ジェネシス ~陸奥の冒険~   作:雷電Ⅱ

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アーケード版の泊地水鬼があんなに病んでいるとは思わなかった……
そして、ウォースパイトが動く姿が見れるとは思わなかった


第10話 射撃演習と警告

次の日、長谷川は射撃の実験の用意が出来たと言ってきた

 

一行は半信半疑だったが、ある場所に連れて行かされて怜人は納得した

 

「採石跡地とは考えたな」

 

「そりゃ、子供の頃は特撮見てましたから!関係者に申請出したら一発でOK出ました!」

 

 怜人は苦笑した。確かに採石場は許可され取れば爆発実験も出来る。そのため、一昔前の刑事ドラマや特撮などにおいて、爆発させてもほとんど被害が出ないことから、特に戦闘シーンに使用されることが多い。今は映像の進歩もあり使われなくなってきたが、ファンの間ではスポットになったりしている

 

「で?どんな理由を付けて許可を取ったんだ。……いや、待て。言わなくても分かる。想像出来るから」

 

怜人は長谷川に質問しようとしたが、彼の事は大体分かるのだろう。聞くのを止めた

 

「と言っても、バンバン撃つと不審がられるから数発までだ*1

 

「むっちゃん、良かったね」

 

 優子は喜んだが、陸奥は困惑しながらも微笑み返した。本当だったら、海上でやるべきだ

 

水上に浮かぶ事は確認しているし、遠洋で射撃も出来たはずだ

 

だが、爆発音で海保が駆けつけられたらそれこそ問題だ。41cm砲は、現代日本の社会にとってはオーバーキルである。尤も、今ではミサイルが主流になっているためオーバーキルかどうかは微妙ではあるが

 

「それでは撃つ……わね。本当に大丈夫?」

 

組み立てられた艤装を装着し、山の方へ砲を向けながら確認を取った。あり得なくはないが、万が一、裏切ったら陸奥は警察沙汰になるのは間違いない

 

「大丈夫、大丈夫。いいから。それよりもこれ」

 

長谷川は陸奥にあるものを渡していた。それは耳栓である

 

「結構よ。私、そんなものなくても大丈夫よ」

 

「素晴らしい。鼓膜まで頑丈とは」

 

「おい、時間は限られているんだ。実験開始。ビデオ回っているか?」

 

 スマートフォンで撮影も言いかもしれないが、画質に限度がある。ビデオカメラの方で撮ることにした

 

優子が親指を立てて録画準備したと合図をした

 

「いいわ、やってあげる……撃て!」

 

陸奥の掛け声と共に41cm連装砲が吠えた。陸奥の砲声が辺りを鳴り響かせた

 

「確かに発射出来た。後は爆発威力だけだ」

 

「大丈夫ですって。あの砲はとても小さいから花火程度くら──」

 

 長谷川がそこまで言った時、採石場から大爆発が起きた。まるで、雷鳴のような爆発音と爆風に怜人達は驚いた

 

遠くの森から鳥の群れが木に休んでいたのだろう

 

爆発音で驚き、一斉に飛び上がったのだ

 

 爆発は収まっても、3人とも未だに呆然としていた、陸奥は申し訳なさそうな表情をしていた

 

「ご、ごめんなさい。その、地上で撃った事が──」

 

「素晴らしい!オモチャのような大砲なのに、威力は変わらないなんて!」

 

我に帰った長谷川は興奮し、後の二人も驚いていた

 

「まさか、ここまで威力があるとは」

 

「むっちゃん、凄い」

 

「そ、そう?」

 

 陸奥は微かに微笑んだ。実際に撃ったことは余りない。『艦だった時』は演習くらいだ怜人も長谷川も威力は当時と変わらない事に驚き……実際は41cm砲の威力は見たことがない。彼らは小さな爆発が起こるとばかり思っていた……優子も関心してい

 

 とりあえず、3人とも艦娘に恐れていない。陸奥は密かにそれを危惧していたが、杞憂に終わった

 

それどころか……

 

「スタッフ呼んで撮影して貰うか?」

 

「爆発には陸奥の主砲を使おう。三式弾入りで」

 

「冗談で言っているわよね!怪人ではなくて、出演者を殺しているわよ!」

 

三式弾の試射と爆発を見て、怜人と長谷川は呑気に話している。爆発音や砲声には慣れたのか、すでに冗談交じりで話している

 

「パパと長谷川おじさんは未知の興味が強いの」

 

「『人は理解出来ないものには怖がる』という言葉は何処へ行ったの?」

 

陸奥は最早、このギャップに頭を悩ませていた

 

この未来の日本は情報が簡単に入手しやすい。国内情勢どころか地球の裏側まで分かる

 

昔とは大違いだ

 

 そして、社会の長所短所も学んだ。格差は昔からあるのだから自分が違う目で見られるのも無理はない。柳田教授も豹変するかもしれない

 

……しかし、後輩の長谷川を見る限り、そんな事はないだろう

 

「だって長谷川おじさんは、雪男を捕獲するために海外旅行しようとしていたから」

 

「初めて聞くわ。そんな理由で」

 

怜人と長谷川がデータを見比べ話し合っているのを遠目で見ながら言った

 

二人とも真剣にこちらを研究している

 

「……日本女子の体力テストの平均よりも上回っている。これだけの力なら膨大なエネルギーは必要だ」

 

「だから大食いなのか。艤装を付けると燃料が必要を取り入れられるのも納得がいくな。内燃エンジンで生命エネルギーに変換とは驚きだ。ところで何処で買ったんだ?」

 

「燃料販売店だ。普通に買えるぞ」

 

「もう少し効率のいい動力源はないか?原子力……いや……丁度、賢者の石があるじゃないか。それを使えば──」

 

「賢者の石は増幅装置のようなものだ。そんな都合の良いのものではない。限度はある。それに数は限られている。それを使って──」

 

二人は議論していたが、陸奥も優子も呆れるように遠くから見ていた。話についていけないし、理解しようとも思わない

 

ただ、悪意はないようだ

 

「ねえ!いつまで話しているの?」

 

陸奥は少し苛立ちながら声をかけた。この二人の話し合いはずっと続くだろう

 

「悪い。では、身体能力も兼ねてやるか」

 

 

 

 

 

身体テストは大学の敷地では出来なかった事を行った

 

艤装装備で何処までが限界か?

 

 陸奥は淡々と行った。身体能力は劇的にパワーアップしたが、その分、エネルギーの補給が必要となった

 

「陸奥の骨格は実は金属製?それとも、艤装はバイオメカニックかな?あるいは、──」

 

「これから先も映画漫画ネタを披露するつもりか?」

 

「夢は持たないと!もしかすると、マントをつければ、空を飛んだり、目からビーム出たり──」

 

 長谷川は熱く語っていたが、怜人はやれやれとばかりに聞き流していた。確かに陸奥の身体能力は驚きだ。しかし人がベースなのか、あくまで人の能力よりも上である

 

「そんな事より昼食にしないか?もう、午後の一時だぞ?」

 

怜人は置いてけぼりを食らっている娘と陸奥を見つめながら提案した。朝10時からずっと検証である。流石にぶっ通しでやるのは不味い

 

「貴方達を見ると呆れるわ」

 

陸奥はため息をついた。科学者はやはり変人だ

 

 

 

 昼食は本来なら弁当屋で買ったもので済ましているだろう。しかし、陸奥は自分がやると言い……遠くに行って昼食が弁当屋で買ったものだと流石にそれはないと陸奥は言い出した……陸奥は自ら造ったのだ。野菜も肉も入っており、おにぎりまである

 

「しかし、料理なんて、何時から習ったんだ?」

 

「軍艦なら当たり前よ。それに、お姉さんは何も居候なんてしないわ」

 

陸奥は料理の方法は優子に習っていた。物が溢れている時代には戸惑ったが、徐々に慣れていった。また、軍艦には乗組員に料理を振る舞うために厨房は必ずある

 

そのためだろうか?数日で料理をマスターしたのだ。料理は乗組員のストレス解消にも繋がる。間宮などは羊羹が振る舞われていたと言われている

 

「女子力は磨かないとな」

 

「先輩、それは違う意味ですよ」

 

 長谷川は突っ込みを入れた。聞いたところによると、長谷川はオカルトに興味を持ち、いずれは超常現象を科学的に研究しているらしい

 

学生時代に何故か怜人と気があったらしい

 

「へぇー……面白い事ね」

 

陸奥が関心しているその時、近くの茂みから何かガサガサと音が聞こえた

 

「何だ?」

 

怜人は気にしている間もずっと聞こえてきている

 

「ここは山中だから猪や鹿も出るぞ。……もしかすると、ツチノコかな?」

 

「そんな訳ないだろう。大体、お前──」

 

怜人が突っ込むよりも早く、陸奥は鋭い声をあげた

 

「逃げて!鹿でも猪でも無いわ!熊よ!」

 

 この警告に、全員がギョッとした。草むらから巨大な茶色い獣をしたものが二足歩行で立ち上がったのだ

 

熊──しかも、彼等に近づいていたのは何とヒグマだった!

 

「おい、ここは北海道ではないぞ!何でこんな所にヒグマがいるんだ!」

 

 日本には二種類の熊、ヒグマとツキノワグマである。しかし、ヒグマは北海道のみ生息のはずである

 

「そう言えば、先週あたり動物園で熊が逃げたというニュースが……」

 

「不味いぞ!警戒すらしていない。……人を襲って来る!」

 

 怜人の警告に皆は青ざめた。何しろ、ヒグマの体長は2mから3m、体重300kgから500kgという巨体を持ち、大自然の中で鍛えられたことによってヒグマの肉体は筋肉の塊である。動物の骨肉など簡単に剥ぎ取られてしまうほどの怪力の持ち主である事から、襲われたらたまったものでも無い。速さも時速50km以上もあり、逃げる事はまず不可能である。しかも、こちらに近づいてきている。人を恐れない証拠だ

 

「任せて!この主砲で……」

 

 陸奥は叫んだが、後になって気がついた。残念ながら艤装は外している。しかも、危険物だからということで自分達がいる場所よりも離れた所に置いているのだ。安全を考え距離は30m離れた所でだが、それでも妖精達も慌てて発射準備をしているが、妖精はあくまでサポートであって艤装は艦娘がいないと作動しない

 

「どうしよう……」

 

優子は父親の陰で震えながら呟いた。皆はクマを睨んだが、残念ながらクマは立ち去る気配がない

 

「だ、大丈夫よ。艤装まで遠くない」

 

「いや、待て!」

 

 怜人が忠告をするよりも早く、陸奥は艤装の場所まで走ったのだ。しかし、それは悪手ともいえる。艤装を置いた場所が場所なだけに陸奥は必然的にクマに背を向けた事に成るからである。熊も陸奥にターゲットをし、追いかけたのだ

 

「本当に来た!」

 

 陸奥は熊の速さに驚いたが、それでも陸奥は艤装のある所まで走った。何とかたどり着き艤装を装着した。しかし、熊は既に陸奥の目の前にいたのだ

 

よって、ヒグマののしかかりに対して陸奥が両手で抑えている形となったのだ

 

「グルルル」

 

 熊はうなり声を上げると、陸奥が手で抑えている前足を振りほどくため必死に動かしている

 

しかし、陸奥は何と熊の前足を抑えている。いや、熊の重さを何ともないらしい

 

「早く、射撃準備を!」

 

「今、やっています!」

 

 陸奥は艤装を管理している妖精達に叱咤した。艤装を付けたお陰で熊とやり合う事が出来たが、全く被害を受けないという保障はない。艤装が無かったら、熊とやり合うどころか食い殺されているだろう

 

「用意出来ました!」

 

「よし、撃て!」

 

陸奥が号令をかけたその時、陸奥が突然、爆発した。

 

予想外の出来事に怜人達も熊の恐怖よりも唖然としていた

 

爆炎がキノコ雲のように立ち上がり、爆風が3人を襲った

 

 

 

「先輩、陸奥に新たな新技を覚えさせたのですか?」

 

「いや、そんな機能は無いが……」

 

「むっちゃん、大丈夫なの!」

 

 3人は口々に言ったが、また爆発が起こるのとヒグマが生きている可能性もあるため危なくて近寄れない

 

爆煙が収まり、視界が晴れると遠くで一目散に逃げているヒグマがいた

 

「おい、ヒグマ死んでいないぞ。よく、生きていられるな」

 

「そりゃ、散弾銃でも死なない熊の種類ですから」

 

怜人も長谷川もヒグマの事は気にしていない。あの爆発で生き延びたヒグマも恐ろしい

 

そして、その爆発で生き延びた者もいた

 

それは……

 

「もう……ば、爆発なんてしないんだから!」

 

陸奥はその場に座り込みながら悲痛な声を上げていた

 

どうやら、主砲を発射する時に艤装が爆発してしまったらしい

 

原因は不明なのだが、陸奥はあの大爆発にいたにも拘わらず、負傷すらしていない

 

いや、艤装は大破し、服も少し破れているが、それだけだ

 

手足もあり、火傷すらしていない

 

「まるでギャグマンガに出てくる爆発シーンみたいだ……」

 

「凄いのを作りましたね。というより、なんで爆発したんだ?そんなに新技覚えたかったのか?」

 

「何の話をしているの!私だって好きで爆発したんじゃないわ!」

 

 陸奥は破れている服の箇所を手で覆いながら抗議した。陸奥の服装はへそ出しノースリーブのトップスに黒の超ミニスカートと肌を出しているのが多いなだけに、破れいるのだ

 

「関心してないで快方しなさいよ!……むっちゃん、大丈夫?」

 

「え、ええ……大丈夫よ」

 

 優子は持ってきたタオルを陸奥にかけながら呆れていた。流石に爆発には驚いたが、陸奥が無事である姿にホッとすると同時に自分の父と父の親友の無神経さに呆れていた

 

確かに驚くべき能力(?)だが、いつまでも観察する訳には行かない

 

そんな中……一行に近づく者がいた

 

中年の男性が猟銃を手に持っていることからハンターだろう。何故か一人で行動していたが

 

「あ……あ、あ、ああの~~」

 

「どうかしましたか?」

 

怜人は老人のハンターは怯えながらこちらに話しかけている

 

そして、怜人と話しているのに陸奥を何度もチラ見している

 

「私は猟友会の者ですが……その……そちらの女性の方に……怪我はありませんか?」

 

「落ち着いてください。ヒグマなら逃げましたよ?」

 

「そうではなくて……その~」

 

 ハンターは困惑しながら、そして何かに怯えていたが、ハンターは思いきって陸奥に聞いた

 

「先ほど銃を発砲しましたが、お怪我はありませんか!?」

 

「えっと、撃った弾はこれのことかしら?」

 

 陸奥は地面から何か小さいものを掲げていた。小石かと思いきや、よくみると弾丸である。しかも、その弾丸がつぶれているのだ。恐らく、陸奥の艤装か肌に当たったのだろう

 

老人は顔を真っ青になりながら陸奥に問い詰めた

 

「だ、大丈夫ですか!何処か撃たれた傷は!救急車を呼びましょうか!」

 

「おい、落ち着け」

 

老人のはパニクっているなか、怜人は強引に陸奥から引き離した

 

 

 

 老人の話によると、市役所の要請により動物園から逃げたヒグマを捕らえるよう依頼されたらしい

 

 初めは捕獲を目的としていたが、野生の勘を戻したのか、狂暴になったのだ。そして、人も襲い怪我人も出たため、射殺許可も出たらしい

 

 山林を探している中、偶然ヒグマを発見。追跡していた所、採石跡地にたどり着いてしまったらしい

 

そして、ヒグマが陸奥に襲われているのを見や否や射殺を決意した

 

 このままでは犠牲者がでる。猟銃を構え引き金を引いた瞬間、女性が突然、爆発。余りの現象に老人は呆然としたという

 

 

 

 老人の説明に一行は困り果てた。どうやら、この老人は自分がやらかしたと思っているらしい

 

そのため、長谷川は取り繕うことになった

 

「心配しないでください。爆発映像を撮るためにここにいるわけです。熊が出たので謝って爆発したんですよ」

 

「しかし、女性に銃弾が──」

 

「心配しないで下さい。この女性はスポーツマンです。腕立て伏せ100回、腹筋100回、スクワット100回、ランニング10kmを3年間やったお陰で強靭的な肉体を手に入れた訳ですから」

 

「ちょっと!それで通用するの!」

 

長谷川は丁寧に説明していたが、陸奥は小声で非難がましく抗議した

 

こんなデタラメな説明を納得する者が……

 

「そうか。オリンピックで金メダル頑張ってくれ」

 

「何で信じるの!疑問に思わないの!」

 

何と老人は信じたのだ。そして、ヒグマが逃げたであろう方向へ足を運んだ

 

「パパ、あの人、大丈夫?」

 

「パニクっているのは間違いない」

 

老人を見送りながら怜人と優子は気の毒そうな目を送っていた

 

 恐らく、老人が撃った弾は熊ではなく、陸奥に命中したのだろう。そのお陰で爆発した原因になったのかは不明である

 

 しかし、これでは老人は陸奥に銃を向けて発砲したことになる。普通の人なら最悪、死んでいるのだろうが、陸奥はライフルの銃弾どころか大爆発にも耐えられたのだ

 

普通の人なら驚くだろう

 

だが、老人は違っていた

 

(ワシは人を殺していない。発砲していない。絶対に発砲していない。たから、警察沙汰にはならない……)

 

 老人は心の中で兎に角、自分は逮捕されないと暗示をかけているのだ。それもそのはずで銃所持免許も持っているからと言って何処でも銃を持ち歩いたり、自由に撃てる訳でもない

 

違反すれば犯罪である。怜人も陸奥の艤装に頭を悩ませたのもそれである

 

「あの人、大丈夫?夢遊病のようにフラフラと森に入ったけど」

 

「でも、むっちゃん!ライフルの弾どころか爆発に耐えれるなんて!凄い能力よ!」

 

優子は老人のハンターには目を暮れずに、陸奥の能力に興奮していた

 

まさか、ここまで頑丈とは思わなかったのだ

 

「パパ、むっちゃんは不死身なの?」

 

「……不思議な事だが、死ななくてよかった」

 

怜人もヒグマとやり合っただけでなく、爆発もライフル弾も耐えた陸奥に驚きを隠せなかった。まるで、ヒーロー番組に出てくるような能力だ

 

「戦艦ってあんなに頑丈なのか?戦艦大和だったっけ?簡単に沈みそうな気がするが」

 

「先輩、大和の悪口を言うのはそこまでです」

 

 本当は長谷川は戦艦大和について語ろうとしたが、止めておいた。素人に軍事なんて分かるわけがない

 

その後、一行は主砲の射撃を何回かした後に帰った

 

許可はあるものの、余りにも沢山の爆発をすれば怪しまれる

 

 余談ではあるが、ばったりと遭遇したヒグマは後に警察と猟友会によって捕獲されたらしい

 

 

 

採石跡地から射撃実験を行い、いそいで家に戻った日の夜

 

「君の砲塔爆発は装填不十分。簡単に言えば、暴発だ」

 

「だから、私は爆発したのね」

 

 陸奥は気を落としながら怜人の話を聞いていた。帰宅後、妖精と怜人は直ちに検査をした。但し、怜人は機械工学など工学系を専攻していなかったため、妖精が艤装の修理点検をする事に成った

 

怜人は陸奥の身体の容態を検査していたが、異常は見られなかった

 

「気分はどう?」

 

「平気よ」

 

「痛みはやしびれは?若しくは運動障害は?」

 

「ないわ。寧ろ、死んだかと思ったわ」

 

陸奥は怜人の質問に淡々と答えていた。今は医者と患者の診察のようなやり取りだった

 

「今の気分は?」

 

「問題は無い。ねえ、何で私は死んでいないの?少なくとも手足は吹っ飛んでいたのに?」

 

 陸奥は疑問を口にした。普通なら死んでいる。生きたとしても手足は吹っ飛んでいるはずである

 

「奇跡なのだろう。若しくは見た目だけで爆発の破壊力はそこまで高くないのか」

 

「科学者なのに、運に頼るの?」

 

 陸奥はからかうように質問した。とても、怜人の今までの言い方と違っていたからだ。確かに医学や遺伝子工学など学んだ人とは思えない回答だったからだ

 

「運も人生の一つだ。こればかりではどうしようもない」

 

怜人は肩をすくめた。実際に怜人が賢者の石にたどり着いたのも奇跡に等しかった

 

執念で産み出されたものなのか?それとも奇跡的の産物なのか?

 

しかし、陸奥は現実に存在する

 

「今はどんな感じ?」

 

「お腹空いたわ」

 

帰ってから何も食べていなかった。

 

「では、食事にするか。大食いがいるから沢山作らないとな」

 

「私と優子ちゃんがいつも作っているでしょ」

 

「……まあ、料理の腕は負けるがな」

 

怜人は苦笑いした。彼は料理は出来ないことはないが、そんなに上手くない

 

 

 

夕食の料理を作り、食卓に並べ食べようとした時、玄関のチャイムが鳴った

 

長谷川はとっくに帰ってるし、突然家に押し寄せて来るとは考えられない

 

押し売りか、それとも学校の先生か?

 

怜人は、何気なくインターホンの受話器を取り上げたが、聞こえてきたのは何と石塚だった

 

「もしもし!ちょっと聞いていい!」

 

「お、お前……」

 

怜人は受話器を置くと慌てて玄関に向かう。もしかして、騒ぎに駆けつけたのか?

 

前の犯人に襲われた時か?

 

鍵を解錠し、ドアを開けるとそこには鬼の形相をした石塚と人型ロボットであるリリがいた

 

怜人の姿をみるなり、彼女は怜人の胸ぐらを掴むと問い詰めた

 

「貴方は何をしたの!突進してくる車を受け止めたり、ヒグマとやりあう怪人を何で作ったの!?どういうつもり!私の姉を怪物にするなんて!」

 

「落ち着け!姉を怪物にしていない!」

 

「冗談言わないで!精神病院で再逮捕された人が入院していると聞いて調べたの!警察も医者も鼻で笑っていたけど、私は分かった!何を作ったかは!」

 

 石塚は怒り狂っていた。どうやら、妻を殺した犯人が出所して事故を起こしたというニュースを聞いて駆けつけたらしい。しかも、ヒグマの件は、昼間に起こった出来事だ。もう、聞き付けたのか?

 

「落ち着け!いいか、僕はしていない。今は止めている」

 

「じゃあ、何を作ったの!ロボット?それとも、サイボーグ?突進する車を受け止める人は、この世にいない!」

 

石塚は聞く耳を持たず、怜人を問い詰めていた。騒ぎを聞いた優子も陸奥も駆けつけたのだ

 

陸奥の姿を見てリリは気づいたのだろう。そして、石塚に忠告した

 

「美恵子様、怜人はウソをついていません。姉を蘇らせていないようです」

 

「え?」

 

石塚は一瞬、固まったが、恐る恐るリリに顔を向けた

 

「じゃ、誰なの!?」

 

「あの人です。データベースにアクセス。──該当者なし」

 

 リリは淡々と陸奥をしっかりと見ながら解析している。このロボットはここまでの能力があるのか?

 

「精神病院にいる患者の証言と特徴が一致しています。間違いないです」

 

石塚は怜人の胸ぐらを掴んでいる手を離すと陸奥に近づいた。

 

陸奥は僅かに下がったが、石塚はそれよりも早く陸奥の顔を触った

 

「リリ、これは何?」

 

「人間です。生体反応があります」

 

石塚は唖然としていた。この人は誰だ?

 

「あ、あの……いいかしら……私は陸奥よ」

 

陸奥は挨拶したが、石塚は凍りついたままだ

 

 

 

「それで、教えてくれる?」

 

 石塚は怜人を連れて誰もいない部屋に入ると、質問した。陸奥達は夕食を取ることにした。リリも一緒である

 

「分かった。全部、話す」

 

怜人は観念した。ここでウソをついても意味がない

 

怜人は今までの経緯を説明した。賢者の石やホムンクルス伝説、G元素、陸奥鉄、そして艦娘である陸奥のこと

 

「勿論、誰にも言っていない。警察があの犯人の証言を信じなくて良かった」

 

「ええ。どうでもいい。問題はあの陸奥という艦娘よ。貴方は陸奥の乗組員ではなくて、未知の生命体を産んだ?」

 

「わかっている。どういうことなのか。数式も石も再検査したが、異常なかった。伝説と違う。どういうことだか、僕にも分からない」

 

 怜人は思い付いた事を再調査した。普通なら病院の施設や実験施設が使えれば数時間で分かるのだが、ここでは無理である。購入した機器も最低限のものでしかない

 

つまり、怜人は経験を便りに研究しているのだ。だが、どうしても分からない

 

古代人は何を思って賢者の石を作ったのだろう?

 

「文献も調べた。だが、陸奥に近いような存在はない。過大評価したのか?それとも──」

 

「古代人は、賢者の石の力を恐れて後世に伝わらないよう記さなかった、とか?」

 

 怜人は思いつく限りの事を述べたが、石塚は呆れるように遮った。妻を蘇らせるための試験テストとして戦艦陸奥の乗組員を蘇生するはずが、まさか陸奥に命を吹き込むとは夢にも思わなかっただろう

 

「爆発原因も覚えていない。乗組員ではないのは確かだ」

 

「その前に当時の旧日本軍に女性がいる事自体、凄い事よ」

 

 石塚は指摘すると話を切り上げた。兎に角、彼はもう妻を蘇生する研究なんてしないだろう。陸奥について調べると言うことだった

 

「それはそうと、彼女はクローン人間ではないのは分かったけど……どうするつもり?」

 

「というと?」

 

「惚けないで!陸奥は化け物なんて言わないけど、完全に医学倫理に問われるものよ!」

 

 石塚は指摘した。人工的に人を創る事は倫理に反する。クローン人間ですら、技術は確立されているが、つくる事は禁じられている

 

しかし、実際に誕生した時の人権を云々する事は出来ない

 

 これは大変デリケートな問題を含む。これはいわゆる医学倫理の問題として、現代では解決されていない。人類全体の大きな問題でもあり、宗教ですらこの問題を解決していない。いや、永遠に解決出来ないだろう

 

 だが、怜人はそれを破った。石塚は古代人も現実逃避という形で詳細を残さなかったのではないか?と思うようになった

 

「G元素は会社の所有物よ。もし、陸奥の存在がばれたら会社は、陸奥を奪いに来るわ」

 

「そうだな。また、脅迫材料を探さないといけないな」

 

「……そういう所はまだ衰えていないのね」

 

 石塚は呆れ果てていた。人の弱みを握って交渉を持ち掛ける。仮に命を狙われてもそれを跳ね除ける事も出来る

 

「兎に角、まだ1人だ。誕生は人と異なるが、陸奥は超人ではない。まあ、少し力強い所はあるが」

 

「ギネスブックに載るような種族を生み出しても何とも思わない人がよく言うわ」

 

 石塚は怜人が恐れないのは結局はオカルトマニアである長谷川の存在が大きかったのだろうと思った。実際に彼は目を輝かせていたが

 

 しかし、多数のSF作家はクローン人間をテーマとした作品を造り上げているが、結論は出ていない

 

「心配するな。あの未知の生命体だって無害なんだろ?」

 

「そうね」

 

 怜人も石塚も内心は違っていた。実は、未知の生命体の進化は凄まじいものだった。多様に変化しているにも拘わらず、食事の量は一定だった

 

 あれだけ進化するのであれば、エネルギーは大量に必要のはず?G元素の影響なのか?

 

「まあ、肉食ではないのだから問題はないだろう。アメリカ映画にあったラプトルのように賢くて群れで襲うことも無い。進化して大きくなり、口から放射熱線を吐く訳でもない」

 

「だといいけど」

 

 不安は無いと言えば嘘になる。だが、未知の生命体は、新たな発見はあるものの、危険ではない事も事実なのだ

 

 

 

 一方で、食卓では2人の女性は楽しんでいた。陸奥は待った方がいいと提案したが、優子は先に食べるよう言った

 

2人は元々、仕事仲間だ。話し合いが長引いた事も一度や二度ではない。折角の料理も冷めてしまう

 

 今晩の夕食はビーフシチューだった。陸奥が挑戦したいと言って来たためだ。シチューの材料も駅前のスーパーから買って来て、陸奥は優子と協力して料理を造ったのだ。怜人も手伝いいつの間にか豪勢なディナーになっていた

 

 本来ならここまでやるつもりはないが、成り行きだろう。そんな時に石塚がやって来たのだから最悪のタイミングだろう

 

「貴方は食べないの?」

 

「私はロボットですから食べる必要はありません」

 

「ふ~ん。人の手で作られたのに、食べないなんて」

 

 陸奥は不思議そうにリリを眺めながら観察していた。人型ロボットを見るのは初めてである。しかも、機械で出来ているのだ

 

「本当に機械なの?魔法では無くて?」

 

「まさか、確立したロボット技術よ」

 

 陸奥の疑問に優子は、苦笑いした。確かに喋れるロボットを過去の人が見たら仰天するだろう。「高度に発達した科学は魔術と見分けがつかない」とは正にこれのことである。尤も、賢者の石や妖精伝説が実在したことにも驚いてはいるが

 

「それよりも遅いわね。別の日に話せばいいのに」

 

「博士は貴方の存在に困惑しています」

 

「やっぱり私の事」

 

 リリに指摘されて陸奥は心の中でやっぱりと呟いた。自分は普通の人間とは違う方法で誕生したのだ

 

「私でも分からない。いえ、記憶が曖昧なの。瀬戸内海沖合で爆沈されて……そして気付いたらここにいた」

 

「そういうことではありません。貴方の存在は、生物学的にはあり得ない事です」

 

「お姉さんも分からないわ。自分の存在なんて。今も奇妙な感じだわ」

 

 陸奥は自分の手を見つめながら呟いた。軍艦だった自分が肉体をもって生きている。これだけでも驚きだ

 

機械技術と人工知能の発達で生まれたロボットとは訳が違う

 

「貴方から見たら私は何?」

 

「未知の方法によって生まれた人間でしょう」

 

「それだけ?兵器とか人の姿をした化け物とか」

 

「そういう非科学的や誹謗中傷な見解はありませんし、兵器の類いでもないです」

 

 素っ気なく言うロボットに陸奥は苦笑いした。リリの事は優子から聞かされていたが、返ってくる返事は客観的な意見である

 

「人以上の能力を持った人間がいても何も思わないの?」

 

「受精卵の段階で遺伝子操作を行い、知力や体力を向上させるデザイナーベイビーが存在します。海外の一部では既に行っています」

 

「そう……」

 

 陸奥はあの日を思い出した。怜人は自分が知力向上のために作られたデザイナーベイビーであると告白した

 

……親の望み通りに遺伝子操作してもいいのだろうか?

 

「分かったわ。私も生まれたばかりだから」

 

陸奥は話を切り上げた。いつまでも悩んでも仕方ない。自分は副産物で生まれた者だから

 

そうしている内に廊下から2人の姿を現した。怜人と石塚である

 

 話終えたらしいが、怜人は罰が悪そうにしており、石塚に限っては素っ気ない感じである

 

「家まで送っていこうか?」

 

「結構よ。私は海外出張へ行くのだから」

 

「海外だと?」

 

 陸奥が進めるよりも早く、石塚は淡々と話す。しかも、出張と聞いて怜人は驚いたのだ

 

「例の元素と未知の生命体。共同研究という形で行くの」

 

「法に触れるから海外へ、という訳か?」

 

「あの生き物。無機物をとり込んでは自分のものにしている。しかも、進化の段階が早い」

 

怜人は冷ややかに言ったが、石塚は突拍子の無い事を言ったのだ

 

「未知の生命体は、水圧の高い所にも適応しているし、知能も高い個体もいる。それに過激な環境団体がテロの声明を発表したの。未知の生物が外に逃げたら大変な事に成る」

 

「それは考え過ぎだ」

 

 怜人は呆れていた。陸奥が危険でない事くらい分かる。艤装や陸奥の能力を見れば確かに危険だが、陸奥は犯罪者でも何でもない。それに、陸奥自身も物事くらい理解している

 

「誰も陸奥が危険とは言っていないわ。だけど、他の人から聞いたらどう見えると思う?」

 

「酒飲んで腹割って話し合えば仲良くなれるのではないか?市民団体だって外国の軍隊が日本に攻めて来ても、そうやれば抑止力になれると話題になっただろ?」

 

「……いいわ。好きにして」

 

石塚は議論を止めた。これ以上、何を言っても無駄だろう

 

以前に比べてはマシではあるが

 

 

 

 翌日、一行は石塚とリリを見送るために空港へ行った。と言っても、リリは貨物輸送で先に送られたらしい。陸奥は旅客機に興味があるらしく、目を輝かせていた

 

「ジェットエンジン……そんなものが見れるなんて」

 

「ネットで教えたじゃない?」

 

「実物で見るのは初めてよ」

 

 優子と陸奥が空港から見える旅客機を眺めながら話している間、怜人と石塚は真剣に話している

 

「いい。多分、三浦会社は陸奥について言及する」

 

「その時はその時だ。問題はない」

 

石塚は訝しげに怜人を見た。何か、策でもあるのだろうか?

 

賢者の石はもうないはずだが

 

そして、石塚は陸奥と優子に向かった。この時の彼女は笑顔だった

 

「では、行ってくるね」

 

「いってらっしゃい」

 

優子は手を振った。いつ会えるのだろうか?

 

「確かに貴方の存在には驚いた。これから、どうする気?」

 

「分かりません。まだ、何をすればいいのか……」

 

 陸奥は戸惑いながら答えた。自分の人生なんて考えて来なかった。迷っている陸奥に石塚はハグをした。欧米風にやりたいのだろう

 

しかし……

 

「気を付けてね。貴方よりも彼の方が危ないわ」

 

 どうやら、陸奥に対して警告をしたいらしく、怜人に聞こえないように囁き声で言ったのだ。陸奥は驚いたが、石塚は既に陸奥から離れていた

 

陸奥は、困惑しながらも保安検査へ向かう石塚を見送っていた

 

 

*1
勿論、実際はこんな事は出来ない。そこは、創作と言う事で




陸奥は柳田が何かやらかすかも知れないという警告を受けるが……?
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