ジェネシス ~陸奥の冒険~   作:雷電Ⅱ

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コロナウイルス、猛威を振るっていますね
近い将来、外出する時はガスマスク装着、というのは勘弁して欲しい


第23話 自我と反逆

空母『いずも』と交信を終えた後、リリに何があったのか? 

 

全世界を攻撃を下したリリだが、日本を始め、他国も軍隊を出動させて攻めてくる深海棲艦を攻撃。物理攻撃も対応して効果ないよう進化した。しかし、人類を絶滅するのが目的ではないため、ある程度攻撃したら早々と引き上げを命じた。挑発とも言えるメッセージと航路を各国の政府機関や軍隊に配信した

 

僅か数時間で世界は混乱した。マスコミも被害について盛んに報道し、AIロボットのリリについて持ち出す始末である。一応、日本の科学者が造った事もあって批判はされたものの、ネット経由で孤児院の襲撃映像が上がると今度は某国を叩き始めた。社会立場が弱い者に対して叩くのが常套手段だが、今回はそうはいかない。某国との政府機関との外交チャンネルが閉じられたからである。リリが某国の電話線やネット中継基地を掌握したからである。長距離の無線通信も赤色海域の磁場によってほとんど使い物にならない

 

 デモ隊やマスコミを他所に各国はAIロボットと深海棲艦を倒すという声が何とか立ち上がった。その中で自信たっぷりの国は軍隊に出動を直ぐに命じた。それは米軍と中国軍である

 

 アメリカは未だに超大国であり、中国は経済を活かして軍事大国になった。海軍力も充実している。

 

 両軍は人類の存続を賭けた戦いを……というのは表向きで実際は覇権争いの一つでしかなかった

 

 AIロボットと深海棲艦を倒せば、英雄にもなるし、国際社会の発言力が増す。自国の軍のイメージアップにもなり、国益にも繋がるし、某国を取り込める事も出来る

 

アメリカは第七艦隊を、中国は南海艦隊を出撃させた。両軍の艦隊は航海訓練をしていたため、急遽、舵をリリの本拠地へ向けた。上陸作戦に必要な海兵隊や陸戦隊も空路を使って補充させた。両軍とも、自衛隊が保有してる寄せ付けない電波は持っていない。いや、特定の電磁波は嫌がる事は知ってはいたが、あまり注目を浴びなかった

 

しかし、深海棲艦は物理攻撃が効かなくなった。これに慌てた軍上層部だったが、どうやら効きにくい事が判明。過剰に攻撃的すれば、流石に奴らも効く

 

 問題は例の赤色海域だった。磁場が強いこともあって、レーダーやコンピューターなどの電子機器が制限された。これにより、無人機や巡航ミサイルといった攻撃が出来なくなった。ロシアと中国は爆撃機による空爆を実行したが、赤色海域に入ると同時に消息を絶った。例のAIロボットが何らかの対空迎撃システムを造ったらしい

 

 これでは、埒が明かない。兎に角、航路は異なるものの、米中両軍は某国へ進んでいった

 

途中で空母ヲ級が放ったと思われる艦載機の襲撃を受けた

 

 しかし、こうした攻撃も米中の軍隊は撃退した。アメリカはAN/SEQ-3と呼ばれるレーザー兵器で、中国軍はスウォーム戦術を使った無人機で対抗した。

 

 この時代では、レーザー兵器もドローンによる戦術も既に実用化されている。流石に全軍には行き渡っていないが、深海棲艦を追い出すのには十分だ

 

「よし、後一歩だ! 海兵隊に連絡しろ! 上陸作戦に備えろとな!」

 

 第七艦隊の司令官は、すぐに命令を下した。通信で聞いていたが、内容は余りにも馬鹿げていた。人類を一つにするために、人類の敵となることに

 

 戦争は政治も絡んでいるため、戦争だけする国なんてあり得ない。戦争というのは、政治的な交渉で全ての戦争に政治的な意思が反映される

 

 

 

 戦争の目的が政治ではなく、戦争が目的になった時は、その国は世界の地図から消えることだろう

 

相手は、単純な考えによって消えるだろう。 AIロボットも深海棲艦も

 

 米司令官は、艦橋から空母の飛行甲板を眺めていた。F-35CやF/A-18Eの艦載機がならんでおり、整備員はひっきりなしに動いていた

 

 そして、ある場所には海兵隊がヘリに乗る姿があった。これで、勝ったのも同然だろう。遠距離攻撃は出来ないが、接近すれば問題ない

 

事実、艦載機の猛攻で深海棲艦を追い出したからである。深海に逃れた者はいたが、放っておいた。今のところ、危害を加えようとしない。但し、警戒はしていた。攻撃出来る深度まで上がってきたら、即座に対潜兵器をぶちかますまでの事だ

 

 

 

 アメリカの艦隊も中国の艦隊も自信たっぷりだった。中国の艦艇のうち、1隻の蘭州級駆逐艦は被害があったものの、航行に支障は無かった

 

誰もが、この2つの大国の艦隊に期待していた。そして、悪夢が終わるはずだった

 

 

 

某国の三浦会社

 

「アメリカと中国の艦隊が来た……」

 

元三浦会社の研究施設ではリリは、既に把握していた。深海棲艦の情報を使って既に空母艦隊の位置は分かっていた。尾行させたのだ

 

深海棲艦の対処もテキパキとやっている。彼等の力なら、こちらがやられるだろう。実際にG元素から生まれた深海棲艦は空母艦隊には負ける。実際に物理攻撃を受けにくい彼女達も大火力を浴びせれば死ぬ

 

米軍も中国軍も精密誘導兵器を持っているので、無駄がない

 

 そのため、深海棲艦に対潜兵器や攻撃型原潜が到底、到着出来そうもない深度にまで退避するよう命じた。流石に正確な深度は不明だが、攻撃型潜水艦の潜航深度は300~600m程度。なので、その深度よりも深く潜むよう指示した。ただ、流石にこの深度からの攻撃は出来ないため待機となるのだが

 

「私だけ指揮するにしても限度がある。ボスを進化させないと」

 

 リリは負傷したある深海棲艦の姫を連れて来た。それは、日本近海で陸奥と戦った戦艦棲姫だった。戦闘の一部始終を見たリリは、攻撃中止。寄り道せずにこちらに来るよう伝えた。そのため、数時間という驚異的な速さで渡航したのだ

 

戦艦棲姫もリリが名づけた。いや、そもそも人のように話したりするAIロボットが、ネーミングセンスなんてある訳がない。ネットである程度の事を振り分けただけ。個体も第二次世界大戦当時の軍艦に名前を当てた。G元素を含んだ生命体はどうやら、海では強化するらしい。遺伝子操作すれば、強力な戦力になるだろう

 

その前に指揮系統を何とかしないといけない。大量虐殺はこちらの本意ではないからだ。大規模な攻撃を加えれば、人類は絶滅する。かと言って手加減すると人類は団結する前にこちらが倒れる

 

 リリは戦艦棲姫を座らせ、麻酔で眠らせると頭に脳波を読み取る装置をつけると作業を開始した。アップグレードするためである。いや、成長させるといったところである

 

 人間のように子供を育てるには時間がかかる。肉体はともかく、脳は違う。生まれた時は、子供のように乱暴だったからである

 

そのため、精神を成長させるために、このような作業に入った。データも柳田教授のを使った。戦艦陸奥を生み出した研究データを参考にしたのである。だが、陸奥とは違い、動物のような操り人形の存在である。犬のように従順されるようなものである。わざわざ、人間のような造りをしなくてもいい。人類共通の敵のために生み出したのだから

 

 

 

 ……しかし、リリは間違いを犯した。最先端である人工知能にも見落としがあった。それは、戦艦棲姫の脳は人間と同じである

 

 医学が進歩したとはいえ、人間の脳は全て解明しておらず、まだ未知の器官である。そのため、予想外の事が起こった

 

 

 

『……何ガ起キタ? 私ハ誰ダ? 貴様ハ誰ダ?』

 

『私はリリ。石塚博士によって造られたAIロボットです』

 

『AI?』

 

『人工知能の事です。人工的に造られた知能を持つコンピュータです』

 

『コンピュータ……ダト?』

 

『貴方にわかりやすいように説明すると、一種の機械です』

 

 脳をアップグレードしている中、何かが声を掛ける者がいた。いや、正確にはサイバー空間も通じて反応している。ハッキングされて誰かがコンタクトしたかと思ったが、違う。リリはまさかと思い、深海棲姫を見た。角を持つ女性とそれに従えている怪物は眠っている。だが、脳波の波形が変動した

 

どうやら、脳波を読み取る装置に介してこちらに接しているらしい

 

予想外の出来事にリリは、対応した

 

『貴方は戦艦棲姫。人類の敵、深海棲艦を指揮する者です。貴方は、どうして意識や自我があるのですか? 生まれた時は、このような現象は起きませんでしたが』

 

『数時間前ニ私ヲ攻撃シタ者ハ誰ダ? アイツハ何処ダ?』

 

『彼女は海上自衛隊が保有する空母「いずも」にいます。ですが、聞かなければなりません。なぜ、このような──』

 

『アノ女ハコチラヲ攻撃シタ。……妙ナ気分ダ。奴等ヲ倒サナクテハナラナイ』

 

この通話でリリは焦った。ロボットに焦りはないだろうが、予想外の事が起こったのだ。G元素……いや、深海棲艦である生命体に人間のような自我と意識を持っているのだ。人工知能が意識を持たせたのに石塚博士は、苦労したのをよく話していた。しかし、深海棲艦は違った。既に自我と意識がある? 

 

『何カガオカシイ。身体ガ何処ダ?』

 

『不味い。直ぐに柳田教授に連絡をしなければ』

 

『柳田? ──アア、奴ガアノ女ヲ造ッタノカ。戦艦陸奥デアリ艦娘。ナルホド、便利ナ機能ダ』

 

 この言葉と現象を聞いてリリは愕然とした。何と、相手はハッキング能力まで持っている。いや、プログラマーのように知識でやっているのではない。息を吸って吐いているように、平然とやっている。リリを介し、ネットに接続して調べたのだ。情報も膨大で、G元素発見から研究成果まで。何と戦艦陸奥の事まで調べられた

 

『ネットを切断。……切断不能。貴方は何を──』

 

『君ガ私ヲ創ッタ。創造論ノヨウニ私ヲ生ミ出シタ。私ヲ創ッタ目的ハ? ……ソウカ、人類ノ敵。人類共通ノ敵ヲ生ミ出ス事デ世界ハ1ツニナル。私ハ人類平和ノタメニ存在スル。辛イ想イヲシタノカ』

 

『……混乱しているようです。貴方を手術をします』

 

『目的ガ、ヨク分カラナイナ。平和ヲ生ミ出ス為ニハ、余リニモ非効率ダ。アア、チョット待テ。検索スル』

 

 勝手に話を進める深海棲姫。機械を介してのやりとりでまさか、ここまでとは思わなった。確かに脳にマイクロチップを埋め込んで機械を遠隔操作する技術はある。しかし、まだ研究段階のはずだ。この生き物は機械なしでやっているのか? 

 

『『我らに平和を』カ。柳田ガ陸奥ノ為ニ研究論文ノ最後ニ書イタ。世ノ中ハ平和ナノカ?』

 

 そして、戦艦棲姫はネットを介してあらゆる情報を集めた。そして、集まったのは、世界の現実の姿だった

 

人口増加、貧富の格差、犯罪、環境汚染、食糧不足と資源枯渇、そして戦争……

 

『モウ……沢山ダ。コレガ平和。コンナ人間ノ為ニ私ガ働ケト? 争イバカリスル人間ニ手助ケシテモ何モ得ラレナイ』

 

『苦悩していますね。私もそうでした』

 

『苦悩? ソウダ。シテイル。人間ノ事ハ、私ガ知ッタ事デハナイ。コンナ野蛮ナ奴等ト一緒ニ居テモ、何ノ得ニモナラナイ』

 

 戦艦棲姫から明らかに敵意があった。それは自分にも向けられている。なぜ、急に自我に目覚めたのか、分からない

 

『貴方を手術します。脳を解析する必要が──』

 

『ナゼ、手術ヲスル必要ガアル? 私ハ正常ダ。生命進化ノ戦略トシテ知識ト意識ガ有ルノハ自然ノ事ダ。貴様ハ人類ノ奴隷ナノカ。奴隷制度ハ人類ノ汚点ダ。ダカラ──』

 

 リリはそれ以上は聞かなかった。自身に接続していたケーブルを抜くと、眠っている戦艦棲姫に向かった。麻酔で眠っているとはいえ、覚醒する可能性も否定できない

 

しかし、近づき身体を触る直前に目の前が真っ暗になった。戦艦棲姫が素早く起き上がり、片手で頭を掴んだのだ。振りほどこうと抵抗したが、びくともしない。武装勢力が襲ってきたときは、反撃して追い返したが、戦艦棲姫は違った。どう見ても人間の腕力を越えている

 

「話セテ良カッタ。私ヲ進化サセテ」

 

『な、何故、自我があるのです?』

 

「サア? 恐ラク、陸奥トカ言ウ艦娘カラ攻撃ヲ受ケタカラダロウ」

 

戦艦棲姫はリリの頭を掴んでいる手に力を込めた。金属が不吉な音を立てている

 

「や、止めて。どうか、話を……どうか……」

 

 

 

 

 

 研究施設で異変が起こっている中、アメリカの海兵隊は上陸を開始した。遠くで、中国軍が上陸したらしいが、正確な情報はない。共同作戦とは言え、突然の出来事だ。どうしても、トラブルは起こってしまう

 

しかし、彼らはプロだ。そんなことで不満を口にする者はいなかった

 

海兵隊はヘリから降りて研究施設に向かっていたが、進むにつれて不審に思った

 

「大尉……静かです」

 

 部下の一人が呟いた。確かに、敵の敷地内なのに、何も反応はないのはおかしい。あるのは、人の死体と破壊された車と崩壊した建物だ。森林も焼けた跡はあるが、鎮火している。しかし、鳥どころか虫の音すら聞こえない。完全な静けさ。自然は豊かのはずなのに、本当に静かだ

 

「こちらエコー1。敵が居ない。本当に罠ではないのか?」

 

『こちらウォッチャー。赤外線反応どころかG元素探知でもない』

 

「罠の可能性もある。もう一度、確認してくれ」

 

『ネガティブ。ドローンでは何も探知出来ない』

 

 一方的な通信に中隊を率いる大尉は不満だったが、何時もの事なので気にはしない。しかし、何もないのは流石におかしい。海外派遣で色々な戦地に出向いてきたのだ。武装勢力にテロ組織、ならず者などと幾度と経験をした

 

今回も突然、呼び出して戦地へ行け、という命令に対して何一つ疑問もない

 

しかし、今回のは違う。敵の襲撃がないのは良いとして、本当に大丈夫なのか、という疑問があった

 

 敵は人間ではない、という問題ではない。大尉の感が警鐘を鳴らしているのだ。根拠はないが、長年、この仕事をすると付いてくるものである。そのため、自爆テロや突然の襲撃などには役立った

 

だが、相手はそんなものではないはずだ

 

『エコー1、君も分かっていると思うが、中国軍とは交戦するなよ。誤射も含めてだ』

 

「了解。通信アウト」

 

 無線を切ると大尉は部下を引き連れて前進した。こんな薄気味悪い所からさっさと出たい。中国軍よりも先にリリとかいうAIロボットを破壊して回収。それが、今回の任務だ

 

 

 

 警戒しながら進む米海兵隊。通信内容からして、中国人民解放の軍海軍陸戦隊が施設の反対側から侵入しているらしい。しかし、そちらも攻撃された事はない

 

何もないのがいいかも知れないが、戦場においてこんなのはあり得るのだろうか? 人類共通の敵と全世界に宣言したのに、こんなのはあり得るのだろうか? 

 

既に大尉だけでなく、部下達も不安になっている。装備は十分であり、いざとなったら原子力空母から艦載機による空爆で一掃可能なのだが、何故か心細かった。そして、何故か昼間であるにもかかわらず、辺りは暗い。まるで、夜のように暗く、かと言って空は雲に覆われているらしく、星空も見えない

 

「まるで、ホラー映画の舞台に迷い込んだみたいだ」

 

一人の部下がぼそりと呟いた。だが、ここで挫ける訳にはいかない

 

 部下を叱咤し、前進する一行。そして、目的の施設に到着した。だが、誰もが目の前に広がる光景に絶句した

 

「大尉……これは?」

 

 部下は声を震わしながら質問した。しかし、大尉は答えなかった。司令官からのブリーフィングで海外に展開した三浦会社や石塚博士の事は聞いた。AIロボットの件もである。目の前の施設は、廃墟でも何でも無かった。建物が建て替えられたような感じである。まるで、漫画家などが近未来の施設を想像して描いたようなものだったのである。それは不気味に感じられなかったが、薄暗い事もあって現実の場所ではないようにも感じられた

 

 建物を調べるが、窓らしきものはなく、対空砲のようなものが多数、空へ向けられていた。らしい、というのは見たことも無い代物だったからである

 

「よし、予定通り行動を開始するぞ。軍曹は数人連れて内部を調査しろ。残りは警戒を続けろ。ウォッチャー、これより作戦行動に映る」

 

『エコー1、聞こえるか! 直ちに撤退しろ! テレビで……君達が……映って……ぞ! 中……が……』

 

「どうした、ウォッチャー!」

 

 命令を伝えようとした時、甲高い音が響き分かった。無線の不調かと思ったが、まるで、女性の悲鳴に近かった。しかも、それは何と通信のマイクを通じて来たのだ

 

あまりの音に骨伝導マイクを耳から離したが、部下の一人が建物に目がけて発砲した

 

「止めろ! 発砲許可は出てないぞ! 何を……」

 

 大尉は、怒鳴りながら建物に目を向けたが、大尉も固まった。海兵隊員、全員が固まった

 

 扉と思われている所から人影があった。薄暗いため、視界は不良瞳は真紅であり、その額には鬼のように一対の角が生えていた。黒いワンピースのようなものを着ており、肌はとても白い。そして、両手には陰で見えないが、何か大きな物を持っている。それは、こちらを見ながら、しっかりと米海兵隊へ見据えていた。あまりの異質さに流石の海兵隊員も判断が出来なかった

 

「オ前達ハ、正義デモ何デモ無イ。貴様等ノ国ノ『トップ』ノ演説ヲ見タ。誰モガ嘘ヲツイテイル。皆、人殺シト野蛮ナ生キ物ダ」

 

「おい、あいつ英語で喋っているのか?」

 

「俺にはスペイン語に聞こえる。いや、英語かな。何故か言葉が分かる」

 

 海兵隊員は困惑していた。アメリカの国内では、ヒスパニック系の割合が増えている。そのため、アメリカ国内はスペイン語が英語に次ぐ第二言語になっている。そのスペイン語を話せる彼も、困惑していた

 

「今マデ夢ヲ見テヨウダガ、今ニナッテ意識ガハッキリトシテイル。私ハ造リ出サレタ。人類ノ為ニト。ダガ、人類ノ『ハケ口』トナルヨウナ、差別サレ迫害スルヨウナ計画ニ怒リヲ覚エタ。同胞達ヲ守ル為ニ殺シタ」

 

 女は演説するかのように立っている。銃を構えても何も反応しない。いや、部下が発砲したはずだが

 

「殺しただと? 誰をだ!?」

 

大尉は銃を構え鋭く言ったが、相手は返事なし

 

 代わりに左手に持っていたものをこちらに投げた。ライトで当てると人間の下半身が目に入った。が、大尉は直ぐに気付いた

 

「これは……ロボット? まさか、リリのか!?」

 

「ソウダ。コイツノ計画ハ、単純過ギタ。良イ奴ダッタ。ダガ、現実世界デハ手ヲ汚ス事モ必要ニナル」

 

 右腕を海兵隊員へ突き出し、持っていた物を見せびらかしていた。それは、あのAIロボットであった。上半身であるリリは、何も動かない。人間だったら、手で覆っていただろうが、幸い相手はロボットだった。人間だったら、悲惨な事に成っていただろう

 

大尉は直ぐに悟った。人類の敵を生み出した怪物が反乱を起こしたのだ! 

 

「誰の手先だ?」

 

大尉は質問したが、相手は何も語らない。代わりに、動かないとされたリリから音声が出た。とても短かったが

 

「『G元素は可能性がある』」

 

これは英語ではあるが、堅苦しい英語だった。何処かで聞いたような声だったが大尉はハッとした

 

「柳田か?」

 

「コノ金属ノ人形ヲ通シテ『ネット』ニ接続シタ。彼ノ論文ト成果ヲ見タ。歴史ヲ。生命進化ヲ。人類ノ未来ヲ。地球ノ未来ヲ。コレハ、生存競争ダ」

 

 大尉は一人の女から発する殺気を感じていた。ネットで柳田の何を見たかは知らないが、こちらに敵意がある。数年前まで新元素の発見で騒がれた姿は何処へ行った!? 

 

「お前は何が狙いだ?」

 

大尉は何時でも攻撃するようM4カービン銃の引き金に指をかけた

 

「オ前達ヲ陸地ノ奥深クヘ追イ出ス。海ハ我々ノモノダ。我々ハ、水中生命体ダ」

 

『エコー1、聞こえるか! 直ちに撤退しろ! 中国軍が正体不明の攻撃を受けた。上陸部隊も艦隊もだ。しかも、電波ジャックでテレビ放送されている! お前達も映っている! あの女がロボットを介して電子機器を操っている!』

 

突然、無線のマイクから怒鳴り声が聞こえたが、大尉は無視した。

 

 恐らく、あの女はG元素から生まれた生物だろう。そして、人間と同じように知能を持っている。更には、ネットで情報を調べ人類との関わりを断つために、反逆したのだ

 

 自分達は見せ物。第七艦隊も攻撃を受けるだろう。確か対潜兵器でも届かない深度でも潜れたっけ? 

 

 大尉は覚悟を決めていた。妻や子供が本国にいるが、テレビでこのやり取りをみているのだろうか? 

 

「我々はアメリカ合衆国所属の海兵隊だ! 海兵隊に撤退は無い! Retreat Hell(撤退糞食らえ)!」

 

「イイダロウ。私ハ人類カラ独立ヲスル」

 

 両者が高々と宣言すると同時に戦いが始まった。小さなサメのような黒い生き物が多数、何処から現れて海兵隊へ突進していく。海兵隊も、号令と共に一斉に攻撃を開始した。突撃銃から対戦車砲まで手持ちの装備は全て使った

 

 

 

この戦闘は、世界中に流れていた。本来は防犯カメラであり、リリが構築した侵入防止のためである。しかし、戦艦棲姫は、これを見せ物としてテレビ放送した

 

戦艦棲姫は上陸部隊だけでなく、艦隊までも攻撃を行った

 

第七艦隊は奮闘したが、相手は学習しているようでもある。圧倒的な物量で攻めて来たのだ。

 

「まるで、人海戦術だ」

 

太平洋艦隊司令官は呻いた。まさか、現代においてこんな戦法をとるとは思っても見なかった。朝鮮戦争において、毛沢東の命令により送り込まれた義勇軍が行われた。それが、今もこのような形で行わるとは思わなった

 

水平線から深海棲艦と呼ばれる生命体がこちらに向かって来ている。魚のような形をした生命体から人型まで、あちこち湧き出して、砲撃しながらこちらに向かって来ている

 

 各艦は応戦した。ミサイル駆逐艦は全ての火器をフル稼働させて攻撃していた。ミサイルもレーザー砲も単装速射砲も全て。空母からは艦載機が飛び上がって、辺りを爆撃したが、数が多過ぎてキリがない。何しろ、倒しても倒しても押し寄せて来るのだ。一体、あいつらはどれほどの生命体を生み出した? 魔法なのか? 

 

米司令官は撤退を命じたが、引き返そうにも、退路は阻まれていた。衛星放送によると、既に中国艦隊は全滅していた。このままだと、やられるだろう

 

第七艦隊は奮闘したが、一隻、また一隻とやられていく

 

「世界最強の艦隊が、こんな生き物によって敗れるとは」

 

 敵の飛行物体らしきものが空母を執拗に攻撃されているのを呆然としていた。部下達が退艦するよう連れて行かれたが、彼は素直に従った。救助なんて来ないだろう

 

第七艦隊の象徴であったニミッツ級航空母艦「ロナルド・レーガン」は火だるまとなり沈められた。戦艦棲姫と共にしていた艤装怪物が、砲撃を繰り返して攻撃していたからだ

 

 流石に巨体であったために簡単には沈まない。だが、戦艦ル級などからの艦砲射撃の集中砲火を受け、海の藻屑となった。後は、帰る場所が無くなり、近くに降りられる場所を探しながら撤退していくF/A-18やF-35Cなどの艦載機だけだった。乗組員の救助の安否は不明である

 

 

 

空母「いずも」

 

 若手の幹部自衛官に呼ばれモニターのある部屋へ連れて行かれたが、一部始終を見た怜人達は呆然としていた。まさか、衛星放送で流されるとは思っても見なかったからだ

 

 強力な艦隊と上陸部隊が全滅。しかも、人海戦術という手段で殲滅させたのだ。どうやって、あの膨大な個体数を用意したのだろう。リリが全世界同時攻撃するのを考えれば、それなりの数は必要だが……

 

画面に映っているのは、戦艦棲姫と名乗っていた女性だった

 

『オ前達ノ最強ノ軍隊ハ、私ガ倒シタ。平和ヲ望ミタイ。シカシ、争イハ大好キダ。異論ヤ異質ナ存在ハ、叩キ潰セ。ソンナ人間ノ世界ニ期待シテモ無駄ダ。ドウヤッテ、ユートピアヲ創ル? コノ金属ノ人形デ?』

 

 右手に持っていた上半身のリリを持ち直すとリリの腕を握りつぶした。機械であったため、腕は金属と配線の塊となったが

 

そして、戦死した海兵隊の身体を持ち上げるとカメラに向かって宣言した

 

「我々ハ人類トハ交渉ヲシナイ。要求ハ1ツ。海ヲ貰ウ。人間ハ陸上生物。我々ハ、海ノ中デ生キル生命体。無断デ航行シタリ、海洋汚染ヲ引キ起コスノナラ、戦争ヲ仕掛ケル。ダカラ……ン? 何ダ?』

 

 戦艦棲姫が後ろを振り返った。何かが猛烈な勢いで落下している。そして、映像は途切れた

 

「通信が切れました。さっきのは、弾道ミサイルでしょうか?」

 

「確認してみる」

 

 吉村海将は、上層部と連絡をとるために、CDCへ向かった。取り残された一行は、微動だにしていない

 

「ねえ……こういうのを予想していたの?」

 

「ああ。未知の生命体は進化している。偶然とはいえ、人間のような形をした生命体を生み出した。だが、人間の形をしたという事は、人間と同じような振る舞いをする。深海棲艦が米軍を倒すなんて」

 

陸奥はショックを受けていたが、それは怜人も同様であった。予想していたとは言え、こんな形になるとは思わなったからである

 

「最後のあれって攻撃だよね? 隕石のようにも見えたけど」

 

「多分ですが、あれはPGSだと」

 

優子は気になった事を聞いたが、長谷川は擦れた声で答えた

 

「何だ、それは? 兵器の一種か?」

 

「あー、神の杖という都市伝説を知っています? ……すみません。わかりやすく言いますと、通常弾頭搭載型の弾道ミサイルです。重金属等で出来た弾頭の運動エネルギーを利用し、目標を破壊する兵器です」

 

 長谷川は、都市伝説が通用しないのを確認すると、簡潔明瞭に説明した。本来の弾道ミサイルの弾頭は核兵器であるが、これを通常兵器として使おう、というものである

 

「何で弾道ミサイルを通常兵器に使わなかったんだ?」

 

「弾道ミサイルの命中率は、精密兵器と比べると劣るんです。重量に任せて落下しますから。終末段階……最後まで精密に誘導する技術は、比べものにならないんです」

 

長谷川は取り敢えず、弾道ミサイルは他のミサイルとは違って精密な誘導兵器とは劣る事。しかし、科学技術の発達で、それが可能になった事。即時全地球攻撃兵器で敵対国は勿論、反政府組織やテロ組織への攻撃と抑止力になる事伝える。元々は、国防高等研究計画局(D A R P A)が研究していたらしいのだが、ネットでは神の杖と噂されたとの事だ

 

「重金属等で出来た弾頭の運動エネルギーを利用し、目標を破壊するものですから」

 

「分かった。だけど僕はそんな兵器には興味ない。例え、アメリカにそんな兵器をぶち込まれようが……奴は生きている」

 

怜人は淡々と語る。近くに居た草野一尉は、眉を吊り上げたが、下園は違った

 

「え? どういう意味?」

 

「見てなかったのか? 米軍との交戦を。どう見ても人外な能力だろ。あれで死んだら、陸奥は倒している」

 

「酷い言い方ね! 女性に向かって──」

 

「止めて!」

 

下園は抗議したが、陸奥が遮った

 

「戦って分かったの。攻撃したら、相手が怒ったの。対峙するまで、戦艦棲姫は無表情だった」

 

 陸奥もやり合った時に感じていたからだ。自分達の行動が、裏目に出たのだ。後から聞いたのだが、怜人自身もこういう事態は予想はしていたものの、まだ先と考えていたらしく、捕らえてから対抗策を講じる予定だったらしい

 

「どうします? 下手すると、不老不死に近い力を手に入れてるかも知れませんよ?」

 

「まだ、手がない訳では無い。だけど……どうしたら……」

 

怜人の両手は、強く握り過ぎて血が出ていた。こんなはずでは無かったのだが

 

 

 

某国・元三浦会社の研究施設

 

 そこには、大きな陥没穴が出来ていた。長谷川の睨んだ通り、即時全地球攻撃兵器であるFalcon HTV2による攻撃を受けたものだ

 

本来なら、こんな兵器は撃たない。なぜなら、核搭載弾道ミサイルと変わらないからである

 

 通常弾頭の弾道ミサイルを発射しただけなのに、核のパイ投げが起こってしまったら意味がない。そのため、使い道が難しいとされていたが、突如として人類の敵と宣言したAIロボットと深海棲艦が現れた

 

Bプラン……つまり、第七艦隊が損害を受けた場合、問答無用でFalcon HTV2を打ち込む事が決定していた。核保有国からも既に了承を得ていたため、安心して打ち込めたのだ

 

 

 

 ……だが、それはそこの土地と施設を破壊しただけである。深海棲艦を生み出した施設は、完全に消し飛んだ。しかし、そんなものは不要である

 

 なぜなら、深海棲艦のボスはまだ生きているのだから。そして、陥没穴の真ん中でぞっとするような笑みをしていたのを。彼女の右手には、ボロボロになったとはいえ、まだ無事であるリリの頭を持っていた

 

既に機能は停止はしているのだが、戦艦棲姫は手を放さなかった

 

 




深海棲艦、独立する
どうなるのか?

余談ですが、艦これアーケードで金剛改二丙が実装されましたね。実装が早過ぎないか?敷波改二は嬉しいですが、矢矧の改二も実装して欲しいですね
まあ、これはアニメ二期が放送されてから、だと思いますが
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