アズールレーン ―あの素晴らしい海をもう一度、です― 作:ブロックONE
ポラリスとの対決に備え、主人公ズ内にて発足されたAYAXILE(以下アヤザイル)。
その練習風景に迫る……!?
練習室。
AYAXILE発足直後から動きは早かった。アヤザイルは作戦名として主人公ズの間でコードネームとしても浸透。
主人公ズのトリになる分、先んじて早速振り付けを練習。今まで実際にやったことのない動き故、確認しながらという形でスタートする。
そして、主人公ズの練習場に使っている部屋にて。
「それでは通しでやってみるのです」
演目を通しで行う。
慌てず騒がず、確実な練習で一ヶ月。全員が振り付けをモノにしてみせていた。
しかし、綾波たちが練習場やリハーサルで使っている時間は、サラトガを含めるステージ慣れしたKAN-SENたち、並びに『主人公ズのメンバーと関係者以外』は会場への一切の介入を禁止にしていた。おまけに、その関係者以外は、それがアヤザイルという作戦コードの名前すら、無論知らされていなかったのだ。徹底した情報統制に、不穏さを感じざる得ない。
そう、これは本番に全貌が明かされる事になっているためであった。
サラトガとZ35たちは、自身らのレッスン後、自主的に練習している主人公ズたちを気に掛けていた。
「一体何やるんだろうね、『主人公ズ』…」
「うーん…私たちに頼らずに特訓って所が興味をそそられちゃう!」
練習場前はニーミの姉妹艦Z35と、サラトガたちが明石と共に駆け付けていた。理由としては、単に気になるからである。
中からはリズミカルにステップする際に踏み込む音だけが聞こえる。
「あ、でもちゃんと練習してるみたい…」
サラトガはステップ音が揃っているのを発見した。
「音楽が聞こえないよ…?何の曲だろう…」
すると扉が開く。
「………あ、こんばんはです…」
綾波が顔を出す。
「「こんばんはー」」
「遅くまで、ご迷惑お掛けしますです…」
「いえいえ!」
「平気だよ☆ それに!ステップの音が聞こえたし。しかもよーく揃ってた!」
「ええ、ありがとうございます。本番に備えて調整です。」
上手いこと断って穏便にお引き取り願おうとする綾波。
「じゃあさ、ちょーっとサラトガちゃんたちに見せてくれたりしない?」
「おねがい…!」
キラキラした目線が綾波を襲う。
(う……アイドルのおねだり……!!まばゆいっ)
容赦なく突き刺さる。しかし、なにか違和感を感じる。
「って、明石まで何してるです…?」
「入れてくれたら一品だけ50%割り引き券あげるにゃ」
ここで観念し、皆の方へ案内する。
嫌な顔せずすんなりと中に入れたこと。しかもそんな綾波を誰も止めない。むしろにこにこして迎え入れた事に、この時は誰も不審には感じなかった。
秘密を知れると思うと優越感を感じるサラトガたち。
しかし、その中を見た途端、思わぬ光景が広がっていた。
手を二回叩いて右手と右足を出し、また二回目叩いて今度は左手と左足…という振り付けを繰り返す艦船たち。その背後には、バラクラバを付けたパフォーマーたちもいる。その何ともシュールな光景に、思わず言葉を失うサラトガたち。
「うんうん、ぽんぽんみーぎ、ぽんぽんひだり、ぽんぽ…ん?…ええええええ!!?」
うっかり乗せられていたサラトガ。
「な、なにこれ!?」
驚くZ35。
「それ『変なおじさん』にゃ!」
そう。明石の指摘通り、重桜の誇るコメディアンの名物ネタ『変なおじさん』の振り付けで踊っているジャベリン、ラフィー、ニーミ。そして、覆面を被った人物も一緒。
「息ピッタリだね?」
「…あ!もしかして、バカ殿スペシャル公演でもやるの?私アレ好きなのよ~。あの床におちるコント、私もやってみたくて…他にも、ロン○ーのアツシがゲストの時、アツシと剣の稽古してて防いでもその剣と頭の隙間をバシバシやっちゃうのはホントに笑っちゃったわ!」
横から出てきたサラトガの姉、レキシントンが語りだした。
「お、お姉ちゃん…ごめんねみんな。お姉ちゃんはシムラさんの番組のファンなの…」
申し訳なさそうに詫びるサラトガ。いたずらっ子な彼女も思わず
「ユニオンに居た頃から衛星放送で必ず予約録画して観てるの!いつかコンサートとか収録とかでコラボしてみたいわ♪」
「そうなのですか…」
場が和む。
「あと、エガ○ゃん!」
「おお……レキシントンさんは伝説のアラヒトガミの信者でもあったのです…?」
すると、今度は『取って入れて出す』あの舞を踊り出す覆面パフォーマー&主人公ズ。
「待って、待ってにゃ!」
明石が慌てて止める。
「ていうか、どうやって合わせてるの?」
Z35が訊ねる。
「今はオフにしてますが、明石が設置してくれたこの特殊なスピーカーからです」
綾波が指す所にスピーカーが設置されている。
「ああ、これは指向性スピーカーにゃ。駅の構内に設置されてるアレみたいなものにゃ。ここにあるのは科学部の開発した特殊なもので、実際に駅に設置されてるものとは別物にゃ…」
「これで周囲への曲のネタバレは極力避けられる」
ドヤる夕張。どうやら彼女も一枚噛んでいる…というか、明石は機材を綾波たちのために貸しただけであった。
「まさか、こういう使われ方をされてたとは思っても見なかったにゃ…」
「ご協力感謝なのです」
その後も訊ねるが、どうしてもこれ以上は教えられないと言う。そこで、主人公ズ+覆面パフォーマーたちと共に『変なおじさん』を踊るレキシントンたちアイドル艦船たちと、明石と夕張。
(すげー絵面にゃ…)
「ちゃんと休んでね?」
「本番応援してるわ♪」
「フュンちゃんも応援来るからね!」
「うちは皆を信じてるよ!」
「足りないものがあったら、また言ってにゃ」
「皆さんありがとうなのです」
主人公ズと覆面パフォーマーたちは心遣いに対してお辞儀する。
「何とか帰ってもらえたのです……」
「上手くいきましたね!綾波!」
「はいなのです」
覆面パフォーマーたちも胸を撫で下ろす。
そう、これはアヤザイル作戦における機密維持のための情報工作。
割とどうでも良く、無関係そうなものを見せておき、本番のネタバレを防いだのだ。
「それでは、本日は解散なのです。また明日もよろしくなのです。ゆっくり休んでほしいのです」
アヤザイル作戦は着実に準備を進めている。
………………
一方…
「『もう一回』セッションを所望……」
「そうね、纏まりが出来てきたわね」
「ふん!これなら本番なんてちょろいわ!」
「キレも増した感じしますね」
「さあ、もういっちょやるか!」
スケジュールの関係上、アヤザイルの存在を知らないガスコーニュたちPolaris(ポラリス)は、アヤザイルの撤収後から更に少し後まで練習を続けていた。
「♪その手でそっと溶かして__」
こちらも纏まり、かなり形になりつつあった。
To be continued…!
閲覧ありがとうございました。
AYAXILE vs Polaris
果たして……?
これをお読みになったあと、μ装備の艦船を入手した指揮官様や、綾波たちと変なおじさんを踊りたくなった指揮官様がいらっしゃいましたら是非ともお気に入り登録、ご感想、ご投票をよろしくお願いいたします。
by筆者。
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