収まるのは不明との事
そんな事より、艦これは七周年になりましたね。比叡改二丙とGotland andraの大改装が実装されましたね
第28話 多次元宇宙論
洋上
2機のオスプレイは空母「いずも」へ向かって飛び立っていた。何かあったら、F-35Bが来る。オスプレイには特殊作戦群全員、乗り込んでいた。ミッドウェー諸島から引き揚げたのだ
しかし、オスプレイの中には、怜人と陸奥の姿はない。一緒に乗せていた機械類も捕虜として乗せていた深海棲艦の姫らしき者も置いてきた
作戦通りであるのは間違いない。しかし、他の道はあったはずだ。だが、吉村海将どころか、上官や陸幕までも作戦通りにするよう念を押された
(何を考えているんだ、柳田)
草野1尉は心の中で呟いた。災害派遣や有事などでは、自衛隊は民間人の救助や保護を第一としている。それに反しているのだから、納得はしていない
「戻れないか!」
「無理です! 後、30分でB-2は現場海域に到着します!」
パイロットの叫びに草野1尉は舌打ちした。命令とは言え、アイツにリンフォンを渡すべきではなかった
カプセルの中で陸奥は一瞬、思考が停止した。彼は何を言っているのだ?
「落ち着いて聞いてくれ。疑問に思うだろう。なぜ、こんなことをするかって」
「落ち着いていられないわ! ここから出して!」
陸奥は必死になってガラスを叩く。艤装は取り外しているため、本来の力が出ず、割ることが出来ない。手が痛くなるだけだ
「いいから聞いてくれ。僕は見たんだ。リンフォンが見せた幻影を。あれは、アカシックレコードの一部だ。G元素は使い方次第では、神のように生命に満ち溢れる世界を造り出せるにし、悪魔のように死の惑星へと地獄になることも出来る。そして、高度な化合物を形成すれば時空を超える領域や特異点を産み出すことも」
「どういう意味よ!」
陸奥は怜人の話を無視して叫んだ。彼の講義なんてどうでもいい! 戦場で何をしているのか!
「君が怒るのも無理はない。この場面もリンフォンで見たんだから」
「ねぇ! 聞い……え?」
陸奥は拳でガラスを叩くのを止め、彼の話を聞いた。
この場面を見た?
「手短に話す。リンフォンはやり方次第で高次元の空間とアクセス出来る。つまり、G元素を媒介に兵器に生命を与える事は不思議な現象ではない。当たり前だったんだ。人間には手に余る存在だ。それだけだ」
「私が生まれたのは、神秘的なものや奇跡的なものではなくて、当たり前の事?」
陸奥は唖然として聞いていた
「同時に深海棲艦という人類の敵を生んでしまったがな。しかし、僕が関わなくても、他の者がやっていただろう。君のような艦娘が生まれるのは必然的だった。いや、人間は人工生命体を生み出す前座に過ぎなかったかもな。人間が様々なテクノロジーを生み出したのは、自分達のためでなく、新たな生命体、人工生命体を生み出すためのものではないか、と」
「私達が生まれることは決められていた? リリのような人工知能のロボットのように?」
「君は人間の愚かな行為が人工生命体を産んだ、とでも思っているのか? 自分自身を過小評価するのも良くない。僕にとって言わせてみれば、それはフィクションの見過ぎだ。フランケンシュタイン・コンプレックスなんて考え過ぎているだけだ。君は意識を持つロボットと出会っていたのに、何も疑問を持たなかったのか?」
陸奥は怜人に指摘されハッとした。リリは人工知能搭載のロボットだ。半世紀以上経つと、機械は劇的に進化していた。確か石塚博士の話によるとやっと人工知能が意識を持つようになった、と聞かされたような……
そう言えば、怜人が昔、挙げていた動画に何て説明していた。AIロボットは人間の限界を超えて進化する、と。生命は形を変えて進化すると
「共存はいいと思う。だが、異なる生命体が争って両方絶滅したらそれまでだ。この世界では期待しない方がいい」
「なら、どうして私をここにとじ込めて?」
「アメリカ政府はブラックホール兵器を使って深海棲艦をこの世界から消したいと思っているだろう。しかし、それは違う。この世から消し去っても奴等はまだ生き続ける。人類の仕打ちを忘れず怨みを持ちながら。現れれば、意味がない。無関係の人達まで巻き込んでしまう。科学者の警告なんて無視しているから爆撃中止なんて不可能だ」
怜人の説明はよくわからない。何が言いたいのか?
「済まない。だが、教える事は出来ないんだ。教えてしまっては、君達の未来が変わるからだ」
「未来が変わる? どういう事!?」
「ある世界の話だ。後は勇敢な駆逐艦娘と学生に任せる。しかし、僕の未来予測は違った」
陸奥は確信した。長門が夢で言っていた言葉
『陸奥! お前のいる男が鍵だ! 絶対にこの世界の流れを変えるな! でないと、人類どころか私達も世界も全滅する!』
あれはもしかして、夢ではない……?
まさか!
私を……私を長門の元に!
「ちょっと待って! どういう……」
陸奥は抗議したが、怜人は何も言わず静かに人差し指を口に当てていた。それは子供に静かにしようという仕草に
「これ以上は言えない。だが問題なのは、そんなものではない。技術を悪用した場合だ。深海棲艦の力は脅威だ。しかし、それをコントロールしようとする者が現れる。下手すれば、技術が悪用される事だ」
「そんな事」
「あるはずだ。例えば、動物兵器は過去に幾度となく使われた。犬から象まで。兵器もAIや無人機が発達したお蔭で、戦場ではAI兵器同士が戦うどころか、テロリストまでAI兵器を使う始末だ。深海棲艦を悪用した場合が恐ろしい。君の武装以外の兵器が通用しないからな」
怜人の言葉で陸奥は思い出した。圧倒的な破壊力を持っていると言われる極超音速兵器を耐えたのだ
「君も軍隊に使役されるかも知れないが、君の場合はあくまで人間ベースだ。どんなに力があろうが、食べなきゃならないし、睡眠も必要。人と同じように意識や感情もある。しかし、G元素から生み出し独自に進化した深海棲艦はそんな事には縛られない、強力な水中生命体だ。闘えば目に見えている。唯一救いなのは、彼女等は海水がないと力を発揮出来ない事か。人の欲望は、果てがない。ある者はこう考えるだろう。水中生命体をコントロールすれば、力を得られる。やがて、世界を制するために」
「人と人工生命との体対立よりも技術悪用される方が問題って事?」
「そうだ。いや、この世界では高確率で起こるだろう。だから、この世界よりもマシな所へ送る。お前の故郷は、21世紀の世界ではない」
陸奥は信じられなかった。なぜ、急に彼の思考が変わったのか? 何時もの彼なら、法の隙間を使って手段を選ばない大学教授のはず!
「教えて! 貴方は正義でも目覚めたの!?」
陸奥の問いかけに怜人は、作業している手を止めた
「そうだな。君のお陰だ」
「わ、私?」
「僕の人生は知ってるだろう。僕は、作られた人間だ。人間社会はあまり良いものではない。表向きは友好的でも、内心はどう思っているかなんて分からない。時には残酷な事もある。僕の場合は、娘と長谷川以外は気を許さなかった。性善説なんて存在しないとばかり思っていた。しかし、君は違う。いや、君達は兵器以上の存在だ」
陸奥はどう反応していいのか、分からなかった。兵器以上の存在?
「あるものを見た。過去の過ちを正すという目的で支配欲から力を乱用する者達を。そして、君達が弾圧されていくのを」
陸奥は唖然とした。自分達は、弾圧される存在なのか? だから、私を消し去るものかと
覚悟していたが、怜人からは陸奥の予想外の言葉を聞かされるとは思わなかった
それは──
「そんな圧倒的な力と絶望の前に自らの自由と信念のために戦い抜いた事を」
「え?」
陸奥は固まった。今の言葉は何だ?
陸奥の疑問に構わず怜人は話続ける
「人間に欲がある以上、人間が存在する以上、犯罪も戦争も無くならない。世の中を変えるのは、テクノロジーではなくて心だ。それが分かっていれば、死者蘇生という研究もしなかった」
「でも、変わりに私が生まれた。確かに貴方は過ちを犯したけど」
陸奥は混乱した。彼が悪と言いきれないのだ。偶然とは言え、自分を生んだ存在だからである
「いや、科学の発展は積み重ねだ。艦娘を生み出す基礎を作り出したのは僕だ。悪用されるのを防ぐ必要もある。そして、自由と信念のためにあそこの世界でも生きてくれ」
ここまで聞いて陸奥は確信した。私を転送する気だ。オカルトマニアである長谷川から聞いた事がある。確か──
「待って! 今ならやり直せる! 誰だって初めから完璧な人はいない。兵器だって完璧なものはないわよ!」
陸奥は訴えた。確かに、これは陸奥が正しい。人は生まれてから老いて死ぬまで完璧な人はいない。兵器……特に機械はメンテナンスや点検をしないと上手く作動しない。設計にミスもあるだろう。また、時代が変われば旧式と化する
陸奥を含めた戦艦は、第2次世界大戦においては、航空機が発達したため、活躍できなかった
「ありがとう。しかし、僕は君を生んだ。そして、差別や迫害されないように戦う力を与えた。間接的に、人類の敵である深海棲艦を誕生させてしまった。君の存在を許せない者もいるだろう。禁断の領域に足を踏み入れた者は償わなければならない。助走期間も可能性も与えた。後は……勇敢な駆逐艦娘と立派な軍人だ」
怜人はそう言い述べるとカプセルから離れ、近くにあったコントロールパネルに手を掛けた
その間、陸奥は必死になって叫んだ
この人、死ぬ気だ! 私を生かすために!
「ねえ、他の道もあるはずよ! 酷いわよ! 私を何処へ連れていく気!? 酷いわよ!」
「これしかなかった。沈んだ陸奥の戦艦に命を吹き込んで、この世界に招き入れた。すまなかった。僕は可能性を生んだ。後はあいつらがやってくれるだろう。僕は軍人ではないからね。彼なら、やってくれるだろう」
怜人はそういい終えると、なにかを押した。陸奥は、その後の事は覚えていなかった。催眠ガスを吸ったため、意識を失った。そして……
戦艦棲艦はミッドウェー島に上陸した。陸奥と呼ばれる艦娘が逃げた島はここである。空母ヲ級の艦載機によると、ここに上陸してるのは分かっている。しかし、迎撃があると思いきや、艦隊どころか、島からの攻撃もない。普通ならミサイルという兵器を打ち込むはずだが、それすらない
攻撃を受けたが、足の速い黒い飛行機である。それは海上自衛隊の空母『いずも』から発艦したF-35Bであるが、彼女はそんな事を知らない
戦艦棲姫は、数人の深海棲艦を引き連れて、ミッドウェー島に上陸した。地雷や罠を警戒したが、拍子抜ける程、妨害も無かった
緑が生い茂る所を歩いていくと、ある広場に出られた。そこには奇妙な機械が沢山並べられていて、1人の男性が岩に腰かけている。手には、奇妙なパズルを持っていて、子供のように遊んでいる
重巡リ級が砲を構えたが、戦艦棲姫は手で制した。この人は知っている! 会ったことはない。リリが保有していたデータに彼の事があったからだ。彼はこちらを確認すると、怯えるどころか、まるで友達と再開したかのように話始めた
「面白い生命体だ。高い水圧がかかる深海と海面を短時間で自由に行き来するとは。人間だったら、潜水病にかかってしまう*1。まあ、潜水艦の艦娘なら出来るだろう。いや、出来るの間違いだな」
「陸奥ト呼バレルハ何処ダ?」
戦艦棲姫は彼の言葉を無視して脅すように質問した。時間稼ぎか? しかし、罠にしてはおかしなやり方だ
「無視か。まあ、良いだろう。陸奥は送ったさ。記憶を部分的に消すために特殊な薬物を投与したから、この世界の事は知らない。だから、この世界にはいない」
戦艦棲姫は辺りを見渡した。陸奥の存在が確認出来ない。この島は、包囲したはず。海上だけでなく、海中にも潜水ヨ級が潜ませている。陸奥が居ない? 何か重要な事を行うとの通信を傍受したが、何もない。罠なのか?
戦艦棲姫は鼻を鳴らすと、手に持っていた金属とプラスチックの塊を柳田怜人の前に投げた
それは、動かなくなったAIロボットである『リリ』である。機能は停止しているらしい
「壊さなくてもいいのに」
「私ノ仲間ヲ返セ。『サボ島』ト呼バレタ海域デ生マレタ子ダ」
「ああ、あの娘なら横になっている。大丈夫だ。生きている」
戦艦棲姫は男が簡易ベットに指を指しているのを見た。確かにその子は居た。外見はそのままだ。眠ってはいるが。戦艦棲姫は不審に思った。この男、何を企んでいる?
「貴様ノ仲間ハ何処ダ? 仲間二何ヲシタ?」
「さあな。置いていかれたかも知れない。撤退命令が出たらしく、慌てて引きあげたよ。それよりも教えてくれ。君達の今後の人生について」
柳田の質問に戦艦棲姫は、眉をひそめた。自分の意見よりも深海棲艦の生き方を心配してるのだ
「ソウダナ。我々ハ水二棲ム生キ物ダ。貴様ガ呼ンデイル『G元素』ハ我々、水中生命体ヲ生ミ出ス素材ダ。人間ハ陸上デ栄エタガ、海中ハ我々ガ制シタ」
戦艦棲姫は語り出す。人間は知恵と力で地上を制し繁栄した。深海棲艦は海底で繁栄するつもりらしい
「友好関係は築かないらしいな」
「ソノ気ハ無イ。ネットヲ介シテ、人間ヲ研究シタカラダ。ソシテ、人間ハ恐ロシイ存在ダト認識シタ。ドンナ二綺麗事ヲ並ベテモ、コチラニ害悪ヲモタラスダケダ」
戦艦棲姫は説明した。彼は見捨てられたと判断した。なら、人のデメリットを伝えるだけだ
環境汚染、貧困、差別、紛争etc
人間は己のことしか行動しない生き物だと
しかし、相手は静かに聞いていた。それどころか、ため息をつく始末だ
てっきり、否定して人間性を訴えると思っていたが
「そうか。その判断も1つの答えだろう」
「何故、否定シナイ!」
戦艦棲姫は苛立ちを隠せなかった。何がしたいんだ?
「間違っていないからだよ。確かに人は愚かな事はするさ。僕もその1人だったからね。それよりも、僕の話を聞いてくれ。G元素は確かに恐るべき存在だ。だが、それを熟知しコントロール出来るのは一握りだ。僕もその1人だ」
戦艦棲姫は訝しげに怜人を睨んだが、ハッとして捕虜として捕らえられた、横たわる姫級を見た
微かだが、何か手を加えた痕跡がある
「何ヲシタ!?」
「君も同じ事をしただろう。海底に沈んだ軍艦に命を吹き込めば、仲間が出来ると。僕も同じだ」
「何!? 人間ガ何ヲ──」
「君達が地球の支配者になって貰っては困る。理由は沢山あるが、1つ言おう。それは君達では宇宙進出は出来ない。まあ、これは僕のワガママだが」
戦艦棲姫は呆気に取られた。殺されそうになっても、なぜこんな話をしてるのだ? 資料通り、問題ある人なのか?
だが、怜人は構わず話す
「 G元素は手を加え、別の元素に変えれば、生命を生み出す。そして、時空を超えた認識も。高度な文明を築く事だって出来るかも知れない。ああ、どんなテクノロジーが生み出すのかは、聞かないでくれ。どうせ、分からないのだから」
「我々モ文明築ク可能性モアルトイウノカ?」
「それは君ら次第だ。文明を築いた所でやることは人間と変わらんだろうな。だが、僕は先の事まで見通した。色々と話し合いたい所だが、時間切れだ」
戦艦棲姫は慌てた。まさか、この人は囮か? しかし、まさか大義のために死ぬなんてあり得るのか!? この人は、軍人でも政治家でもない! なのに、何だ!?
その時だ。上空で雲の中から3つの飛行物体がこちらに向かっているのを
そして、平たい三角型の飛行物体が、何かを落としたのを
「核カ!? ダガ、我等ニハ──」
「心配するな。人はそこまで愚かじゃない」
深海棲艦が慌てて海に逃げる中、怜人は落下している爆弾を眺めていた。不敵の笑みを浮かべながら
「向こうで幸せになってくれ、陸奥」
怜人が心の中で呟いた直後、彼はその後を覚えていない。強力な重力場と黒い物体が出現したからだ。地球上で小型ブラックホールが発生。しかし、天体のブラックホールとは違い、30秒すると何もなかったかのように異常現象は消え去った
この世界の地球では、ミッドウェー諸島は地図から消えた。
1ヶ月後
「まさか、こんな結末になるとは」
吉村海将は、呟いた。まだ、お彼岸の墓参りの季節でもないのに、ある墓地の墓石の前では人が集まっていた。柳田怜人の娘である優子と後輩である長谷川。そして、何かの縁で一緒になった海上自衛隊の吉村海将と陸上自衛隊の特殊作戦群の草野1尉であった
つい先日、葬式が終わったばかりである。葬儀の参列は、驚くほど少なかった。柳田怜人の親族は居なく、母親すら居なかった。あの騒動で取引相手が夜逃げしたため、金が回らなくなったのだ。優子は怜人の母親との縁を切った事もある。遺体もない異例の葬儀だったが、作戦に参加していた自衛隊員のお陰で無事に終わった
だが、その日は雨も降っているため、彼らの心情は暗かった。それもそのはずである。彼等の活躍は、世間に知られていない
ブラックホール兵器のお陰で深海棲艦は、地球上から消えた。しかし、その中には怜人も陸奥も含まれていた。現場海域が安全と確認されたと同時にヘリを飛ばしたが、何も見つからなかった
深海棲艦は、この世から消えた。このニュースは世界に広まり、国際世論はブラックホール兵器の危険性よりも、作戦に参加した部隊に拍手喝采だった。核すら効かない相手を倒したのだから当然だ。深海棲艦の生き残りもいたが、今のところ駆逐は上手くいっている。ボスがいないため、絶滅するのも時間の問題だろう
だが、G元素に携わっていた柳田怜人や艦娘の陸奥については関係者以外しか知られていない
「あのジャーナリストの下園は?」
「辞めてフリーになったらしいです。何でも真実を報道する記者になりたいと」
「そうか」
ジャーナリストの下園は居ない。空母『いずも』から降りた時に別れたが、それ以降は知らない。政府が公表しないのもあるが、報道機関もそんな突拍子もない出来事を信じられなかったのだろう。怜人がやっていた研究は、フィクションに近かったからである。しかも、当の本人はもう居ない
優子は両親の墓石の前で手を合わせて終えると吉村海将に質問した
「聞いていい? 自衛隊に入隊するにはどうすればいいの?」
「そうか。なら、地本に行こうか。陸海空のどれがいい?」
「海上で」
吉村海将は面食らったが、すぐに立ち直り苦笑した。自衛隊を批判するかと思いきや、父親を亡くしても、冷静らしい
一同が帰路につくため歩いて行く中、長谷川はスマホであるのを見ていた。怜人と別れる前に渡されたデータを
USBメモリーのファイルに暗号されたデータがあった。政府関係者も防衛省も気づいていないだろう。
その中には、膨大なデータだった。彼は三日かけて、怜人が残したデータを解析した。そして、彼は心の中でため息をついた
(先輩……酷いじゃないですか)
(死を偽装するなんて)
長谷川は怜人が残したデータの中にある記述を見つけた
『過去に多元宇宙論を唱えた物理学者は正しかった*2。三浦社長達に渡した賢者の石のデータは偽造だ。本物はUSBメモリーここにある』
勿論、普通の人から見れば呆れるような内容だろう。しかし、多元宇宙論は決してフィクションの産物ではない。その証拠は、数式と論文、そして観測された重力場で分かる
彼等は知らない。実はG元素の技術悪用で混沌の世界になる未来を防ぐために怜人は米軍のブラックホール兵器の作戦に賛成したのも。深海棲艦が高次元の世界に飛ばされて、何らかの拍子で別の並行世界に飛ばされた事も。死者蘇生の技術を艦娘の性質を活かして陸奥の魂を飛ばした事も。未知の元素をある人物が発見して艦娘を生み出すことも
そして、圧倒的な悪と暴力を前に勇敢に戦った駆逐艦娘と集団についても、この世界では知りようがない
怜人は、改造したリンフォンで変化した未来を見たのだ。そして、より良い未来を築いた世界に送ったのだ。但し、やり方1つ間違えると、アカシックレコードで見せたビジョンのようには実現できない。だから、怜人はビジョンの通りに行動したのだ。自らの手で生んでしまった艦娘と深海棲艦を並行世界に送ることも。艦娘の存在を認知するために助走期間も必要な事も
とある世界
横須賀鎮守府
「ここは平和やな~」
「ある事を除いてね」
ここは、横須賀鎮守府の提督室。龍驤と陸奥は、ある問題に頭を悩ませていた。本来は提督がいるのだが、提督は滞在している艦娘の半数を連れていってある大規模作戦に参加していった
艦娘支援艦である『おおすみ』から定期的に連絡は来てる。通信内容は特に問題はない
ただ、第一遊撃部隊である第三部隊は、海峡夜棲姫と接触をし、交戦しているとの事だ
陸奥は、提督代理として働いている。秘書艦として働いた事があるため、デスクワークや指揮は彼女にとっては、朝飯前だった
では、彼女達は何に頭を悩ませているのか
それは、明石と提督の父親である博士の実験だった。そして、また事件が起こる。花火のような爆発音が、再び鎮守府に響き渡った
「ねぇ! 工廠って常に爆発音が響き渡ったり、黒い煙を発したりする場所なの!?」
「陸奥さん、落ち着いて下さい! 後一歩で完成何ですから!」
陸奥が怒りを露にして工廠に足を踏み入れようとするのを工作艦の明石が落ち着かせようとする。足止めするために出向いたらしいが、陸奥は構わずに中に入る。明石は陸奥に抱きついたまま、引きずられるようになったが
居残り組の艦娘達が、遠くから覗いている中、陸奥は工廠内に散らばっている艦娘の艤装や新兵器に気を止めずに、何かに没頭している博士に怒鳴った
「博士! 研究熱心なのはいいですが、怪しげな研究をするのを止めてくれない!? この前は、黒煙を出したお陰で、消防車が出動する騒ぎを起こしているのよ!」
陸奥が怒る理由は、正にこれである。先日、実験の黒煙を火事と勘違いした住民が消防に連絡したのだ
お陰で事後処置は、大変だったのを覚えている
「すまんすまん。だが、開発資材に組み込まれた未知の元素の解明せねばならん」
「どう役に立つのよ!?」
艦娘や新兵器を生み出したりする未知の元素は、誰も解明していない。博士が発見したため今いる艦娘が生きてこられたが、限度というものがある。陸奥は研究している実験道具を片付けようとしたが、あるものを見た陸奥は手を止めた
「それは何なん? 宝石か? めっちゃ、綺麗やん」
「いやいや、そうではないわい。未知の元素を試行錯誤した結果、完成した代物じゃ。未知の元素の正体を突き止めるのが、わしらの仕事じゃ。明石も手伝ってくれるから助かるわい」
龍驤が興味を示したので、博士は説明した。未知の元素の正体は誰にも分からない。何しろ、従来の元素とは見せた違うのだ
「それで、これは──おい、陸奥。何をやっとる?」
博士は振り向くと、陸奥の行動に呆気に取られた。魅了したのか、赤い石を触ろうとしている。博士は特に咎めなかった。危険性はないのは分かっている。まだ、未知の元素が結晶化しているだけだ
「これ。どこかで見たような?」
陸奥は呟き、赤い石を触った直後、赤い石は輝いた。余りの眩しさに博士も明石も目を覆った。だが、陸奥だけは光が強いのを瞬き無しに凝視していた
輝いたのは数秒だったが、陸奥は何か見えない力に飛ばされ、工廠の隅にあった山のように貯蓄している鋼材に突っ込んだ
予想外の現象に回りは呆気に取られたが、我に返ると鋼材に埋もれている陸奥わ助けに集まった
「陸奥、大丈夫かいな?」
「博士、これは?」
「分からん! こんな現象は初めてじゃ!」
明石は困惑したが、博士も同様の反応だった。今までこんな反応は一度もなかった
やっと、鋼材に埋もれていた陸奥を引っ張りだしたが、陸奥の様子がおかしい。視点の焦点が合っていない
「陸奥さん! 大丈夫ですか!?」
明石は陸奥がの様子がおかしいのに気づき、声をかけたが、反応無し。自力で立つことは出来るが、まるで夢遊病のようだ。取り敢えず、陸奥を椅子に座らせる
遠くで様子を見ていた他の艦娘も工廠の中に入り、陸奥に駆け寄った
「博士、何をしたんや!」
「ワシは何も……しかし……今のは……」
「そんな事はいいから、後で謝りな」
龍驤が呆れたように言った直後だった。椅子に座っていた陸奥が勢いよく立ち上がった。そして、博士に近寄るとうわ言のように話し始めた
「博士、私……私! 思い出した!」
「な、何を?」
「私、一度建造された事がある! 別の世界で!」
陸奥は口を開いた。彼女の証言で周りが驚いたのは言うまでもない
勿論、中には半信半疑かも知れない。しかし、博士や明石は別だろう。柳田怜人ほどではないが、知識はあるはずだ
これは、私たちが生まれた経緯である。奇跡でも未知の現象でもなかった
時間がかかりましたが、ようやく話に終わりが見えました
次話でラストですね