警察署
「本当なんだ!知らない女が車を止めたんだ!しかも、殺されそうになったんだ!」
「フーン」
取調室では一人の男が喚いていた。その者は少年時代に婦女暴行で逮捕されている
少年法で死刑は免れ、おぞましい犯行をした割には軽い刑だった。刑務所から出所した数週間後には交通事故を起こすという有り様だ
しかも、訳の分からない事を口走っている
「君はそんな戯言を言って信じる人間がいると思っているのか?」
「本当なんだよ!素手でナイフを握りつぶしたんだ!調べれば指紋も出てくる!」
男は喚いていたが、刑事は呆れていた。ナイフなんて見つかってもいない
そんな中、ドアが開き部下が一枚の紙を持ってきた
刑事は受け取ると男に向かって読み上げた
「検査の結果、君から麻薬の反応が出た。それどころか、薬物を売っていたらしいな。車から薬物が沢山出てきたぞ」
刑事の冷たい声に男は慌てた。麻薬に手を出していれば、こちらの証言の信憑性は失われる!
「本当なんです!拳銃の弾も弾かれたんです!」
「いい加減にしろ!」
後日、その男は麻薬中毒と精神疾患を理由に精神病院へ入院させられたのは言うまでもない
『……昨日の交通事故にて、警察は運転していた山本容疑者を薬物取締関連法などで再逮捕しました。容疑者は『女性が素手でナイフを握り潰した』などと意味不明の供述をしている事から──』
「私って脳筋なのかしら?」
ニュースを見た陸奥は半ば呆れるように言った
こちらの事がニュースにならなかったのは幸運かも知れない。騒ぎで誰かが警察を呼んだのだろう
相手の男は覚醒剤を持っていたため、警察はマトモに取り合わなかったらしい
「昔と今は違う。見つかったら面倒な事になっていた。今回は運が良かっただけだ」
「でも、貴方を救った。私が居なかったら貴方は死んでいた」
柳田の指摘に陸奥は反論した。あの男は、彼の妻を殺したのだ。ならば、こちらが殺しても良かったのでは?
「……確かに。逆恨みだろうが、嫌な事だな」
「なら──」
「それとこれは別だ。復讐で手を出すのは、悲劇を生むだけだ。それに、こちらから手を出したら鬼の首をとったかのように批判されるからな」
柳田は首を振った。陸奥は更に指摘しようと口を開いたが、止めておいた
彼は復讐を望んではいない。しかし、親しい人を殺されても怨みは無しにしろと言われて「はい、そうですか」と納得する人は居ないだろう
(妻を蘇らせる事が彼の復讐だった)
陸奥は心の中でそう思った。何も頼らず、法にも触れず蘇らせる事自体が
G元素や賢者の石を見つけたのも、運が良かっただけではない。彼が見つけたものだ
例え、探査機が小惑星の土壌サンプルを持ち帰らなくても研究はし続けていただろう
「分かった。この話は無しね……所で大学はどうだったの?」
「いつものことだ。卒業研究の論文にネットからコピペしたのがあったから、やり直すよう言っておいた。全く、誤魔化せると思っていたのか?言い訳が夏休みで海外旅行したいと」
柳田は呆れるように呟いていた。日中は怜人は大学へ、優子は高校へ行っており、陸奥は留守番だった
しかし、陸奥は不満ではなかった。身分証なんて無いため、仕方のないことだった
だが、二人とも夕方にはしっかりと帰ってきている。怜人は残業なんてない
優子は友達はいるし、怜人も対人関係はそれなりに良好だ。三浦会社のオブザーバーも兼ねてやっているのだから凄い
腕のいい科学者であることには間違いないようだ
陸奥はホッとした。あの事故でこちらの存在が知れ渡ったらどうなるのだろう?第二次世界大戦と違って情報伝達は革新的だ。特にインターネットは陸奥も驚いた
それ故に陸奥は、周りに気を張っていた
もし、自分が普通の人では無いと知れ渡ったら……?
「いい?人間は理解出来ないものを恐れるし、仕打ちをされる。私やパパは大丈夫だけど、赤の他人は皆が優しい人とは限らない」
事故が起こった数日後、優子は陸奥に説明していた。今日は土曜日なので優子も怜人も家にいる
「むっちゃんが見つかったらラボに監禁されて人体実験されてしまう」
「む、むっちゃん?」
陸奥は世の中の危険性よりもそちらに反応した。むっちゃん?私の事?
「人体実験しても無駄だ。人体と同じ構造だ。普通の女性よりも力があるくらいだ」
「パパは黙って。だって、一般人が科学オタクの言うことなんて信じると思う?」
「今の言葉でパパは滅茶苦茶傷付いたぞ」
怜人は指摘をしたが、娘からの思わぬ言葉にため息をついた。確かに怜人の説明だと大半の人は付いてこれないだろう
「でも、艤装を付けた時と付けない時とは違う実感はあるわね」
「増幅装置のようなものだろう。いずれにしろ、物理法則の大半を無視しているから僕も驚いているよ」
怜人はいい終える直後、玄関のチャイムが鳴った。誰だろう?
「だ、誰かしら?」
「どうせ、押し売りだろう」
怜人はインターホンの所へ歩いていった。陸奥は少しの間、警戒していた。警察が来たらどうなるのだろう?こちらの事を調べるに違いない
もし、普通の人ではないと気付いたら?
陸奥は待っている間、耳を済ましていた。玄関から話し声が聞こえた。どうも、警察ではないようだ。扉が閉まる音がして、足音が近づいてくる
しかし、気のせいだろうか?もう一人の足音も聞こえる
「誰か来る」
「むっちゃん、逃げて。ここから──」
陸奥が戸惑い、優子が手を引っ張って逃げるよう促していると、怜人が戻ってきた。陸奥が知らない人を連れてきて
「乗組員を蘇らせなかったのだな。軍艦に命を吹き込んだのか?」
「そうだ。お前、言いふらすな。と言うより、休みではないのか?」
「博士号取るため土日も大学へ行っていたんです。手伝ってくださいよ」
部屋に入って来たのは優男で髪は七三だ。スーツ姿をしている事から如何にも社会人という顔だ
「その人は誰?」
「
怜人はめんどくさそうに陸奥に紹介したが、彼は目を輝かして陸奥を見つめていた
「彼女が?」
「ああ」
陸奥は二人を交互に見た。何があったのだろうか?まさか、優子が言っていたように娼婦のように売られるのか?
「おい、優子。ずっと後輩と一緒にSNSでやり取りしていたのか?父さんには内緒で」
「仕方ないでしょ。パパが暴走した時の保険だって」
優子は自分の父に反論した。怜人はG元素を使って自分の妻を蘇らせようとした。しかし、結果は失敗。代わりに人造人間である陸奥が生まれた
「君が陸奥か。幾つか質問して良いかな?」
「え、ええ……」
「教えてくれ。重要な事だ」
長谷川は深刻そうな顔をして陸奥に聞いてきたため、陸奥は警戒した。何を聞かされるのだろうか?
「お前は何者なのか?」と聞かれるのか。人体実験させられるのか?陸奥は脅迫された時、どうやって逃げるのかを必死に考えていた
しかし、長谷川の口から出た質問は陸奥も予想外の事だった
「ムー大陸は実在したのか?」
「え?……何の大陸だって?」
「ムー大陸だよ!大昔に太平洋にあったとされる大陸!一夜にして水没されたんだ!海底に居たんだろ?見たのではないのか、海底遺跡を!」
陸奥は戸惑った。突拍子のない事を聞かされたため拍子抜けしてしまった。急によく分からない話をし出して頭に付いていけない
「おい、陸奥は瀬戸内海に沈んだんだろ?質問する相手が違うだろ!」
怜人は呆れていたが、長谷川は止まらない
「ああ、そうでした。なら、グルーブの音を聞いたか?」
「グローブ?」
「ブループ*1!こんな音だ!」
長谷川はポケットからスマホを取り出し操作した。そして、スマホから低い音が聞こえて来た。生き物のようであり、違うような音のような気がする
「何、この音?クジラの唸り声のように聞こえるけど?」
「聞いていないか……では、クラーケンは見たか?巨大なイカを。実戦では出ていなくても演習では出たんだ。クラーケンやシーサーペントを見たんじゃないか?海坊主でも人魚でもいいからさ。何か未知の海洋生物を見たという情報は」
「長谷川、初対面で聞きたい事はそれか?爆沈事件を聞きたかったんじゃないのか?」
怜人はため息をつきながら呆れるように長谷川に言った。今の長谷川はまるで子供のように輝いている
「先輩、私にとっては歴史ミステリーよりもUMAや超常現象の解明です。ここは譲れませんよ」
「だからって女性にいきなり聞くことか?陸奥はbloopが何か分かっていないぞ」
「私も聞きたい。bloopって何?」
陸奥は呆れるように聞いた。いきなりよく分からない事を聞かされたのだから無理もない。長谷川は陸奥の肩を掴むと早口で説明した
「bloopとはさっき流した正体不明の音の事だ。何なのか不明。もし、生物ならシロナガスクジラよりも大きい事だ*2。海は身近でありながらも未知の世界だ。巨大化する傾向もある。だから、巨大な生物を是非見つけて──」
「そんな早口言っても陸奥は理解出来ないぞ。と言うより、後しろ。何しに来たんだ?」
怜人は頭を軽く叩いた。長谷川は我に返ると陸奥から引き離した
「折角、交通事故の件を黙っておいたのにそれは無いでしょう」
「ああ、感謝しているよ。まさか、お前が通報していたとは」
「え?それじゃあ、見ていたの?」
陸奥は愕然とした。あの交通事故を通報した人?
「そうです。でも、安心してください。私は怜人さんの後輩で親友です。──申し遅れました。超常現象研究家の長谷川 大輝です。是非とも爆沈前夜に第三砲塔上で踊り狂う怪女が乗組員によって目撃されていた*3というのは本当かどうかお聞きしたいのですが」
「何処でそんな情報を拾った!?そんな訳あるか!?」
長谷川の無神経な質問に怜人は叱った。とてもではないが、それは無いだろう
しかし……
「そうよね。私、あの日は呪い殺されたのね」
「おい、本人落ち込んだだろう!」
陸奥は意気消沈し、優子は慰める羽目になった。しかし、長谷川は陸奥に対して何かしようという訳ではないようだ
「では、実験検証しよう。陸奥の能力を調べるなら喜んで協力する」
一行は長谷川の車に乗って大学へ向かっていた。陸奥の艤装は車のトランクの中に入れたが、大きかったため分解して入れた。幸い、妖精がやってくれたので問題は無いが、陸奥は何とも言えなかった。土曜日であるため人は少なく、学生も少ない
「ねえ、この人……本当に信用していいの?」
陸奥は運転している長谷川に聞こえないように怜人と優子に小声て聞いた。車の中は私物があるのだが、よく分からない人形や模型がある
「この人の父親がUFO研究家なんだ。その影響を受けたんだよ」
「でも、あの人は学者でしょ?オカルトなんて普通はあり得ないと片付けるはず」
陸奥は不思議に思った。長谷川は怜人の後輩であり、助手である。科学を学んでいるならオカルト類は否定するのだが……
「逆だよ。オカルトを科学で解明したいから理系に専攻したんだ」
「私が小さい頃、おじさんとよく望遠鏡で星を観察していたけど、本当は宇宙船を探すためだって」
「大丈夫なの……?」
陸奥は頭を抱えた。こんな人で大丈夫なのだろうか?
「心配するな。腕は確かだ。それに唯一の友達でもあった。賢者の石を探したきっかけも彼のお蔭だ」
怜人は安心するよう言ったが、陸奥は不安でしかなかった。この人たちは何かを抱えていそうだが、真相を語りそうもないだろう
だが、怜人は陸奥を産んだ人だ。信頼する人なら信じるしかないだろう
「お邪魔します……」
「陸奥、畏まらなくても誰もいない」
大学の敷地に入り、教授の部屋へ入った。怜人の言うとおり、誰もいない
「凄い……」
しかし、部屋の中は実験道具や計測機器が多数あった。動物や人体の模型も沢山あり、壁には生物の中身が記した絵もある
「僕は遺伝子工学専門だったから。最近では他の分野にも手を出したから沢山ある」
「先輩の特権だから」
長谷川は茶化すように言い、怜人は呆れる中、陸奥は部屋を見渡した
大学の中を見たのは初めてだ。艦だった体では、士官学校というのがあった。しかし、その頃と比べて充実しているだろう。しかし、何故か円盤型飛行物体や宇宙人を題材とした映画のポスターが貼られていたが
ふと、陸奥はある動物の模型に気をとられていた。魚だろうか?しかし、その魚の色は黒褐色。体は細長く、背鰭は後方に1つあるのみ。更には口が鼻先先端から開いている。模型のようだが、とても気味が悪い
陸奥は気になったってため、近づき触ろうととしていた
「触るな!」
後、指先が触れるか触れないかの距離で後ろから鋭い声が聞こえた。振り向くと、長谷川が真剣な表情になっている
「そいつはラブカ*4だ。生きているぞ!危険な生き物だ!」
「え?どういう?」
「大人しそうにしているが、そいつは人体に有害な放射線量を出している!あまり怒らすと口から放射熱線を吐く!丸焦げになるぞ!」
「ちょ!ちょっと待って!何で恐ろしい生き物がここにあるの!」
陸奥は慌てて手を引っ込め、その生き物から離れようとした。口から熱線を吐く生き物が存在するなんて聞いたことがない!
「陸奥、落ち着け。そいつは深海魚の模型だ。実際に熱線なんて吐かん」
「え?」
陸奥は怜人の方に顔を向けると彼は呆れており、優子も必死に笑いを堪えていた
「後輩の冗談だ」
「驚いたじゃない!」
陸奥は恥ずかしさと同時に怒りが沸いた。長谷川もバツが悪そうな表情になっていた
「ごめん、ごめん。冗談だ。でも、先輩が残っている賢者の石を使えば巨大不明生物*5に進化して──」
「やるわけないだろ……それは兎も角、さっさたやるぞ。時間は有限だからな」
一同は作業に入った
彼らは陸奥の予想をテストを行った。身体能力を図ったが、成人女性の新体力テストを軽くパスしていた。スーパーパワーなんて無い。スポーツ選手とまではいかないが、見た目とは違って運動抜群だった。但し、
しかし、艤装を付けると彼女の力は格段と上がった。握力計測器は簡単に握り潰し、ハンドボール投げは遠くまで飛んだ
「むっちゃん凄い!」
「こんなの楽勝よ!」
陸奥はバーベルを持ち上げていた。人の限界を越えて600kgを両手で持っているのだ。優子は驚き、声援をかけていた
しかし……
「反復横飛びと持続走は平均的だな。筋力がアップしたぐらいか?」
「艤装に何かしら仕組みがあるのでは?」
「恐らくそうだろう。増幅装置のようなものか?現代科学とは違う仕組みだ」
「軍艦の馬力と何か関係が?」
「全然違うだろう。馬力は仕事率の事だ。怪力になるとは訳が違う」
「でもチンパンジーは人の握力よりも強い。不思議でもあるまい」
「チンパンジーと人間は違う。DNAは似ているが、全くの別物だ」
長谷川と怜人はデータを見ながら盛んに議論していた。話がついていけない
「失礼な話のようにも聞こえるけど、貴方のパパはあんな感じ?」
「うん。でも、何時もの事だから」
「そうね」
一瞬、陸奥は数日前の出来事を思い出した。怜人が逆上して首を絞め殺されそうになった日だ。しかし、あれは普通の反応だろう。まだ、一線は越えていない
……陸奥という存在を作り上げたとなると微妙になるが
だが、まだ血は流していないだろう。少なくとも、殺人行為は
陸奥はバーベルを下ろして背伸びをした。正直、自分自身が600kgを持ち上げるとは思いもしなかったからだ
「漫画や特撮に出てくるヒーローのような超人ではないようだ」
長谷川は体力テストの結果を見ながら言った。一同は研究室に戻っていた。陸奥はシャワーを浴びてから研究室に戻った。その間、二人はデータをまとめていたらしい
「艤装を付けたら超人になる。でも、あくまで人体だからだろう。柳田先輩の言うとおり、軍艦の能力をある程度は受け継いでいる」
「ふーん。そんなものなのね」
陸奥は外した艤装とメンテナンスしている妖精を見ながら呟いた。妖精は陸奥の艤装の保守点検をしている。妖精もこの点は了承している
「しかし、戦艦がこんな美人なお姉さんだったら駆逐艦はどうなるんです?」
「僕に聞くのか?……恐らく女子中学くらいだろう。あくまで予想だけど」
「やってみます?」
柳田は肩をすくめた。彼も分からないだろう。
「でも、むっちゃんには姉妹艦がいるんでしょ?」
「え、ええ。長門がいる……私も会いたい」
陸奥は遠くを見るような目で答えた。長門の艦歴を調べた。終戦まで生き残り、最後はビキニ環礁で核実験の対象とされた
大日本帝国海軍の旗艦の象徴の末路であった
「パパ、出来る?」
「賢者の石の残量は一欠片だ。長門の残骸が手元に無いのもあるが、一欠片ではパワーが足りない」
怜人の答えに陸奥は目を伏せた。分かっていた。本来は自分の妻を蘇らせるためだから
「でも先輩。艤装を付けるとスーパーパワーを発揮するのは物理の法則に反しているような」
「どうだろう。人体でもまだ分からない所はある。アインシュタインは『人間は潜在能力の10%しか引き出せていない』と言われているくらいだから不思議でもあるまい」
怜人の分析に陸奥は驚いた。この人、私の力を見ても全く動じようとしない
「えっと……優子ちゃんから聞いたけど……『人は理解しないものには恐れる』って」
「ああ。だが、安心しろ。僕はそんなつまらない事で文句言う人ではない。それよりも、問題なのは他の人がどう見るかだな」
怜人は顎に手を当てながら言った
「千里眼事件を知っているか?明治時代に超能力者が現れ、超能力のブームが起こった。本人達が念写や千里眼などの超能力を持っていたかどうかは分からない。だが、論争の末に世間からはペテン師であるというレッテルを貼られ、一転して世の非難の的となってしまった」
怜人が言っているのは明治時代に起こった超能力における騒動である。結局、『千里眼は科学に非ず』と科学者達は結論付けられ、超能力者であった当の本人達は迫害された。戦後、ある外国人の超能力者が来日しテレビ番組に出演し、人気になったとは偉い違いである
「むっちゃんは超能力者?」
「そうとは言っていない。しかし、それに近いものだ。実際に陸奥が装着している艤装は、どういう訳か神経と同化している。陸奥の中に眠っている能力を引き出すものだろう」
怜人と優子の対話に陸奥は不安そうになった。冷静に分析してくれるのは嬉しいのだが
「私って人間なの?その……普通の人とは違うから」
「とは言っても、誕生方法が人とは違うだけだ。かと言って全く別物でもない。……逆に先輩はよく造れましたね。『不気味の谷*6』も解決しているから、誰であろうと生理的な嫌悪感すら抱かない。寧ろ、街コンに参加させれば確実に釣れますよ」
「専門用語が多いけど、それ褒めているの!?」
陸奥は呆れながら言った。褒めているだろう。しかし、何かが違う
「陸奥は自分が何者か分からないのなら、自ら名乗ればいいのでは?」
「それはそうだけど、私も分からないわよ。……貴方の手によって生まれた存在だから責任は取るべきよ」
陸奥の反論に怜人は考え込んだ。偶然にしろ必然にしろ、陸奥という存在を産んだのは柳田怜人本人である
「そうだな……こんな大きな娘を産んだつもりはないが……」
「軍艦の娘……艦娘というのはどう?」
優子は自分の父の思案を考えながら言った
「いや、艦娘って……男性が出たらどうするんだ?」
怜人は苦笑いしたが、二人は違った
「いいじゃない。だってパパだと絶対に人工生命体とか人造人間と呼ぶし」
「男性は出ないだろう。そもそも、昔のヨーロッパでは、軍艦の性別は女性だとされている*7。大航海時代において──」
「あー、分かった、分かった。長谷川、話が長くなる。別にいいぞ。本人が良ければだが」
長谷川が暑く語っているのを遮りながら、陸奥に聞いた
「艦娘……そうね、悪くない呼びね。少なくとも、人造人間みたいに呼ばれるよりかは」
陸奥本人も問題はない。寧ろ、人造人間と呼ばれるのが嫌だったらしい。変なイメージが定着してしまう
「では、艤装の性能テストだ!何時やる?」
長谷川は元々、オカルト関連には目がないのか、嬉々している。だから陸奥の事は嫌悪感も持たないのだろう。無論、怜人本人もであるが
「長谷川、それは無理だ」
「何故ですか?」
長谷川のキョトンとした表情に怜人は呆れながら指摘した
「ここで武器を使ったら間違いなく警察沙汰になるぞ。艤装の大砲も分解したくらいだ。銃刀法違反に繋がるぞ」
今の日本は平和である。よって、許可された者以外の武器携行は禁じられている
陸奥の艤装は高確率で違法であるため、妖精によって火器類は分解され厳重に保管している
陸奥も残念そうに妖精の作業を見ていたが、今の日本は昔の戦時中ではないため従うしかなかった
「そうね、何処かの無人島にいけば──」
陸奥が考えながら口にしたとき、長谷川は陸奥の言葉を遮った
「何を言っているのです?出来ますよ?」
この衝撃的な言葉に三人は驚いた
そもそも日本は銃の法律は厳しい。害獣駆除のために必要な猟銃でさえ厳しいのだ。アメリカの銃社会とは訳が違う
「何、任してくださいよ」
「不安だ」
嬉々する長谷川に怜人も陸奥も優子も顔を見合わせた
アンソロジー漫画において長門は脳筋扱いである
と言う事は陸奥も……?
でも、艦娘は人外と言う割には、あまり武器を使わず初めから怪力で深海棲艦やブラック提督を倒したというSSがなぜかほとんど無い。何故だろう?
余談ですが、千里眼事件で騒がれた超能力者は、御船千鶴子との事
『リング』に登場する超能力者、山村貞子の母親のモデルともされ、『トリック』でもモデルとされている人物が度々出ている