陽だまりに抱かれて   作:苺ノ恵

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11.旅立

 

胡蝶さんとの話し合いを終え、仮眠をとった私たちは合流した冨岡さんの先導のもと、狭霧山なる場所を目指していた。

当然のことだが炭治郎は日の光を浴びることはできない。

出発前にどうしようか悩んでいると、冨岡さんが竹を編んで陽の光が入らないよう籠を加工してくれた。

その次いでなのかは分からないが髪飾りをくれた。

なんでも、私の髪を切ってしまったお詫びらしい。

気にしないで欲しいと言ったら冨岡さんが困ってしまったので、ありがたくいただくことにした。

無表情で私の髪に飾りを付ける冨岡さんの手付きがあまりにもたどたどしくて、申し訳ないけどちょっとおかしかった。

でも、そんな私たちの様子を見ていた胡蝶さんの笑顔は、笑っているようで笑ってなくてちょっと怖かった…。

そんなこんなあって残るは一山超える距離まで近づいた時、お二人の鴉…鎹鴉が訪れ、至急の柱合会議?なるもののために召集される旨が伝えられた。

「あらあら…。ごめんなさいね、禰豆子ちゃん。最後までお見送りできなくて…」

胡蝶さんが本当に申し訳なさそうに謝ってくる。

「いえ、お二人ともお忙しい身なのに、こんなに良くしてもらって、私の方こそお二人の時間を拘束してしまってごめんなさい。私、必ず強くなって鬼殺隊に入ります。そして、鬼の脅威から人を守れるようになります。…炭治郎のこと、どうかよろしくお願いします」

「期待するな」

冨岡さんが突き放すような一言を言ってくる。

それを諫めようとする胡蝶さんの言葉を私は遮る。

「ちょっと義勇くん?他に言い方が__」

「大丈夫です。分かってますから___期待せずに信じてます。ね?冨岡さん?」

「………いつの間に胡蝶に毒された?」

途轍もなく嫌そうな雰囲気を醸し出しながら眉間に皺が寄る。

今の一言が虎の尾を踏んだことは、私でも分かった。

この場合の虎は胡蝶さんで異論なしだ。

「ちょっと義勇くん?それどういう意味かなぁ?お姉さんとお話しましょう?__ね?」

「ではな。励めよ」

危機察知能力の高い冨岡さん。

一瞬で姿を消してしまった。

お願いだから冨岡さん、その能力をもう少し別の方向に向けて欲しい。

主に女の子の機微とか。

逃げた冨岡さんに頬を膨らませ不満を募らせる胡蝶さんは、深呼吸をするといつもの落ち着いた笑みを浮かべて私に向き直る。

「もう!…ごめんなさい、禰豆子ちゃん。それじゃあ、私も行くわね」

「はい。胡蝶さんもお元気で!」

「ええ、また逢いましょう」

「…行っちゃったね」

眠っているのか。

炭治郎からは何も返事がない。

籠の重さに反比例して私の足取りは軽い。

弟と一緒にいるのだ。

何も寂しくなんてない。

「私たちも行こうか」

強くなろう。

また、あの人たちに会って、私たちはここまで強くなれましたって。

笑顔で報告できるように。

 

 

◇◇◇

 

「…いいの?義勇くん。あの子の血は…」

「…ああ、構わない」

禰豆子は稀血の人間だ。

当然、鬼に狙われる頻度は格段に跳ね上がる。

藤兼山で行われる最終選別。

女性である禰豆子にとって、七日間の死闘は想像を絶する地獄のはずだ。

だが、それさえ乗り越えられない者が鬼の頸を断つことなど到底できる筈も無い。

本来であれば、俺は即座に炭治郎の頸を落とし、禰豆子を胡蝶に預けて次の任務に赴くべきなのだろう。

しかし、俺はそうしなかった。

俺はあの二人に、自分の理想を重ねているのかもしれない。

大切なものは全て己の両手から零れ落ちてしまった。

俺はその運命に抗うこともせず、ただただ傍観していた。

だが、あの二人なら。

必然なる運命にも抗い、大切なものを全て守り通してしまうかもしれない。

俺の願いを、託しても良いのかもしれない。

「珍しいね?義勇くんがそんなにも誰かに興味を示すなんて」

俺の心情を察したのか、胡蝶が楽しそうな声音で初めて会った時のような、子供のような口調で話し出す。

別に、特別な理由なんてない。

…まあ、禰豆子は俺の妹弟子になるわけだ。

少し気にかけても咎められる理由はない。

だから俺が胡蝶の質問に応える義務はない。

というより、胡蝶とどう話していいか、未だによく分からない。

今度、禰豆子に会った時、それとなく聞いてみるか。

ああ、そうしよう。

土産は鮭大根がいいな。

俺は後ろから掛かる謎の重圧を気のせいだと思いながら、お館様の元へはせ参じるため、改めて呼吸を深めた。

 




~おまけ~
「___義勇くん?私、無視は良くないって思うんだけど義勇くんはどう思う?」
「………」
「無視してない。何故なら、何を言おうか考えてたら俺よりも早く胡蝶が話始めるからだ__なんて理由は無しね?」
「!?」
「…予想通り過ぎてお姉さん心配になるわ…」
「…俺は嫌われてない」
「だから誰もそんなこと言ってないわよ?」
「…俺は嫌われたくない」
「ちょっと願望が入ったわね?」
「…でも好かれるのも面倒だ」
「どうしよう…しのぶが義勇くんを嫌う理由が垣間見え過ぎてる…」
「だが__禰豆子に頼られるのは、不思議と悪い気はしない」
「   」
「……どうした胡蝶?鬼もいないのに移動中に抜刀するな…は?鬼がいる?どこに___」




冨岡さん…恋愛小説読んで出直してきてお願い。

待たせたなおじいちゃん!

禰豆子ちゃんのレベルアップは貴方に任せました!

次回から修行編に入ります。
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