柳田は忙しかった。授業だけでなく、他の事をしていた
周りから何かとんでもないことをしていると噂されたが、放っておいた。気にもしなかったし、自分がやることは違法でもない
賢者の石の生成に成功はしたが、限りがある
G元素から賢者の石を精製するのは難しい。コストがかかるが、別に沢山の人を蘇らせる訳でもない。まして、会社から研究用として貰っているのだ。量なんて知れている
(賢者の石で肉体を生成し、更には年齢も調整。問題は記憶だが、アメリカの教授から面白い話を聞かせれた)
彼は机から論文とDVD-ROM数枚を取り出した
(肉体が死ぬと意識が「量子」として飛び出し、宇宙または高次元につながる。その量子が魂と言われている。『量子脳理論』が本当かどうかだな。こちらに呼び寄せる方法も理論を読んだ。死後の世界……どんなものか見てみたい)
彼はパソコンにDVDをセットすると理論物理学者講話の動画を観る事にした。内容からしてとても難しいが、彼は既に量子物理学等を既に理解していた
論文を読み返しているとき、ふと昔の記憶が甦った
『ミスター柳田。貴方は何をしようとしているのですか?』
『死後の世界にいる妻とコンタクトしたい』
『貴方の気持ちはわかります。しかし……死後の世界からこの世界に帰って来た人はいません』
『構わない。悪魔に魂を売ってでもコンタクトしたい!妻の犯人を殺しても意味がない!』
(……そうだ。倫理が何だ。常識がなんだ。全員、自分勝手じゃないか!)
彼は歯を食いしばりながら心の中で呟いた。そんな彼の姿を娘はドアの隙間から覗いていた
娘は自分の父がおかしくなっている事は知っている。しかし、父の気持ちは理解している。母を殺した犯人は法で裁かれていない。そのため、娘も心の何処かで犯人に復讐する事が一番の望みだった。呪いがこの世に本当にあるなら、喜んで手に入れている
しかし、娘も……父がおかしくなって犯罪者と同じような道に進んでほしくはなかった
よって、父の後輩である長谷川と連絡をとっていた。もし、実験で蘇生実験の失敗や狂気の行動をしたら警察に突きだそうと……
数日後
「──以上をもちまして、G元素の説明を終わります。ご視聴ありがとうございます」
三浦会社の講演会にて、小惑星の研究や新元素な発見について説明を終えた彼は、そそくさに退出した。後は他の研究員でも出来るだろう
廊下を歩いている途中、誰かがこちらを呼び止める人がいた
「柳田さん!柳田さん!」
女性の声だ。聞いたことがないため、立ち止まって振り向くと、スーツを着こなした女性一人ととカメラを持った男性がいた。メモ帳を持っている事から彼女は記者だろう
「初めまして。私は──」
「話すことはない」
「待って下さい!私はフリージャーナリストの下園です!是非、お話しを!妻を蘇らせるという話は本当なのですか?」
無視して歩こうとした柳田に対して下園と名乗る記者は大声で聞いてきた
たまたま通りかかった人は振り向いたが、興味が無いのか足も止めずに歩いて行く
「そうだ」
「実はネットで貴方の噂が──え?い、今……何を?」
「噂の内容は知らないが、蘇らそうとしているのは本当だ」
下園は愕然とした。まさか、はっきりと答える人は今までいなかったからだ。大抵の場合だと無視か否定をするが、この人は肯定した!?
「い、一体……?」
「生命の起源のメカニズムとG元素を使えば人体の構成は理論上、可能だ。『量子脳理論』の仮説が本当だった事も」
「な、何を?」
「わかりやすく言えば、死後の世界は実在するということだ。科学的に」
余りの突拍子のない事で下園は混乱した。人体を構成?死後の世界は実在する?しかし、下園はフリージャーナリスト。特ダネを掴まなければ名は売れないし、栄転も出来ない
これはチャンスと見て質問した
「人が蘇らせると貴方は本気で?」
「やったことはない。仮説と理論だけだ。これから実験を始める」
立て続けである衝撃的な発言に付き添いのカメラマンも困惑した。この人は正気か?
「あ、あの……失礼ですが……クローン人間製造は法律で──」
「クローン?そんなものを造って何になる。クローンを造っても僕の妻になる訳ではない。人のアイデンティティを決めるのは個性と記憶だ。一卵性双生児の双子が出来るのと変わりない。それに刑務所に行くような研究なんてしていない。妻が悲しむ」
柳田は呆れるように説明をしていた。まるで当たり前のように説明していたが、下園もカメラマンもさっぱりだった
ただ、彼はクローン製造は否定していた
「人間が生まれた説は二つある。1つは創造論。もう1つは進化論。今では進化論も説明出来ない箇所もあって悩ませているが。46億年前、地球は生命を産んだ。どうやって地球に生命が誕生したのかは不明だ。現段階の学説は、生命の材料であるアミノ酸や──すまん、こんな事を言っても理解出来ないだろうな。分かりやすくいえば、僕の研究は、無機質から人体を構成し、異次元の世界から妻の魂を呼び戻してインプットすることだ。受精卵も代理母も要らない」
柳田は説明するのを止めた。生命の誕生や進化を話しても科学者ならともかく、一般人には理解出来ないからだ
なので、簡単に説明した
「探査機が小惑星で採取したサンプルを見て、生命の誕生は奇跡ではなく、条件によって誕生すると僕は見ている。勿論、僕の学説だ。聞き流していい。重要なのは未知の元素であるG元素。元素周期表に載っていない元素は生命に多大な影響を与える事だ。それと同時に生命誕生から進化までの期間を短縮する事が可能と見ている。だから、会社で飼育しているイーちゃんは短期間で急激に成長している」
実際に会社が管理している未知の生命体は元気に泳いでいる。名付けたのは誰か知らないが、何故か「イーちゃん」と呼ばれている。しかし、未知の生命体は既に手足も生えており、陸上でも歩行が可能ではないか?と唱える学者もいる。だが、彼は指摘もしていない。興味ないからだ。凶暴化して研究者を殺しまくるような生命体ではないのは確かだ。万が一、そんな事があっても殺処分は可能だ
話は逸れたが、下園は状況を必死に整理していた。そして、ある結論に達した
「まさか……それを使って妻を?」
下園はようやく気がついた。彼は恐ろしい事をしようとしている!
「そうだ。遥か昔にG元素を含んだ隕石が地球に落下したらしい。古代人は元素の事は知らずとも石の能力に気がついた。古代人はそれを利用した。その岩石には、不老不死の力や物質を変換する事も出来る。『エリクサー』や『賢者の石』、『錬丹術』などの不老不死の薬の伝説はここから来たのだろう。まあ、過大評価された面はあったが」
「ちょ……ちょっと待って下さい!賢者の石は実在した!?」
「ニコラ・フラメルは、賢者の石を造ったという伝説がある。しかし、私の予想ではアフリカのどこかに落下した隕石から精製したと思っている。長生きしたかどうかなんて知らない。そんなものは興味は無い。不老不死なんて数十年後には実現出来るのだから」
話がとんでもない方向に進んでいく柳田に下園は眩暈がした
こんな話をどうやって記事にあげるのか?
オカルトマニアが扱う雑誌なら載せてくれるが、多くの人はフィクションとして扱うだろう
「か、仮にSFのように肉体があるとしましょう。脳に記憶書き込む事は出来るの?」
「技術的には可能だ。誰もやった事は無い。だが、マウスの脳から特定の記憶だけを消去する実験はとっくに成功している。探せばあるはずだ」
柳田は記憶移植の可能性も言及しようとしたが、止めておいた。こんな記者が、科学なんて分かる訳がない
「だ、だとしたら……貴方のやっていることは間違っているわ!本当なら大問題よ!」
「何が問題だ?さっきもいったように無機物から人体を生成し魂をインプットするだけだ。年齢も調整出来る。法律にも反しない。クローンですらないからな」
柳田の平然とした答えに下園は愕然とした。まるで罪の意識がない。こんな事は許されるものなのか!?
「人々が聞いたらどうするの!世の中に出回らば──」
「その心配はない。妻を蘇らせたら研究も論文も捨てる。それだけだ。蘇生自体もコストがかかるし、食料問題や人口増加にも繋がる。そこまで腐ってはいない」
「でも!」
下園が抗議をあげようとした時、誰かが後ろで声をかけた
「先輩、娘さんが来ていますよ?待合室にいます」
「そうか」
柳田は長谷川の呼び掛けに簡素な返事をすると下園を無視して歩こうとする
下園は慌てて追いかけようとしたが、長谷川に止められた
「行っても無駄です。それに止めることも出来ない。彼の心の闇は深いのだから」
「どういう事?」
「彼を知らないのか?」
下園は怪訝そうに聞いたが、彼はため息をついた
「教えて下さい。なぜ、彼はG元素を使って妻を蘇らせようとしているのですか?」
空いた会議室に長谷川と下園が机を挟んでいた
まるで面接会場のようだが、下園の質問に長谷川はただ黙って聞いていた
「人を生き返らせるなんて。難病やアルツハイマーの患者を救った科学者とは思いません!」
下園は思い付く限りの事を後輩である長谷川に質問したが、彼は黙ったままだ
質問する事がなくなっても、長谷川は口を開こうとしない
「あ、あの……何か……?」
流石に不安になったのか、恐る恐る聞いた
何か不味い事でも聞いたのか?口止めか?
いや、それなら社長など重役が出るはずだ。会社ぐるみではないなら、個人の暴走だ
「もう一度聞きますが、本当に柳田さんの過去を知らないのですか?」
「私はジャーナリストになったばかりです。だけど、彼の過去を暴こうとすると止められたのです。調べるなって」
「そりゃ、そうでしょう。マスコミにとっても不都合なのです」
長谷川は微かに首を横に振った
「彼の妻が死んだ理由を知らないのですか?」
「ええ。殺人犯に殺されたって。ネットにはそのように」
「そうですか。『殺害された』だけで済むのですか」
下園は狼狽した。彼の過去は調べたはずだ。一応ではあるが
「先輩の妻はいい人です。高校生の時に付き合っていたらしいです。大学の時に結婚したと。いい家庭でした。私は離婚しちゃいましたけど、先輩は妻と良い関係でした。子供を産んだ数ヵ月後、不良グループに誘拐・監禁して輪姦し、激しい暴行を加えて死なせたあげく、死体をドラム缶に入れコンクリートで固めて埋め立て地に遺棄されなければ、あんな事にはならなかったのに」
「……え?」
下園は固まった。今、何と言った!?
「先輩の妻は昔、不良グループによって惨殺されたコンクリート死体遺棄事件の被害者です。そして、不良グループは未成年だったため、極刑すらならず、逆に被害者を攻撃しました。マスコミも含めて」
長谷川の冷たく声に下園は狼狽した。まさか、彼があの事件の遺族!?
「誰がどうみても殺人犯は罰するべきでしょう。しかし、マスコミも市民団体も加害者を擁護しました。理由は──」
「未成年者だったから。少年法で」
下園は長谷川よりも先に答えをいった。少年法によって保護されたのだ
「既に犯人は釈放。殺人犯は野放しです。犯人グループの内の1人は再犯して逮捕されたと聞いていますが。普通の人なら引きこもったり、復讐したりするでしょう。しかし、先輩は違いました。妻を生き返らせようと数年前から独自で研究していました」
「そんな……不可能よ!生き返らせるなんて!奥さんは火葬されたはずです!体も無いのに!」
「だから先輩は遡ったのです。生命の起源を。人類の誕生や生命の誕生の謎を解けば生き返らせる事が出来ると。人体を造れるのだと」
「無理よ!」
下園は声を荒げた。人体を人工的に造るなんて最早、人の領域を越えている
幾らなんでも……まさか……
「まさか、彼が手をつけた難病やアルツハイマーなどの治療法や医療は――」
「そうです。難病は再生医療に。アルツハイマーは知性を付けさせるために。ガンも人体の細胞促進の培養のためなのです。先輩から見れば、副産物に過ぎない」
下園は愕然とした。まさか若き天才と呼ばれ革新的な医療技術を生み出した彼は、実験に過ぎなかった
「待ってください!当時の柳田は医学部に入り直し飛び級を重ねて類を見ない早さで医師免許を取得しているんですよ!その時でも話題を呼んだのに!皆は妻を失ったため博愛主義に入ったと噂されたと!まさか、妻を蘇生するためだけに!」
「そうです。そのためだけに医学部に入りました。海外研修もしました。先輩は作られた天才だから、出来る技なのです。今回のG元素と未知の生命体を引き受けたのもそれです。遂に生命の起源の謎を解き明かした。伝説の石である賢者の石の存在も確認しました」
下園は長谷川の説明に衝撃を受けた。作られた天才?そんな彼が小惑星のサンプルから賢者の石を生成した?記者の表情を見た長谷川は、眉を吊り上げた
「その様子だと、先輩の親について同僚から聞かなかったようですね」
「フリーだから」
「調べてみるといいです。先輩は親の都合で生まれました。……正直、俺は天才ってこんなもんなんだと思っていましたが」
長谷川は苦笑しながら言った。彼の闇は余りにも深い。今思えば、オカルトマニアであったからこそ友達として付き合ったのだ。長谷川も特に問題は無かったためそのまま付き合いはした。何故なら、人が笑うであろう幽霊話やUFOなどを真剣に聞いていたのだから。今までそんな人は居なかった。一方、下園は思考停止状態に陥ったが、録音停止ボタンを押すと質問した
「なぜ、私にこんな事を?」
「隠す必要なんてないからです。いや、報道なんて出来ないはずです」
下園は困惑した。こんな恐ろしい計画を伝えなくては
いや、待って。出来ない?
「出来るわけないです。人を蘇らせるなんてオカルト類いです。G元素から賢者の石を作りました、なんて書けると思いますか?私だって信じられなかった。でも、賢者の石が実在する事には驚いた」
下園は何も言わない。こんなのオカルトだ。世の中に暗躍しているならともかく、一人の人間のオカルト研究を報道しても誰も取り合ってくれない
写真も動画も合成と思われてしまう
「それに先輩はどういう経緯であれ、難病患者を大勢救いました。彼を敬う人もいます。彼も利用しているのです。世の中を。だから、マスコミでさえ強気でいられる」
「だけど、非人道的な研究を──」
「わかっていないですね。先輩はそんな事をしなくても研究成果を出す人です。三浦会社と取引出来たのもそれです。先輩はノーベル賞なんて興味ない。研究成果を会社の所有物にしました。その代わり──」
「妻を生き返らせる方法を探る手伝いをした」
「正確には違います。脳や人体の解明。まだ分かっていない所がありますから。しかし、先輩は違った」
長谷川は思い出しながら言った
「数年前、三浦製薬会社は新薬であるガンの特効薬を開発していたが、行き詰まっていました。しびれを切らした社長は、面倒な臨床試験よりも人体実験をするよう命じました。『人体実験の禁止は医学の進歩の大きな弊害である』と言ったくらいです。社長は厚生労働省の大臣にクローン人間を秘密裏に造ってくれないかと頼んだのです。……先輩はそこに目を付けた。あの当時は業績悪化に加えて人体実験の噂が流れていましたから」
下園は長谷川の証言を一言も残らず聞いていた。これが事実なら大変な事だ
「先輩は新入社員として装い、行き詰まっている新薬を完成させてやる、と言いました。周りは嘲笑ったが、本当に数日だけで完成させました。それに加えて、社長に取引を持ち掛けました。秘密会議を撮った動画です……後は言わなくても分かると思います」
「だから、三浦製薬会社は次々と新薬の開発に成功した。世界に名が知れた。柳田も」
「三浦会社は大企業になりました。中小企業は傘下に入り、先輩は企業内を自由に行き来できました。次々と新製品の開発や発明に厚労省大臣を始め、誰も言わなくなりました。マスコミもです。『僕の事を報道するなら加害者を死刑にするよう報道しろ。中継の時に言うぞ』と言ったのが初めです。記者達は反発したが、彼は設計した新薬のデータを破棄すると言いました。スポンサー会社の圧力によってマスコミは折れたと聞いています」
下園は黙って聞いていた。柳田は天才だった。しかし、心は壊れていたのだ。しかも、復讐も反社会的ではなく、計画的だ
「マスコミとの戦いは終わりました。加害者の名前は公表されませんでしたが、柳田はテレビに出ない事に成りました。全て会社の実績となった。会社も広告を出さないといけないのですから。先輩は処罰されたのです。実績を奪うと言う形で。しかし、先輩は気にはしていない。名誉は興味なんて無い」
「でも……間違っている!人々を救うための学問を悪用するなんて!」
下園は叫ばずにはいられなかった。自分も知らない闘争が起こっているなんて。道理で柳田を調べようとすると編集長に止められたはずだ
「そうですね。妻が殺されなければ、加害者が厳罰化になっていれば、社会が責め立てなければ、先輩はこうは成らなかった」
「だけど……」
「とにかく、先輩は現時点では法を犯していない。人体蘇生を禁止するなんて法律は無い。誰もやった事はないとなるとそれまでですが」
長谷川は声を低くしながら心の中でため息をついた
(これで何人目の記者だろうな)
実は彼女以外にも柳田の過去について記事に上げようとする人がいた。そう言った人も衝撃を与えた。中にはネットにアップした者もいたが、批判が殺到してホームページを創ったジャーナリストは首になった
突拍子のない事で嘲笑った者が多かったが、大半は主に元難病患者達だった。彼を批判する者は許さない!という考えだ
下園は複雑だった。長谷川と別れても頭のなかでは困惑していた。会社の玄関へ向かう時、柳田親子と出会った
「待ってください!人体蘇生は危険です!」
下園は叫んだが、彼は鼻で笑っていた。更に問い詰めようとすると、彼の前にある人物が彼女の行く手を阻んだ。柳田怜人の娘である優子だった
「パパに近づけないで」
「どいて!貴方のお父さんはね──」
「知っている」
予想外の言葉に下園は唖然とした。知っているのか!
「だったら、話は早いわ!人を蘇らせるなんて──」
「ママを殺した人には批判しないんだね」
娘は冷たかった。父親と同じだ。流石の下園もこれには固まった
「マスコミは真実を世間に伝えると聞かされたけど、マスコミも政府と同じ嘘つきじゃない」
「行くぞ。どうせ、不都合な真実なんて報道する度胸もない腰抜け連中だ」
怜人は娘に来るよう声をかけた。下園は何も出来なかった。彼等を批判する事なんて自分達にはその資格があるのだろうかと
某テレビ局
「ダメだ。こんなのはニュースに流せない」
「どうして!?人を蘇らせる事は倫理にも反しますし、視聴率も獲得出来ます!」
テレビ局に帰った下園は、プロデューサーに訴えたが、帰って来た答えは判を押したかのようなものだった
「柳田の事は諦めろ。あいつのせいで碌な目に合っていない。ガンの治療薬を宣伝するなら加害者の名前を公表し、厳罰化を訴えろだと?何を考えているんだ?」
プロデューサーはイラつくように呟いていたが、下園は呆れていた。真実を報道するためにジャーナリストになったが、現実は違った
テレビ局も同じだ。ある情報だけ過剰に持ち上げ、陥れる者は徹底的にやる。政府は嘘ばかりだと思っていたが、そうではなかった。しかし、よくよく考えて見れば総理大臣が嘘をつく世の中なら、会社だろうと学校だろうと病院だろうと同じだ。人である限り、完璧な組織は存在しない
テレビ局もその法則に沿っただけ
「新聞社に頼んできます」
「無理だろうな。ボツになる。『人を蘇らせる方法があった』なんて記事に出せると思うか?」
プロデューサーは呆れていた。この女性は本当に五月蠅い。真実がどうかなんてどうでもいい。視聴率さえ取れれば問題はないのだから
「では、ネタを掴むまで取材して来ます」
下園はカメラマンを従えて再びテレビ局から出た。カメラマンも慌てて後を追うように走る
「……何であんな奴を雇ったんだ?」
プロデューサーは不満そうに呟いた。地球外生命体の姿を探れと言ったのに、よりによって厄介な事を持ちだしやがって
柳田は家に帰ると娘を寝るように言った。時が経つのは早い。既に高校生である。それまでは夢を叶えて置きたい
地下の研究室に行くと早速、作業に入った
『賢者の石』は限りがある。最近になってG元素は精製可能と何処かの研究機関が発表したが、分けてくれるとは思えない。会社が与えてくれた僅かな量だった。そのため、有効的に使わなければならない
最小限な材料と資金で生み出すのは難しい。しかも、未知の領域だ。だが、運は僕の方に向いてきた
数年前の小惑星の石を持ち帰った『はやて』はこちらの研究に大いに役立った。十年はかかるだろうと思ったが、それを短期間でやり遂げた
(興味本位で伝説である『賢者の石』を追っていたら、まさか実在するなんて)
事の発端は、海外に飛び回っていた時だ。イギリスに立ち寄った時、大英博物館に足を運んだ。別に理由は無かった。強いて言えば、時間の暇つぶしである
彼は博物館内を歩き回り、エジプト文明が展示している所に足を運んだ。その時、一枚の壁画と黒い石の展示の前で足を止めた
柳田には分かった。他の者なら分からないだろうが、この展示品は素晴らしいものがある事に
黒い石はファラオの墓に合った事。蓋を開けた時は真っ赤だったものが、瞬く間に黒くなったという
(あの石はあまり評価されなかった。それもそのはず。変異したんだ。賢者の石も風化する)
彼は『賢者の石』の足取りを追ったが、過去のものを完全に追える訳がない。それに、壁画には古代人は空に指を指している。恐らく、あの石は隕石か何かだろう。錬金術ではない何かの力だ
(数年前までは夢物語と思っていたが、まさか『はやて』が僕の謎を解いてくれるなんて)
錬金術師達は必死になって不老不死や物質を金に換える力を手に入れたがっていたが、当時の技術と常識では出来る訳がない
彼は人が入るくらいのカプセルに必要な材料を入れると機械をセットした
コンピュータにはAIを搭載しているので、後は人体を錬成してくれる。と言っても、陸奥鉄と賢者の石をセットするだけだ。後は人体生成に必要な物質だけ。妖精も宙を浮きながら不思議そうに研究を眺めている
「まずは陸奥の乗組員の内の1人からだ。第三砲塔が爆発したのだからその付近の人物だったらいい。よし……完成までどれくらいだ?」
『72時間です』
機械の声に柳田は満足した。これが成功すると、妻も蘇る事が出来る。既に骨の一部はある
「乗組員の誰かが蘇ったら、過去について証言して貰おう。この世の事も教えよう。だが、あまり長く動き回られても困る。蘇った者次第だが。彼が正常かを判断したと同時に妻も蘇らせる」
彼の目は狂気が宿っていた。ここまでやったんだ。これくらいは罰が当たらない。柳田はディスプレイに映る進行バーが順調に行っている事を見届けると彼は寝室に向かった
72時間は長い。しかし、いつまでも研究室に居る訳には行かない
『長谷川さん……パパがママを蘇らせる実験を始めるよ。戦艦の乗組員から』
『そうか……俺達も腹を括らないとな』
娘である優子はベットに潜っていたが、寝てはいない。優子は後輩である長谷川と前からメールでやり取りをしていた
賢者の石や妻を蘇らせる事を隠さず報告していた。勿論、妻が蘇る事は嬉しい事はない。母が死んでしまい、周りもまるで殺された母が悪いと言われる
だから、父のやり方には賛同した。一方で、心のどこかでこれは間違っているのではないか?と思っていたりした
優子は迷っていた。警察がこんなものを信じる訳がない。しかし、賢者の石が実在するならば、世に放つ訳にはいかない。父はともかく、周りの人間が碌な使い方なんてしないだろう
その時はその時だ。内部告発して三人共、牢屋に行く。例え、父が正気を失おうとも
研究室では機械とコンピュータの低い駆動音が唸るように鳴り響いていた。壁は防音で騒音問題になる事は無い
見張っていた妖精も寝てしまっている。他の生物と同じように眠るらしい
『完成まで71時間34分』
『エラー発生、分析中』
そんな中、進行バーを示す表示が更新された。しかし、それは一瞬であり、直ぐに更新された
妻を蘇らせるために誰がを蘇らせる
蘇った人から見れば、迷惑極まりなかった。そして、死者を蘇る事は、タブーでもある
そのため、この実験は禁断の研究に等しかった
彼がやった事は、現代版の錬金術か?
『再プログラム構成中』
それとも
『データ解析完了、完成時間更新中』
全く別のものか
『完了まで5時間』
長谷川「先輩、作者って『鋼の錬金術師』の読み過ぎでは?」
柳田「いや、作者は『東方Project』から賢者の石の存在を知ったらしいぞ」
エド「賢者の石……人間の魂の集合体か?どれだけの人間を犠牲にした!?」
柳田「お前は何処からやって来た(この作品でそんな設定ないわ)?」
長谷川(仮面ライダーも何故かアイテムとして出て来たな)
ちょっと前置きというより、プロローグが長かったような気がします。章もここで分けます
それは兎も角、さあ、カプセルから誰が誕生するのでしょう?
???「あら、あらあら」
まあ、この時点で既に答えを言っているようなものです。近い内にタグの一部を変更します