第一話 デンドロに入ろう。
とある掲示板を混沌の坩堝に叩き込んだ、名も知れぬ記者の三つの質問。
<Infinite Dendrogram>にて数多存在する<超級エンブリオ>を持つ者の中で最も強いものは誰か?
この発言に、投下された掲示板は一瞬にして沸き立った。
ある者は純粋ステの暴力である【獣王】ベヘモットこそが最強と言い、またある者は動ける極振りである【破壊王】シュウ・スターリングこそが最強と言った。
海上戦闘では【大提督】醤油抗菌が最強と言う者や、そこに大地があるのなら【地神】のファトゥムに敵う者は誰もいないという者、視認できれば確実に臓物を抜き取る事が出来る【尸解仙】迅羽こそが超級の頂点に立つと言う者、その論争は多差に渡り――
掲示板が熱を上げるほど沸き立ったその時に、第二の質問が投下された。
今挙げた己にとっての最強に自分は勝てるかどうか?
ある者は自身のエンブリオとの相性差を鑑み、またある者は己のUBM武具が最強に通じるかを吟味し、やがて全員が首を横に振る。
一撃を叩き込めば相手の装甲を全て貫通し即死させられるエンブリオを持つ者でさえ、同じ土俵で戦う為にはサイコロを振ってクリティカルを20連続で出さねば勝てぬという。
掲示板の答えは「タイマンでは彼らに打ち勝つ事は出来ない」だった。
そこで最後の問い掛けが投下される。
最強達に打ち勝てるメンバーでパーティを組むとしたら誰か?
この問いに掲示板はかつて無い程に沸騰したが、結論は酷く単純なものだった。
全体の一割は自身の知己で最も頼りになる者を、全体の二割は超級には超級をぶつけるのが一番とばかりに最強にメタを張れる超級を。
そして残りの七割は共通してたった一人の名を上げた。
彼の者と共にすれば必ず自身の一撃は入れられると、数多のマスター達が声を揃えて言った男の名はネビロス。
【彷徨王】ネビロス、おそらくは超級達を除き最も初見殺しに特化したマスターである。
[チャットルーム“漁り隊”にテルモピュライが参加しました]
テルモピュライ:ヘイマイフレンド、元気してる?
ナベルス:まーぼちぼち。やっぱレトロゲーでもローグライクやRPGは名作多いね
テルモピュライ:その辺りは格ゲーと違って操作性の悪さがゲームに直接関わって来る訳でもないしね。最大の敵はバグ
ナベルス:それ
テルモピュライ:まぁそれはともかく、ナベルス、お前デンドロって知ってる?
ナベルス:VRの奴だろ? 別名健康阻害ゲー
テルモピュライ:いや、それがデンドロだけは違うんだって、俺もやってるけどこれがやベーのなんのって
ナベルス:確か発売して二ヶ月経ってないよな? お前前例が前例だったのに良く買おうと思ったな
テルモピュライ:俺実は初日組
ナベルス:は?
テルモピュライ:それだけVRには期待してるんだよ。言うと心配されると思って言わなかったけど今までのVRゲームも全部コンプリートしてる
ナベルス:確かお前結構な頻度で病院行ってたよな? 俺結構心配してたんだが?
テルモピュライ:すまんやで。でだ。俺デンドロのソフトと本体がダブったから一緒にやらね?
ナベルス:お前初日組って事は一ヶ月以上はやってるよな? 安全そうならやるけど
テルモピュライ:やったぜ。今送ったから多分明日には届いてる筈。あと幾つか注文付けるけどいいか?
ナベルス:言ってみ。先輩の言う事を跳ね除けるつもりはないさ
テルモピュライ:まず一つ、視界を幾つか選べるんだがリアルを選んでくれ。理由としてはこれが一番自然だからだな
ナベルス:いいよ
テルモピュライ:次にスタート地点でレジェンダリアを選んでくれ。これは純粋に俺がレジェンダリアっつー国でスタートしたから
ナベルス:幾つかの国に分かれてるんだな、分かった
テルモピュライ:最後に
テルモピュライ:いや、やっぱいいや。エンブリオ形成に影響が出そうだ
ナベルス:は? 気になるじゃん、つーかエンブリオって何だよ
テルモピュライ:それはインしてからのお楽しみって事で。じゃあな! やるときは連絡くれよ!
[チャットルーム“漁り隊”からテルモピュライが離脱しました]
「何なんだよ……」
嵐の如く退室していったネット上での友人に愚痴に近い困惑の声を零してしまう。
気のいい奴ではあるが昔からこういった突発的行動が絶えなくて困る、さらっと病院通いしてる理由も明かされたし、もうあいついつか死ぬんじゃないかと気が気でならない。
「……デンドロか」
そりゃ俺だってかつてVRが出たと知って興奮したさ、空想の中でしか叶わなかった夢の世界がそこにあるんだと信じて疑わなかった。その結果があれだ、そりゃ失望もする。
でもあいつは違うって言ってた、主観によるものが大きいだろうがあいつはダメな物にはちゃんとダメと言える奴だ。
「ちょっとくらい期待してもいいか」
それくらいにはあいつの事を信頼してるのだ。
◇――◇――◇
唐突だが自己紹介と行こう。
俺の名は荒城蓮、色々あって日々をゲームに費やす人生を無駄にしてる感じの大人だ。純粋な年齢で言えば19とかそこら辺なので胸を張って大人と言えるかは微妙だが。
過去に両親以外の交友関係を全てリセットせざるを得なくなったので今の俺の友人は多方面にアクティブなあいつだけ。
そして俺の目の前にはそんなアクティブな友人が送りつけてきた<Infinite Dendrogram>のソフト、ご丁寧に本体と事前準備の方法が書かれたメモまで添えてある。
メモの手順通りに組み上げ後は寝転がって本体の電源を入れればいいだけの所まできたタイミングで一通のメールが届く。
そういえば入る前に連絡くれと言っていたなとメールを開くと『そろそろ届いたか? レジェンダリアに着いたら馬鹿でかい樹があるからそこの根元集合な。あと名前教えてくれ、俺はいつものアレだからテルモさんと呼んでくれたまえ』という文章。
「あぁ名前な、どっちにしようか」
友人は俺とゲームをする際絶対にテルモピュライという名前を付けるのだが俺は偶に名前被りする事があるのでバラバラなのだ。取り敢えず『準備完了、名前被りが無かったらアレで、被ってたらナベルスで』と返し、ベッドに横になる。
電源を入れ、眠りに誘われる様に俺の意識が薄れていく。
こういう時リンクスタートとか言えば良いのかねなどとくだらない事を考えながら、俺の意識は完全に途絶えたのだった。
「へぶっ」
唐突に兎が茶会でもしてそうなメルヘンチックな空間に叩き込まれた。
これはもうデンドロに入れたって認識で良いのかね。
「初めまして、どうぞお立ちになって下さい」
「ぅん?」
声の方へ顔を向けると可愛らしい服装に身を包んだ金髪の少女が柔らかい笑みを浮かべながらこちらを見下ろしていた。
流石に格好がつかないので立ち上がり、何となく挨拶をする。
「初めまして。えと、ここってもうデンドロ?」
「の、入口です。一番最初ですから様々な設定をして貰わねばなりません、<Infinite Dendrogram>の世界に入るのはその後です」
「あーキャラメイクとかしないとだもんなぁ」
「えぇ、と、申し遅れました、私は<Infinite Dendrogram>の管理AI1号のアリスです。よろしくお願いします」
「おん?」
その言葉に思わず俺はアリスをまじまじと見てしまう。てっきり中に人が入ってるものと思ってたが、そうか、これほど流暢な受け答えを行い人間と見紛うこの少女がAIか。
これはあの友人も「これは凄い」と言っていた理由が分かってきた。
「……デンドロって凄いんだな」
「うふふ、ありがとうございます。まず最初に設定して頂くのは描画選択です。視界に写る景色の見え方をアニメ、CG、現実の三つから選んで下さい。サンプルとして――」
「あぁいや、現実でお願いします。友人と一緒にやるんで見えるものが違うのは大変そうというか」
「分かりました、描画選択は現実ですね」
割り込んでしまって申し訳無いが既に決めていた事なのだ、すまない。
「次にプレイヤーネームを設定して頂きます、ゲーム内での名前はどうなさいますか?」
「名前被りが無かったら、ネビロスでお願いします」
名前については最初から決めていた。ネビロス、或いはナベルスは時たま同一視される事もある、俺の一番好きな悪魔の名前だ。
若干香ばしさがあるのは自覚するが格好いいだろう? ゲームでの名前なんてそんなもんだ。
「大丈夫ですよ、プレイヤーネームはネビロスで決定いたしますね。次に容姿を設定して頂きます」
その言葉と同時に目の前に俺と同じ身長のマネキンとえらく選択肢の多いパーツの選択ボードが浮かび上がる。
ちろっと流し見したが何か動物型のアバターとかあったけど骨格大丈夫なのか?
「前にヤマアラシの様なアバターを作っている方がいらっしゃいましたがすぐに慣れてましたね、三倍時間のお陰でここで一通り練習する事も出来ますから」
「て事は練習すれば腕四本とかのミュータントも作成可能……!」
「ヤマアラシ以上に動かすの大変ですよ?」
やめておこう。
よくよく考えれば動物型でも手二本足二本という基本は変わらないのだからその基本から外れたものがどれ程動かしづらいかなど想像すらできない。
かといってこうも複雑だと手を加えすぎて無自覚ミュータントになる可能性も高い訳で……どうしたものか。
「現実の容姿をベースに少し弄る事も出来ますけど」
「え、出来るの」
「今のあなたの姿をコピーするだけですから」
いっそマネキンで行くかと狂った思考を持ちかけた俺に光明が降り注ぐ。そうかよくよく考えれば今の俺現実のそれだから出来ない訳では無いのか。
アリスに頼みベースを現実の俺に変えてもらう。
体型的には普通に中肉中背の一般人のそれだが若干痩せてきてる気がする。のでうっすらと筋肉を増量する。身長体重は変に動かすときついぞとVR経験者の友人殿から教わったのでスルー。まぁ大体身長は170位だからわざわざ足す事も無いだろう。
問題は首から上だが、うん。そこそこの顔に生んでくれた両親に感謝である。目立つのは首辺りまで伸びた後ろ髪と目元周りの酷いクマ、取り敢えずクマは消すだけで随分印象変わるので消して、あとヒゲも設定で無しに。髪は……いっそ伸ばして纏めるか。
髪色は薄く蒼を差した黒にして髪の長さを肩甲骨辺りまで伸ばし、一度一束に纏めてからくるくるやるシニョンだっけか? の髪型にする。
全体的にちょっと可愛らしい感じになってしまったがまぁ顔見れば男だと分かるし別に構わないだろう。
「じゃあこれで」
「分かりました、容姿を反映させて頂きます」
アリスがパン、と手を叩くと俺の後頭部に違和感が。触って確かめてみるとお団子ヘアーに形成された深海の様な髪の毛がそこにはあった。
「では一般配布アイテムの選択に移ります」
「よろしくお願いします」
そう言うとアリスはふふと笑い、いつのまにか持っていた二つのカタログを宙に浮かべ、開いた状態でこちらに向ける。
一冊は幾つか種類がある装備の一式について、もう一冊は初期武器をどれにするかという物だった。
装備一式については前日までやっていたRPGの影響を受けてやや厚手の上下と深緑のマントというファンタジー旅人チックな物に。多分鎧とか着ても動けないし。
武器は純粋にリーチの長い槍を選択。
「それでは反映します。あとこの収納カバンは所謂アイテムボックスと呼ばれるものです、見た目に反し一トンは入るので有効に活用して下さい。そのカバンに入るのはあなたのアイテムだけですが《窃盗》のスキルを持つ者はアイテムボックスからアイテムを盗めますので過信し過ぎはいけませんよ?」
冗談めかしてそう言いますけどそれ初心者防ぐ術ありませんよね? 強盗にエンカウントしない事を祈ろう。
服装が変わりマントと槍の重みを感じた。鏡代わりのマネキンがちゃんと俺の選択した装備を着ているのを見て感嘆する。いいね、仕上がってきた。
「最初の路銀として5000リルをプレゼントします」
「銀貨五枚って事は一枚1000リル、リル? か」
「場所によりますがおにぎり一つで10リルくらいですかね」
大体1リル10円位か、最初の軍資金としては結構貰える方だな。
とは言え初っ端から武器を買い換えたりしてると一瞬で素寒貧になると今までの経験が囁いているので計画的に使わねば。
「それでは<エンブリオ>の移植に移らせて頂きます。<エンブリオ>についての説明はお聞きになりますか?」
「あーお願いします」
「分かりました。千差万別を謳うエンブリオではありますが最初の第0形態だけは全員が同じ形で、第一形態以降からは持ち主のパーソナルによって全く違う変化を遂げます」
「第0は準備期間か」
「その通り、そしてエンブリオにも大まかなカテゴリーは存在します」
アリスが言うには基本的にカテゴリーは五種類。
プレイヤーが装備する武器や防具、道具型のTYPE:アームズ
プレイヤーを護衛するモンスター型のTYPE:ガードナー
プレイヤーが搭乗する乗り物型のTYPE:チャリオッツ
プレイヤーが居住できる建物型のTYPE:キャッスル
プレイヤーが展開する結界型のTYPE:テリトリー
があるらしく、それ以外にも希少なカテゴリーがあるらしいが、どんなカテゴリーだろうと俺の子だ、ちゃんと愛してやらねばな。
「それでは左手を差し出して下さい」
言われるがまま左手を差し出すとアリスの両手が俺の左手を優しく包み淡い光を放つ。光が収まるとそこには左手の甲に埋め込まれた淡く光り輝く卵形の宝石。
否応無く気分が高まってくるが、若干不安になる。
「この第0形態の状態で破壊される事は?」
「ありません。第0形態で<エンブリオ>に当たるダメージは全部プレイヤーに流れますので」
一先ず安心である。
「エンブリオが第一形態になると左手の甲には紋章の刺青が刻まれます。紋章にはエンブリオを格納する機能があるので巨大なエンブリオで身動きが取れないという事はありませんのでご安心を」
「なるほど、了解です」
「では最後に所属する国を選択します」
ちらりと俺を見るアリス。やっぱ凄いな、さっきの友人とやるって言葉からこういう可能性もあるのではと「思考」している。
ここまでとは言わずともデンドロのNPCもハイレベルな可能性が高いな。勇者行為は控えよう。
「レジェンダリアで」
「分かりました。予想はつきますが選んだ理由をお聞きしても?」
「友人との約束ですよ」
「アンケートのご協力ありがとうございます」
「アンケートって、俺達がデンドロで何をするのかっていう意識調査?」
「いいえ、それとは関係がありませんよ。そして私はあなたに何らかの目的を強いる事はありません」
……? じゃあ俺は何をすればいいんだ?
そんな疑問を感じ取ったのかアリスは出していたカタログや俺のマネキンを消し去り、滔々と演じるように胸に手を当てて口を開く。
「英雄になるのも魔王になるのも、王になるのも奴隷になるのも、善人になるのも悪人になるのも、何かするのも何もしないのも、<Infinite Dendrogram>に居ても、<Infinite Dendrogram>を去っても、出来る事なら何をしたっていいのです。あなたの手にあるエンブリオと同じく、これより始まるは無限の可能性なのですから」
語るように、謳うように、アリスは言った。
「<Infinite Dendrogram>へようこそ。私達はあなたの来訪を心より歓迎します」
そう輝かんばかりの笑顔を浮かべ、アリスは手を叩く。
直後メルヘンな空間が一瞬にして消え去り、俺は遥か上空から凄まじいスピードで落下していく。
酷くリアルな肌を打つ風に腰を抜かしそうになりながらも落下地点に目を向ける。
一つの大陸を視界内に収められているほど超高度ではあるがそれでも一際大きな、世界樹とでも形容すべき大樹を見つけた。
あれかレジェンダリアかと思ってる内にいつのまにか後数秒で大地に激突しそうな所まで落ちてきていた。
あんな場所から落としたのだから死ぬ事は無いだろうが、あぁこの恐怖はまだ味わった事のないリアルだった。
「ぐっ!」
地面と激突する、その数瞬前に不自然に勢いが減衰し俺は何事も無くレジェンダリアの大地を踏むことが出来た。
「こっわ……」
ともあれ本格的にデンドロの世界へと入れた訳だが……あいつが凄いといったのも分かる。道行く人は全てが人間ではなくエルフや獣人、人間の二倍近い身長の戦士は巨人だろうか。それら全てがそこで生きる命を持っている様に思える。
俺がかつて夢見た世界がそこにはあった。
口角が上がっていくのを抑えながら、見上げても尚頂上が見えぬ大樹の麓へと向かった。この世界が俺のあり方を変えてくれると確信して。
◇――◇――◇
『テルモピュライ イズ ユア フレンド』
そんな気分を一瞬でぶち壊してくれたのは馬鹿げた掛札を首から提げているテルモピュライだった。
「何しとんのやお前」
「あ! ようやく来たか、名前教えてちょ」
「ネビロスだよ、あと何してるんだって聞いてる」
ったく、これ見て分からないとはまだまだだな、みたいなジェスチャーをするんじゃない。結構なイケメンがやると様になってるのが腹立つ。
テルモピュライの外見は俺より背が高く、ゴリッゴリの金髪をオールバックで流した洒落てる系のイケメンだ。身に付けた全身鎧を見るに【騎士】系統の職業に就いているのだろう。
「いやいや、これが結構バカにならないんだ。俺はともかく相手はどんな名前でどんな格好でどんな顔なのか何一つ分からない、なら自分が目立って相手に来てもらった方がすれ違いも少ないし何より早い。知り合いとデンドロで会う時にこんな感じでコミュニケーションを取る奴は結構いるぜ?」
「まぁそれは分かったよ、事実すぐ見つかったし。それはそれとしてお前恥ずかしくねーの?」
「羞恥心なんてあったらロールプレイヤーやってねぇよ」
あぁそういえばTRPGやってた時も異様に生き生きしてたな、生粋の演者だったなこいつは。
「だからお前そんなに無駄にイケメンなのか」
「そういうお前は随分可愛らしくなったじゃねーの、んー?」
「ええい撫でるな髪を触るなうっとおしい!」
閑話休題。
「エンブリオが生まれるまでどれ位掛かるんだろうか」
「30分から1時間そこらって聞いたな、俺は40分位」
現在俺達はレジェンダリアの大木【アムニール】の根元を離れ、色々なものが買える大通りをぶらつきながら駄弁っていた。
「ううむ、短いようで長い。職業を決めるにもエンブリオの方向性くらい見ておきたいし……」
「まぁ下級職一個くらいとっておいて良いんじゃないか? 他はエンブリオが生まれた後で」
「……他?」
「おおっと、お前何も調べずにデンドロ始めたな? 仕方無い、先輩がこの世界の職業について教えてやろう」
そうして突発的に始まった職業講座でテルモピュライが言うにはこの世界の職業には下級職、上級職、超級職の三種類があるらしい。
プレイヤーが取得できるのは数多ある職業の中で下級職六つ、上級職二つの計八つが基本となり、超級職は複数取得できるが取得難易度が異常に高く、尚且つプレイヤー、NPC含め先着一人のみが就けるという。
ジョブレベルというものも存在し、下級職はレベル50でカンスト、上級職はレベル100でカンスト。つまりは下級職と上級職をフルでとった場合最終的なレベル合計は500となる。
一先ずは下級職を二つから三つ程取り、そこから上級職を目指すのが一番楽らしい。
「ので、とりあえずネビロスの適正下級職を調べてみようか」
「出来るの?」
「適職診断カタログという凄まじく便利なアイテムがあってだな……」
「もう名前から想像できるけどどんなの?」
「カタログの電子音声質問を通して今就けるジョブの中で一番合っているジョブを探せるという優れもの、要はアキ〇イターだアキ〇イター」
職業アキ〇イターって凄いな、現実世界で欲しい。多分使わないだろうけど。
そんなこんなでカタログの質問に答えていくと一つの職業のページが開かれた。
「これは……【旅人】?」
意外や意外、ゴテゴテの戦闘職が出るかと思ったが【旅人】とな。
しかし案外しっくり来るものだ、遥か上空からこの世界を見下ろした時にいつか自分のエンブリオと共に世界を回りたいと思ったのだから。
「という訳で俺の記念すべき最初のジョブは【旅人】になりましたとさ。次行こう次」
「良いのか? ゴリゴリの戦闘職が一個くらい無いとレベル上げ厳しいぞ?」
「良いんだよ、【旅人】とか楽しそうだし」
適職診断で先程悩んだ質問の回答を変えて答えていく。
出た職業は【行商人】であった。
「【行商人】かぁ、純戦闘職が一個も無いのはきついなぁ」
「俺良く分からんのだけど、スキルが無いと戦闘出来ないの?」
「いや、そんな事はない。職業で手に入るのは該当する武器のダメージ補正くらいでスキルが無くても武器は振れる。ネビロスの持ってる槍はかなり使いやすい部類だ、リーチが長いから振り回すだけでも強いからな」
なるほどであれば戦闘職が無い弊害はアクティブスキルが使えないくらいになるのか。
「ところがどっこい、それが結構な差でな。自分と同レベル帯での戦闘ではそれが命取りになる、純粋に手数が減る訳だからな。どうする? もっかいくらい診断してみるか?」
「いや、むしろ丁度いい。残りはエンブリオが生まれたら考える。テルモ、初心者用の狩場を教えてくれないか? 【旅人】と【行商人】が出来る事を確かめたい」
任された。と俺の頼みを受け入れてくれたテルモピュライ。やっぱ気のいい奴だなと思いつつ二人で指定の職業に就ける場所へと向かい【旅人】と【行商人】のジョブを手に入れた。
どちらをメインジョブに添えるかと言われ、多少悩み【旅人】を主軸にする事にした俺の今のステータスは次の通りだ。
ネビロス
レベル:1(合計レベル:2)
職業:【旅人】
HP(体力):106
MP(魔力):18
SP(技力):36
STR(筋力):10
END(耐久力):18
DEX(器用):21
AGI(速度):15
LUC(幸運):20
まぁ開始直後であるのでさもありなん。唯一体力だけは三桁を超えているがこれもどれだけ頼りになるか……。
所変わってレジェンダリアを囲む大森林の入口である。
「森は戦いづらいが出てくるモンスターも疎らだ、群れるオオカミの類が出るのはもっと奥だし仮に出てきても一体までに数を減らすから安心せい」
「頼むぜテルモ」
俺が今使えるスキルは四つ。
【旅人】から《旅の記録》、《護身術》、【行商人】から《過積載》、《即席合成》で、この中で戦闘に使えそうなのは《護身術》だけであった。
《護身術》の効果は「受動的な攻撃にダメージ補正」、つまりはカウンターである。スキルとか見ても真正面から切り結ぶべきではないんだろうなぁ……。
そうこうしている内に俺の目の前にモンスターが現れる。小さい人型の醜悪なモンスター、ゴブリンだ。
「雑魚にして殺害の難関【リトル・ゴブリン】だ。人型を殺すのに抵抗のある奴が軒並みコイツでダウンするが……」
「今更だな」
こちらを視認し、威嚇の叫び声をあげながらこちらに向かってくる【リトル・ゴブリン】をやや大げさに避け、持っていた槍をフルスイングで振り抜く。
流石に一撃死とは行かないが槍のダメージにフルスイングの勢い、《護身術》のダメージ補正により相手は瀕死だ。
【リトル・ゴブリン】に駆け寄り、槍で追撃を仕掛ける。心臓に槍が突き刺さった【リトル・ゴブリン】は抵抗も出来ずに即死した。
「敵を殺すのに一々理由付けが必要なほど優しくは無いさ」
「安心したよ」
その調子で何回か狩りを行い、この森の浅い所であれば一人でも大丈夫だとテルモピュライに太鼓判を押された俺はテルモピュライと分かれて一人で森に篭もりモンスターを狩り続けていた。
早速オリジナルをぶち込んでいくスタイル。
【旅人】世界を旅し、その記憶を記録に残す者。取得条件は指定の建物で証明書を受け取る事。
《旅の記録》指定の位置に自分しか見えない光の柱を【旅人】のレベル×n本設置する。どこにいても感覚で分かり、光の柱の色も変えられる。グー〇ルマップのピン。
《護身術》受動的な攻撃にダメージ補正が掛かる。
【行商人】一箇所に居を構えず各地を練り歩く商人。取得条件はカルディナで申請するか【行商人】を持つティアンに1000リルを支払い小型収納カバンを購入する事。(カルディナ専用職の気配がするけどそこも原作改変要素って事で)
《過積載》収納カバンに入れられるアイテムの量を増加させる。満タン近くまで入れると重量が増加する。
《即席合成》手に持っているアイテムを組み合わせて質の悪いアイテムをノータイムで作成する。確実に成功し確実に粗悪品が出来る。