ジェネシス ~陸奥の冒険~   作:雷電Ⅱ

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コロナウイルス……終息するにもまだ先のようですね
外出するのにいつもマスクしています


第26話 選択

空母「いずも」

 

 CDCでは、ある通信が行われていた。海上幕僚長からの命令を聞いた吉村海将は、顔をしかめた

 

「この兵器は何です? アメリカは、何も言わないのですか?」

 

「分からんが、よくない代物だろう。しかし、詳細を知らされない兵器をよく共同作戦に持ち込めたな。アメリカもだが、総理と防衛大臣は何を考えているんだ?」

 

『いずも』の艦長も吉村海将も送られてきた新兵器のデータと作戦内容に不審を持っていた

 

内容も大雑把であった

 

 何処にいるか分からない深海棲艦を無人島に出来るだけおびき寄せ、大方集まった所にアメリカが開発した新兵器で一掃するとの話だ

 

 兵器の詳細は不明だが、一発で都市を壊滅するほどの威力らしい。だが、核兵器ではないため放射能の心配もない。新兵器の威力の測定を行うため、米艦隊と共に行動しろ、との事だ。しかも、武器使用は自由との事らしい。総理大臣がこんな決断をするとは誰も予想もしていない。総理が責任を持って決断したのなら、嬉しい限りだが、どうも違うような気がした

 

「G元素の化合物を使った重力兵器? 何なんだ?」

 

 兵器の詳細が、分からない。しかし、着弾場所からの危険範囲には絶対に入らないよう厳命された

 

「映画の撮影ではないですよね?」

 

「そうであって欲しいものだ」

 

 冗談は漫画か映画だけにして欲しいものだ。しかし、幾らなんでも上層部が冗談で命令を下す訳がない。通信機器類には異常はなく、第三艦隊からも通信が入ってきた内容もほとんど一緒。問いただしても「軍事機密」と判を押したような回答である

 

 

 

 いや、軍事関係の仕事で機密を言い分に詳細は知らされないのはよくあることである。例えば、F35を買った時でも機密が多すぎて大変だった

 

イージス艦もモンキーバージョンではあるものの、機密が多いのも事実である

 

 しかし、今回だけは違う。今回の事件を受け、アメリカは新兵器を導入し、実戦で使うとの事

 

それだけである

 

「そう言えば、下園という記者が言っていましたね。ブラックホール兵器や気象兵器を造っていると」

 

「本来だったら、鼻で笑うが、どうも違うような気がするな」

 

吉 村海将は再び怜人達を集めるよう部下に指示した。陸奥が彼のもとへ行ったのだから、すぐ来るだろう

 

 

 

「だから、ネットでこういうのがあるんです! BH兵器が!」

 

「重力を操って一帯を消滅させるブラックホール砲? 創作がネタではないのか?」

 

 待合室にて、先に来たのは下園だった。しかし、吉村海将は下園から話を聞いたが、現実味がない兵器なのであまりピンと来ない

 

「気象兵器や地震兵器なんて都市伝説の類いに過ぎん。過去にある首相が台風を発生させた、東日本大震災を引き起こしたとかネットに出回ったが、誰もが否定的だったぞ」

 

「今回は本当ですよ! 陸自が陰で動いているという情報も。リンフォンを回収する動きもあります!」

 

「つまり、米軍はオカルト兵器を造っていたと? アメコミネタなら面白い出来上がりになるだろうが、そんな馬鹿げた兵器があるなら、軍事バランスはとっくに崩れている」

 

 吉村海将は鼻で笑ったが、近くにいた陸自の草野1尉は顔には出してはいないものの、冷たい目で下園を睨んでいた

 

 国民生活センターとして変装して近づき、リンフォンを回収した男性こそ、草野1尉である。彼は特殊な任務を受けていた。勿論、機密は慣れているため、疑問を持たずにさっさとやりとげていた。リサイクルショップの人達の対応は苦労したが、最終的に和解という形で終わらせた

 

変装しているせいか、下園は気付きもしない

 

そんな言い合いをしている中、怜人達がやって来た

 

「どうしたんですか?」

 

「ああ、君にこれが分かるか聞きたいのだが、言いかな?」

 

 怜人の姿を見た吉村海将は、書かれていた紙を渡す。しかし、怜人が受けとる前に吉村海将は、忠告した

 

「これは関係者以外には見せないように」

 

「記者がここにいるのに?」

 

「ここにいる全員は、既に関係者だ」

 

 釘を刺すような文言に下園は、食ってきろうとしたが、草野1尉の部下が制止した

 

自分を秘密裏に知り公表されるとどうなるか分かった物では無い。つまり、下園は枷を嵌められたのである

 

 そんな押し問答を怜人は書類を受け取って見たが、予想していたのか、書類をめくると吉村海将へ返した。余りにも短期間だったので、皆が驚いたが、怜人からの言葉も皆が衝撃を受けるほどだった

 

「ブラックホール兵器か。まさか、本当に出来るとは。G元素を特殊な方法で作り上げるとは」

 

「「「「え?」」」」

 

 吉村海将を初め、他の自衛官は全て驚いた。というより、ピンと来ないと言った方がいい。ブラックホール兵器と聞いても、フィクションのようにしか思い浮かべない

 

「どういう事だ? 何か知っているのか?」

 

「ああ。あれは──」

 

 吉村海将に怜人は説明した。都市伝説となっているリンフォンからワームホールらしきものが出現した事。それは、G元素を含む化合物によって創られていた事、ブラックホールになる可能性もあり、くみ上げた者は吸い込まれるという事。そして、特殊作戦群らしき人物によって奪われた事を伝えた

 

それを聞いた吉村海将は驚愕の表情を浮かべた

 

「リンフォンは某テロリストが開発した爆弾では無かったのか? 草野一尉、これはどういう事だ?」

 

「吉村海将、私は貴方の上司ではありません。私は陸自の人間です。上の命令ですから」

 

吉村海将と草野一等陸尉はにらみ合いが生じたが、下園は歓声を上げた

 

「やっぱりね! アメリカはブラックホール兵器を実用化したのよ! 核兵器を超える兵器を造っていたのよ!」

 

「でも、それって他国でも簡単にブラックホール兵器を造れるって事じゃない? わざわざ他国へ渡したの?」

 

陸奥は唖然としながた言い争いを無視して怜人に聞いたが、怜人は首を振った

 

「いや、リンフォンから造り出されるブラックホールは小さいし、持続時間も短い。範囲は数センチだろう。これを大型化するのには、大掛かりな施設や莫大な資金も必要だ」

 

 陸奥の質問に答えた怜人に対して言い争っていた二人の自衛官は、争いを止めて怜人の話を聞くことにした

 

「ブラックホールって全てを吸い込むものなのに、持続時間ってあるの? 地球は大丈夫?」

 

「天体のブラックホールと何処まで同じかは知らない。だが、ある程度は分かる。『事象の地平面』と呼ばれる距離に入り込めば、二度と外に出れなくなる*1

 

怜人はまるで、掃除機のように全てを吸い込む装置と言う風に説明している。というより、そのように説明していたと言った方がいいのだろう。誰もがピンと来ないのだから

 

「ブラックホールに入るとどうなるの?」

 

「さあ、深海棲艦がこの世から消え去って全て終わり」

 

「そ、それだけ?」

 

 怜人のあっさりとしているため、下園が愕然とした。まさか、危険性を指摘しない事に憤っているのだ

 

「デメリットは? そんな事をして、環境に悪影響を及ぼすとか、アメリカが世界の覇者になるとか」

 

「政治なんて興味ない。正解がないからな。環境はどうなるか僕も予想できない」

 

 下園は政治的関連に無関心な回答をしたため、また食って掛かろうとしたが、優子は止めた。怜人の言う通り、政治に正解なんて無いから、怜人の答えには妙に納得していた

 

「でも、深海棲艦全員が吸いこまれたら死ぬよね? 確か重力が凄くて潰されるって」

 

「必ずしもそうとは限らない。ブラックホールの表面重力の大きさは質量に反比例する*2。しかも、これは天体のブラックホールの話だ。ブラックホール兵器は違うだろうから予想は付かない」

 

「って事は吸い込まれても深海棲艦は死なずに生きてるって事!?」

 

 優子は唖然とし、周りはどよめいた。ブラックホールは吸い込まれたら終わり、というのが定説だった。いや、正確には創作などでどういうイメージがあるのだろう。だが、潰れずに生きているとなると? 核と同等な破壊力を持つ極超音速兵器も耐えた深海棲艦だ。これでは、生きている可能性だってある

 

「それって、大丈夫なの? 再び出現する可能性は?」

 

「……不明だ。ブラックホールの中にはワームホールのようなものがあるらしい。時空移動も可能との事だ」

 

「SFみたいな話ね」

 

「誰もブラックホールの中に飛び込んで観測した者はいないからな。居たとすれば過去にリンフォンに吸い込まれた人達だろう」

 

陸奥も質問したが、あやふやな説明を受けて困惑した。怜人でも予想は出来ない

 

「待ってくれ。今の話を整理すると、深海棲艦をブラックホールに吸い込まれても未来に飛ばされるだけなのか?」

 

「ホワイトホール*3さえ出現すれば、吸い込まれた深海棲艦を吐き出されるだろう。ただ、これが本当に起こるかどうかは僕にも分からない。仮に未来に送り込まれるのなら約十億年の未来だろうな。確証はないが」

 

吉村海将は指摘したが、怜人は肩を透かした。これも予想が付かないらしい

 

「待って、そしたら十億年後の人達が、深海棲艦の脅威に晒されるわ! 反対よ!」

 

(((いや、流石に誰も生きていないと思う)))

 

 下園は批判したが、陸奥達は心の中ではそう呟いてた。怜人の未来予測によると十億年後の未来は、死に絶えた大地となるらしい。そんな所に深海棲艦が現れても誰も困らないだろう。しかし、下園はその事を知らない

 

「もし、数年後にある日、地球上にホワイトホールが出現した時、深海棲艦が出るかもしれませんね。しかも、遠い宇宙から何かを呼び寄せる可能性だってあります。ブラックホールは宇宙にたくさんありますから」

 

「な、何がくるんだ?」

 

 長谷川の補足説明に草野1尉がギョッとした。宇宙は広い。何が出るのか、検討もつかない

 

「分かりませんよ。もしかすると、『黄金の終焉』、『終焉の翼』、『この世ならざる虚空の王』が来るかも知れませんね」

 

「三つ首の宇宙怪獣の事かよ! ……全く驚かせやがって」

 

身構えていた草野一尉は予想外の回答に吹き出してしまった

 

「冗談は兎も角、上層部から深海棲艦を呼びよせる方法を模索するよう命令が来た。米軍との共同作戦だ。柳田君、何か策はあるのか?」

 

「まあ、無い事は無いですが。G元素が生み出されたブラックホールに興味がある。そういえば、深海棲艦の人型を捕獲にしたと言っていたが、見ても宜しいのですか?」

 

 怜人は思い出しながら吉村海将に聞いた。『いずも』に連れて来られた時に吉村海将が説明したのだ

 

「あるにはある。艦長、直ぐに捕虜を連れて来てくれ」

 

 

 

 吉村海将から待機するように伝えられ、下園もついていった。何でも深海棲艦の捕虜を撮りたいとの事だ

 

そのため、部屋には怜人と、娘の優子、長谷川に陸奥が残った

 

「確かにあれだけの量の深海棲艦を相手に戦うなんて無理ね。お姉さんでも骨が折れるわ」

 

 陸奥もアメリカがブラックホール兵器を使用する事には賛成だった。確かにそんな兵器なんて使わないの方がいいかも知れない。悪影響が不明であり、何よりも怜人も予想がつかないという

 

 部屋には話はほとんどなく、時間だけが過ぎていく。暫くして、優子は静けさを破るような聞いてきた

 

「それで、ねえ、パパ。何か隠していない?」

 

「……」

 

娘は敏感に感じ取っていた。確かに彼の様子がおかしかった

 

「長谷川。ブラックホールが吸い込まれた後は分からないのか?」

 

「ええ。まあ……。観測した者がいませんので、全部仮説と推測しか──」

 

「そうか」

 

怜人はため息をついていた。座っていた姿は、まるで歳を取ったかのようだ

 

「ねえ、何があったの?」

 

陸奥は心配そうに顔を覗き込んだ。怜人は顔を向けたが、何も語らない。まるで、悩んでいるかのようだ。だが、意を決したのか、口を開いた

 

「お前はパズルを組み立てた時、悪夢を見たと言ったが、何を見た?」

 

「え?」

 

「いいから。正確に」

 

陸奥は悩んだが、リンフォンを組み立てた時に怒った出来事をもう一度、話した

 

「全てなんだな?」

 

「え、ええ」

 

陸奥は全て話した。しかし、長門が現れた事については語らなかった。あれは、どういう意味なのだろう。ただの夢と思っていたが

 

怜人は満足したのか、軽く頷くと長谷川に聞いた

 

「ブラックホールはワームホールの入り口という学説があるが、僕は支持する。但し、何処へ繋がっているかは知らない」

 

「どうしたのです?」

 

「見たんだ。いや、僕も分からない。特殊作戦群の草野1尉にリンフォンを借りるよう頼んだ。どういう目的で回収したのかは興味ない」

 

「……先輩は何を見たんです?」

 

長谷川は何か気付いたらしい。いや、前々から分かっていたが、彼の行動には逸脱している所があるため、普段の行動と異常な行動に区別がつかなかった

 

「悪夢を見た。偶然とはいえ、軍艦に命を吹き込む技術を創った。そして、艦娘に人間社会に進出しようと考えた。だけど、嫌な物を見た。本当に」

 

怜人は顔を手で覆いながら話している。何だろう? 悪夢を見たにしては、陸奥よりも深刻だ

 

優子が近寄ろうとした時、ドアの方から呼びかけられた

 

「草野1等陸尉から聞いた。リンフォンが実在し、更にG元素反応があり、架空の存在だったワームホールが実現可能だという事で日本政府から回収命令が来たらしい」

 

皆が振り向くと、いつから居たのか、吉村海将がいた。部下達は廊下にいたのだろう。吉村海将は部屋に入り、近くにあったパイプ椅子に腰かけると、怜人達と対面した

 

「勿論、オカルトだったため、直ぐに動ける組織は限られていた。だから──」

 

「どうせ、JAXAが宇宙探査のために回収するよう依頼したんだろう。他所の諜報機関から奪われる前に回収か。数年前だったら僕も興味があったが、今は違う。前置きはすっ飛ばしていいから、本題に入ってくれ」

 

 遮りながらも早口で言う怜人に対して吉村海将は、頷いた。どうやら、この男には、前置きは要らないらしい。上から目線なのは腹が立つが、今は言い争う必要性は無い

 

「軍艦に命を吹き込むとはな。しかも、奥さんを蘇るための実験とは。何の躊躇もなかったのか。だが、今はそれは後回しだ。私の前ではっきり言うんだ。深海棲艦と艦娘を増やす計画を葬り去るんだ」

 

「指図は受けない。悪いが、陸奥が可哀想だ」

 

「そうだ。指図はしない。君は民間人だ」

 

 あっさりとした回答に怜人は眉を吊り上げた。てっきり、怒鳴ったり非難されたりするかと思ったからだ

 

「君の事は知っている。奥さんとその妹さんの事は残念だったな。最新鋭のAIロボットも」

 

「……僕は、見たんです。リンフォンを手にし、解明しようとした時に何かを見せられた。白い空間に居たと思ったら、何かのビジョンを見た。夢ではない。家族だけでなく、艦娘の仲間が次々と死んだのを」

 

怜人の説明で優子も陸奥も息を呑んだ。どういう事だ? 

 

「人間は、時には残酷な事をする。戦時でなくても。だから、気付いた。周りで不幸な目に合っているのは、力の限りを尽くさなかったから。艦娘達が周りから攻撃され、いがみ合っている事に。時には弾圧されて世界が滅びる未来のビジョンも見た事を」

 

「ちょっと待って。何を言っているの?」

 

陸奥は驚き、問い詰めようとしたが、吉村海将が手で制した

 

「リンフォンが見せた映像だ。都市伝説では、パズルを完成させる直前に悪夢を見るようだ」

 

「あれは、悪夢じゃない。真実だ。僕が敷いたレールの先だ。僕のせいで艦娘が惨めな姿になるのだけは避けたい」

 

 怜人の反論で、誰もが言葉を発しない。数年前では、こんな発言は、精神異常者としてみなすだろう。だが、不可解な出来事が起こっているため、誰も咎めない

 

「私に……私達に何が起こるの?」

 

「人間の過ちや愚かさが艦娘にも降り掛かって来る事だ」

 

 陸奥は質問したが、怜人の回答に絶句した。あれは、夢ではないのだ。自分達が弾圧されるという……

 

歴史上から見ても人類は互いに争い、勝者や権力者が敗者や弱者を搾取するのはよくある事だ。だから、艦娘に強化する手段や建造手段を探していたのだ

 

「君は科学の世界、特に医学界において多くの事を貢献してきたが、犯罪やデザイナーベビーは君が作ったものではない」

 

 デザイナーベビーは受精卵の段階で遺伝子操作を行うことによって、親が望む外見や体力・知力等を持たせた子供の事である。言い換えれば、親の欲望のために作られたものである

 

「別に同情されたくて陸奥の仲間を増やそうと研究していたんじゃない。もっと酷いビジョンを見た」

 

「……自分だけが生き残る事か」

 

吉村海将の指摘に怜人は固まった。どうやら、図星らしい

 

「その気持ちはよく分かる。私も有事の際、部下が次々と殉職してしまったら、耐えられないだろう。草野1尉は、仲間の事を心配していた」

 

 幾ら現代兵器が発達しようが、人の手が借りないと作動しない。近年、自立型無人機などAI兵器も姿を現したが、メンテナンスなどはやはり、人の手を借りなければならない

 

 人との関わりにおいて、仲間が次々とやられ、負け戦になれば隊員達の士気は下がるだろう。昔のように特攻なんて出来る訳がない

 

「捕虜だけでなく、機器類は全てそろえた。下園は、熱心に写真を撮っているが、気にするな」

 

「そんな事をしていいの?」

 

 吉村海将の説明に優子は驚いた。捕虜とは言え、相手は深海棲艦だ。そんな相手に記者が立ち会っていいのだろうか? 

 

「仕方がないとはいえ、あの記者を取り調べるためにここへ連れて来たのは私だ。今は本土へ送り返せないのでな。あまり、この空母をウロウロされては困るから、飛びつきそうなものを見せたまでだ」

 

 F-35Bは機密の塊であるため、立ち入りは禁じられている。しかし、ジャーナリストはあの手この手で情報を入手するだろう。なので、下園に特別という名目で捕虜を見せたのだ

 

 本人は自衛隊を悪役に仕立てるために捕虜を悲劇のヒロインとして取材するつもりだろうが、恐らく無理だろう

 

「作戦決行まで72時間後だ。戦艦棲姫を始めとする深海棲艦の集団をおびき寄せる手段は米軍にあるらしいが、期待しない方がいい。君が何らかの方法で手段を見つけろ」

 

「言われなくても分かっている」

 

 どうやら、拒否するという選択肢は彼には無いようだ。吉村海将は部屋を出て彼等に案内をしていく。陸奥と優子が後の続く

 

 最後に長谷川が出たが、怜人に止められた。誰にも聞かれないように小声で話しかけて来た

 

「長谷川、アカシックレコードを知っているか?」

 

「え、ええ。知っています。確か……先輩? まさか、リンフォンで──」

 

長谷川は何かに気付いたのか、問いただそうとしたが、怜人は口に指を当てた。幸い、陸奥と優子は楽しく話している事から気付かなかったそうだ

 

「想像に任す。僕は草野1尉から受け取ったリンフォンをもう一度調べた。……何とか観測出来た」

 

「何を見たんです?」

 

 長谷川は恐る恐る聞いた。以前だったら、好奇心で知りたがるだろうが、どうもそのような気にはなれない

 

「未来を見ていた。幾つも変化した未来を。あらゆる可能性を考慮して模索していた」

 

普通の人なら怜人の言っている事なんて理解出来ないだろう

 

だが、長谷川は瞬時に理解出来たのだ

 

「幾つ見たんです?」

 

「5千通りかな? いや、もっとだろう」

 

「……こちらが勝って、むっちゃん達が幸せになれた回数は?」

 

 怜人は目を閉じ考えていた。一つの決断で全てが変わる。そして、彼は目を開き、きっぱりと答えた

 

「単純に勝っただけなら12通り。……陸奥が笑顔になれた未来は……1つだ」

*1
ブラックホールの周囲には、有る距離よりも近づくと二度と外側に戻ってくることが出来なくなる限界があります。これを『事象の地平面』といいます。事象の地平面を超えてしまうと光すら脱出不可能とされています

*2
ブラックホールの表面の重力は大きなブラックホールほど小さくなる。もし、銀河系ほどのブラックホールが存在すれば、その表面の重力は地球の表面重力よりも小さくなるらしい

*3
ブラックホールの反対として考えられている存在で、あらゆるものを外部に放出する領域と考えられているとされる天体。但し、実在は現時点では確認されていない




ブラックホール兵器は『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』や『鋼鉄の咆哮』などを参考にして生み出した架空兵器です
まあ、仮にブラックホールが地球上の現れたら終わりです(汗)
ブラックホールは魔法カードで十分です(笑)

しかし、艦これにて渦潮を踏むと燃料や弾薬が吸い取られますが、もしかして特殊なブラックホール……?
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