「___以上で柱合会議を閉会とさせて頂きます。皆様、ありがとうございました。水柱様、花柱様の二名はこの後、別任務のお話がございますので、もう暫くお時間を頂戴致します」
あまね様の言葉で会議を終えた柱の面々が退席する。
私と義勇君は普段から任務を共にすることはあったため、何も訝しまれることは無かった。
「時間をとらせて申し訳ないね。義勇。カナエ。分かっているとは思うけれど、例の件の報告をお願いできるかな?」
「勿論です。お館様」
珍しく義勇君が率先して口を開く。
良く勘違いされるが、義勇君は無口なだけで事務的な会話なら誰よりも論理的で、且つ簡潔だ。
だからこそ、日常生活で一言どころか二言以上足りないことが殆どなのだから救われない。
彼に悪気が一切ないのが余計に憐れまれる。
そういう意味で、私が彼の保護者的立場に置かれるのは自明の理とされている。
私としては嬉しいような悲しいような、複雑な心境である。
私が明後日の思考に陥っている隙に、義勇君の報告は既に禰豆子ちゃんの呼吸についての話題に入っていた。
「それは驚きだ。過去にも独力で呼吸法を生み出した剣士は確かにいる。でも、彼らのそれは何れも厳しい剣の鍛錬を乗り越えた先に習得したものだ。となると、考えられるのは、その竈門家に代々伝わるという神楽が、全集中の呼吸に精通しているということかな?」
「あくまで推測ですが。それに、竈門禰豆子の身に着けていたあの耳飾り…偶然とは思えません」
「始まりの呼吸…日の呼吸の系譜か。いずれにしろ、彼女が力を付けて私たちの悲願の手助けをしてくれるというなら心強い。___それで、竈門炭治郎くんという鬼になった少年について、君はどう思うのかな?義勇?」
「…分からない、というのが正直なところです。ですが、俺は、あの少年は、他の鬼とは何かが違う…。そのように思っています」
「うん。カナエはどうかな?君の率直な意見を聞きたい」
私は少しだけ深呼吸をして胸を落ち着かせる。
緊張して強張っていた私の口は思いのほか滑らかに動いてくれた。
「人を襲わない鬼。意思を介し、人と共存できる…いえ、人の心を持った鬼。それが私の思った竈門くんの印象です」
人の心を持った鬼。
その言葉を聞いたお館様は、どこか懐かしむような表情を浮かべては微笑んだ。
「なるほど。そして、その前提にあるのが禰豆子の血ということかな」
「稀血である不死川の血が鬼を酩酊させるものだとすれば、彼女の血は鬼を鎮静化させる血。鬼を弱体化させることのできる血ではないかと」
「効果を立証できるだけの証拠はあるのかな?」
「現在、胡蝶しのぶに竈門禰豆子の血液の解析を依頼しております。医学に精通している彼女であれば何か分かるのではないかと考えます」
「身贔屓に聞こえるかもしれませんが、しのぶは既に鬼の頸を斬る以外の手段で鬼を倒せるだけの方法を生み出そうとしています。彼女の才はこの先、鬼殺隊に大きな財産をもたらすと私は確信しています」
「しのぶには、今回の件をどう伝えるつもりかな?」
「炭治郎くんに関する情報だけ伏せて伝えるつもりです。私も全て隠し通せるわけではありませんが、そこに何か理由があると、しのぶなら分かってくれますから」
「そうだね。もし、しのぶと話が拗れた時は私からも説明するから気兼ねなく相談して欲しい」
「お心遣い痛み入ります」
私が感謝の礼をしたところで、義勇君が切り出した。
ここからは報告書に挙げていない内容だ。
「竈門禰豆子、炭治郎の両名は今後、狭霧山にて鬼殺隊入隊のための鍛錬を実施させます。育手には我が師、鱗滝左近寺殿を推薦させて頂きます」
「先代の水柱。彼であれば心配はいらないね。でも、義勇。私の聞き間違いかな?君の口振りだと炭治郎も鬼殺の術を…つまりは呼吸を習得すると言っているように聞こえたんだけど?」
「はい。そのように申し上げました」
「鬼が、鬼を倒すための呼吸法を使用する。その危険性を分かっていての言葉だよね?」
「無論です」
「君がそこまでする理由を聞いてもいいかな?」
義勇君はそこで初めて伏せていた顔を上げ、お館様に真っすぐな目で応えた。
「今は亡き友のため。俺では果たせない約束のため。俺は竈門禰豆子に___次代の水柱となって欲しい」
クリスマスBOXイベ到来…!
落ちない概念礼装、カクつく宝具、見向きもしない剣トルフォ。
襲い掛かる師走の残業地獄。
…止まるんじゃねえぞ、私。