主人公とヒバナの会話が主。
デンカとの戦いは、結果だけで言うと、勝った。
攻撃タイプ主力のデンカの攻撃は読みやすく、2対2だったが、1体だけで終わった。
もちろん、ズルなどしていない。そもそもジャンケン方式のラクガキファイトで、ズルも糞も無い。そういう試合だ。
消セ
「……デリト!」
「…ぅ…うぅ…。」
全テを オマエの意志に任セル
「ああああああああ!」
「わっ!?」
デリトは、飛び起きた。
飛び起きたデリトにぶつかりそうになったヒバナが慌てて後ろに仰け反り、こけるように尻もちをついた。
「はあ…はあ…! なんだ…今の?」
「うなされたわよ。悪い夢でも見てたの? 水でも飲む?」
「ああ…、そっか…。わりぃ。」
ヒバナが持って来た水の入ったコップを受け取り、水を飲んでデリトは一息ついた。
ヒバナ達の家は…、というか廃屋というべきか、広場の端にポツンとあるその廃屋がヒバナとタローの住まいで、今はデリトも居候させてもらっている。
ちなみに雑魚寝だ。贅沢は言えない。食事は1日2回。なお、フリーのラクガキファイトで稼いだカラーを換金し、デリトは食費などを自分の分は出している。最初は断られたが、貸しは作りたくないデリトは、無理矢理押し切って渡したのだ。
「ん~…? どうしたの?」
「なんでもない。まだ夜が明けてないから寝てな、タロー。」
騒ぎを聞いて起きてしまったタローにデリトがそう言って寝かせた。
「……ふう…。ヒバナ、お前も寝ろよ。」
「目が覚めちゃったわ。」
「…奇遇だな。俺もだ。」
「朝日が上がるのを見る?」
「夜風は寒いぜ?」
「この地方は、ずっと温帯だからだいじょうぶよ。それに、上着ぐらいあるわ。貸してあげる。」
「わりぃな。自分の分は、今度買う。」
「別に良いわよ、これくらい。」
二人は、タローを起こさないよう廃屋から出て、夜が明け始めている外へ出た。
「あのさ…。」
「なんだよ?」
「デンカに勝ってくれて、ありがと…。」
「別に。楽勝だったし。」
「ねえ、デリト。あんた、本当に名前以外何も覚えてないわけ?」
「ああ…。全然思い出せねぇ。」
「ふーん…。とりあえず、この町の人じゃないってのは間違いないけど、どうしてこの空き地に?」
「それこそ分からねぇよ。『起きなさい』って声の後に、このペンジェルで絵を描いてみろって声がして……、そのあとでお前に会った。でもって、サンダル投げつけられた。」
「あれは、あんたがちゃんとラクガキを管理してないからよ。おかげで死ぬかと思ったわ。」
「誰も助けてくれなんて言ってねーし。」
「あのね! 自分のラクガキくらい、自分で守りなさい!」
「あー、付けられた古傷が痛むわー。」
「ウソでしょ! 傷なんて1個もないくせに!」
「ジョーダンを真に受けるなよ。へっ。」
「ホント、ムカつくわね!」
こうしてギャイギャイ二人が言い合っている間に、朝日は上がった。
「腹減ったな。朝飯にしようぜ。」
「そうね。まったく…、あんた絶対前世は悪い奴だったんでしょうね。」
「……。」
「どうしたの?」
「……ぜんせ…。」
ーーーーリト。君は……、ヒトが、嫌いかい?
「うぐっ!」
「デリト!?」
急な頭痛にデリトは、頭を押えてその場にへたり込んだ。
「だいじょうぶ!?」
「へ、平気だ…。」
「ウソ! 顔色最悪よ!」
「……だいじょうぶだ。俺は……、まだ……決めちゃいないから…。」
「えっ?」
「……ん?」
デリトは、無意識に口に出した言葉にキョトンとした。
「どういうこと?」
「いや…、俺なに言ってんだ? 意味分からねぇ…。」
「本当にだいじょうぶ?」
「…とりあえず、カラー集めて…、ラクガキ描いて…、予選に行くぜ。勝ち進めばいいんだろ?」
「そ、そうね…。予選を勝ち抜いて、帝国ラクガキ大会で優勝すれば、その賞金でホームを取り戻せるわ。……頼りにしてるわよ。」
「俺も、居場所が分からない以上、お前らに頼るしかないし、これで貸し借り抜きだからな。」
「…うん。」
「なんだよ? 不満か?」
「ううん、そんなことないわ。もし、優勝したらだけど、ホームが再建できるだけもらったら、あとはアンタにあげるから。」
「おいおい、いいのか?」
「もし、あんたが余所の国の人だったなら、帰るのにお金いるでしょうが。それに……。」
「それに?」
「もし、あんたに身内が誰もいないとかってことが分かったら……、生きていくのに必要でしょ?」
「そりゃ、お前らの方だろ? 家を取り戻したって、その後はどうすんだ?」
「私達のことは気にしないで。」
「あのな……。」
「いいから。先生が帰ってきたときのために、家がいるだけなんだから! 気にしないで。」
「せんせい?」
「あ……、アンタには関係ないわ。」
「そうかよ。じゃあ、聞かない。」
二人がそう会話していると、ヒバナの腹がぐ~っと鳴った。
「プッ…! とりあえず…、朝飯作ろうぜ。」
「笑うなー!」
顔を赤くしたヒバナが、ウガーっと怒った。
ラクガキファイト描写は、ほとんど無しに、ゲーム中のキャラとの交流を主に書いていきますので。
……戦闘は、書くかもしれないけど、たぶんざっくりになるかも。
なお、カップリングは無しです。主人公とヒバナは、結ばれませんので。