『大手製薬である三浦会社──他企業と共に極秘プロジェクトを企画中!』
『政府も関与か?プロジェクトの内容を明かさず!』
翌日の新聞やニュースの見出しではこのように伝えられた。記事の内容の大半は合ってはいないが、とにかく何か企んでいるといった記事が散見された
また、民間警備会や警察社が三浦会社だけでなく、工場や研究機関にも重点的に警備が敷かれた事から周辺住民は何かただならぬ事が起こったと感づいていた
本来ならこんな異常事態を国会で取り上げられるはずだが、何故か誰も黙りだった。騒いでいたマスコミもある日を境に取り上げられなくなった
何が起こったのか? フリーライターなどは探っていたが、ガードが厳しく真相にたどり着けない
そんな中、柳田奏太は三浦会社に雇われた。正確にはオブザーバーとして雇われたのだ。その目的は、探査機が持ち帰った土壌と謎の生命体を探るためである!
「柳田博士、状況は?」
「とても素晴らしい生命体だ。遺伝子情報、構造、そして知能の発達……しかも地球上の生物と似た遺伝子情報を持っている。生命誕生の鍵となるのは間違ってはいない。しかも、新たな医療技術やバイオ技術が革新的になるかも知れない」
柳田は顕微鏡を覗きながら興奮気味に話していた
美恵子は家に訪れていた時と態度が180°違う事に呆れていたが、リリは違っていた
「柳田博士は資料よりも素晴らしい人です。既に遺伝子情報を解析しただけでなく、生命を蘇らせる事に成功しています」
アンドロイドであるリリは淡々に話していた。人間だったら驚いていただろう
「しかも、こいつらは進化している。サイクルも短い」
「進化?」
「ああ、既に魚状態まで成長したぞ?あそこの水槽にいる」
石塚は慌てて目をやった。離れた水槽に確かにいたのだ。黒い魚のようなものが。まるで巨大なオタマジャクシのような生き物が水槽の中で泳いでいる。肉食ではないのか、金魚の餌は食べてもメダカなどの小魚は食べないらしい
「どうやって!?」
「生命体自体が環境に適しているのだよ。僕はそれを手助けしただけ」
「生物の進化ってそんなに短いの!研究に着手してまだ1か月しか経っていないのよ!」
石塚が叫んだ事により、近くで作業していた数人の研究員は振り向いた。石塚は慌てて頭を下げたが
「恐らく地球の環境に慣れてからだろう。例の未知の元素のお陰かもな」
柳田は素っ気なく呟いた。生命が短期間で成長した理由は、元素のお陰だろう。細胞も地球のものと似て似つかない
そのため、本来なら緩やかに成長するはずが未知の元素を取り込んでいる事で進化の過程が早いのだろう
「地球には無い未知の元素を組み込んでいるせいだろう。進化のサイクルを短くするだけでなく、体の組織を強化させる手助けをしているらしい。宇宙線に晒されても生きていた事から間違いないだろう」
「元素だけでこんな効果が!?」
「ああ。こんな元素は初めてだ。他の学者も驚いていたよ。元素の名前は他の者に任せたよ。ネーミングセンスなんて僕には無い」
この言葉を聞いた石塚は唖然とした。普通の研究員なら発見したものを論文にまとめて学会などで公表する事である
そうすれば知名度は上がり、金も地位も手に入る
……そのはずだが、彼はそれすら譲歩した。いや、この人は様々な革新的な治療薬や医療技術を開発、発明して来たのだ
それなのに、元素の名称どころか力を放棄? 確かにあの件で人が変わったのだが……
「あの……1つだけいい? 貴方の──」
「仕事の邪魔だ」
石塚は恐る恐る話しかけたが、帰って来た返事は冷たかった。まるで、何かを触れさせないために……
彼は夜遅くまで仕事をしていた。平日だけでなく、土日祝もである。飲食と睡眠、トイレ以外は研究に没頭している。寝泊まりも会社内である。研究主任も初めは感心していたが、日が経つにつれて流石に不味いと思いストップをかけた。これ以上、働いたら死んでしまう。だが、彼はまだ大丈夫という。目にはクマが出来ているし、誰が見ても過労である
しかも、彼の厄介なところは休日しろと言っても全く聞く耳を持っていない
「柳田教授、いい加減にしてくれません!」
石塚は帰ろうとしない柳田に怒鳴った
「貴方の娘さんをほったらかして仕事するなんてどうかしていますよ!」
「そのためにお手伝いロボットを家に置いた。俺がこの生物の解明に手を貸す条件として言っただろう?」
実は優子の世話は、石塚が創り出したロボット『リリ』に任せている。元々、介護用や体の不自由な人用に造られたロボットだが、残念ながら凍結された。そのため、実験データとして役に立つのでは、と思い柳田の意見を呑んだ
だが、流石にこれはやり過ぎだ! 娘をほったらかしにする親はいない! 居たとしても親として失格だ
「貴方の娘さんの優子は、学校内でいじめにあったのですよ!」
この言葉を聞いて、動かしていた柳田の手が初めて止まった
「後は任せる」
柳田は助手に短く伝えると速足で扉に向かう
扉が荒々しく閉まる音がすると、その場にいた作業員や研究員はため息をついた。助手もである
「まさか、本当に柳田博士の娘さんは──」
「嘘よ。そうでもしないと帰らないでしょ?」
石塚の説明に皆は納得した。折角の大発見に作業員の過労死が浮き彫りになれば会社のイメージが下がってしまう
柳田は急いで家に帰ったが、家の中には自分の娘をベットに寝かしていたリリの姿だった
「博士から連絡です。一時間前の事は嘘とのことです。メッセージを聞きますか?」
「……いい」
柳田は胸を撫で下ろすと眠っている娘に近づいた。部屋には人形や絵がたくさんある
日記も記していた
テレビを見たのだろう。娘とタコ型の生き物が手を繋いで遊んでいる絵だった。既に地球外生命体の事は発表され、世界は大騒ぎだった。ネットでざっと見たが、誰もが興奮していた。中には、宗教家の人が外国語で抗議したり、明らかにうん臭い学者が否定的な見解を述べたりとしている
「これは優子ちゃんが今日お描きになったものです」
しかし、彼はエイリアンよりもそばにいる男女の絵に目を向けていた
男の方は自分だろう。そして、もう片方は……
「そうか」
柳田は頷くと会社に電話した。明日と明後日は休む事にしよう
データの解析は自宅でも出来る。USBメモリーを自宅に持ち込んで仕事してもいいと社長に言われたからだ。但し、普通はやらない。社長も柳田の事をよく知っているからだ
会社ではマスコミ対策に追われていた。まずは地球外生命体について。柳田が育てた魚型である生命体を見せる事である
異論を唱える学会もこれで黙るだろう。問題は特定の宗教団体と科学信奉者達である。彼等は地球外生命体の存在を認めないだろう。既に宗教団体や市民団体からは抗議の電話がかかってきており、ハッキングも多発したお陰で会社のサーバーがダウンする羽目となった。会社の周りはデモ隊で一杯だったのだ
しかし、警察と自衛隊は警備を引き受けると言ってきたので問題は無いだろう。特例措置としてらしい。この措置に野党からは反発したらしいが。問題は国外である。既に数ヵ国が日本と接触してきたのだ。しかし、日本も三浦会社もこれには想定内であった。同盟国のアメリカにデータとサンプルを提供すると、アメリカの態度が一気に軟化した。アメリカは国益重視の国である。NASAは米国政府と違って純粋に感謝を述べてくれた
問題はEUとロシアと中国である。こちらの対応は頭を悩ませたが、データを渡しただけで、後ははぐらかした。EUは宗教の関係で拒否したが、ロシアと中国は取引で治まった。但し、サンプル提供は止めていた
折角の大発見だ。他国に譲る気はない。アメリカとの取引のお陰で誰も文句は言えまい。共同研究も検討すると言って当面ははぐらかしておく。下手をすると、外交問題にまで発展してしまう
地球外生命体のデータ公表はこちらが研究した後でもいいだろう
そんなことを他所に柳田は研究施設にて実験を没頭していた。彼は国際情勢や社会に興味なんて無い
相変わらず水槽に泳ぐ未知の生命体を観察していた所、学生時代の後輩である長谷川 大輝が小走りで部屋に入って来た
「そんな所にいたんですか。そんな事よりニュース見てません?俺達、有名人ですよ!地球外生命体を発見したからには何かしら賞を受賞出来る!ノーベル賞かな?それとも総理大臣から勲章を貰うのかな?」
「さあ……宮中晩餐会にも呼ばれるかもな」
興奮気味に話す親友の長谷川に柳田は生返事をしていた
彼は名誉には興味はないそうだ
「ところで隕石のサンプルに付いていた未知の元素の解析はどうなった?」
「まだ解析は途中ですが、それでも面白いですよ!」
長谷川は研究データが書かれていた紙を渡した。本来ならデータだが、やはり紙の方が見やすい
そこに書かれていたのは元素の組織図であり、素人の人間には分からないだろう
しかし、彼には分かるらしい。だが、彼は描かれてあった組織図と文章を読んで眉をひそめた
「おい……これは炭素か?それともケイ素なのか?」
「初めは計測器のミスではないかと思いました。しかし、違います。元素周期表にはないものです!しかも、安定しているんですよ!未知の元素は近いうちに命名されるはずですよ!ジャパニウムとかどうです!?あ……既にロボット漫画で使われているか……だとすると……」
長谷川は自問自答していたが、柳田は食い入るようにデータを見つめていた
「もしかすると……まさか……あの文献や伝説は本当だったのか」
柳田はデータに書かれたものと水槽に泳ぐ未知の生命体と見比べていた。興味本位である事を調べていた昔の頃の時……
伝説と思われていたが……あれは本当だったのか?
彼は他の研究員とは違い、生命体や未知の元素をどのようにするかを常に考えていた。サンプルは会社から貰った。研究のためであるが、既に彼はある事を実行しようとしていたのだ
地球外生命体の存在が発表されてから1か月。未だに世界は興奮と混乱の渦である
地球外生命体が魚のような姿をしていることもあるが、やはり地球外生命体という存在自体が衝撃的だった
しかし、彼は記者会見やテレビの番組には出ず、ひたすら研究施設で作業を没頭していた
数日後
石塚はマスコミ対策に追われていた。テレビに出演するのも記者会見するのも彼女の仕事である。幼い頃はアナウンサーに憧れた事もあって喜んで引き受けたが、時が経つに連れて鬱陶しくなった
常にテレビマンが待ち構えていているため、堂々としないといけない
プライバシーやこちらの事情を考えて欲しい。ある日の事、いつものようにテレビ出演するために化粧室へ向かっていたのだが、会議室を通りすぎる時、ドア越しで話が聞こえてきたのだ
普段はこういったことは無視するのだが、ある声を聞いて彼女は立ち止まった。複数の男女に混じって聞き覚えのある声が聞こえてきたのだ。その声の主は柳田だった
「──以上をもちまして、未知の生命体と元素の説明を終わります」
「するとどういうことだ?『はやて』が採取したのはエイリアンではないというのか?」
「正確には生命の起源となるであろう存在を見つけたと言っていいでしょう」
柳田は質問してきた人に単調で答えて言った。しかし、石塚は質問している人に聞き覚えがあった
総理大臣だ!他にも人の声がする事から政府関係者の説明なのか?
会社訪問するといった事は聞かされていないため、秘密裏に来たのだろう
石塚が息を殺してドアに耳を当て会議を聞いていた
「しかし、地球に生息する生命体に酷似せず、進化のサイクルが早いのは、小惑星『スサノオ』に含まれていました未知の元素の影響だと思われます。そのため、宇宙線に晒されても死ななかったことから、耐性を持つ生命体へ進化したと思われます。つまり、我々は無から生命を生み出す力と生命体に力を与える手段を手に入れたのです」
「それは国益にもなるのかね?」
「ええ。生命を生み出すということは、バイオ技術や医学を大きく変えます。近い将来、市販の薬で難病やガン治療も可能かも知れません。不死も夢ではない。農業や漁業なども疫病や塩害に強い水産物や農作物を生み出す事も可能かも知りません」
この発言に会場はどよめいた。こんな事は可能なのか?確かに農産物は品種改良しているし、水産物も養殖も行っている。しかし、いずれも限度はある
「更に言えば、一般人に薬を投与して知能発達や人体を強化する事も可能です」
「デザイナーベビーみたいなものか?」
「いいえ。それよりももっと効果的です。この元素は生命誕生をする力だけではなく、生物に新たな力を与える事も出来ます。適切な処置が必要ですが。例えばですが……そうですね。こういうのを想像してみてください。ある学生はパイロットを目指していた。しかし、パイロットになるには大変です。特殊な航空機……主に戦闘機パイロットや宇宙飛行士になると選ばれし者にしかなれない。いえ、訓練期間中に人体に異常があればパイロットの道は閉ざされる。しかし、この未知の元素や特殊なアミノ酸を加工した薬品を人体に注入しただけで肉体は進化し、彼等はパイロットになれる肉体を手に入れます。耐Gスーツなど着用せずに男女関係なく気軽に戦闘機や有人宇宙ロケットにも乗れます。流石に宇宙空間に出る際は宇宙服を着なければなりません。宇宙空間は空気が無いので」
「す、素晴らしい。これなら医学の進歩が50年早められる」
「少子高齢化だけでなく、食料自給率もこんな形で解決するとは」
政府機関の人達だろう。会場はどよめいていた。そんな中、総理大臣はこう指摘した
「しかし、良い事ばかりではないだろう。副作用は?それに倫理や宗教面から批判があれば、企業だけでなく政府にも批判が──」
「はっきりと言いますが、これは従来の遺伝子操作して人体強化するのではありません。進化過程を操作させて人体を強化するものです。皆さんに分かりやすく言えば、猿に投薬して一時間もすれば人間に進化するというものです。勿論、やったことはありませんが。理論的には、普通の人間が進化して強力な力や能力を身につける事が可能です。超人にもなれるでしょう。勿論、フィクションのようにスーパーヒーローのような極端な力を手に入れる事は出来ませんが」
怜人のジョークに政府関係者からは笑いが起こったが、柳田は構わず話す
「副作用は勿論あります。人格障害やショック死などを引き起こすでしょう。しかし、症状を和らげる方法も発見しました。将来、人類は更なる進化を遂げるでしょう。もしかするとオリンピックの全科目において金メダル取得が楽に取れるかも知れません」
真夜中
石塚は柳田の机を調べていた。研究員は既に帰っている。警備員はいるが、自分は会社員であるため捕まる事はない
柳田の研究ノートや資料を探していた。彼は何をする気なのか? いや、今も引きずっているのか
パソコンを立ち上げ、検索したところ、研究資料があった
そこにはあの生命体に関する事が書かれていた
『世間ではこの生命体は地球外生命体と思われているが、厳密にいうとそうではない。『はやて』が持ち帰った小惑星を調べた結果、この小惑星は太陽系が生まれた時期よりも遥か昔に誕生したものだと推測する。小惑星には生命誕生に欠かせない物質があるが、未知の元素も生成されたらしい。この未知の元素の起源は不明である。これには学会で衝撃を与えた。私の友人である宇宙物理学者によると、太陽系が生まれる前にある恒星が超新星爆発を起こし、その時に形成されたものだとされている。つまり、『スサノオ』は我々が思ってるよりも古くから存在する小惑星である』
石塚は信じられないという風に論文を読んだ。発見した元素はどれくらい前のものだ!?太陽系が誕生したのは約50億年前だが
『未知の元素の正体は、炭素に似たようなものである。詳細は別紙に記載するが、この元素は炭素の同素体でもないが、ある力を加えると別の原子(主に炭素)になる。しかし、生命体を形成する場合は、自らも炭素となる事から変幻自在である。この元素の性質に対して我々の常識を軽く越えるものである。ウラン以降の元素は、人工合成によって発見(合成)されているが、一瞬で崩壊して別の元素に変わってしまう。しかし、この元素は安定しており、それが起こらない。『はやて』が持ち帰ったサンプル。生命体の誕生は、地球環境の適合能力や異常な進化は自然の摂理である。高温や低温に耐えるだけでなく、高い水圧や病原体にも耐性がある事も確認された。実際に道の生命体に様々な病原体を投与した。症状が発し弱ったが、約一時間で抗体を形成し元気になった。この元素はウイルス進化に似た作用を生命体に与えるらしい』
生命体の誕生や進化が未知の元素のお陰であると書かれている。未知の元素は、地球の生命の歴史である46億年の年月を短縮、進化させる力があるという
『この事により、新たな医療技術やバイオメトリクスの技術革新がもたらすのは間違いない。猿やイルカで実験したところ、知能の発達が認められた。また、知能の発達だけでなく、肉体の発達も可能である。適切な処置をすれば、人類は知能発達や強靭な肉体を手に入れる事になり、更に不死も理論的には実現可能であると──』
石塚はここまで読むとデータをメモリーにダウンロードした。彼は暴走している! 政府機関がこんな技術を悪用されたら終わりだ! 彼と政府の暴走を止めなくては!
ダウンロードを終えUSBメモリーを鞄の中に入れると彼の家に向かった
柳田はイラついていた。娘を寝かし、『リリ』と一緒に研究データを整理したところ、玄関のチャイムが鳴ったのだ。しかも、ドアを激しく叩く音まで聞こえてくる
こんな真夜中に訪問するバカは誰だ!?
不満そうにインターホンに出たのは石塚だった
「こんな夜中にどうした? 娘が起きるだろう?」
『話があるの! ちょっとの時間だけ!』
石塚の荒い息と怒りを含んだ声に柳田は、もしやと思い家に入れた
どうやら、研究データを見たのか? それとも、政府の役人に説明するところを見られたのか?
「柳田さん……貴方は何をしているの?」
「人類のための研究だ」
「ふざけないで!あれが、人類のため!?」
石塚が客室間に着き、ソファに座るな否や柳田に問い詰めた。娘が起きてしまうため、本来は声を荒げるべきではないが、そうも言ってられない
「研究データを見たわ!何をしているの!?エイリアンを使った医療技術なんて!」
「僕がマッドサイエンティストとでもいうのか?それは偏見だ」
「デザイナーベイビーまで手をつけるなんて! 国際問題になったらどうするの!」
「従来の遺伝子操作よりも確実で安全に誕生するものだ。クローンとは訳が違う。人の細胞は要らないし、代理母は要らない」
「人為的に知力体力を簡易的に向上させる事が可能と世間が知ったら大混乱するわ! WHOや医学学会から批判されれば──」
「誰だって夢を見る人がいる。俺はそれを叶えているだけだ。批判する人は、既に目標に到着しているからだ。自分が苦労して手に入れた地位や力を薬品だけで取れたら誰だって嫌だろう。自分の努力は何だったのか、になる。しかし、それは年月を過ぎれば受け入れられる。どの製品だってそうして来た」
「政府が貴方が発見した技術を悪用する事だってあるわ! しかも、防衛省の人まで来ていたじゃない! もし、軍事利用されたら──」
「民生技術と軍事技術は表裏一体だ。ネットや電子レンジなんかは元々は軍事用だっただろう?」
「貴方は!よくそんな事が平気で要られるわね!」
石塚は声を荒げた。政府や会社から脅されていれば救いの手を差し伸べるのだが、この人は自らの意思で研究を行っているのだ
彼の目的は何だ?
(いえ……まさか……あり得ない!)
まさか死者を、しかもある人物を蘇らせるのを探っているのか!?彼の後輩である長谷川というオカルトマニアとつるんでいるのも、そのためなのか!
しかし、それは推測でしかない。今は何としても止めなくては!
「あの未知の生命体も知的生命体に進化させることも可能かも知れない。人間に近い……いや語弊があるな。人に進化させることも可能だ。生命の起源や進化論の一大発見にも繋がる」
「そんな事をして皆が受け入れる訳無いじゃない!そんな生き物を産み出して、その生き物はどうなるの!いえ……もしも、矛先が人類に向いてきたらどうするの!このままじゃ、私達人間は、その生き物の御機嫌伺をしながら生きて行かなくちゃいけなくなるかも知れない!下手をしたら、国を乗っ取られるわ!もしかすると人間は皆殺しか、奴隷よ!」
「構わん。倫理なんぞ知るものか。人間至上主義の鼻を明かすチャンスだ。人間だって、社会差別や犯罪や戦争など起こしてきたじゃないか。地球外生命体とのコンタクトに何を言っている? 会ってもいないくせによく言えたものだ」
石塚の言葉に柳田は淡々と反論した。柳田にしてみれば折角のチャンスだ。科学の進歩が早まるというのに……
「人類の科学の進歩どころか生命の起源や進化論の証明にもなる存在だぞ?それを下らない考えで否定するとは。お前らしくない」
「いい! すぐに止めて! 生命体や未知の元素を研究しても貴方の妻……私の姉である
石塚の怒鳴り声に柳田は眉をピクリと動かしたが、彼は激昂すらしなかった
長い沈黙の後、怜人は冷たくはっきりと言った
「そうか……なら、考え方が違ったな。残念だよ」
「そうね。私は会社に辞表を出すわ。そして『リリ』も返してもらうわ。娘の世話よりも、生き物に興味があるなんて!」
「そうだな。助かったよ。研究は大体成功した。発表もするよ」
翌日、一人の女性研究員とロボットは三浦会社から去っていった。これは辞めたのではなく、異動しただけである。三浦会社は辞表を預かると言ったのだ。三浦社長も優秀な人材を失うのは痛手だ。しかし、石塚は海外勤務すると強く主張したため、三浦社長も渋々許可を出した
そんな事を他所に柳田は、生命体よりも未知の元素を研究していた。伝説を追うために……
まだプロローグですが、もう少しお待ちを
余談ですが、今回のイベント……小規模ですが、攻略に手こずっています
早くE3の海域に支援艦隊が来て欲しいです