ガラッと豪快な音を立てながら勢い強くスライド式の扉が開いた。
その扉は1-Cと書かれたプレートがある教室にあるものだ。
その扉の音に反応してクラスにいた幾人かの者達がその勢い強く開いた扉に目をやった。
そして扉を開いたであろう者を見て驚いた…。
そこに立っていたのは眉間に皺を寄せ顰めっ面をつくり、現在進行形で両鼻から鼻血をポタポタと垂らすフツメンの少年だ。
「オース、サクと楽…。
って、うわ?」
「一条君?
どうしたのそのケガ!」
そうその少年とは一条 楽。
一条 佐久間の双子の弟であり、ここらの地域の元締めをしている‘‘集英組”の2代目候補の少年だ。
そして鼻血をポタポタと垂らす楽を見て最初に驚きの声を上げたのが舞子 集、そして集に次いで声を上げたのが小野寺 小咲である。
舞子 集…佐久間・楽の親友であり、同じ中学の出身で幼稚園時代からの腐れ縁である。
眼鏡を掛けた短髪の少年だ。
小野寺 小咲…こちらも同じく佐久間・楽・集と同じ中学の出身である。
やや赤みがかった黒髪で短髪ではあるのだが左側の髪だけ肩にかかるという左右非対称なアシンメトリーな髪型が特徴の少女。
小咲も先程の金髪碧眼の美少女とは違う雰囲気を持った美少女である。
そして教室に入った楽の後ろから楽より10cmほど身長の高い銀髪紅目の少年…佐久間が楽に追従するかのように教室に入ってきた。
先を歩いていたはずの佐久間だがいつの間にか楽が追い抜いていたようだ。
2人は双子であるが同じクラスだ。
学校によっては双子は同じクラスにならないようにされる所が多いようだが凡野理高校はそういう制度は無いようだ。
「お、おはよう一条君。」
鼻血を出している楽に歩み寄る小咲だが佐久間が教室に入ると佐久間に顔を向けて挨拶する。
「あぁ、おはよう。」
それに対して佐久間ももちろん返
す。
「大丈夫⁈
鼻血出てるよ?」
小咲は佐久間の返事を聞いてニコッと可愛らしく微笑むと慌てて楽に声を掛けた。
「だっ…
大丈夫大丈夫!
全然平気だから‼︎」
小咲に心配されて楽は頬を朱色に染め、身体を一瞬硬直させると慌てて右手で今もなお赤い液体が滴り続ける鼻を隠すように覆い、左手を大丈夫大丈夫と忙しなく左右に振る。
「んで…何があったんだ?」
楽と小咲がそんなやりとりをしている様子を面白そうに眺めていた集が教室に入るなり自身の真横に突っ立ったまま同じように楽と小咲のやりとりを眺めていた佐久間に声を掛けた。
「ん?あぁ、楽の鼻血の件か?
実はな校舎に入る前にーーーー
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
「ーーはあ?
バカ言えよ。
ウチの学校塀2m以上あんだろ。
それ飛び越えてくるってどんな女の子だよ。」
そして集は佐久間から話しを聞くなり、ツッコミを入れる。
まぁ当然の反応だろう。
「ホントなんだって‼︎」
佐久間の集への説明中に楽と小咲が参加してきた。
そして楽が集の疑いの声に対して事実であると述べるのだが…
「そんな事より聞いたか⁉︎
今日の転校生って女なんだとよ!
しかも噂によれば美人……‼︎」
集が拳を握り締め、眼鏡越しに目を輝かせながら力説する。
「ほう…美人、か。」
そんな集に対して佐久間が興味あり気に顎に手を添えて呟いた。
「お、さすがはサク。
興味津々だなぁ!
やっぱり美人って聞いちゃー男として反応しちまうよな‼︎」
集は佐久間が美人ということに反応したことが嬉しいのか佐久間の背をバシバシと叩きながら言う。
「まあ、そうだな…。
確かに美人ときたら期待してしまうが…俺の今の美人という言葉への反応とはちょっと違うな。」
佐久間が言いたいのはその美人というのが先程の金髪碧眼の美少女ではないかということだ。
「いいっていいって!
隠すことはないよ…美人に反応することは恥ずかしいことじゃない‼︎」
今もなおバシバシと背中を叩きながら見当違いなことを述べる集。
佐久間も痛くないのだがだんだんとイライラしてきたためアイアンクローを集にお見舞いしてやった。
集は佐久間のアイアンクローをくらいミシミシと頭が軋む音への恐怖と痛みで地面に突っ伏した。
佐久間はそんな集に一瞥をくれると楽に視線を向ける。
すると楽の鼻の頭に小咲が絆創膏を貼っているところだった。
佐久間は‘‘鼻血に対して鼻の頭に絆創膏って意味があるのだろうか?”という疑問を抱くが楽が何故か幸せそうな表情をしているため効き目があったのだろうと推察した。
「…………。
よかったな楽♡」
「うっ…うっせーな…‼︎」
地面に突っ伏していた集がいつの間に回復したのか今の楽と小咲のやりとりにニヤニヤとした顔で楽に告げる。
集がいつの間にか佐久間の横に立っていたことに佐久間は驚きで目を見開いていた。
集に声を掛けられた楽はビクッと身体を震わせると顔を真っ赤に染めてぶっきら棒に答えた。
「何が良かったんだ、楽?」
楽が小咲に好意を持っているのは楽に親しい者なら誰もが気付くことであるのに佐久間はまったく気付かない。
また、自身に対する好意にも…。
「な、何でもねぇーよ…‼︎」
一方楽は自身が小咲に対する好意を周囲にまったく気付かれていないと思っている。
親友で腐れ縁な集が知っているのは長い付き合いだからと納得しているのだ。
実際、兄弟である佐久間には気付かれていない…これが楽自身にそう思わせている大きな理由だ。
ただ単に佐久間が恋愛というものに対して鈍感であるだけとも知らず…。
そうこうしていると朝のホームルームが始まることを知らせる予鈴がなった。
廊下や教室…いたるところで和気藹々と過ごしていた生徒たちが各々の教室に戻り自身の席に着いた。
佐久間や楽、小咲に集も各々の席に着いた。
ちなみな佐久間の席は窓際の一番後ろの席である。
佐久間自身その席を気に入っている。
なんでも太陽の光が身体をポカポカと温かくしてくれてぐっすり眠れるのだとか…。
予鈴が鳴り終えてからしばらくすると担任のキョーコ先生がいつもの明るい雰囲気を振りまきながら入ってきた。
キョーコ先生は今日の予定やらを簡単に生徒達に伝えると次の話しに移った。
「…よーし、今日は転校生を紹介するぞー。
入って、桐崎さん。」
キョーコ先生が転校生の桐崎という人物に入ってくるよう呼びかけると扉の向こう側から「はい。」とすごく綺麗な声で返事が返ってき、扉がガラガラと音を立てながら開く。
クラスの皆がザワザワと少し騒がしくなる。
やはり転校生というものは気になるものなのだろう。
転校生に大して興味のなさそうにグラウンドを眺めていた佐久間はどこか聞き覚えのある転校生の声に目を向けて、自身の推測が正しかったことに満足そうに1人微笑んだ。
推測というのは集から転校生が美人だと聞いた時に先程佐久間がお姫様抱っこをした美少女ではないのだろうかという推測である。
つまり入ってきた転校生…桐崎は先程佐久間と楽と衝撃的な出会いをした金髪碧眼の美少女だったのだ。
「初めまして!
アメリカから転校してきた桐崎 千棘です。
母が日本人で父がアメリカ人のハーフですが日本語はこの通りバッチリなので、みなさん気さくに接してくださいね!」
ニコッ‼︎と効果音が飛び出して来そうなほどに綺麗な笑みで微笑む金髪碧眼の美少女…千棘。
「うおぉぉぉぉーー!
かわいいー!」
「すっげー美人‼︎」
「足細ーい!
何あのスタイル〜‼︎」
「ハーフだってよ!
あんなかわいい子見た事ねぇ‼︎」
クラスの者たちが男女問わず口々に千棘の容姿を褒め称える。
それだけの容姿を持っているのだ。
しかしそんな千棘を見ても騒ぎ立てない者が2人いた。
佐久間と楽だ…。
「じゃーひとまずテキトーに後ろの空いてる席に…」
キョーコ先生が千棘の座る席に指を差す。
千棘はそれに促され指の差された席に視線をスライドさせて行く。
が、その視線の軌道上にいる口を開けて間抜けな表情で固まっている楽と目が合い、千棘も思わず固まってしまった。
そして次の瞬間には
「「あーーーーーーーーー‼︎」」
お互いがお互いに指を差し合い大きな声を上げた。
楽は自身の席が倒れるほどに勢い良く立ち上がった。
そんな2人の様子を見て更にクラスがざわつく…かと思われたが、不思議なことにクラスの者たちは2人を静観しているだけだった。
「あなたさっきの…」
「さっきの暴力女‼︎」
さすがに楽の暴力女という発言には皆が目を丸くして驚いていた。
「ちょ……!
何よ暴力女って‼︎」
千棘も楽の暴力女という発言に一瞬虚を突かれたように呆然とした表情を浮かべたが、やはり暴力女とは納得がいかないようで不満の声をあげる。
「そうだぞ、楽!
暴力女は言い過ぎだ。
言うなれば…そうだな暴力未遂女だ‼︎」
そしてここで千棘の肩を持つ第三者の声が教室の後方の位置から上がった。
皆が2人の会話に介入したであろう人物…佐久間に視線を向ける。
千棘もまた皆の目線の方向に釣られるように向けた。
「あーーーーーーーーーー!
あ、あなたはさっきの…。」
千棘はまたもや大声を上げる。
それも先ほどの大声と比べると悲鳴に近い声だった。
佐久間に指をさしているが動揺しているのかワナワナと震え、定まっていない。
顔はお姫様抱っこのことを思い出したのか真っ赤に染まっていた。
「どうしてあなたがここにいるのよ⁉︎」
「オイオイ、どうしてここにいるのかって言うのはひどくねぇーか?
そんなの俺の在席するクラスだからに決まってるじゃねぇーか!」
「だってこいつの兄だって自分で言ってたじゃない!
…ハッ!もしかして、留年生…?」
千棘は楽をビシッと指差しながら兄弟関係について問いただしたが、途中で「まさか⁉︎」と新たな可能性に気が付き恐る恐ると言った表情で佐久間に訪ねた。
そして佐久間からの返事はというと
「イッターーーーイ!」
軽い千棘への拳骨だった。
千棘は頭を両手で抑えしゃがみ込む。
「誰が留年生だ!
確かに楽とは兄弟だが双子の兄弟だ!」
「双子っ⁉︎」
千棘は未だ怒りの表情を浮かべた楽と佐久間を交互に忙しく見比べ「嘘…⁉︎」と呟いた。
「あぁ、双子だ。
確かに似てないとは言われるが双子なんだ。
だいたい俺が留年することなんか絶対無い!…とは言えないが無い、はずだ。
なんたって俺は成績学年1位だからな。」
佐久間が留年しないと尻すぼみし、言い切れなかったのは授業をまともに参加しないことが少なからずあったことを思い出したからだ。
千棘は佐久間が学年1位と聞いて目を見開いて驚いた。
「チャラチャラしてそうなのに…。」
その千棘のボソッと呟いた発言は佐久間には聞こえていたらしく、拳を見せつけると千棘は素早く謝った。
「おい、暴力未遂女!」
しばらく黙って佐久間と千棘のやりとりを見ていた楽だがいい加減に我慢の限界なのか千棘に声をかけた。
「だから暴力未遂女って何よ!」
千棘は楽へと視線を向けると睨みつけながら抗議の声をあげる。
佐久間は楽がちゃんと言い直していることに満足気で、2人の会話に何も言わない。
「さっき校庭でオレに飛び膝蹴り食らわせようとしただろ!」
「何よ結果的には未遂で終わったじゃない!」
「俺のお姫様抱っこのお蔭でな。」
佐久間が千棘の発言にツッコミを入れる。
周りも新たに飛び出して来た気になるワードにまたもやザワザワとざわつく。
千棘はまた顔を真っ赤に染める。
「でもオレはお前のせいで気絶しかけたっつーんだよ!」
そんな千棘を見て勝機と見たのか楽が止まることなく言葉を発した。
「へ、へーそう、
血圧低いんじゃないのあなた!
だいたい自分が足をもつれさせて転けたの私のせいにするなんて女々しい人ね!」
若干動揺しているようだが千棘も負けられないとばかりに反論の言葉を口にする。
「女々…!
そもそも2m以上もある塀をいきなり飛び越えて来たお前が悪いんだよ‼︎
この…猿女‼︎」
楽のその発言はまずかった。
「誰が猿女よ‼︎‼︎」
千棘の額に青筋が浮かび上がり、次の瞬間には楽が宙を舞った。
千棘が楽の猿女という発言に条件反射のように反応しプロボクサーがクロスカウンターを決めるかのような見事なフォームの右パンチを放ったのだ。
席に着いている生徒達も何が起きているのか分からないといった表情で自身の目の前を左から右へと舞って行く楽を眼中に捉え、首だけで追いかけた。
そして楽は『ドシャッ…!』と、人間の着地の音としてはかなりえげつない音を放ちながら地に叩きつけられた後にコロコロと数回転横に転がるとようやく動きを止めた。
皆がポカーンと呆然としている中ゆういつ動き見せたのが佐久間だった。
どこから持ってきたのかスピードタフミックリールを千棘の足元から楽の倒れている位置までの距離を測る。
「5m49cm」
佐久間の測定結果の声は変にクラスに響いたのだった。
誤字、脱字、おかしな点などがありましたら報告よろしくお願いします。
また感想もいただけると嬉しいです!
今回の話しは作者自身おかしな点が多々あったかなと思いましたが後々修正いたします。
ではまた次話で会いましょう(`_´)ゞ