2人目のIS人生   作:ゴリラの天使

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第4話

とある海上で一機の打鉄が飛んでいた。

 

「まさか篠ノ之博士のラボが空にあったとは…」

 

座標と一緒にメッセージが送られてきてその内容が…

 

ここで待ってるよー、座標まで着いたら垂直に雲の上まで上がってきね♡

 

天災がいかにヤバいかが分かる一文だった。

そんな人が協力を申し出てくれるのは有り難いのだが急に不安になってきた…。新兵器開発とか言いながら腕ごとされないだろうか…。不安だ…。

 

「座標は…ここか」

 

そしてそのまま垂直に上昇、量産機といえど中々の速度で上昇していく。やがて雲に差し掛かりそのまま突き抜ける。雲を抜けると…。

 

「綺麗だ」

 

下には雲、上には成層圏が広がっていた。飛行機でしか見れない景色を自分はここに立っているかのように眺めている。

 

「ISが作られたせいで俺はクソみたいな人生を送った…。けど、ISが作られたおかげで俺を見てくれる人に出会えた。簪に会えた。それにこの景色は本物だ」

 

不安な気持ちは吹き飛び今は穏やかな気持ちで飛んでいる。

飛ぶのが気持ちいい。

 

「篠ノ之博士のラボを探さないと」

ガコンッ

「?」

 

いきなり目の前で機械が動く音がした。

すると…。

 

ガガガガガガガガガ

 

何もない空間に格納庫らしき入り口が現れた。

その中には白髪の目を閉じている少女がいる。

 

「湊様ですね、お待ちしておりました。こちらへ」

 

少女に促され着艦する。

 

「お初にお目にかかります。クロエ・クロニクルと申します。束様の助手をさせてもらっています」

「高見沢湊だ、よろしくクロニクルさん」

「クロエと呼び捨てで構いません」

 

その時にクロエの情報が流れてきた。

これはあまり触れない方がいいか。

 

「構いませんよ」

「え?」

「束様に聞いております。コアネットワーク上のデータを閲覧出来るんですよね?」

「閲覧というか…思い出す感じなんだけど」

「関連したことに関わると思い出す感じなのでしょうね、束様が言っておりました」

「なるほど、それとさっきなんで考えてる事分かった?」

「わかりやすいですよ?湊さんの心」

 

気をつけよう。

 

「では、束様の所にご案内いたします」

 

出撃ハッチから扉をくぐり隣の部屋に移動した。

そこは機体の整備室だった。4つ程機体を置く場所がありその一つに篠ノ之束は座って武装などの製作を行なっていた。

 

「やぁやぁ初めましてだねみっくん♪会いたかったよー!」

「初めまして篠ノ之博士」

「じゃあ早速IS見せてくれるかな?改造しちゃうから!」

「その前に少し質問いいですか?」

「んー?いいよー?」

 

篠ノ之博士に会ったら昔から聞きたいことがあった。

俺にとって大事なことだ。

 

「今回協力を受けてくれたのは何故ですか?」

「簡単だよ、私がみっくんの事を気にいったからだよ。ISに触れて間もないのにISの稼働率が90%オーバー、更にはISのコア人格との会話もできる、それにみっくんはISの事をどう思ってる?」

「相棒だと思ってます。それと可能性の塊だなと」

「その答えで十分!そう思ってくれて束さんも嬉しいよ」

「じゃあ最後の質問です」

 

これが本題。

 

「博士は今の世界をどう思ってますか?」

「…それはISの開発者視点から見てってことかな?」

「白騎士事件を起こした張本人、そして世界を変えた元凶として」

「あちゃ〜痛いところついてくるね〜」

 

気楽な感じで話しているが頭のうさ耳がしょんぼりうな垂れている。本人的に言われたくないことらしい。

 

「酷く歪んでるね、みんなISを兵器として見てる。みっくんみたいな考えの人は極小数で私の望んだ世界にはならなかった」

「あんなやり方をすればこうなるだろうと思わなかったのですか?」

「思わなかった…でも今ならわかるあれは愚作だったよ…。急ぎすぎてたのかな、ISが認められなくて手っ取り早く認めさせるためには大きな事が必要だと思ったから後先考えずに…」

 

白騎士事件の全容を知った今としては急ぎすぎたとしか言えない。やり方が悪かった。

 

「そのせいでこの世界が変わって女性権利団体ができた」

「だから潰す。ちーちゃんが動けない今私がやるしかないからね」

「責任を感じてるなら俺は何も言いません。ISがなかったら簪達には会えなかったから」

「みっくんには辛い思いさせちゃったね…」

「いいんです博士、質問は終わりです。これからよろしくお願いします、博士」

「うん!じゃあ早速打鉄を改造しちゃおっか♪」

「改造しようにもこいつ、首から取れないのですが」

「その点については大丈夫、ささ打鉄見せてー」

 

そう言って博士は打鉄の待機形態のチョーカーに触ると簡単に取った。

 

「あれ?」

「この子が大丈夫って思った人には外れるようになってるんだ。それ以外の人だと嫌がって外れないだけだね」

「なるほどな」

「じゃあ早速改造だー!クーちゃんも手伝ってー」

「かしこまりました。束様」

「頼みます」

 

こうして打鉄の改造が始まった。

 

 

 

 

おかしい…改造が終わったら出撃ハッチの前に移動させられて出撃準備してにはいってるんですが…。

 

「さぁ早速性能を試してみよー!」

「待って」

「目標は倉持技研にある打鉄弍式のコアの奪取です。織斑一夏様の専用機になる予定の白式が保管されている区画にはダメージをださないようにお願いします」

「クロエも止まって」

「あと女性権利団体の連中が来てるみたいだからついでによろしくね♪」

 

2人とも止まってくれないのだけど。

 

「さぁみせて貰おうか、ISに選ばれたみっくんの実力を!というわけで行ってらっしゃーい」

 

その声と共に空中に射出された。

ていうかさ…。

 

「俺…このISの説明受けてないよな?」

 

今更戻るのはなんか気まずいのでそのまま行くことにした。奪ってサクッとやっておしまいだ。

 

『聞こえますか?湊様?』

「聞こえてるよクロエ」

『倉持の警戒範囲に入るまでの数分で湊様のISの説明をいたします』

 

どうやらここでされるようだ。

 

『今回の改造は機動性強化と拡張領域の拡張です。非固定の浮遊シールドと下半身の浮遊装甲を排除、代わりに脚部装甲にスラスターを増設し背面に非固定の試作展開装甲の大型ブースターを搭載しました。離脱の際に役立てて下さい。

そして減った装甲の分拡張領域を広げ、そこに試作型の武器を搭載しました。

搭載武器は試作展開装甲搭載のブレード、シールド、そして大型化下腕部装甲ないに内臓したバルカン砲です。

ブレードは刃の部分が開きビーム刃を展開出来る様になってます。シールドは大型ビームキャノンを内臓、バルカン砲は腕部の上部に配置してあります。牽制程度の威力です。

打鉄の基本武装のブレードの葵とアサルトライフルの焔備は搭載してますのでご安心下さい。

最後に防御力が大きく減っておりますのでお気をつけ下さい』

「了解した、あとバイザーとボイスチェンジャーもありがとう」

『正体がバレてしまうのは得策ではありませんからね、あと機体カラーは灰色でよかったのですか?』

「いいんだこれで」

 

灰色の打鉄は海の上を真っ直ぐ進んでいく、そして大きめの建物が見えてきた。倉持技研だ。

 

『こちらでハッキングしてシステムダウンさせます。その間にお願いします』

「了解」

 

システムダウンしたのを確認してから屋上から侵入した。

 

 

 

 

倉持技研は混乱していた。いきなりハッキングを受け施設全てのシステムが落ち突然の攻撃に誰もが戸惑っていたのだ。

 

「さっさと復旧させなさい!」

 

研究員の格好ではなく、スーツを着た女性が騒いでいた。

この女は女性権利団体の一員の女性で弍式の確認に来ていた。完成されたら困るからだ。

 

「なんなのよほんと!急にドアが開かなくなるしデータがどうの言ってこっちは無視だしこれだから男どもは!!」

 

弍式の保管されている区画にいたこの女は完成してないのを確認して早々に帰ろうとしたら丁度ハッキングを受け出れなくなったのだ。それを近くの職員にドアを開けさせようとしたらデータ復旧に手一杯で話を聞かれなかった。

ドアを叩いて喚き散らしていたらドアが少し開いた。隙間から見えたのは機械の手、どうやらISの力でこじ開けているようだ。

 

「早く開けなさい!流石ISだわ男なんかより全然役に立つ!」

 

そしてドアを開け放ちそこにいたのは灰色のIS、装甲がほとんどなく背中に大型のブースターを背負ったアンバランスな機体、顔にはバイザーをかけ顔はわからないが黒髪短髪ということだけはわかる。

 

「助かったわ!さぁ早く私を外に出しなさい!」

「…お前が…」

「え?」

 

私が何?そう思った時には顔を掴まれていた。

 

「ーーーーーー!!!」

 

声がまるで出ない。口を塞がれているから当たり前だ。

相手を睨めば見えた、見えてしまった。右手に持った近接ブレードを…。

 

 

 

 

弍式の保管されている部屋のドアを開けたらいきなり女性権利団体の女がいた。クロエに送ってもらっていた写真とも一致する。

手間が省けたから顔を掴んで叫ばないようにする。声聞きたくないしな。

弍式を簪から取り上げようとした奴、なんだろう殺す時は罪悪感とかで躊躇うかと思ったが俺はそうでもないらしい。それもそっか。

 

「ーーーーーー!!!!!!!」ゴフッ

 

こいつは死んでいい奴だからな。

右手に持った葵を腹に突き刺す、ついでに胸にも突き刺しといた。

口から血を大量に流して暴れる女、これ以上汚れても嫌だから部屋の脇に投げ捨てた。

そのまま女は生き絶えた。以外に呆気なく終わったもんだ。

気付いたら周りの研究員から見られていた。あんなに騒いでたやつが急に静かになったら逆に目立ってしまったのだろう。その目には恐怖が見えた。自分も殺されると思っているのだろう。

俺はそのまま真っ直ぐ弍式のもとへ向かい目の前に着地した。

 

「で?君は誰だい?」

 

唯一怯えてない女がいた。

 

「弍式のコアを寄越せ」

「君が誰かわからないけど渡すわけないでしょ?この子は簪ちゃんのものなんだから」

 

この人は簪のものだと言った、するとこの人は…。

 

「2人目のものになると聞いたが?」

「あーんな上の連中の言うことを誰が聞くもんか!この子は簪ちゃんのものなんだから簪ちゃんに渡すのがメカニックとしての意地だね、勿論君に渡す気もないけど」

「私もそうだ」

「ん?」

「簪に渡すために奪う」

「…ふーん?」

 

目の前の女は覗き込むように見てくると何か納得したような顔になった。

 

「じゃあ……んしょっと……はい、頼んだよ」

 

弍式のコアを渡してきた。

周りの研究員が驚いている。

 

「何故?」

「ただ奪うならこんなに話さないでしょ、それにこのままでも簪ちゃんに渡さなかったしねぇ〜」

「そうか…ありがとう」

「その代わり、しっかり簪ちゃんに届けてね」

「わかってる」

 

俺はそのまま部屋を出て侵入してきた屋上を経由して倉持を離脱した。

 

 

 

 

 

「ッ?!」

 

後ろからの突然の狙撃に慌てて緊急回避を行う。少し遅かったためか足の装甲に掠ってしまった。

きた方向を見れば2体の打鉄とラファールが向かってきていた。

 

「追手か、早いな」

 

あの女の死が伝わったか。

 

「よくも大胡様を!!」

「私が殺してやるわ!!」

 

あの女の名前か、どうでもいいが。

 

「試してみるか」

 

左手にはコアがあるから使えない。なので右手に試作ブレードを展開する。形は葵を一回り大きくそして長くした太刀の様な形で所々に機械の意向が見られる。

左手にはシールドを展開、手は阻害しないため展開できる。こちらは標準的な大型の西洋盾といった感じ、真ん中に太めの砲身があるのが違いか。

 

「盾の検証開始」

 

すると盾の真ん中部分が残り四角い砲身を形成残った部分は横に広がりボウガンの様な形になった。

 

「まずはラファールに…」

バシュン!

「ッ!」

 

危うくコアを落とすところだった。撃ったビームはラファールに直撃肩の装甲を吹っ飛ばした。中々の威力だ。

 

「このぉぉ!!」

 

打鉄がアサルトライフルを連射してくる。即座に盾に戻してガードして弾をすべて防ぐ。

 

「ライフル程度なら問題なしと」

 

そのまま打鉄が斬り込んでくる。右手の試作ブレードで対応、斬りつける。

斬り結ぶが力は拮抗、片手と片手では軽い打ち合いしか出来ない。

一旦離れて展開装甲を起動、ビーム刃を形成して斬りつける。

 

「遅い…何!?」

 

避けられたのだが当たった。ビーム刃から斬撃が出たのだビームの。

 

「そういう武装か」

 

一通りの武装把握はできた。よし離脱しよう。

そう思ったのだが…。

 

「「……」」

 

挟まれていた。ラファールが追い付いて逃走経路を塞いだのだ。

2人は怒りの形相で睨んできている。

 

「どうするか」

 

正直戦いは初めてだ。俺の打鉄が色々教えてくれたとはいえ戦闘は素人、慣れやそもそも身体が追いつかない。

そして相手が2人、分が悪すぎる。

 

「大胡様の仇!」

「女の恥さらしがぁ!」

 

打鉄がアサルトライフルで攻撃、ラファールが両手にサブマシンガンで攻撃してきた。俺は弍式のコアを守りながら逃げようとするが挟まれてるのと弾幕で逃げられない、装甲が薄いことも合わさってシールドエネルギーがガリガリ減っていく。

死ぬ…そのイメージがよぎった。

 

ーワタシニユダネテー

「打鉄?」

ーナントカシマスー

「頼んだ」

 

迷ってる暇はなかった。なんとかなるなら任せる。

 

ーエンゲージー

 

思考がクリアになった。

冷静になったとも違う、様々な情報をすべて処理、適切な行動を瞬時に判断、実行。

 

「え…きゃあ!!!」

 

敵の打鉄が斬られた。

俺は大型ブースターを起動しさらに瞬間加速も併用して一気に肉薄しビームを展開したブレードで斬りつけた。

そのまま裏に回り込み連撃を加える。

ラファールが敵打鉄が邪魔で撃てないのでブレードを展開して突っ込んでくる。

俺は敵打鉄を蹴っ飛ばしてラファールに飛ばす。盾のビーム砲を展開してありったけを連射、敵打鉄とラファールが爆発に巻き込まれる。

 

黒煙から打鉄が落ちていくそれをラファールが慌てて支えに行く。

隙あり。

 

「終わりだ」

 

ブレードのビームを形成してラファールを斬り裂いた。

 

 

 

 

海上に浮かぶ二つの死体、どちらも女で胸部に背中まで貫通する傷があった。

その死体が回収され所持品の中に起動しっぱなしのボイスレコーダーがあった。内容は死ぬ前の犯人の手がかりを残すために死ぬ間際に起動したものと見られる。

犯人の内容は

 

「お前ら女性権利団体がなくなるまで私はお前達を殺す。何度だって蘇ってでも殺す。亡霊になっても呪い殺してやる」

 

その後何かを突き刺す音と悲鳴でレコーダーの内容は終わった。

倉持を強襲した灰色のISと同一と見られ、のちに女性権利団体が衰退する原因となるISの呼称が決められた。

 

灰色の亡霊ーグレイゴーストー

 

 

 

 

簪視点

 

あれから1ヶ月、私の周りの環境は大きく変わった。

まずお姉ちゃんと仲直り出来たこと。

お姉ちゃんもずっと仲直りしたかったらしく私の事を好きでいてくれた事がとても嬉しかった。それからは私もお姉ちゃんの手伝いをしている。書類の溜まり具合を見て苦笑いしたけど。

2つ目、打鉄弐式は正式に無くなった。

倉持技研から強奪されたので私の手持ちISは今のところない、正直今更倉持からISを渡されても受け取らなかったと思う。だから開発に追われることもないから規則正しい生活を送れてる。

3つ目、女性権利団体の衰退。

ここ1ヶ月で女性権利団体幹部クラスから下っ端までの汚職などの記録が流出、警察などが逮捕しようと動いた時にはその人達は行方不明か死体のどっちかになっていたらしい。それを恐れて多くの団員は悪行をやめて表舞台から去った。因みにその汚職の中に私の弐式の件もあった。

湊に弐式を渡してそのまま未完成のまま放置して倉持及び日本政府とを繋ぐ鎖として持たせるだけだったらしい。捨てれば拉致扱いで監禁からの実験素体にする。本当に今の政府は中々に酷い人ばかり

最後、湊がいない。

あのあとすぐにいなくなってしまって寂しくなってしまった。会って少ししか話してないけど初めて気を許せる男の人だったからってのもあるけど、やっぱり告白されたからだと思う。

……恥ずかしくなってきた。

でも分かってる。灰色の亡霊ーグレイゴーストー、あれは湊だ。

篠ノ之博士の手伝いの中に女性権利団体の抹殺とあった。一連の事件はすべて湊と篠ノ之博士の犯行だ。

多分、湊は今相当精神をすり減らしていると思う。私が支えてあげなきゃ、弍式の事も含めて恩返ししなきゃいけない。

だから、学園に湊がいつ来てもいいように私が居場所になるから、待ってるからね湊。

 

「それじゃ次の人お願いします」

「更識簪です。皆さんよろしくお願いします」

 

IS学園で待ってるからね。

 

 

 

 


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