てんこもり平成怪人で行くハイスクールD×D   作:しゃしゃしゃ

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 世界を変える準備はいいか
(『E-X-A(Exciting × Atitude)』)


先出し編―殺戮の救世主 VS 破壊の大王―
誕生! アーマードライダーセイヴァー!


 

まずは、色彩が。

 

あらゆる色彩が、彼を呑み込んだ。

 

そして、あらゆる感覚が、音が、においが。皮膚、内臓――否、すべて。あらゆるすべてが押し寄せてくる。

 

あらゆる、すべてがない交ぜとなって混沌としたまま、嵐のように彼を打ちのめす。

 

それは永遠に等しい時間であり――だが一瞬、刹那でもあった。

 

無限の極彩色が、やがて形を得る。最初は色彩の爆発でしかなかったそれは、無数の光景であることを彼は知る。

 

その理解とともに、感覚の洪水が意味を得る。彼はすべてを悟る。

 

いま、彼が目にしているものは――感じ取っているものは世界だ。あらゆる時間の、あらゆる空間が、彼の前に広がっているのだ。

 

寒気が、法悦が、彼を包み込む。この瞬間彼は全知に近い存在だった。肉の器を失い、精神は飛翔し、彼は生命を超越する。

 

再び爆発する色彩。荒れ狂う感覚。そして、静寂。

 

 

「世界は争いに満ちている。欲と苦しみは限りなく、人であっても人でなくとも、命あるものは永劫の地獄の中にいる」

 

 気づくと彼は、誰かと向かい合っていた。見覚えがあるような気がするがなにも思い出せない。目の前の誰かのことも、自分のことも。

 肉体はすでに崩壊し、唯一彼をつなぎとめるのは奇妙なベルトと赤い果実のような錠前だけ。それが何であるかも、彼には分らなかった。

 

「愛は失われ、憎しみは増し、復讐の連鎖は止まらず、不条理と理不尽に誰もが顔をゆがめる。しかし、君は違う」

 

 彼には目の前の誰かが重なり合った像の集合に見えていた。

 

 カラスのような羽をもつ生き物。

 昆虫を思わせる赤い複眼と二本の角を持つ戦士。

 反転した異界の者。

 灰色の亀のような怪生物。

 3つ首の不死なるもの。

 蛾のような異星生命体。

 蛇のような形なきもの。

 鯨のような吸血鬼。

 人の祈りを束ねるもの。

 命を持たない集合体。

 白と紫の作り物。

 果実に選ばれたもの。

 仮想に生きる騎士。

 赤い歯車。

 二人()一人の歪んだ怪物。

 

 

「おめでとう。君は選ばれた。肉体の檻から解き放たれ、精神は昇華し、争いも苦悩もなにもなくなる。完璧な存在の一部となれる。私は君に絶対の安心を約束しよう」

 

 とても心地が良かった。彼は、彼には、何もわからなかったが、目の前の誰かに従えば無限の法悦と絶対の安心が得られると、そう感じられた。

 自然と喜悦が表に出た。肉体を持たない彼はもはや笑うこともできなかったが、それでも彼は幸福の絶頂にいた。

 

「さあ、ひとつになろう。あなたは私、私はあなた。すべてをゆだね、ともに究極の進化を遂げよう」

 

 誰でもなくなった彼に、その誘いを断る理由などなく。

 

 誰でもない彼は、『大事だったはずのなにか』を全て放り出し、法悦に身をゆだねた。

 彼は――彼でなくなった誰かは、もう俗世にかかわることはない。未来永劫、世界が壊れるその時まで、微睡み続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―○●○―

 

 

 

 

『さァ‼ 予想外も盛り上がりを見せた今回の試合も 終盤(エンドゲーム)‼ 互いの眷属は軒並み退場し、まさかまさかの王同士の決闘と相成りました‼ 私たちもレーティングゲームの実況解説を務めて長いですが、ここまで番狂わせな試合も珍しい‼

 そーですねー グァバラさん‼ 』

 

『はぁい』

 

 

「番狂わせ、か」

 

 バアル家次期当主にして、今回のゲームのプレイヤーであるサイラオーグ・バアルは対戦相手である『王』――ゼファードル・グラシャラボラスの元へ歩みを進めながらそうつぶやいた。

 

 彼のそばに眷属はいない。実況の中級悪魔イモナイが告げたように、自分も相手も眷属を全て使い切り、残るは己ら自身のみとなっていた。

 それはサイラオーグだけでなく実況者も視聴者も予想していなかったことだった。

 

 

 ゼファードル・グラシャラボラスは一般的な上級悪魔であり、彼の眷属も一般的な上級悪魔の眷属の水準の者たちでしかなかった。それは事実であり、そうであると侮られていた者たちだった。一方のサイラオーグ・バアルの眷属、彼らは全員がうぐれた決闘や能力を持ちながらもそれにおごることなく、王とともに、鍛えることに余念がない、努力に裏打ちされた真の実力と強靭な精神を兼ね備えた強者たちだった。

 

 

「そう評価されても仕方がないか」

 

 

 しかし、精強なはずのサイラオーグ眷属は、力で劣るゼファードル眷属にことごとくリタイアさせられていった。もちろんそれは正々堂々戦った結果の敗北ではなく、数の理や自爆特攻覚悟の「犠牲(サクリファイス)」によるものばかりであったのだが。

 その戦法がどう映るのかはともかくとして、結果的にゼファードル眷属たちはサイラオーグの眷属を道連れにして退場していき、今フィールドにはルール上リタイアとして扱われ、ゲームには手を出せないサイラオーグの眷属と、二人の無傷の王が残っていた。

 

 

 

『冥界の新進気鋭の6名の上級悪魔によるレーディングゲームのエキシビションマッチ‼ その第二戦となるバアル家次期当主 サイラオーグ・バル選手とグラシャラボラス家次期当主ゼファードル・グラシャラボラス選手の試合‼ 試合前はサイラオーグ選手が圧倒的有利と予想されていた今回のゲームで・し・た・がァ!? 始まってみれば予想外の連続‼

 これはですね、ゼファードル選手の眷属が、緻密な連携と戦略でバアル眷属を攻略していったことが要因であると考えられるんですねぇ‼

 彼らの動きがゼファードル選手の指示によるものであったのなら、それは非常に卓越した指揮能力と言えるでしょう‼ 今後の活躍に乞う! ご期待ですねぇ‼ グァバラさん』

 

『はぁい』

 

 

 まるで試合がすでに終わったかのような実況と解説。だがそれも仕方のないことだろう。

 実況も解説も、視聴者も、誰もがゼファードル・グラシャラボラスの敗北を予想している。

 なぜなら、あまりにも実力差がありすぎるからだ。サイラオーグは典型的な近距離パワー型の格闘者。純粋な身体能力のみで次期当主の座を取り戻したその攻撃力・防御力は魔王の域に達しており、今回のゲーム中にもその実力をいかんなく発揮している。

 一方のゼファードルは『凶児』と呼ばれるほどの素行の悪さは有名でも、実力は特にこれと言って話題になることもない、つまりはそんな程度の者であった。ゲーム中も一度も戦線に姿を現すことなく、実力を披露することはなかった。

 

 誰もが、サイラオーグ・バアルの圧勝を予想し、期待していた。

 眷属を使い捨て勝ちを狙いに行くようなゼファードル(ヒール)を、大義も理想も夢もある恵まれない悪魔たちの希望の星であるサイラオーグ(ベビーフェイス)が打倒するその瞬間を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フィールド中央、物陰もない開けた場所にゼファードルは立っていた。俯き、脱力し、小さな声で何事かをつぶやいている。

 

 

「ゼファードル」

 

 サイラオーグがゼファードルに対して声をかけた。

 その呼びかけに対し、ピクリと反応したものの顔上げることもないゼファードル。

 

「はっきり言って、まさかお前がここまでやるとは思っていなかった。だが、それもここまでだ。俺の拳でお前を打ち倒させてもらう。覚悟はいいな」

 

 構え、体から目に見えぬ闘気を立ち昇らせるサイラオーグ。彼に妥協はない。

 侮りもこれまでのゲームメイクを見て消えている。

 

 

「……」

 

 ぽたり、と地面にしずくが落ちた。

 

「ゼファードル…? 」

 

 ――泣いているのか? という言葉がサイラオーグの口から出るよりも早く、今まで俯いていたゼファードルが勢いよく顔をあげた。

 

 

「は、はは、ははは、はははは」

 

 

 

 

「……⁈ 」

 

 顔をあげたゼファードル。その相貌は壮絶と形容するほかないものだった。

 目は血走り、ひきつった笑みを浮かべ、よだれをダラダラ垂らし、ひどく青ざめた顔色。

 まるで何かに憑りつかれでもしているような顔だった。

 

 

「なっ…どうした、ゼファードル」

 

 闘気を立ち昇らせていたサイラオーグもゼファードルの尋常ではない様子に、思わず戸惑い問いかける。

 

 

「どうした? どうしただって? くっ……、ひひ…っ……ひひひっ! あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ‼ あー! あー! よくもまぁ、そんなことを聞けるモンだな、このクソ野郎‼ 」

 

 

 唐突な罵倒。

 彼が罵倒を行うことそれ自体は珍しいことではない。ただ、その罵倒に込められた思いが段違いだった。

 

 濃厚で確かな重みを持った殺意と敵意。

 

 しかしそれを向けられた当人であるサイラオーグは困惑するしかない。

 

(まさか、先日の顔合わせでのことを恨んで…? いや、いくらゼファードルでもそんな理由でここまでの殺気を…? )

 

 

 困惑にさらに輪をかけるかの如く、ゼファードルは続けた。

 

 

「――まさかてめぇが禍の団のメンバーだったとはなァ! 」

 

 

「……は? 」

 

 

「おかしいと思ってたんだ、魔力も持たねぇ無能が強ェなんてよォ! このインチキ野郎が! 」

 

 

「お前は何を言ってるんだ…? 」

 

 

 

「うるせぇ! 俺は知ってる! 俺は知ってるんだ! お前、お前が兄貴を、兄貴を殺したんだろ! こっちは全部お見通しなんだよッ! この腐れ外道がッ‼ 」

 

 

 

 

 

『……ゼファードル選手は何を言っているんでしょうねえ。サイラオーグ選手の強さは鍛え上げた肉体の強さ。彼の強さは彼の捧げた努力と鍛錬の賜物と言えるでしょう。そーですねーグァバラさん』

 

『はぁい』

 

 

 サイラオーグも実況も、あるいは冥界中の視聴者も「ゼファードル(この男)は何を言っているんだ? 」と思い呆れながら彼の叫ぶような罵倒を聞いていた。

 明らかに正常ではない、明らかに異常なゼファードルの言動に、しかし誰も口をはさめないのは、それだけ彼の語り口に熱がこもっていたからだ。

 

 

 

 

 

「俺はテメェを許さねぇ! 兄貴を殺したテメェを! 禍の団を! 俺はぜってぇ許さねぇ…! 禍の団の奴らは全員俺がぶっ潰す!

 親父も、眷属も、俺の領地の領民も! 俺が守る‼

 次期当主になったとき、俺はそう兄貴に誓ったんだ! 」

 

 

 

 そう言うと、ゼファードルは右手を身にまとうマトイのような服に突っ込み、何かを取り出した。

 

 

 それは、綺麗な艶の入った黒い、ベルトのバックルのような機械だった。右側には妙な刀の装飾があり、左側には中央にある窪みがもう一つついている、見た目はただのおもちゃのように見えるもの。

 

 

「ヒィヒヒヒヒッッ! ハァアアアッ! ッッァア! 」

 

 

 完全に正気を失ったように、狂気の笑みを浮かべたままゼファードルは、右手にあったバックルを腰に押し当てる。

 

 

 

〈戦極ドライバー! 〉

 

 

 

 すると腰に当てたバックルの側面部からベルトが伸び彼の腰回りを覆い装着された。

 

 

 

 そしてそのまま彼は2つの拳大の奇妙な…錠前のような装置を取り出した。

 

 

 両手に持ったそれを、見せつけるように前に突き出し、錠前を開く。

 刻印は、

 

 

『L.S.-MESSIAH』

 

『L.S.-TABOO』

 

 

 

【ザクロ! 】

 

【リンゴ! 】

 

 

 ゼファードルは2つの赤い錠前――ザクロロックシードと禁断のリンゴロックシードをドライバーに装着。

 

 

「オラァッ! 」

 

 

 

 気合とともに両拳を叩きつけ力強く錠前を閉じる。

 

 

 

 

〈LOOK!〈LOOK ON! 〉〉

 

 

 

 

 合成音声とともにジッパーの開く音が鳴る。

 見上げればそこには丸くつけられたジッパーがあり、開かれたその奥から極彩色の空間と金属製の果実のようなものがのぞいていた。

 

【~~~♪】

 

 エレキギターをかき鳴らすような大音量の音とともにそれは降下し、ゼファードルの頭上で血のように赤く輝きながら、装着の時を待つ。

 

 

 

 

 

「俺が救世主(セイヴァー)だ」

 

 

 

――変身ッ!

 

 

 一気呵成。気合とともにゼファードルはバックルのカッティングブレードを倒し、両手を広げる。

 ロックシードのキャストパッドが開かれシードインジケーターが現れ、解放されたエネルギーはライドウェアとなってその全身を覆い、ゼファードルの頭上の果実が一気に降下。

 彼を鎧の騎士――アーマードライダー――へと変身させていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

【ザクロ・アームズ! 狂い咲き・サクリファイス‼】

 

【リンゴ! リンゴアームズ! DESIRE FORBIDDEN FRUIT(デザイア・フォビドゥン・フルーツ)~♪】

 

 

 

 

 

 

 

 

 閃光とともに鎧が展開され、血の如く紅いアーマードライダーが姿を現す。

 

 見る者に不吉な宿命を示すがごときその姿は、殺戮の救世主アーマードライダーセイヴァー……‼

 

 

 

 

「ゼファードル⁈ その姿は――」

 

 驚く暇も与えない。

 ゼファードルは混乱しているサイラオーグにかまわずアップルリフレクターから片手剣ソードブリンガーを引き抜き、構え、叫ぶ。

 

 

「俺が、俺が、俺が! 俺が救うんだッ!

 サイラオーグ・バアル 絶対に許さねぇ! 」

 

 

 

 斬撃。渾身の力で振るわれたそれは、しかしサイラオーグのオーラを突破するには届かず。

 

 

「く……っ! ……おォォ‼ 」

 

 

 剣戟を耐えたサイラオーグは困惑を振り切り拳を放つ。上級悪魔のレベルを軽く凌駕し、仮にゼファードルが防御用の魔法陣を多重展開したところで防ぎきれないであろうそれは、セイヴァーが左手に装備するアップルディフェンダーによって防がれた。

 

 

 

「硬いッ⁈ 」

 

「クソ! クソクソクソッ! なんで斬れねぇ! 切り裂けねぇ! 」

 

 

「ゼファードル! その力は、その姿はなんだ! これは冥界のすべての者が見ているレーティングゲームだぞ! 」 

 

 

 斬撃を無数に放つセイヴァー。しかしそれはとてもではないが洗礼された攻撃とはいいがたく、サイラオーグはそれをやすやすと回避し冷静に相手の説得を試みる。

 

 

『ええ、サイラオーグ選手の言う通り、今回のゲームのルールでは事前に申請のない武器の使用はルール違反! 思惑がどうであれ、ゼファードル選手の反則負けになりますねぇ‼ そぉーですねーグァバラさん‼ 』

 

『はぁい』

 

 

 

「リタイアシステムが作動し、ゲームエリアからお前は退場する……だが――! 」

 

 ここでサイラオーグが前に出る。とっさに突き出されたソードブリンガーを避け、そのまま懐に潜り込み、ど真ん中に正拳一撃!

 

 

「…ッがぁ‼ 」 

 

 

「今のお前をそのまま送るわけにはいかん。最低でも気絶させ、戦闘能力を奪ってからリタイアしてもらう」

 

 

 再び構えを取り、鋭く目の前の鎧武者をにらみ、闘気を立ち昇らせる。

 

 

 それを受けたセイヴァーはゆらりと前かがみになり、まるで無防備な姿勢で言葉を放った。

 

「ざけんな。倒すのは俺だ。倒されるのはお前だ。舐めんじゃねぇぞクソがァ‼ 」

 

 

 そのまま信じられないスピードで倒れこむように地面すれすれを疾走。先ほどの一撃の意趣返しか、そのまま剣を胸部に叩き込もうと突きを繰り出す。

 

「そう来ると思っていた」

 

「は」

 

 

 ドゴォンッッッ!

 

 

 

 クリーンヒット。

 攻撃を予期し、あっさりと回避したサイラオーグがセイヴァーの無防備な右側面に強烈な一撃。

 食らったセイヴァーはそのまま吹っ飛びゲームエリアの建物に叩きつけられた。

 

 

 残心。

 

 油断なく見つめるサイラオーグの視線の先で、またもゆらりとセイヴァーは立ち上がった。

 

(今の一撃で傷がついた様子もない、か……)

 

「まだまだ……倒れるかよ…、俺が、倒れるかよ! 」

 

 右手を腰に持っていきカッティングブレードを操作する。

 

 

 

――カシィン! カシィン!

 

 カッティングブレードを二回倒す。

 

 

 

〈ハッ! 〉

 

 

 

【ザクロ・オーレ! 】

 

【リンゴ・オーレ! 】

 

 

 ソードブリンガーに深紅のエネルギーが充填される。そして、それだけではなくゼファードルの持ち味である上級悪魔ゆえの豊富な魔力も込めていく。

 あれは、とサイラオーグが思った時にはもう遅く、

 

「オラァ! 」

 

 剣をふるうのと同時にたまったエネルギーが発射され、射線上にいたサイラオーグを飲み込んで爆発した。

 

 

 

「ハッ…ハッ…ハッ…」

 

「くっ……」

 

 魔力を込めた必殺技を放ち、疲労したセイヴァー。

 無傷なれど、ロックシードのエネルギーと魔力の混合攻撃で防御に用いた腕がしびれてしまったサイラオーグ。

 

 

 戦闘続行は十分に可能であるものの、動けない二人。

 そこに実況席から声が響く。

 

 

 

 

『予想外に接戦のサイラオーグ、ゼファードル両選手の決闘‼ ですが、残念ながら試合中止のジャッジが下されてしまいました。まもなくリタイアシステムが作動し、ゲームは終了となります。試合をご覧の皆様、ご視聴ありがとうございました‼ 今回もありがとうございました、グァバラさん! 』

 

『はぁい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところが、

 

 

 

『…………………ん? あれ…? おかしいですね。

 

 え? まだ映ってる? システムは? え? 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―○●○―
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここはレーティングゲームの管制室。普段は粛々とゲームシステムを運営するだけであるそこは、混乱の極致にあった。

 

 

「どういうことだ! なぜリタイアシステムが作動しない! 」

 

「ダメです! こちらからの操作、すべて弾かれます! 」

 

 

「中止! ゲームは中止だ! 活きているコマンドでなんとしてもエリア内の人員を救出するんだ! 」

 

 

「システム、こちらのコマンドすべて拒否! 」

 

 

「中継もカットできません! 実況のイモナイさん、解説のグァバラさんとも通信途絶! 映像と音声だけがそのまま放送されています! 」

 

 

 

「なんなのこれ…っ! 別の回線からのハッキングじゃない…内部から接触をはじかれているような……」

 

 

「キャアッ! 」

 

 

「どうした⁈ 」

 

 

「電子機器が火を…ッ! 」

 

 

「うろたえるな! 諦めるな! 我々は我々の仕事を全うする! なんとしてでもリタイアシステムを作動させるんだ! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

 ここは冥界のネットワークの中。

 魔力と電気の複合情報世界の一区画。

 

 

 そんな電子の海の中でロイミュード109、フレア・ロイミュードとして進化し、近いうちに超進化を遂げる予定の()()は命令に従いレーティングゲームの管制システムにサイバー攻撃を行っていた。

 

 

 

 彼女に与えられた命令は「ゲームのリタイアシステムの掌握と通信システムのハッキング」。

 

 

 魔力的なネットワークに電子的なネットワークが組み込まれた今の冥界の通信システムを操ることは、とある悪魔と融合進化した機械生命体である彼女にとっては赤子の手をひねるよりも簡単なことだった。

 

 

 現に今も管制室からの必死のアクセスを片手間に内側から弾いて遮断している。

 侵入から数分でプロテクトを全解除、プログラムを改ざん。自身を介さない直接的・間接的アクセスのすべてを不可能にしてしまった。

 

 

 

 ちなみに現実の管制室で電子機器が火を噴いたのは、彼女が使命に燃えている(物理的・電子的)からであった。

 

 

「あぁ、あぁ! 我が主人、九朗さま! フレアは務めを果たします。完璧に完全に、私の全能力、全回路にかけて、必ず! んんっ! 」

 

 電子の海を泳ぐ彼女は高ぶり燃えまくっていた。

 

 

 

 

 

~~

 

 

 

 

「ひぃぃ! また火を噴いた! もうだめだぁ……! 」

 

 

 

 管制室の受難は続く。

 

 

 

 

 

 

 

 




◆戦極ドライバー&ロックシード
 製作:『藤代九朗』
 特許:ユグドラシルコーポレーション
 出所:戦極凌馬(死体)

 戦極ドライバーは“禍の団”からの軍資金を用いて製作。すでに量産のための工場も建設。
 ロックシードは肉体に埋め込んでおいたヘルヘイムの果実を“禍の団”の支援で水耕栽培し、増産した果実から使用。ザクロロックシード(マスター版)や禁断のリンゴロックシードは一部戦極凌馬の頭脳を再現して改造完成させた。
 ちなみに、今回ゼファードルが使用した二つは彼用に調整されたうえで、相乗効果によって彼を()()()()へ導く機能を持っている。
 なお、これを実用化するために数十名の悪魔が森に喰われた。



☆バアル
 元72柱1位。大王。
 伝承では悪魔達の中で「王」の位を持つ者の一人であり、東方に領土を持つ66の軍団の長たる大悪魔として記され、彼に祈るものは奸計の才を手に入れ、必要に応じて変身・透明になる能力を授けられる。また、戦闘にも長け、法律関係の知識にも精通しているとされる。
 冥界においては魔王に次ぐ権力を持った家、あるいは一族。一族の特徴として「消滅」の魔力を持つことが有名だが、次期党首であるサイラオーグ・バアルはそれを持たずに生まれた。
 サイラオーグは、魔力を持たずに生まれ、一時冷遇されながらも鍛錬によって得た実力で現状を変えて見せた。そんな彼は冥界の恵まれぬ悪魔たちの希望の星であり、彼自身もその期待に応えようと励んでいる。
 彼には大義があり、理念があり、信念があり、意義がある。しかし―――サイラオーグ・バアルは腕力に優れているだけであり、特別政治力があるわけではないという事実は認めざるを得ない。



★グラシャラボラス
 元72柱 29位。伯爵。
 伝承において、召喚されるとグリフォンのごとき翼を持った犬の姿で現れるという悪魔。人文科学の知識を与える一方で、殺戮の達人でもある。過去と未来のことをよく知り、また、人を透明にする力も持っているとされる。
 序列一位のバアル家には劣るものの、十分に名門と呼べる家。テロなどの動乱で次期党首であった長男が事故死し、本家次男で『凶児』として悪名をとどろかせるゼファードル・グラシャラボラスが新しい次期党首となった。次期党首になったとはいえゼファードルは素行を改めることもせず、若手6王のお披露目の場でアガレス家のシーグヴァイラ姫に絡み、サイラオーグによる鉄拳制裁を受け、古参の悪魔たちが集うお披露目で顔に傷を作ったまま出席することになった。一言でいえばゼファードルはサイラオーグに途轍もない恥をかかされた。(次期大王が、次期伯爵の顔をつぶした。一般的な価値観でいえばゼファードルが悪いが、貴族的にはサイラオーグのほうが問題あり―――上に立つものが言葉ではなく力で相手を黙らせるというのは強さを尊ぶ悪魔の価値観ではともかく、貴族の価値観からして野蛮でありよろしくない)
 ゼファードルは素行や格好はともかく実力は一般的な上級悪魔の範疇であり、戦闘方法も純血の上級悪魔である彼の持つ高い魔力や魔方陣による攻撃や防御が主な攻撃手段。一般的な貴族でもある彼は努力や鍛錬を特に行うこともしておらず、サイラオーグのような肉体強度や技術を備えていない。
 今回の変神のために『藤代九朗』自らの手で五体を切り刻まれ、筋を脈を肉を皮を強靭で適用するものへと作り替えられた。
 (切り刻まれたのはただの趣味。実際の改造手術はモーフィングパワーでちょちょいっのちょい)




★アーマードライダーライダー セイヴァー〔リンゴアームズ〕
 殺戮の救世主。
 精神を調律されたゼファードル・グラシャラボラスがザクロロックシードと禁断のリンゴロックシードで変身した紅のアーマードライダー。

 ドライバー、ロックシード、ゲネシスコアは全てこの世界で作られたもの。 製作者は“禍の団”「怪人派」頭目『藤代九朗』。
 アームズウェポンは林檎盾アップルリフレクターと片手剣ソードブリンガー。一応 救世弓セイヴァーアローも使用可能だが使っていない。

 変身者であるゼファードルが“悟り”を得ていないため、真の実力を発揮できないでいる(そのためアームズも本家の装着展開方法と異なっている)。



★フレア・ロイミュード
 シリアルナンバー109
 この世界で作られた初の機械生命体。蛮野天十郎が開発した増殖強化型アンドロイドのコピー品。悪の心は植え付けられてはいないものの、創造主である『藤代九朗』への従属・支配プログラムを備え付けられている。
 ある悪魔を擬態したうえで、その悪魔の死体とネオバイラルコアを使って融合。嫉妬と憎悪を学習しフレア・ロイミュードに進化した。
 現在、超進化態になるために眼魔技術応用型感情収穫システムの完成待ち。

 支配プログラムのため逆らうことはできないが、だからこそ下から主人を支配する奴隷の優越感に満足している。奴隷として主人に頭を垂れ、奉仕することで、逆に主人を支配する。そんな思惑を抱えている。
 まぁポンコツで詰めが甘いのでどうにもならないのだが。


★藤代九朗

ゼファードルへの感想:
「いやぁ、退屈な素材でしたね。平凡平凡超平凡、上級悪魔の枠を超えて優秀なわけでもなければ劣っているわけでもない。
 俺が救ってあげなきゃどうなっていたことか。
 特に優れた才もなく、これから真面目に生きたとしても目立った長所がない分、荒れた過去と死んだ兄との比較は一生ついて回る。
 きっと周囲の嘲笑を浴びて、ひたすらみじめな人生を送ったことでしょうね。いや、うん。絶対にそうだ、そうに決まっている。
 かわいそうに、かわいそうに。
 無能で愚かで情けなくって、なんてかわいそうな悪魔なんだろう。およよ…。
 だからゼファードルくんは俺に感謝しているよ。多分、絶対。
 もう彼は死ぬまで、いやさ死んでも俺の奴隷だけど、これからずっとずっと俺のために生きられるんだから。
 誰かのために生きるのは尊い。誰かのために死ぬのは尊い。
 だから俺のために生きて死ねる彼は絶対に尊く幸せだよ。
 きっと極楽浄土にだって行けるさ。
 生老病死、四苦八苦、そのすべてから解放されて羨ましいねぇ」





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