血で雪ぐ   作:夜ノ 朱

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第三話

 

「さて、一応確認いたしますが、ハンター試験は大変厳しいものであり、運が悪かったり、実力が乏しかったりすると怪我します。

最悪の場合は死んだりするでしょう。

さらには既に行われたかもしれませんが、受験生同士の争いで再起不能になることも多々あります。それでもかまわない。

…という方のみ付いて来てください」

 

老紳士は注意事項を伝え、今ならば棄権も可能と伝える。

が、もちろん誰も引き返す者はいない。ヒソカにやられた者は文字通り殺られていたようで、死人に口なしとはこのことだと思うキナコだった。

 

(殺しは犯罪だとも思うんだが、そこは誰も突っ込まないのか。

まあ死にたくないんだし、それもそうだな。私としては、そのまま使ってくれたら一番楽だったのに。)

 

「承知しました。

第一次試験400名、生存者全員参加ですね。それでは参りましょう。」

 

(最後に降りてきたのは、サングラスが良く似合うおっさんと金髪の気の強そうな少年に、黒髪を立たせた見るからに純情そうな少年の三人組だったはず。

番号は403,404,405だったことを考えるなら…考えるのはやめよう。受験者数を数えやすくなってラッキーだなー)

 

老紳士はくるりと身を翻し、手足を大きく振り上げて歩き出す。

それに受験者たちも続き歩き出す。

 

 

「申し遅れました。私一次試験担当官のサトツと申します。

これより皆様を二次試験会場にご案内します」

 

「? 二次試験会場に…? ってことなら一次試験はまさか」

 

 

「えぇ、もう始まっているのでございます。

二次試験会場まで私についてくること。これが一次試験にございます。」

 

「「「「!!」」」」

 

(付いていくだけね…持久力試験ってことなら納得できるな。

事実、ハンターは獲物を狙って、時には何時間も走り続け、追い続けることもあったらしい。それに、自分の身を守るために足を止めることが出来ない状況も考えられるらしいからな。)

 

 

「目的地や到着予定時間はお伝え出来ません。

ただ、ひたすら私に付いて来ていただきます」

 

サトツの言葉に試験の意味を理解した者、そうでない者と受験者の反応は様々だった。

そんな中でキナコは考える。

 

(前を行き過ぎても目立つし、かと言って後ろの方からだと間に合わないかも知れない。中盤はむさ苦しくて空気が汚そう。)

 

 

「キナコは★ 前を行くかい?」

 

「ヒソカさんのいない所に行きます。」

 

ヒソカから声を掛けられるが、振り向くことをせず返事だけ返すキナコに対し、薄く朱に頬を染めつつヒソカは言葉を返す。

 

「残念♥ 本格的に嫌われたようだ♧ 僕は後ろの方で大人しくしておくから気が向いたらいつでもおいで♦」

 

キナコが一番前で走ることを決めた瞬間だった。

 

そうと決めたキナコの行動ははやく、壁を走り、天井にナイフを投げ楔代わりにし自前のワイヤーで距離を稼いで人を抜いていく。

 

10分もしないうちにトップ集団にぶつかる。

そのままスピードを緩めずサトツの右斜め後ろに付き、サトツのペースに合わせる。

 

 

 

そのまま走り続け、数時間が経った。

あれから何度かサトツのスピードが上がったが、それでもキナコはサトツの右斜め後ろの位置をキープしていた。

 

(既に開始から4時間とちょっと経ってるけど、周りの景色は何も変わらず未だ地下通路の中)

 

キナコは携帯で時間を確認する。そのまま計算機能で、大体の距離を確認する。

風景は何も変わらず、ただひたすらに地下通路が続いたままだった。

 

「絶対にハンターになったるんじゃ!くそったれー!!!」

 

そんな時、後方から腹の底からひねり出したような雄叫びが聞こえてきた。

 

(あの声は、サングラスがお似合いのおっさんの声だな。

ということは、まだまだ諦めずに走っているということか。一見何のセンスもなさそうだったのに根性と気合は十二分にあったというわけか…私も負けれないな)

 

気合を入れなおすキナコだが、彼女は一切汗をかいておらず余裕の表情だった。

 

一次試験開始から約8時間が過ぎようとしていた。

走行距離はキナコの計算で約80kmになった

 

先頭を走るキナコは後続の顔触れが変わらないのを確認し、脱落者はまだいないと判断していた。実際には、トンパらの行いによって初の脱落者が居たのだが知る由はないだろう。

 

「か、階段!?」

 

周りの受験者の声でキナコも顔を上げて確認する。

目の前に現れた、先の見えない階段。かなり勾配がきつく、段差も決して低いとは言えないほどだった。

それが文字通り果てしなく続いていた。

 

「さて、ちょっとペースを上げますよ」

 

サトツは歩くような感じのまま2段飛ばしで登っていく。

それを受験者達は愕然としながらも、必死についていく。

 

キナコはといえば

「走ったと思えば、次は登り。その次は泳ぎますとか言わないよな…」

愚痴を零しながら、サトツの右斜め後ろをキープして登っていた。

 

「いつの間にか一番前に来ちゃったね」

 

「うん。だってペースが遅いんだもん。こんなんじゃ逆に疲れちゃうよな~」

 

「……」

 

いつの間にか銀髪の猫目がチャームポイントであろう少年と、黒い髪を逆立たせた少年がキナコと並走していた。

 

よく見てみれば、猫目の少年は汗をかくどころか息すら乱れていない。

 

(黒髪の子はともかく、猫目の子は何かやってたタイプの子だな。足音が限りなく小さい。完全に聞こえないわけじゃあないが、暗殺者の類か?

それにしては【纏】を使っているようには見えないこと。それから考えるに、暗殺一家の者で教育途中って感じか。…離れておこう。)

 

「ねえ、おじさんもそう思うよね?」

 

不意に猫目の少年から声を掛けられたが、おじさんと呼ばれてまさか自分のことだと思わっていなかったキナコは反応が遅れてしまう。

 

「…! 私に言っているのか?」

 

「そーに決まってんじゃん、逆におじさん以外誰がいるっていうのさ!」

 

「あっ、キルア!この人は女性だよ!

ごめんなさい、キルアも悪気があったわけじゃないと思うんです!」

 

(いや、純度100%の悪意しか感じない。もしくは、目上の者に対する礼節を教えてもらってないのかもしれないな。…関わりたくないな。)

 

「黒髪の少年の言う通りだ。私はおじさんと呼ばれる年齢でないし、まずは男ですらない。目上の人間に対する礼節は教えてもらってないのか、お坊ちゃん?」

 

ブチっ!

何かが切れるような音が聞こえた気がしたが気にせず階段を上り続けた。

少年らは立ち止まっているようだったが、もしかして辞退してくれるのかもしれないな、と考えていたキナコだったがその考えが間違いだったとすぐ思い知らされた。

 

「殺すぞ、てめぇ…」

 

嫌に冷えた声色と共に向けられた殺気に、薄く笑みを浮かべたキナコはハッキリ告げる。

 

「その年齢では大したものだが、45点。追試が必要な点数だな」

 

黒髪の少年が猫目の少年を宥めているようだったが、聞く耳を持たない様子で、手を異常に変形させ迫りくる少年に対しキナコがとった行動はいたってシンプルだった。

そのまま背を向け階段を駆け登る。サトツをも抜かんばかりの勢いで、自分らを追い越していた他の受験者らを追い越していく。

 

「まてぇ!!逃げてんじゃねぇぞ!」

 

キナコは後方から聞こえてくる猫目の少年の静止を無視して、止まることなく駆け登っていく。

 

(なんだなんだ、あの殺気は!純度100%で私に向けられた殺気だったぞ!それも、今まで視られていた気配と同一人物で間違いない筈だ。猫目の少年の関係者か?だから、関わりたくなかったんだよ。本当に!)

 

全力で猫目の少年と関わってしまったことを後悔しながら。

 





ここでようやく原作主人公たちとの対面です。
長かったー!

私個人では、巷でヒソカスと呼ばれているヒソカが一番好きだったりします
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