無人機襲撃事件から一夜明け、次の日の朝を迎えていた。
簪の部屋に移動しそのまま疲れで眠りについた。簪のベッドとは違うベッドに寝たはずなんだが…。
簪「すぅ…すぅ…」
なんで隣で寝ているんだ。
グレイ「湊、おはようございます」
グレイが机の上から浮遊して側まで飛んできながら挨拶してきた。
湊「グレイ、簪がここにいる説明を」
グレイ「湊が寝たあと忍び込んでました」
湊「何故…?」
グレイ「本人に聞いてみては?」
湊「だよなぁ…。おーい簪、起きろー」ユサユサ
腕が動かし辛いのでグレイに揺すってもらう。
簪「んっ…んんっ……」
なんだろう…なんか…。
グレイ「湊、興奮してますか?」
湊「待て、何処でそんな事覚えた!!」
グレイ「束様が覚えといて損は無いと」
湊「今度会ったらぶっとばす」
戦闘用ISにしてくれてありがとう束博士、きつい一撃お見舞いできそうです。
簪「んっ……?湊…?」
そうこうしてたら簪が起きた。
湊「おはよう簪、早速で悪いけどなんで俺のベッドにいるの?」
簪「えーと…その…」
湊「?」
簪「不安だったの」
簪は頭を肩付近にコテンと乗せてきた。腕が痛くならないようにしながら。
簪「またいなくなっちゃうんじゃないかって思って…、寂しくて不安になって気づいたら同じベッドに入ってた」
確かにあの後すぐ束博士のところに向かったからな。何も言わずに行ったから寂しい思いをさせてしまったようだ。
湊「暫くは学園にいるつもりだからそれまではずっと一緒にいるから」
簪「本当?」
湊「本当、グレイ保護機能使って」
グレイ「了解しました」
保護機能を使って腕が痛まないようにしてから簪の頭を撫でる。簪は目を瞑って幸せそうにしている。
簪「ありがと湊」
湊「どういたしまして」
暫く頭を撫でながらゆっくりしながら朝を過ごした。
その後保護機能で誤魔化してた痛みに悶えることになったが。
*
千冬「高見沢、更識、今大丈夫か?」
朝10時、部屋で簪にご飯を食べさせて貰っている時織斑先生が訪ねてきた。
因みに昨日の襲撃事件を考慮して追加で休みを増やし3日間の休みが貰えたらしいので簪はこの時間でも部屋にいて俺の世話をしてくれている。
保護機能使って食べようとしたのだが簪が断固拒否したのとグレイが了承したことによって食べさせて貰うことになった。
千冬「すまない、邪魔した」
簪「大丈夫です!大丈夫ですから!」
慌てて簪が引き止める、用事があるなら今聞いたほうがいいのだけど気まずいな…。
千冬「…そうか?なら…束が来ている」
簪、湊「「ええ!?」」
何してんのあの人!?
千冬「何やら渡すものがあると言っていたのでな、学園東にある港に来てくれ食べた後でいい。ノックの後すぐ入って悪かった」
湊「あ…いえ大丈夫なんで気にしないでください」
千冬「すまないな、後で束から何を貰ったかわたしに報告してくれ手続きもあるのでな」
そう言って部屋から出て行った。去り際に仕事が増えた…と言っていたのが聞こえた。後日差し入れを持って行こう。
簪「鍵かけておかなきゃ…」
湊「そうだね…」
鍵をかけてご飯を再開した。
食べ終わり俺と簪とグレイは港に来ていた。
そこには何故かエンタープライズが停泊していた。
簪「カッコイイ!!」キラキラ
簪は目を輝かせてエンタープライズを見ていた。アニオタ魂に火がついたか。
湊「簪、とりあえず入ろ「うん!!」おっおう」
食い気味に返事を言われて朝とのギャップにびっくりする俺だった。
エンタープライズ内に入るとクロエが出迎えてくれた。
クロエ「湊様大丈夫ですか?」
湊「大丈夫だ、1週間もあれば治るそうだ」
クロエ「重症じゃないですか!」
湊「大丈夫だって」
クロエは俺が怪我をして帰るといつも心配してくれる。今回はいつもより酷かったためこんな感じになっている。
簪「グレイ、この人は?」
グレイ「クロエ・クロニクル、束様の助手です」
簪「束博士の助手…すごい人なんだね」
グレイ「助手の前に大事な家族ですね」
簪「家族?」
グレイ「束様にとっての大事な人だと思って下さい」
簪「大事な人…」
簪は大事な人と聞いて真っ先に湊の顔が浮かんだ。
簪「絶対守るから」
グレイ「私も守ります」
そのあとクロエが落ち着くまで簪達は見守ることにした。
束「遅ーい!!!」
研究室に入ると怒っている束博士がいた。
束「遅いよ!館内に入ってからどんだけ経ってるのさ!!」
確かに入ってから20分は経っているけども。
湊「すみません束博士」
束「やだ」
湊「束博士?」
束「いっくん達が名前で呼ばれてるから私も呼んでくれなきゃやだ!!」
めんどくさいモードに入ってしまった。こうなると中々戻ってくれない。
湊「はぁ…、機嫌直してください束さん」
束「うーんまぁいいよそれで♪」
要求を聞けばすぐ戻るけどな。
簪「この人が篠ノ之博士…なんか…」
湊「イメージと違うだろ?」
簪「うん…」
湊「大丈夫100人中1000人が違うって言うから」
束「900人オーバーしてるよ!みっくん!!」
湊「で渡すものってなんですか?」
束「むむむ、みっくんが意地悪だ。まぁ渡すものなんだけどねまずはこれだよ」
そういうと、後ろのIS用ハンガーに視線を誘導する。
そこには水色の全身装甲のISがあった。
両腕についたダブルガトリングと背中にシールドのような形のものが付いている。
束「この子の名前はジャベリン!両腕についたダブルガトリングと足に内臓されたミサイルで制圧、更に弐式の試作第3世代兵器「山嵐」を完成させて搭載、近接兵装は先端からビームを発振させるビームジャベリン、主に遠距離で力を発揮するISだよ」
湊「束さん、これって簪の…」
束「うん、かんちゃんのISだよ!」
俺が作らなきゃいけないと思っていたのだが、束さんが完成させていたとは。
簪「なんでそのあだ名を…」
束「弐式に聞いたらかんちゃんってあだ名があるって教えてもらったの」
湊「でもよかったな簪、束さんが認めてくれた証だぞ」
簪「そうなの?」
湊「気に入った相手はあだ名をつける、そして家族のように大事にする。それが束さんのやり方だ。ただそれ以外にはゴミを見るような目になるけどな」
簪「えぇ…」
束「さぁさぁ早速乗って乗って♪」
簪「えっあっ!ちょっと…!」
そして簪は瞬く間にジャベリンを装着させられた。
簪「…………」
クロエ「簪様?」
湊「おそらく対話してるんだろう、ジャベリンと」
グレイ「でしょうね」
束「その前にみっくんとグレイゴーストとの対話空間に干渉したことあるからね、素質はあるからねー」
数秒後ジャベリンを解除して簪が戻ってきた。
簪「ごめんなさい!長い時間待たせました…」
湊「大丈夫だよ大体5秒くらいだったからな」
簪「え?でも2時間位は話してたと思ったのに」
???「だから言ったじゃないですかーそんなに時間経たないから大丈夫だよーって」
声がしたと思ったら簪の頭の上にグレイと同じようにIS人間態ちょこんと座った。
水色の髪のロングでグレイのような翼はなく、代わりに全身に簡易アーマーのようなものが付いておりサイバー戦士を彷彿とさせる見た目をしている。(見た目はZ/Xのソードスナイパーリゲルの髪を水色にしてバーニアを無くして少し幼くした感じです)
簪「あれ?もしかしてジャベリン?」
ジャベリン「そうですよー!簪!」
束「ほーう、やっぱり待機形態はこうなるのかなー?」
クロエ「可愛らしいですね、ISによって差があるのですね」
グレイ「久しぶりですね弐式…いやジャベリン」
ジャベリン「久しぶりー!グレイゴースト!!」
ジャベリンがグレイに抱きつく、クールなグレイと天真爛漫なジャベリンと言ったところか。
グレイ「こうして抱き合うというのはいいものですね」
湊「どうした急に」
ジャベリン「こんな機会ありえないからね!グレイも憧れていたみたいだよ?」
グレイ「昨日簪様が抱きついているのを見てどんなものかと思っておりました」
湊「昨日?」
簪「へ?……あーーわわわわ////」
昨日?確か無人機事件の日だよな?抱きつかれたっけ?
束「みっくんみっくん、これ」
束が手持ちのディスプレイに映してくれたのはベッドで寝ている俺に優しく抱きつく簪だった。
簪「なんであるんですか!!!」
束「束さんに不可能はない!!」
簪「消して!!」
湊「グレイ、保存」
グレイ「了解です」
簪「湊!!!!」
顔を真っ赤にして慌てふためく簪が可愛くてつい乗っかってしまった。
束「そうそうまだ渡すものあるからね」
湊「あとはなんですか?」
束「エンタープライズ」
湊「え?」
束「エンタープライズ」
この飛空挺をくれるそうです。
IS学園にまた攻め込んでくる可能性が高く、それなら拠点ごとここに置いてしまったほうが防衛や整備もしやすいだろうということだそうな。
因みに束さんとクロエは他のラボに籠もって研究を続けるそうだ。支援は出来る限りするとのこと。
操縦はグレイかジャベリンにリンクさせておくから2人に任せれば動かせるそうだ。
束「渡すものは以上!あとはグレイゴーストを整備して終わりだね」
湊「俺も手伝いますよ、簪ももう一回装着して慣らしたほうがいいぞ」
簪「うんそうする、ジャベリン」
ジャベリン「はーい!!」
クロエ「お手伝いします」
その後全員で整備や修理を行い1日が終わった。
織斑先生に報告したら頭を抱えたあとエンタープライズへ直行、およそ女性の声とは思えない叫び声が学園中に響いた。
結局見た目だけが違うジャベリンになってしまった…。