反応を見ている限りではどうも裏がありそうなんですよね」
もう一度、ここで話を切りトンパに視線を戻し顔色を確認する。
せきが止まり、どこか顔色が悪くなっているようにも見える。
「どうでしょう、正直に言って貰えるならば私は結構なんですが。
それでもまだ、三文芝居を続けられるのであれば私の小太刀を振るわなければならなくなりますが…?」
トンパは一瞬目を見開いて、汗を流しながらも笑みを浮かべる。
「な、なにを言ってるんだよ。俺でも聞いたことが無いぞ、新人潰しの話なんてさ!
それに缶を怪しんでるなら、さっき目の前で飲んだじゃないか?」
「それもそうでしたね、失礼。少々緊張が過ぎたようです」
トンパが自信満々な笑みに戻ったのを確認し、トンパから少し距離を置き缶をトンパの顔に向けて投げる。
それを見たトンパが驚きの表情をしながら缶に手を伸ばす。
斬っ!
トンパが缶に触れる前に、小太刀を振るい缶ごと中身のジュースを切り裂く。
「それでも、これは飲むわけにいかない。
この試験中に、他の参加者から出されたものは飲み食いしないと決めてるんだ。そして、提供してきた人間を敵と見なすとも。
まだ許せる。視界から…キエロ」
トンパは動くことが出来ずにいたが、キナコが言い終わり小太刀を納刀したのを見計らい、立ち止まることなく走り去った。
トンパはキナコが見えないところまで来ると足を止め、肩で息をしながら愚痴を零した
「……くそ!また失敗かよ。今年の新顔はどうなってんだ?」
トンパの異名は『新人潰し』。
キナコが訊ねた人物であるその人だった。
新人の受験者をあの手この手あらゆる手段を使い邪魔することが楽しみになり、目的が変わってしまった今年で35回目の自称ベテラン(笑)の男である。
自分も命がけのスリルにいる中でで、新人が絶望の表情に染まりながら死んでいくのを見ることが生きがいになった。
最初は金で人を雇い、自分は見るだけで満足していたのだが、何度も何度も繰り返している内に自らも仕掛けるようになった。
「ちぃ!まあ、いいさ。
試験が始まったら、嫌でも巻き込んでやるさ。」
トンパは再び笑みを浮かべて、次の標的を探すために扉に視線を移す。
扉は再び、到着の案内音を鳴らしているところだった。
キナコは小太刀を腰に差し直し、トンパに興味が失せたように壁際に移動し背を壁に預ける。
(ん~、ちょっと殺気を出しすぎたか?
あの時から何人かから視られている気配が消えないな…)
これ以上、悪目立ちしては堪らないと目を閉じ集中する。
すると、背筋に悪寒が走った。
「!」
目を開き、目線だけを向ける。
髪を後ろに流して、右目の下に星、左目の下に涙のマークを描いている奇術師風の男がキナコを見て、トンパとは違う笑みを浮かべていた。
そして、ゆっくりと近づき歩み寄ってくるをの確認し相手に気取られぬように警戒のレベルをあげた。
(だから、目立ちたくなかったんだ!この感じは視ていた奴と同一人物だな)
「ちょっといいかい?」
「なんでしょうか?」
「君…名前は?」
「キナコ」
「くくく★正直者だね♥ 僕はヒソカ♧見てたよ♦ 大分強いみたいだ♥ 君と一度戦ってみたいね★」
(何を考えているのか分からないな。もしくは、ただ戦いたいだけで何も考えてないのかもしれないな)
「遠慮しておきます。ヒソカさんとやっても勝ち目は無さそうだ、私は死にに来たわけじゃない。
そんなことより、聞きたいんですが顔のマークは彫っているんですか?」
キナコの言葉に、ヒソカは驚いたような表情をするがすぐに元に戻り、笑顔で「秘密★」とだけ返し、言葉をつづけた。
「残念♧ 君との戦いは面白いと思うんだけど♦」
(こいつ、ただのバトルジャンキーだな。関りを持つのは危険だな)
キナコはヒソカの性格に対し、小さく顔をしかめる。
「そうだ♥ これ★ 僕のホームコード♧」
「あとで送ります。地下じゃ電波を拾えないから。落ち着いたら…」
「これも残念♦ 仲良くなれると思ったのに♥」
小さく折りたたまれた紙切れを差し出すヒソカを軽く一瞥し、紙切れを受け取る。
(ちっ、思春期真っ最中の女子高生みたいな渡し方しやがって…)
ヒソカは残念そうに去っていく。
キナコはそれを確認して再び目を閉じる
(また、目立ってしまった…)
ヒソカと話してしまったことで、また注目を集めてしまったことに仕方がないことだったと思うことした。
それからは目立たぬよう壁の染みになりきる努力をしていたが、ヒソカ以外からの視られている気配が消えずにいたその時
「ぎゃあああああああ!俺の腕があああああ!」
悲鳴が響きわたった。
目を開き視線を向けると、そこには両肘から先がない男と楽し気に笑うヒソカの姿があった。
(やっぱり関わったのは失敗だったな)
少し後悔していると、
ジリリリリリリリリ!!
扉の音とは違う目覚まし時計のような音が響きわたる。
すると、エレベーターとは反対側の壁が左右に開き始め、壁の向こう側にスーツを着たカイゼル髭がチャームポイントであろう老紳士が立っていた。
老紳士は音の発生源であろう気持ち悪いモノを止める。
「只今をもって、受付時間を終了致します。
それではこれより、ハンター試験を始めます。」
響き渡る老紳士の声
ハンター試験一次試験が始まった。
運転手のモデルは作者世代で言うならば船頭さんですかね
あの話口調のせいで予測変換機能が火を噴いています
ヒソカの記号も打ちにくかったり?
ゴンたちとのくだりはどうしようか悩んでいますが、近いうちに主人公とも関わってもらいたいと思っています。
投稿は不定期更新になっていくと思いますが明日までは毎日投稿します。