ジェネシス ~陸奥の冒険~   作:雷電Ⅱ

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まさか、菱餅が必要になって来る日が来るとは
手を付けなくて良かった


第5章 未来のために
第24話 会議と戦闘


数日後

 

 世界は大騒ぎだった。AIロボットが人類に反逆したと思ったら、深海棲艦と名乗る未知の生命体が人類に挑戦状を突きつけてきたからだ

 

 いや、人工知能が反逆するニュースを聞いても人々はあまり驚かなかった。そんなのは散々、創作でやっていたからである。人工知能が人類を1つにするために、人類の敵になった事については倒そう、という運動が高まった

 

 しかし、未知の生命体が自我を持ち、海を寄越せ、と言ってきたのには衝撃的だった。しかも、まさか数年前に騒がれていたG元素から生み出され進化した生命体とは思いもしなかっただろう

 

 しかも、リリがG元素の生き物を特殊な方法で進化したことなんて誰も思いもしなかった。そのため、色々な憶測を呼んだ

 

 アメリカと中国、そしてロシアは艦隊の敵討ち、そして報復として攻撃を行ったが、相手は逃げてしまった

 

 海に逃げた事は確認されているが、何処にいるのか全く分からない。何しろ、深海は電波も光も通さないのだ。技術が発達していても、海洋の95%は未知のままなのである

 

「艦隊をやられたのだ! 直ちに核を撃ち込め!」

 

「え? 何処を攻撃するんです?」

 

 過激な政府高官は怒鳴ったが、統合参謀本部議長は唖然としていた

 

 アメリカの国防総省、ペンタゴンでは国防会議が開かれていたが、解決策が何一つとして出てこない。軍人と政治家が怒鳴りあっている中、国防長官も大統領も深海棲艦のデータを見ながら頭を悩ませていた。

 

 深海棲艦の事は日本からG元素の情報提供……というより半ば恫喝みたいなものだったが……とてもではないが話にならなかった

 

 AIロボットを創った人は武装勢力との抗争に巻き込まれ死亡。その影響でAIが暴走し、深海棲艦を造ったという。人工知能は人間と違って疲れや睡眠、そして食事を必要としない。金属疲労や動力源の問題は柳田怜人がロボットのボディを設計したらしいが、製造したのは三浦会社だ。三浦会社も捕獲しようと動き出たが、深海棲艦に呆気なく殺された。まさか、重武装してるとは思わなかったらしい。野生動物の捕獲感覚で三浦社長も含め会社員は現場へ急行し、そのまま帰らぬ人となった

 

 如何にも平和ボケらしいが、どんなにワメいても死んだ人間が生き返る事はない。そして、リリであるAIも破壊された。最先端であるはずのAIを日本は評価しなかったのか? つまり、造った人が死亡か行方不明になっているため不明な所が多すぎる

 

「日本政府に抗議を──」

 

「そんなのは後からでも出来る。私がこの件で一番腹立たしいのは、我が軍の原子力空母が攻撃を受け沈められたにも拘わらず、相手に報復出来ないことだ!」

 

 国防長官が提案をしたが、大統領は一蹴した。米海軍の原子力空母には歴代の大統領の名前が付いている。米空母はイージス艦など多数の駆逐艦や原子力潜水艦に守られており、容易に攻撃が出来ない。例えどこかの国が、原子力空母を沈めたとしても、アメリカはこれを宣戦布告と判断。報復として敵国を全力で攻撃するだろう。例え、軍拡に熱心なロシアや中国などが手を組んでアメリカに挑んだとしてもアメリカには勝てないだろう。核戦争をするほど、人類は愚かではない。寧ろ核を使わず、通常兵器だけで相手を屈服させれるのだ

 

 しかし、未知の生命体……深海棲艦が米艦隊を攻撃を受けて撃沈。しかも、相手がとった作戦は人海戦術という前代未聞の攻撃方法だった。しかも、物理攻撃が効きにくくなってきている、との報告もあった

 

 第七艦隊の乗組員のほとんどは行方不明だ。しかも、戦艦棲姫と名乗るボスは、Falcon HTV2の攻撃を耐えきった

 

 この兵器は、最近になってようやく実用化出来た兵器である。簡単に言うと、通常型弾道ミサイルである。ネットでは、『神の杖』というデマがあるが、元ネタはPGSから来ている

 

 弾道ミサイルを着弾まで誘導して都市を攻撃。次世代の抑止力として注目されていたが、問題はこの攻撃を核攻撃と受け取られてしまっては意味がない

 

 ペンタゴンもこの兵器の有効性を大いにに悩んでいたが、何処の国にも所属しない生命体が出現。しかも、中国軍の艦隊どころか、第七艦隊まで壊滅させたため、ゴーサインを出した。命中精度や破壊効果などのデータが取れるため、皆が注目していた

 

 そして、攻撃は成功。ペンタゴンとホワイトハウスは手を叩いて喜んだが、赤色海域のギリギリの所を飛行している無人機の偵察によると、ピンピンしているという

 

 リアルタイムで監視していたため、間違いない。この結果にアメリカは勿論、全世界は呆然とした

 

 通常型弾道ミサイルである極超音速兵器であるFalcon HTV2を造ったアメリカも凄いが、その攻撃を耐えきった深海棲艦には唖然としていた。Falcon HTV2の研究開発に関わっていたDARPAの職員全員が思考停止状態に陥ったらしい

 

 そして、現在。国防会議では高官軍人が怒鳴りあっている

 

「簡単な話だ! 対潜兵器の弾頭に核を搭載して太平洋にばらまくんだ!」

 

「幾らなんでも無茶です! 第一、どこにいるか場所すら分からないんですよ!」

 

「なら、エサをまいておびき寄せばいい! 集まった所に核をお見舞いしてやれ!」

 

「議長、冷静になってください。太平洋の無人島でやったとしても、他国まで刺激してしまう可能性もあります」

 

「何だと! なら、アメリカ国内で作戦をやれと!」

 

 互いに顔を真っ赤にして議論する中、大統領はため息を付いた

 

「あんな映像を見たら核兵器すら効果ないと思ってしまう」

 

「しかし、何か手を討たなければ艦隊は全滅するどころか、経済は崩壊するでしょう」

 

 国防長官の言い分は尤もだった。タンカーや貨物船などの航路が塞がれてしまうのだ。今はまだ無事な船はあるが、時間の問題だろう

 

「海賊よりも厄介だ。……そうだ。日本では、寄せつけない電磁波を発生装置を開発したのを聞いたが」

 

「……あれは強力な電磁波を発生しないといけない故に、常に出さないといけないため、大電力が必要不可欠です。軍艦や大型の船なら兎も角、小型の船になると……」

 

「コストがかかるって事か。……とにかく、日本に連絡してもらおう」

 

 大統領は提案しようとした時、国防長官は待ったをかけた

 

「いいえ。その必要はありません。実は、研究チームが新型兵器の開発にこぎつけたとの事です」

 

 この報告に大統領は驚いた。何の兵器だ? 

 

「で、それは有効なのかね?」

 

「そうです。これが、例の兵器で」

 

タブレット端末を渡された大統領は、最後まで読んだが、大統領は唖然としていた

 

「……本当にこんな兵器が可能なのか? まるで……SFのような」

 

「いいえ。G元素は日本の専売特許ではありません。過去にも降ってきたのです。古代人は、それを地獄の門、降霊術などのオカルトとして伝えました。我々も密かに研究をしていたのですよ」

 

「出来るのか?」

 

「大統領の命令があればいつでも」

 

 大統領は未だに議論している官僚と軍人を見渡した。確かにこの兵器があれば、一掃出来る。しかし、余りにも現実味のない兵器が奴等に通用するのだろうか? 

 

 

 

 一方、日本でも同様に大混乱に陥っていた

 

 と言っても、マスコミの大半は相変わらず政府の批判しかせず、デモ隊も国会議事堂に集まる始末だ

 

 野党の国会議員達では話にならないため、閣僚だけで話し合いを行った

 

 

首相官邸

 

 数時間前から奇妙な事態は立て続けに起こっていた

 

 AIロボットの暴走、G元素の進化、そして深海棲艦の自我…… 

 

 特に戦艦棲姫を名乗る者の映像は衝撃的だった

 

 1つの映像の持つ効果は、100万の文字よりも遥かに有効である。そして映像が衝撃的であればあるほどその効果が絶大である。AIロボットのリリと戦艦棲姫の映像だけで如何に鈍い人でも事態の深刻さを極限まで認識させるのに十分な働きである。この映像は国民だけでなく、国家の中枢まで影響を与えた。

 

「なんてことだ……。これは……本当に人類の危機そのものだ……」

 

「総理、今回の事件は明らかに災害ではなく、軍事行動です」

 

 テレビを見ていた総理大臣を始め、閣僚達は呆然としてテレビを見ていた

 

「米海軍の第7艦隊も中国海軍の南海艦隊も壊滅しました。そして、深海棲艦は航行する船舶全てを攻撃しています」

 

「何とかならないのか?」

 

「敵は人とは違い、死すら恐れません。如何にハイテク兵器でも人海戦術をとられては、不利です。何しろ、物理攻撃が効きにくいのですから」

 

 官房長官は困惑しながら呟いた。既に警視庁や海上保安庁、そして防衛省からこういった報告があるのだ

 

「現在、海上自衛隊の護衛艦隊は例の電波を搭載し、沖合いに避難しています。幸い、柳田教授も保護しています。ボスを倒せば何とかなる、という報告も聞いています。拠点を制圧すれば、事態は終わらせます」

 

「敵基地攻撃能力か……いや、だめだ! だめだ! この件は、まだ法律や憲法など問題がたくさんあるのだぞ!」

 

 総理は反射的に反応したが、慌てて否定した

 

「総理、事態は切迫しています」

 

 近くにいた国土交通大臣の言葉に総理は苦渋を満ちた顔をして喚いた

 

「何を言っているのだ! 相手は他国の軍隊ではなく、ただのテロ組織だろ? 防衛出動なら兎も角、許可無く他所の海で武力行使してみろ! 次の総選挙で、これが他の党やマスコミに攻撃材料に使われてしまうぞ!」

 

「国家や世界の危機に選挙ですか!? 海上保安庁の報告を見たでしょう!」

 

 国土交通大臣は真っ赤になって叫んだ。海保は国土交通省の外局として設置される警察機関なので、報告は嫌でも入ってくる

 

 警察庁や国家公安委員会の人達も声を上げたが、総理は首を振った

 

「無理ったら無理だ! 第一、戦争でもあるまいし!」

 

「では、これはテロと言いたいんですか!」

 

「そうだ!」

 

 この一言でたちまち口論が始まり、収拾がつかなくなってしまった。ただ一人、防衛大臣は口論に参加せず呆れるように見守っていた。

 

(万が一、深海棲艦が攻勢に出たら、選挙どころか国の存亡すらおぼつかなくなるというのが分からないのか? 権力欲に毒された政治家め!)

 

 心の中で呟き、こみ上げる怒りを抑えながら静かに口を開いた。

 

「総理、そして皆さん! 現状を伝えますと……柳田はそれに対抗する手段を知ってるとのことです」

 

 防衛大臣の言葉で口論が収まり、全員の目が防衛大臣に向けられていた。

 

「どういうことだ?」

 

「彼によると、未知の生命体……深海棲艦は自我があるものの、動物の群れのように動いている、とのことです。シャチや狼といった風にです。もし戦艦棲姫のボスを捕獲、もしくは殺傷すれば攻撃は止まるとの事です」

 

 防衛大臣は、野良となった深海棲艦が肉食動物のように襲ってきたり、深海棲艦のボスが素直に攻撃命令中止を素直に応じるか、などの問題点を敢えて持ち出さなかった。官僚が混乱するだけだ

 

「殺傷と気軽に言ってるが、どうやって? 米軍も歯が立たなかった軍団だぞ?」

 

「彼曰く、対抗手段は幾つかあるとの事です」

 

 防衛大臣は説明しようとするが、別の官僚から質問が上がった

 

「柳田教授は信用出きるのか? 彼が仕組んだ可能性は?」

 

「それはあり得ません。彼の経歴は勿論、AIロボットには関与していないのは分かりきっていますから」

 

 統合幕僚長は防衛大臣に変わって否定した。尤も、何かしら実験をしていたのは掴んでいたが、現段階で何なのかはまだ知らせていない

 

 まさか、既存の技術を使わず人工生命体を生んだ、なんて言えないからだ

 

「しかし……彼の経歴は本当なのですか? 難関国立大の理学部へ入学し、海外の留学でもトップ。卒業して、あの事件後には、お子さんがいるにも拘わらず医学部を受け直し、医師免許を取得しても医者として行動もしない。天才なのか、バカなのか分からないのだが」

 

 幾ら天才でも、ここまで無茶苦茶な経歴の人はいない。しかも、彼は社会では注目すらされていないのだ。彼の就職先は株式上場企業の三浦会社である。しかも、研究員として

 

「ええ。彼の母親は、海外で精子バンクを買い、次いでに遺伝子操作までしたのです」

 

「え? 彼はデザイナーベビーなのですか?」

 

 厚生労働大臣が説明するなか、側近の官僚は素頓狂な声を上げた

 

「彼の父親は未だに不明です。しかし、知力が並外れていることから、文科省の特別待遇児にしたのです。デザイナーベビーという事実に関して目を瞑る代わりに、彼の要望は全て通らせました。奨学金返済も無しです。その代わり、表沙汰になるような事はしない」

 

「ちょっと待ってください!」

 

 側近が真っ青になって立ち上がったが、総理が宥めた

 

「いいんだよ。事実だよ」

 

 側近は総理が座るよう促されたが、側近が未だに不満だったため補足した

 

「昔、天才児と噂された男の子が、実は遺伝子操作されたデザイナーベビーだった、なんて公表出来る訳がない*1。彼の妻のコンクリート殺害事件も危なかったんだ。WHOなどに知られては、日本まで批判される。全くあの母親は無茶なことをする。しかも、闇ルートでやるなんて。デザイナーベビーは問題になるというのを知らんのか。母親は表沙汰にしたかったらしいが、当の本人は興味なくて良かった」

 

 どうやら、総理は彼を知っているらしい。側近は追及しようとしたが、辞めた。総理から一段と怒ってるのを感じられた。そのため、別の質問に切り替えた

 

「では、対策は当然、持っているのですね?」

 

「そうらしい。というより、G元素だけでなく、他の分野でも活躍したらしいがな」

 

「幾ら天才だからってそんなに……」

 

 側近は信じられないが、文部科学省の人は話に割り込んだ

 

「不思議ではありません。当の本人の性格は兎も角、天才はそれくらいの能力はあります。過去にアメリカでは、ある天才少年が自作の原子炉を造って大問題になりましたから*2

 

「え? そんなの作り話では──」

 

 側近が鼻で笑ったため、文科省の人は資料を彼の机に投げるように置いた

 

「興味があれば、一読を」

 

 側近は渋々紙に目を通したが、次第に顔が強ばった。『事実は小説より奇なり』とはこの事かもしれない

 

「それはそうと、彼は何と?」

 

「今は無理でしょう。何しろたった今、空母『いずも』は、攻めてくる敵を攻撃しています」

 

 総理の質問に海上幕僚長は、答えた

 

「な? ……しかし、例の電波で」

 

「残念ながら、楽観出来ません。敵も進化しているため、克服する可能性もあります」

 

 海上幕僚長の説明に皆は顔を一層、青くした。G元素の未知の生命体対策で造り上げた兵器が効かなくなるというのか!? 

 

 総理は空母『いずも』に連絡するよう迷っていると、外務省の官僚が入ってきた

 

「総理、ホワイトハウスからお電話です」

 

 この報告に皆は顔を見合わせた。なぜ、今頃になってアメリカから連絡が来るんだ? 

 

 

 

 

 

 日本領海の何処か

 

『こちらイーグルワン、洋上の敵を爆撃する。爆撃終了するまで待機せよ』

 

「分かったわ! 待機する!」

 

 6機のF35Bは轟音を上げながら、洋上を航行している深海棲艦の集団に向けてJDAMを投下していた。本来はハイテク兵器を持たない相手に対してステルス機が出るまでもない。しかし、F-2A改が配備されている築城基地の第8航空団も街へ攻撃してくる敵相手に対処していたため、自分達でやるしかない。それに、貴重な実戦経験にもなる。吉村海将は電波範囲外でしつこく追跡してくる一団を撃破する事を決定。直ちに迎撃に向かった

 

 そして、陸奥は電波範囲内で残党を掃討する事になっていた。吉村海将は陸奥が余りにも参加するよう頼んだため、彼女の参加には了承を得た

 

 本来は、こんな事はあり得ないが、事態が事態でもあるためやむを得なかった。また、対艦ミサイルなども温存をしたかった。敵が人海戦術を取って攻めて来たら、逃げるしかない。ミサイルも貴重なのだ。上からは出きるだけ、無駄な交戦は避けよ、という命令を受けていた。

 

 護衛艦が大量に喪失するのだけは避けたい。それに、海上自衛官も陸奥の戦い方には興味を示していた

 

 

 

『こちらイーグルワン、爆弾を全て使いきった。後は頼んだ』

 

「有難う。……三十体いたのに、今は4体ね」

 

 陸奥は轟音を立てながら帰投するF35Bを見送りながら呟いた。F-35Bの飛行能力や攻撃能力には驚かされたからだ。F-35Bも恐るべきスピードを持っており、しかも急降下爆撃すらせずに爆弾を投下したのだ。しかも。命中率はいい

 

 半世紀以上も経てば、戦闘機などの航空機も飛躍的に進歩するものである。一方、ハイテクになればなるほど、コストやメンテナンスの負担が大きくなる

 

 F-35Bの価格が約100億円以上もするのを聞いた陸奥は、目玉が飛び出そうになった。いや、国防費(防衛費)は費用がかかるのは承知している。戦艦大和武蔵だって、多額の費用を出して建造したのだ*3。しかし、軽巡駆逐艦クラスしかない護衛艦やジェット戦闘機がここまで高額になるとは思いもしなかったからである

 

 しかも、これは日本だけではない。海外も似たような感じである。つまり、現代戦は高価な戦いをしているという。吉村海将が積極的に攻撃しないのも、ある意味納得はしていた

 

「装甲がなければ接近戦なんて無理よね。てー!」

 

 陸奥は零式水上偵察機を飛ばし、着弾観測を経て攻撃を行った。護衛艦の単装速射砲と比べて命中率は低いものの、敵を粉砕するには効果はある

 

 特に41cm主砲の威力は絶大だった。駆逐イ級や軽巡ホ級は1発命中すると撃沈し、戦艦ル級も砲撃戦になったものの、F-35Bの空爆の影響で既に中破になっていたため、簡単に倒せた。反撃する者もいたが、ほとんどは命中しなかったり、躱したりしたからである。それでも、数発は受けたが、戦艦の装甲は伊達ではなく、かすり傷程度で済んだ

 

 なぜ、敵の艦種が分かるのかと言うと、深海棲艦の情報はリリが倒れる前に公開したからである。人類の敵なのに、掌を明かすなんて誰もやらないだろう

 

 数分後には敵は居なくなった

 

 

 

「よくやった。本当に戦艦並みの攻撃防御を持っているんだな。そして、君の攻撃は有効だ」

 

「そう?」

 

 SH-60Jに回収され、空母「いずも」に着いた時に、出向かえた吉村海将の掛け声はそれだった。長谷川も一緒だ

 

「だが、君1人だけ戦っても戦況は改善しない」

 

「そうね。幾ら私でも限度はあるわ」

 

 吉村海将の指摘に陸奥は、頷いた。確かに効果はあるだろう。しかし、1人だけでは心細い。陸奥のような艦娘の軍団を作る必要があるのだが、一朝一夕には出来ないだろう

 

「それで、怜人は?」

 

「部屋に引きこもって研究していますよ」

 

 長谷川の答えに陸奥は、少し落胆した。そろそろ、対抗策を講じているはず

 

 

 

 怜人は戦艦棲姫の行動を見た日から

 

「直ぐには対策なんて練れない。よく考える必要がある」

 

 そう言って、吉村海将が用意してくれた部屋に籠っていた。一応、彼なりに働いているらしく、覗いた時は沢山の資料と数台のパソコンが机の上に置かれ、彼はせっせと手を動かしているのを目にしていた

 

「本当にこのままでいいのかしら?」

 

 報告書を書いて吉村海将と別れ、船内に移動している間、陸奥は呟いた。このままだと、何も解決しない。科学が発達しているのに、未知の生命体……深海棲艦の対策が出来ないなんて

 

「そう言えば、戦艦棲姫は怜人の何の論文を見たのかしら?」

 

 戦艦棲姫は『歴史ヲ。生命進化ヲ。人類ノ未来ヲ。地球ノ未来ヲ。コレハ、生存競争ダ』と言った。戦艦棲姫が嘘をつく以外は、彼の論文を読んで行動したらしい

 

「あー、あれですか。……恐らくは、あれでしょう」

 

「何なの?」

 

「大したものではないです。しかし──」

 

「いいから教えて。隠し事は沢山よ」

 

 陸奥の睨みに長谷川は落ち着かせようとしていた

 

「隠してはいません。既に動画サイトで挙げたものです。一種のドキュメンタリー映像です」

 

「ドキュメンタリー?」

 

「論文を読む人なんて僕達、理系の人間です。普通の人は頭がついていけず、読むのを諦めます、なので、論文を映像で分かりやすく説明したものです」

 

 長谷川はそう言いながら、優子がいる部屋のドアの前まで行くとノックした。彼女は明るく出迎えて来た

 

「むっちゃんは大丈夫ですよ。護衛艦隊がバックアップしていますから。ところで、今日は報告しに来ただけではないです。地球史の動画を持っています?」

 

「あの動画? 何で今頃?」

 

 優子は訝し気に聞いたが、陸奥と長谷川を交互に見た彼女は何となくピンと来たらしい

 

「戦艦棲姫の言葉が気になったの。怜人の論文を読んだって」

 

「そうね」

 

 優子は暗い声で答えた。戦艦棲姫の映像は衝撃的だった

 

「気になる事があるの。戦艦だった私に命を吹き込んでくれた事には感謝している。だけど、なぜ、数か月前まで危険を冒してまで死者を蘇らせるような研究や艦娘の研究をしているの?」

 

「どういう意味?」

 

「つまり、私のような人工的に生命体を生み出す事に何の抵抗感も無かったって事よ。人工知能と呼ばれる研究にも手を貸していたんでしょ? 疑問に思わなかったの?」

 

 怜人の行動には疑問がある。禁忌であろう死者蘇生の研究に手を出したり、艦娘が生まれても忌み嫌われるどころか、改善するために研究をする始末である。マッドサイエンティストかと思ったが、どうも違うような気がする

 

「確かに倫理には反するわ。だけど……そうねぇ。あるとするなら、パパが学生時代に生命の歴史と未来予測を論文に書いた時からかな?」

 

「歴史と未来予測?」

 

 陸奥は首を傾げた

 

「私はパパの気持ちは分からないけど、多分、エゴのためにむっちゃんを傍に置いていたのではないわ。だって、何時でも人体実験は出来たはずなのに、研究材料すらされていないじゃない」

 

 

 

 優子は答えたが、陸奥にはピンと来ない。しかし、彼の行動はよく分からない。医学を発展させたり、石塚博士のAIロボットの研究に手を貸したり、艦娘の研究をしたり

 

考えている中、優子はタブレット端末を持って来た

 

「多分、答えは動画の中にあると思う。それから、パパの所へ行って」

 

優子は動画の再生ボタンを押した

 

 

*1
以前にも述べた通り、デザイナーベビーは技術的にも倫理的にも問題がある

*2
これは1994年のアメリカで実際に起こった事件。17歳のある天才少年が手作りで小型の原子炉を製作。しかし、安全面など考慮されず、自宅周辺は放射能汚染を引き起こし大問題になった

*3
日本の国力を結集して建造した戦艦大和の建造費が、当時の価格で約1億4000万円。現在の価値にすると約3兆円になるだろうと言われている




何の動画なのか?

因みに今回のミニイベは、札が無いため負担はないものの、油断が出来ません
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