vsガラシ。
ギャラリー内は広く、すでにヒバナと、タローより小柄な男の子との戦いが始まっていた。
「遅いじゃない。」
「おまえらが速いんだよ。」
「いい。今からラクガキファイトのやり方教えるからよく見てなさい。」
そう言ってヒバナは、説明をしつつラクガキファイトを進めた。
こうげき。
バリア。
まほう。
チャージ。
この四つの項目から選び、じゃんけんの方式で戦うのである。
例えば、こうげきはまほうに弱い。
まほうは、バリアに弱い。
バリアは、こうげきに弱い。
チャージは、攻撃はしないが、ラクガキのHPの回復と、次のターンでの攻撃力が倍になる効果がある。
ただし、一度やった行動は、次のターンでは使えず、別の項目を選ばなければならない。
あいこの場合は、素早さがある方が先に攻撃し、遅い方が後から攻撃を加えるという風に互いに痛手がある。チャージに限っては、あいこでもお互いにダメージはない。
これによって駆け引きが行われるのだが、攻撃の手は先に選ぼうと後に選ぼうと、両者が選んだ時点で同時に手が明かされるため後だしとかそういうズルはできない。つまり、お互いに何を出すかは分からないのだ。
だが、まほうの効果により、技を封じられるなどの効果が発揮された時に限り、選べる項目は狭まり、下手をすると一つしか選べないという最悪の状況に追い詰められる可能性もある。またこれ以外に、気絶やマヒなどの行動を封じられる効果もある。それ以外には、特定の項目を使うとダメージを受けたり、一定ターンでダメージを受けるものも存在する。
PPというケージを消費するまほうの駆け引きも重要なのだ。
なおPPが無くなれば、必然的にまほうは使えなくなるのでこれも選択を狭めてしまう。
デリトの印象としては、運の要素がかなり強い戦いだった。
やがて、ヒバナの戦いとレクチャーが終わり、デリトの番になった。
デリトのラクガキと、タローより小柄な少年ガラシのラクガキとの戦いが始まった。
見たところ、色合いから攻撃タイプと見られたため、魔法攻撃を選択。
そして見事、ガラシは攻撃を選びデリトのラクガキの攻撃だけがあたる。
次はおそらく、チャージだろうと踏み、デリトは、攻撃を選択。
だがガラシは、攻撃を選択したらしく、あいことなった。
だがデリトの方が早かった。
攻撃の手段のひとつである踏みつけが決まり、残り体力を奪われたガラシのラクガキは、色の力を失い、ガラシのラクガキノートに戻った。
審判がデリトの勝利を言い渡し、ガラシは、負けちまったでやんす~っと泣いた。
「…勝った?」
「すごいじゃない! 初戦勝ち抜けよ!」
デリトの背中を、ヒバナが叩いて笑う。
叩かれた背中を摩っていると、ステージにキラキラとした、奇妙な形をした色のついた石が舞い落ちてきた。
「なんだあれ?」
「カラー石よ。そんなことも知らないわけ? …あ、覚えてないのか。」
「からーせき?」
「ラクガキファイトをするとね、ああやってラクガキから色が生まれるの。あれは、私達のカラー石よ。取りましょう。」
「ああ。…あ?」
そこへ、覆面を被ったきっちりとした濃い灰色の身なりのひげの男がやってきて、銃のようなものを取り出し、カラー石に向けると銃口から吸い込むような光が発生し、カラー石を吸い込んでいった。
その様子を観客席から見ていた町民達が、痛ましげに悲しげに見ていた。
「ちょっと! それ、私達のカラー石よ!」
少しだけ残しカラー石を奪われたことにヒバナが怒る。
すると、ヒバナの背中の服をつまみ上げる同じ格好の男が現れた。
「放しなさいよ!」
「吠えるな、ガリレオの子よ。」
先ほどカラー石を奪った男が低い声で言う。
「これだけカラー石があれば、汚いラクガキの世話も報われるというものだ。」
「きゃっ!」
ヒバナが落とされ、灰色の男は去って行った。
「アイツ…、なに?」
「憲兵だよ…。この町を管理してる帝国の偉そうな人達だよ。」
タローから説明を受け、そして帝国と聞いて、デリトの脳裏に何かがフラッシュバックしたような気がした。
一瞬だったのでよく分からなかったが、さっきのヒゲの憲兵の男……どこかで見覚えがある気がした。
そう……、檻の向こうから自分が見ていた気がした。
「……?」
「デリト? どうしたの?」
「ん…、なんでもない。」
デリト達は、残ったカラー石を拾い、ラクガキの大会の予選会場から出た。
「くそ! 憲兵の奴ら…あんなにカラー石取るなんて!」
っとヒバナが悔しがる。
「…ま、それはそうと、変な名前のくせにちゃんとラクガキファイトできるじゃない。」
「お前が勝手に連れてきたんだろ?」
「しょうがないでしょ。だってペンジェルないと入場できないんだもん。」
「だからって…。」
勝手なことを言うヒバナに、デリトは、それ以上言う気も起きなくなった。
「おい、お前!」
そこへ、自分達に声がかけられた。
「俺のヒバナになにやってんだ?」
「あ?」
いかにもガキ大将な感じの大柄な少年だった。
その傍にはガラシがいたので、ガラシは、この少年の子分なのだろう。
「デンカ? 何の用よ?」
「ヒバナ、そんなこと言うなよな。俺との仲だろ?」
「誰がよ。」
「それより、そっちの奴…えーと…。」
「デリト。」
「そうお前だよ、デリト。俺の子分をよくも痛めつけたな? それに俺のヒバナに手を出すなんてよぉ、許さねぇぜ!」
「なんだよ?」
やる気か?っと思ってたら。
「次のラクガキ予選会場で勝負だ! 待ってるぜ。」
「はあ?」
そう言い残してデンカは、ガラシと共に去って行った。
なんでこうなるの?っと、デリトは、頭を手で押えた。
「ちょっと、デリト!」
「なんだよ!」
「デンカに負けたら、こっちは頭上がんなくなるんだから、絶対勝ってよね!」
「誰のせいで…。あーもう!」
デリトは、ヤケクソで天を向いて叫んだ。
「なんで、こんなことになったんだよ…。こっちは、名前以外なんも分かんないのに…。」
「ご……ごめん。」
さすがのヒバナも、マズかったと理解したのか申し訳なさそうに謝った。
「ごめんね、デリト…。僕がもっと強かったらよかったのに…。」
「タローは悪くねぇから。」
デリトは、ハーーっと長いため息を吐き、両手を腰においてコキコキと腰を回した。
「……やるっきゃないか。」
デリトは、バリボリと頭を掻き、そう呟いたのだった。
デリト君の、初ラクガキファイト。
ラクガキの姿については、ご想像にお任せします。っと、いうことにしました。
攻撃・バリア・魔法かぐらいのタイプぐらいは書くけど。
描く姿は、人それぞれですからね。