ゆっくり出来ません(笑)
新艦娘である平戸がドロップ出来なかったことでため息をついたり、夕張改二特で単体任務をやったりと踏んだり蹴ったりです
とは言え、ようやく落ち着いたかな?
陸奥が戦っている間、怜人達は海岸から見守っていた。勿論、ただ突っ立てっているだけでなく、建物の影に隠れているが
しかし、有事の元で住民は避難してることもあって、そこまでは気にならない
問題は陸奥との戦いである。あの怪物を臆せずに戦うことも凄いが、敵も十分強い
無線で引くよう呼び掛けたが、突然、無線が繋がらなくなった
「むっちゃん、聞こえる!聞こえたら返事して!」
娘の優子の呼び掛けにも応答しない。雑音ばかりだ
「おい、どうしたんだ?さっきの攻撃で無線が不調になったか?」
「……先輩、違います」
電器店から調達した無線機を弄っていたが、長谷川は何故か空を見上げている
「何が違う!」
怜人は怒鳴ったが、何かがもうスピードで近づいてくる。それは怜人達の頭上を通りすぎると、爆音を響かせながら飛び去っていた
「何なんだ!?」
「あの戦闘機のせいです!電子戦機が近くにいるのでしょう!確かF15Jを電子戦機用に改装したという」
爆音がまだ響き渡る中、近くにいても聞こえづらいため、二人は怒鳴りあっている。優子は余りの爆音の大きさに耳を両手で塞ぐ始末だ
「それで。電子戦機があると、どうして無線が不調になるんだ?」
「敵の艦隊が持っている目と耳であるレーダーと無線通信を塞ぐためです。対空兵器を黙らせるために。自衛隊が持ってるのはEF-15Jと言いましてSEAD機であり――」
「マジか。これだったら、会社の研究室に行った方が良かったな」
怜人は長谷川の説明を聞きながら、ため息をついた。陸奥がボスをこっそりと倒して持ち帰る話は無くなった
「パパ?むっちゃん、大丈夫だよね?自衛隊の人達はむっちゃんを攻撃しないよね?」
娘の優子は声を震わせながら聞いた。そうあって欲しい。しかし、長谷川も怜人も表情を曇らせている
「今の兵器はピンポイント攻撃出来るよな?」
「ええ。第二次世界大戦と違って妨害や故障が無ければ、ほぼ命中します。――味方以外は」
「不味いな。陸奥に旭日旗を持たせれば良かった」
二人の会話を聞いた優子は、顔を青くした。これでは、攻撃されるのではないか!
「バフ。こちらブルーサンダー。沖合いに新たな人影を発見。ターゲットと交戦している」
『こちらバフ。命令に変更はない。攻撃せよ。繰り返す。攻撃せよ』
三機のF2改は低空で侵攻し、攻撃をしようとしている。陸自の部隊によると謎の人影が異形の怪物と交戦しているという。しかも、深海棲艦とは違い、人そのものだという
司令部に確認をしたが、返事は同じだ。いつもなら、防衛出動でもかからない限り、こちらから先制攻撃は出来ないが、今回は違う。なので、気にするとこはない
F2改……正確にはF2A改ありF2のバージョンをアップ……近代化改修機である
後継機であるF3の開発は遅延しており、防衛省はやむを得ずF2の延命を決定した
F2A改は外見はF2Aと変わらないものの、電子機器を一新したため、能力は向上している。また、空自には米軍のような電子戦機がないため、防衛省はF15Jを保有する機体の数機をEF-18Gグロウラーを参考に改装……というより魔改造に近いが……電子戦機*1にしたのだ
これにより、空自の戦闘力は上がったが、残念ながら実戦経験がない。訓練では大活躍しても、実戦で不具合が出るのはよくある事だ。アメリカですらあるのだ
しかし、今のところは異常はない。データリンクも兵器システムも正常。電波妨害なし
隊長機は引き金に指をかけた
「ブルーサンダーワン、攻撃開始」
『ブルーサンダーツー、攻撃準備完了』
『ブルーサンダースリー、何時でも撃てます。
陸奥は蹴られた腹を押さえながら異形の怪物を睨んだ。大した傷ではないが、痛みは別だ
相手は挑発しており、手でこちらを招いている
(何とかして倒さないと……え?)
陸奥は後ろを振り返った。敵が目の前にいるのに、後方を確認するなんて愚かな行為である。しかし、異形の怪物や二本の角が生えている女性は、何か気づいたのか、陸奥の通り越しを見ている。しかも、目線は上空だ
そのため、陸奥は振り向いた。晴れ渡った空に三つの影が浮かび上がった。余りにも遠すぎて一塊にも見える
その塊から何かを打ち出されたかのように見えた。蜘蛛が糸を吐き出されたかのように、それははっきりとした軌跡を引きながらこちらに向かってきた
「まさか……ちょっと待って!」
陸奥は絶叫した。あれは自衛隊機だ!陸奥相手に戦っている異形の怪物を攻撃するつもりだろう。だが、それはこちらも攻撃される事を意味する。考えてみれば、怜人や長谷川達は自衛隊の幹部ですらない。こちらが味方である手段がないのだ。無線も繋がらないためオープンチャンネルで発信も出来ない。尤も、電子戦機のEF-15Jのお蔭で無線は封じられているが
次の瞬間、陸奥は炸裂音と共に眩い炎に包まれた。異形の怪物もクラゲのような頭を被った異形の女もである
F2Aが放った空対艦ミサイル、ASM-3が命中したのだ。本来は対艦ミサイルなのだが、空対地ミサイルのバージョンも存在する。ASM-2の後継として開発されたが、先制攻撃の必要論の話が持ち上がった事をきっかけに、防衛省は空対艦ミサイルをこっそりと改造したのである。それをブルーサンダー隊は陸奥や深海棲艦に向けて発射したのだ。何しろ、相手は人型である。普通の対艦ミサイルでは命中させるのは難しい
それはともかく、ミサイルは陸奥を含め、深海棲艦の親玉らしきものに見事、命中。爆炎と煙が海面に上がった
「おい、本当にやりやがった!」
遠くから見ていた怜人は爆発音を聴くや否や叫んだ
「むっちゃんは大丈夫?死んでいない?」
「あー、あの艤装が戦艦のスペックがそのままなら、大丈夫――」
「そういう問題ではないだろ!近くの海岸まで行くぞ!」
オロオロとしている優子を長谷川は落ち着かせようとした。確かに長谷川の考えはただしい。戦艦は撃たれ強いため、対艦ミサイル数発では沈まない
しかし被害は免れず、何らか支障が出てもおかしくない。
「行ってどうするのです!?」
「移動してる時に自衛隊と出会うかも知れない。それで事情を話す」
「先輩、そんな当てずっぽうな考え――」
長谷川は反論しようとしたとき、遠くからへりの音が聞こえた。それも複数。姿は見えないが、段々と大きくなっている。状況から見れば、マスコミではない。自衛隊のヘリに違いない。攻撃か救出のどちらかだろう
「生命保険に入っていれば良かった」
長谷川は怜人と優子の後を追った。距離は遠いが、自衛隊の部隊に出会えば何とかなるだろう
……彼らの後ろに不穏な影が近づいていることに気がついていないにも拘わらず
「何なのよ!こっちを攻撃してくるなんて!」
艤装が中破し膝をつきながら陸奥は叫んだ。本当にこちらを攻撃してきた。そんな悪態をついてる陸奥を他所にF2A改のブルーサンダー隊は目にも止まらぬ速さで陸奥の頭上を通りすぎる
『ブルーサンダー、よくやった。陸自の観測ヘリでは、三体のうち一体は効果あり。しかし、依然として現場海域に留まっている』
「了解、旋回して再度攻撃を実施する」
ブルーサンダー隊の一番機は無線で連絡すると上空に上がり旋回した。再び攻撃準備するためだ。突然、物理攻撃を受けつかなくなった深海棲艦だが、どうやら効果はまだあるらしい。……それは、深海棲艦ではなく、陸奥であるのだが、F2A改のパイロットは確認しようがない
そんなF2A改を異形の怪物と二本の角を持った女性。そして、クラゲのような帽子を被った女性はF2A改のジェット機を目で追った。彼女のには、名前はない。しかし、愛称はある
二人の名前は『戦艦棲姫』、そして『空母ヲ級』と呼ばれた。どちらもリリが名付けたのだ
名称は必要だが、全てに名付けるのは不可能に近い。よって、命名則は「(艦種名)+(日本語の五十音各一文字)級」ということにした。人工知能には名称はどうでもいいらしい。軍艦の暮らすも第二次世界大戦の軍艦を参考に独自で作り上げた
しかし、群れを指揮するボスがどうしても必要がある。無線で指揮するにしても全ての軍勢を纏めるのには最新鋭のAIと言えど限度がある。しかも、妨害されれば意味がない。つまり、リリは群れのボスを作った。人のように思考能力がある存在を。但し、独自でやったためか肌は白いが
それは兎も角、戦艦棲姫は飛んでいるジェット機を一瞥すると空母ヲ級は小さい何かを吐き出した。それは、機械と昆虫を混ぜたような黒いものだった。ドローンのようにフワフワ飛んだかと思いきや、猛スピードでF2A改の方向へ飛行したのだ
F2A改は旋回し終えて機首を戦艦棲姫の所へ向け、ミサイル攻撃を行おうとしていたのだ。当然、F2A改にもレーダーがついているので正体は分からなくても飛行物体は飛んでいる事はパイロットにも分かる。だが、彼等の任務はAIロボットが解き放った深海棲艦への攻撃だ。ミサイル警報もない事から脅威無しと判断したのだろう。だが、彼等は知らない。空母ヲ級が放った艦載機の戦術を
それは音速は超えていないが、F2A改に突っ込む。ブルーサンダー隊も気がついたらしく応戦する。三番機が20mmバルカン砲を発射して追い払おうとするが、艦載機は機関砲を無視して正確にF2A改に突っ込む
「何かが突っ込むぞ。三番機、回避行動しろ!」
一番機は無線で警告したが、それよりも早く空母ヲ級の艦載機の群れはF2A改に体当たりした。しかも、ただの体当たりではない。正確にエンジンとコクピットを狙ったのだ。三番機のF2A改はエンジンが爆発すると、そのまま海面に突っ込んでしまった
「攻撃中止!態勢を立て直す!……何なんだ。あのドローンみたいな飛行物体は?」
一番機は咄嗟に回避行動しながら愚痴を漏らしたが、内心は冷や汗をかいた。彼は三番機が攻撃を受けて墜落するのを観察していた。あれは異形の艦隊の飛行物体だろう。しかも、捨て身の戦法で体当たりしている事から消耗品扱いらしい。しかも、あの飛行物体は正確にエンジンとコックピットを狙っていた。偶然で当てたのではない。音速で飛ぶジェット機を狙ったのか?確かにバードストライクは珍しくないが、それにしては威力が高い
「ブルーサンダー3がやられた!再攻撃を実施する」
『ブルーサンダー1、陸自のヘリが攻撃を行う。上昇して待機しろ』
「ブルーサンダー、了解……クソ!」
一番機は通信を終えると同時に吠えた。脱出したのを確認していない。と言う事は……
空母ヲ級がF2A改を追い払っている間、戦艦棲姫と陸奥は熾烈な戦いを繰り広げていた。砲撃戦でなく、肉弾戦にまで発展している
しかし、1対1にも拘わらず、苦戦している。陸奥が初実戦ということもあるが、問題なのは怜人達は自衛官ですらないということである
つまり、軍事のプロによるバックアップがないため、陸奥はワンマンアーミーである。更にF2A改の対艦ミサイルを受けたため艤装は中破になっている
沈むほどの損傷ではないが、とても戦いずらい。しかも、敵である戦艦棲姫は強かった。単調な動きでほとんど話さないために不気味であった
「負けていられない。撃て!」
陸奥は掛け声と同時に主砲を発射する。砲弾が戦艦棲姫に命中し怪物はうめき声を上げる。そして、やっと女性の方も傷を負わせた
「グア!」
頭部に命中したのだろう。頭を左手で押さえ、蹲っている。主が倒れたからなのか、怪物の方は右往左往している。空母ヲ級はボスがピンチになっているのに気がつくと陸奥を睨んだ
「はぁ……はぁ……いいわ、やって――?」
突然、ヘリの爆音が聞こえた。戦いに夢中になっているあまり、周囲を厳かにしたのか?
上空を見るといつもの間にか2機のヘリがこちらにやって来ている。陸奥は知らないが、残存部隊を救助するために派遣されたUH-60JAをエスコートしていたAH-64Dである。その2機が命令によって現場に派遣されたのである。陸奥は何が起こったか分からなかった。突然、強力な激痛が断続的に走ったからである。それが、機関砲である事に気付いた
(だから、敵じゃないんだってば!)
自分の運の悪さを呪ったが、確かに自衛隊から見れば敵に見えるかもしれない。
一方、戦艦棲姫も空母ヲ級も30mm機関砲の掃射を受けたが、黙っている訳ではない。戦艦棲姫の怪物が咆哮すると自身に取り付けられていた、ひしゃげた砲塔を強引に引き抜くと、アパッチの方へ力一杯投げたのだ
突然の出来事にヘリは回避行動を行ったが、空母ヲ級が放った艦載機が2機のアパッチを攻撃。空対空が得意ではないアパッチはそのまま海に墜落した。一機は海に衝突して大破したが、もう一機は無事である。陸奥が墜落地点まで移動して落ちて来るアパッチをキャッチした。両腕で何とか受け止める事が出来た。機体がへこんでしまったが、それは仕方ない
「大丈夫!?」
「あ……ああ……助かった」
アパッチのパイロットが茫然としているのも無理もない。死を覚悟していたところを救われたのだから。陸奥はアパッチを静かに海面に降ろすと防風ガラスを強引に引っこ抜いた。陸奥は攻撃ヘリについては詳しく知らないが、船と違って直ぐに沈むはずだ。なので、パイロットを脱出させなければならない
「危ない、後ろ!」
人間離れの力に呆然としていたパイロットは、何かに気付いたのか陸奥に警告した。陸奥はハッとして振り向いたが、次の瞬間、顔面の右に強い衝撃を受けた。戦艦棲姫は怪物を自由にさせると救助活動している陸奥に突進。そのまま殴り飛ばした。陸奥も立ち上がり戦う姿勢を取る。ここで砲撃をしてはパイロットが巻き込まれてしまう。一方、戦艦棲姫は艤装を持った怪物を別の方向に放ったため、砲撃は出来ない。よって、必然的に肉弾戦へとなった
戦艦棲姫によって自由になった怪物艤装は、近くの海岸へ移動。上空を飛んでいるUH-60JAの群れを執拗に狙った。対空ミサイルではないため、撃墜される心配はないものの、着陸して残存部隊を救助する事が出来ない。それに厄介な事に空母ヲ級が放った艦載機が近づいて来る。重機関銃等で武装はしているが、その程度では防ぎきれない
F2A改に援護を要請したが、間に合わないだろう
「もうダメだ!」
UH-60JAのヘリパイロットが叫んだ時、空母ヲ級が放った艦載機の動きが止まった。怪物の方もだ。何の前触りもなかった。まるで、映像が一時停止したかのようにピタリと止まったのだ。距離は数十メートルなのに
陸奥は違和感を覚えた。敵が突然、戦闘態勢を解いた。何があったのか?
「撤退命令ダ」
敵の呟きを聞き取ることが出来たが、どうやら撤退命令が下されたらしい。恐らくリリだろう。怜人達が近くにいるのを何らかの方法で知って攻撃を止めたのか?
ホッとしていた陸奥だが、次の瞬間、相手から強烈な殺気を放った
「ヨクモ私ニ傷ヲ付ケテクレタナ。仕返シハ必ズスル。絶対ニ」
しばらくは陸奥を睨んだが、一瞥すると近寄る怪物を犬のように引き寄せた。そして、そのまま海に消えた。戦いが終わった事に脱力した陸奥だが、漂流しているヘリパイロットを陸地まで運ばなきゃならない。幸い、まだ航行できる力はある
数時間後
「それでは、養子として陸奥という女性を引き取ったと?」
「はい」
「関係者とは言え、無許可で戦場に立ち入らないで貰いたい」
「すみません」
海岸では生存者の救出にあたる陸自が陣地を取っていた。立花2尉は、怜人達を保護すると同時に例の女性の関係者と言う事である
事情聴取をしたが、怜人は陸奥はある会社の極秘実験なのだと。そして、群れを率いているボスを無許可で捕まえようとしていた事を話した。半分は嘘なのだが、正直に言ってしまうと理解出来ないだろう
怜人の話を聞いた立花2尉は呆れていたが
「それにしても……奴等にダメージを与えたとはな。しかも、対艦ミサイルを食らっても五体満足とは……女性版のスーパーマンかな?」
立花2尉は心配そうに見ている優子と大丈夫と言い聞かしている陸奥を遠くから目を向けながら呟いた。長谷川と呼ばれる人は、魚の形をした深海棲艦の死骸を調べている
「もうすぐヘリが来ます。避難所まで送りますよ」
「避難所?」
「どういう訳か陸に上がった化け物は全て海へ逃げました。理由は不明ですが、安全は確認されています」
立花2尉は安心するよう促したが、怜人は違った。リリを止めるためにはあのボスが必要だ。やはり、会社の研究所へ向かうべきだったか
陸奥に謝罪したが、本人は気にはしていない
「出来れば、三浦会社の近くの避難所まで送ってほしい」
「気持ちは分かりますが、現在は我々でもそこまでの余裕がないのです」
「ですが――」
怜人が言いかけたその時だった
後ろからドスの効いた声がした。しかも、はっきりと
「柳田怜人教授。ご同行願おう」
怜人は固まった。その声は聞いた事がある。慌てて振り返ると変わった緑の迷彩服を着た1人の自衛官が立っていた
だが、彼の部下らしき者が陸奥に近づいている。しかも、他の自衛官とは違い、銃を携えているのだ。数は15人くらい。不穏な空気を感じ取った陸奥は、優子を素早く抱えると近くにあった棒を手に取った。いつでも襲う準備をしている
「何をするつもりですか!?あなた方は誰です!?名札も付いていないとは!」
立花2尉は叫んだ。彼が真っ先に思い浮かべたのは重度のマニアか、他国の潜入工作員。前者はともかく、後者だと不味い
一瞬の間、緊張が高まったが、長谷川の叫びで皆は唖然とした
「コイツら、特殊作戦群ですよ!数週間前に訪ねて来た人達です!」
長谷川は一人の自衛官に指を指しながら叫んだ。刺された相手はムッとしていたが
「……これだからオタクは嫌いだ」
男の1人が吐き捨てるように言うと立花2尉を無視して怜人に正対した
「悪いが、君達を別の場所へ移す。全員だ。陸奥という女性も」
「待って!彼は悪くないわ!」
陸奥は抗議しようとしたが、彼は手で制した
「責めるつもりはない。しかし、これも仕事なのだ。一緒に来て欲しい。世界の命運がかかっている」
「そんな大袈裟な」
「大袈裟?既に世界の各都市は攻撃を受けた。石塚博士が亡くなった今、G元素を研究していた人は、叩かれているぞ。ニュースやネットを見てないのか?」
1尉は冷ややかに現状を伝える。G元素発見等はテレビを取り上げられたのだから無理もないだろう
「せめて三浦社長に――」
「彼も亡くなった。我々が必死に戦っている間、あの社長は、部下に命じてキミと同じように深海棲艦を捕まえようとしていたらしい。研究所内で敵が暴れ社長も含めて多数の死傷者を出したがね」
1尉の報告に怜人は呆然とした。会社のために捕まえようとしているのは間違いないだろう。しかし、1尉という自衛官が本当なら止める手段の一つを失った事に成る
「何処へ連れて行く気だ?」
「ヘリの中で教えよう。ここからちょっと遠いのでな。聞きたい事はそれだけか?」
「あんたの名前は?」
「草野1等陸尉だ。それでは、立花君。彼らを連れて行くがよろしいか?」
草野1尉の質問に立花は何も言わない。ただ、首を軽く頷いただけだ。彼も、草野1尉のやり方には不満らしい
数分後、ヘリが上空に現れ着地したが、特殊作戦群の人以外全員は唖然とした
「草野さん。どうして海自のヘリであるSH-60Kがここに?」
「行先は護衛艦だ。心配するな。未知の生命体を寄せ付けない装備を防衛開発庁が開発したお蔭で傷1つ付いていない。だから心配はするな」
草野1尉は安心するよう言い聞かせたが、怜人達は顔を曇らせた
「ねえ、怜人。深海棲艦……未知の生命体を寄せ付けない装置ってあるの?」
「いや、聞いた事が無いな」
陸奥の質問に怜人はかぶりを振った。会社がコッソリと研究しているので、国の機関もやっているだろう。よって、自分でも知らない研究成果があっても不思議ではない
問題は、誰が待ち構えているのか、である。歓迎ではないのは確かだ
彼等は何処へ向かうのか?