IS‐護るべきモノ-   作:たつな

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クラス代表決定戦開始! 一夏対セシリア

 時の流れというものは早いもので、一週間という時間は瞬く間に去っていった。一生の中で一週間という時間は凄く短い時間で、その短い時間がさらに短く感じた。

 

クラス代表決定戦を行うと決めてから早一週間、一夏と俺はそれぞれに出来る限りの対策を行ってきたわけだが、幾分ISを使った練習が出来なかったために、ぶっつけ本番という形になったわけだが、ここ第三アリーナには一組のクラスメイトが観客席に押し寄せて来ている。

 

いつ始まるのかと心待ちにしているのは分かるが、自分がほとんど動かしたことのないISでの戦いを見られることは些か緊張する。とはいえ、当たって砕ける……わけではないが、やるだけやろうというのが本音だ。

 

 

―――今日は代表決定戦当日。参加する一夏と俺は第三アリーナのピットで待機していた。緊張気味の俺と一夏の後ろには、篠ノ之が腕組をしながら一夏の事をジッと見つめる。本日の天候に関して言うなら雲もほとんど見えない快晴、雨が降ることはないであろう絶好の決戦日和だ。

 

本番が近づいているとあって緊張感が増しているのか、ぎこちない表情を浮かべながら、一夏は篠ノ之と話し始める。

 

 

「……結局、ISは一度も動かせなかったな」

 

 

 一度もISに乗った練習が出来なかったことに、ガックリと首を垂れる。ISを使った訓練が出来ないことを認知していたとはいえ、いざ何も練習しないまま本番を迎えたことに大きな不安を感じているのかもしれない。

 

 

「ところで……なぁ、箒」

 

「何だ?」

 

「ISのことを教えてくれるって話だったよな?」

 

「……」

 

「えっ、目をそらすな!」

 

 

 結局、一夏はこの一週間は篠ノ之とマンツーマンで剣道漬けの毎日を送っていたらしい。二人とも同じ部屋だし、ISの実戦は出来なくとも、ISの知識や操縦の特性なんかは教えてられているものだと思っていたんだけど……。

 

一夏の素朴な疑問に、無言のまま篠ノ之は顔をそらす。顔をそらした篠ノ之に対し、腰に手を当てて納得がいかないとばかりに強めの抗議に出る。一週間前の今日は剣道場の時か、確かに鍛えてもらった方がいいといったけど、本気で剣道しか教えないとは。

 

一夏の衰退ぶりに納得が行かなかったのも分かるけど、少しくらいIS知識を教えてやっても良かったんじゃないかなと思う。

 

 

「し、仕方ないだろう! お前のISはまだ届いていないのだから……」

 

「大和の言うように訓練機も使えないし、専用機も持ってないけど、知識とか基本的なこととかあるだろ!?」

 

「……」

 

「だから、目をそらすなったら!」

 

 

仲良いな二人とも、近くから見てて少し羨ましいぜ。

 

さて、見たように篠ノ之は更なる一夏の言及に完全に背を向けてしまったわけだが、今さら足掻いたところで失った時間を取り戻すことは出来ない。

 

一夏がいくら騒いだところで何かが変わるわけでもない、もうそろそろ始まるだろうし準備を始めても良いかもしれない。

 

軽く身体を動かそうと思った瞬間、壁にモニターが表示されて外の様子が映し出された。

 

広がる大空に一機のIS、セシリア・オルコットの乗った機体が浮いている。俺達のどちらかが出てくるかと思えば、まだこちら側のピットからは誰も出てきていない。その光景に苛立ちを感じているのか、厳しい目つきでピットを見つめていた。

 

正直、どっちが先に出るのかを決めて無かったせいもあり、俺が使うはずの打鉄もまだピットに来ていない状況。今職員が運んで来ているらしいが、果たして打鉄と専用機のどちらが先にくることやら。先に来た方から試合開始となるわけだが、まだそのどちらも来ていない。

 

俺としてはそんなに問題には思わないが、勝負する相手が全く出てないオルコットからしてみれば、相当な苛立ちを覚えるだろう。

 

 

「まあ一夏もそれくらいにしとけ。もうそろそろ始まるだろうし、ワタワタしても仕方ないだろ?」

 

「確かにそうだけど……あ、あれがアイツの専用機か」

 

「ああ。どんなISかは分からないけど、手ごわい相手に変わらないさ」

 

 

相手は代表候補生。代表候補生であっても全員が専用機を持っているわけじゃない、持っているのは代表候補生の中でも実力が高い人間たちだけだ。オルコットが間違いなく強いっていうのは当たり前、だからこそ絶対負けるわけにはいかない。

 

ここで負けたら啖呵を切った意味がなくなる。何がなんでも絶対に勝つ、そう意気込みながらモニターを眺める。

 

もうすでにISに乗る準備は出来ている。ISスーツに着替えたから、後は機体に乗るだけ。ISは女性にしか動かせないものだったため、俺達のISスーツはわざわざ作ってくれた特注品になっている。

 

女性のISスーツのカタログを見たけど、もはやスーツっていうより水着だ。もしかして男のレオタードみたいな感じになることも想定していたが、最悪の事態は回避できた。もし女性用のスーツをそのまま着ろって言われたら、学園をやめていたかもしれない。いや、冗談抜きで。

 

一夏もすでにISスーツに着替え終わっている。上は半袖のピッチリしたインナーに、下はスパッツを少し長くしたようなズボン。何故かはわからないが、俺も一夏も同じようにへその辺りはさらけ出すはめに。中途半端に素肌を晒しているせいで、恥ずかしいったりゃありゃしない。

 

しかしISスーツは体の線がはっきり出るってのが怖いな、もし太ってたりしたら公開処刑にもほどがある。

 

太っているって言えば、その反対で一夏はかなり細身だ。ただ細身ながら、体つきはちゃんとしていて一般世間では細マッチョと呼ばれる部類。部活には入って無いのにこの体つきはずるいな。顔も整っているし、女性が寄ってくるわけだ。

 

 

「そういえば、初めて見るけど……」

 

「ん?」

 

「大和ってすげぇ体つき良いよな。剣術以外にも何かやっているのか?」

 

 

モニターを見ながら考え事をしている俺に、一夏の視線が釘付けになっていた。

 

俺の体つき? あぁ、仕事が仕事だし身体は鍛えているさ、常人の何倍も。骨格的の違いもあってマッチョな体つきにはならないけど、筋肉質な体つきにはなっているはず。でも着痩せするから薄着の服一枚にならない限りは、そうそう目立つことはない。

 

ただISスーツはまさに薄着の服なため、身体の線がはっきりと浮き出てしまう。

 

 

「そこそこ鍛えているし、骨格的にもつきやすい体質なんじゃないかな。一夏も毎日トレーニングしていれば、いずれはなるんじゃないか?」

 

「なるほど、道理で強いわけだ」

 

「強いって何がだ?」

 

「剣術だよ剣術、お前箒を圧倒しただろ?」

 

「あー……」

 

 

 そういえばと思い出す。一週間前に剣道場で篠ノ之と手合わせした時に、一回も掠らせずに完勝したことを一夏は言っているみたいだ。

 

剣類は振り回す力も必要だけど、体つきで強い弱いが変わるわけじゃないと思うな。篠ノ之の剣道なんかは相手の太刀筋を見切るための動体視力ってのも必要になるわけだし、機敏さなんかも重要。

 

 

「力があるからって強い訳じゃないと思うぞ、使いこなせなきゃ、宝の持ち腐れだしな」

 

「でもどちらにせよ、お前に追い付くのもまだまだ遠いな……」

 

 

先の見えない道のりに、一夏はげんなりとした表情を浮かべた。

 

一夏は篠ノ之に完敗した。その完敗した篠ノ之を俺が圧倒した。もしかして俺に勝つことを目標にしてくれているのか……だとしたらこれからの特訓メニューを増やさないとな。俺もそう易々と一夏に負けるつもりはない。

 

少なくとも霧夜家の当主であるうちは負けるわけにはいかない。霧夜家の当主も実力至上主義、弱ければ退く。俺もウカウカしている場合じゃないな。

 

 

「お、織斑くん。織斑くん! 織斑くん!!」

 

 

 一夏と話していると突如、ピットのスピーカーから山田先生の張り上げた声が響き渡った。大事すぎることなので二回じゃなくて三回言ったのか、この状況だったら一回でも十分に伝わると思うけど、しっかりと伝わるようにと三回言ったんだろう。

 

今伝えなければならない重要なこと、その重要なことが何なのかすぐに推測することが出来た。

 

 

「来ました! 織斑くんの専用IS!」

 

 

放送の内容は一夏の専用機が到着した主旨を伝えるものだった。山田先生の声に続いて千冬さんの声がスピーカーから聞こえてくる。

 

 

「織斑、すぐに準備をしろ。アリーナを使用出来る時間は限られているからな。ぶっつけ本番でものにしろ」

 

 

放送が終わると同時に、俺達の隣にあった搬入口がガシャンと音を立てて上下に開き始める。ピットの地鳴りと共に現れたのは、白を基調にしたISだった。その白はかつてISを世界に知らしめた時の白騎士を表すのように。

 

 

「……」

 

「これが、織斑くんの専用IS……白式です!」

 

 

 一夏は自分の専用機を目の当たりにし、圧倒されてただ呆然と立ち尽くす。無理もない、自分に専用機が与えられるということは、つまりそれだけの期待があるということ。この世界のパワーバランスを均等に戻す期待を一身に背負っている。

 

 

「時間がないからフォーマットとフィッティングは実戦でやれ」

 

 

続いて流れてくる千冬さんの放送に耳を傾けながら、一夏は白式に手を触れた。

 

 

「あれ?」

 

「どうした?」

 

「初めてISに触った時と、感じが違う……」

 

 

 何がどう違うのか、見ているこっちからすれば全く分からないが、シンクロ的な意味合いで違うってことか? 確か以前の授業で、ISはパートナーみたいなもので操縦者に呼応するように動くと学んだ。俺も一夏も動かしたことがあるISは量産機のものだけ、もしかしたら専用機とでは明確な違いがあるのかもしれない。

 

一夏の表情が不安そうだった先ほどまでの表情と違って、自信に満ちた表情へと変わる。

 

 

「大丈夫ですか? 織斑くん」

 

「ええ、何とか」

 

「背中を預けるように。後はシステムが最適化する」

 

 

一夏は白式の座席部分に座り、機体に身をゆだねる。すると操縦者である一夏に呼応するように、装備を整えていく。

 

数秒後、システムの最適化が無事に終了し、白式から音声が流れ始めた。

 

 

『アクセス……』

 

 

 音声が流れたかと思うと、今度は一夏の目の前に小型のモニターが現れ、そこに白式の機体情報が表示された。白式のデータが表示されてから数秒後、入れ替わるように対戦相手……セシリア・オルコットの専用機、ブルー・ティアーズの情報が映し出された。

 

ブルー・ティアーズ……蒼い雫か、中々お洒落な名前しているんだなISって。一夏は表示されたオルコットの機体情報を興味深そうに眺める。その視線は真剣そのもの、もう戦闘モードに入ってるみたいだ。

 

 

「セシリアさんの機体は、ブルー・ティアーズ。遠距離射撃型のISです」

 

「ブルー・ティアーズ……」

 

「ISには絶対防御という機能があって、どんな攻撃を受けても最低限、操縦者の命は守られるようになっています」

 

 

 遠距離射撃型か、一夏の白式の性能は分からないが、場合によってはかなり苦労することになるかもしれない。遠距離対遠距離の勝負になったら、間違いなくオルコットの方に軍配が上がる。

 

回避に関しては何とも言えないけど、射撃戦になったら圧倒的に稼働時間が長いオルコットが優位に立つのは当たり前のこと。その反面、遠距離射撃型のブルー・ティアーズに対して、近接戦に持ち込めば勝機はある。

 

当然、オルコットもそう簡単に接近を許さないだろうけど、接近できれば一夏にもチャンスがあるはず。

 

後は一夏の健闘を祈るだけ、一夏が終わった後は俺だ。今はもう他の人間にかまけている時間は少ない。

 

 

再び気合いを入れ直す俺の後ろで、山田先生の放送は続く。

 

 

 

「ただその場合、シールドエネルギーを極端に消費します。分かってますよね」

 

「はい!」

 

 

 山田先生のアドバイスに気合いを込めた表情で一夏は答える。決心がついたのか、吹っ切れたのか。どうとも捉えられる表情を浮かべ、ピットから見えるアリーナをジッと見つめる。

 

 

「……織斑、気分は悪くないか?」

 

「おう、いけるさ」

 

 

 千冬さんの言葉にも自信満々に答えた。一夏の口調が教師としての千冬さんではなく、一人の姉としての千冬さんに向けた言葉だとすぐに感じ取ることが出来た。

 

普段だったら「ここでは敬語を使え」なんて返事がきそうだけど、今回は叱責の言葉がくることはなかった。

 

 

「そうか……」

 

 

返ってきたのは満足そうな返事。ピットの俺の居る位置からではその顔を確認することは出来ないが、監視室にいる千冬さんの顔はどこか笑っているのかもしれない。

 

 

 

「いよいよだな、一夏」

 

 

これから飛び立つであろう親友に後押しするつもりで、俺は声をかける。

 

 

「ああ、ぜってぇ勝つ! だから大和も勝てよ!!」

 

「そういう台詞は勝ってから言うんだな。まぁ、行ってこいよ」

 

「任せろ!」

 

 

どうやら皮肉を込めた俺なりのエールが通じたらしい。、白式を纏った一夏の拳と、俺が差し出した拳がコツンと音を立ててぶつかり合う。健闘を祈る、そんな意味合いを込めてニヤリと笑いながら、一夏を送り出す。

 

 

「な、何だ?」

 

「行ってくる」

 

「あ、ああ。勝ってこい!」

 

 

 それだけ言い残すと、一夏はこくりと首だけ動かして頷いた。再びピットの外を向きながら、一歩二歩と前進していく。身体を屈めて前傾姿勢を取ると、一気に加速してレールの上を滑走していく。そしてピットから外に出た瞬間に、勢いよく大空へと羽ばたいていった。

 

一夏のISデビュー戦か。その戦いざま、きっちり見せてもらうとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく来ましたのね」

 

「あぁ、待たせたな」

 

 

 快晴の空から降り注ぐ光が照らすアリーナには、二体のISが相見えていた。セシリア・オルコット、織斑一夏、そして霧夜大和の三人によるクラス代表決定戦が開幕しようとしていた。初めの組み合わせは一夏対セシリア、ともに専用機を持つ者同士の戦いだ。

 

セシリアの専用機、その名をブルー・ティアーズ。イギリスが開発した第三世代型の遠距離射撃型IS。セシリアの右手には巨大な特殊レーザーライフル、スターライトmkⅢが握られている。

 

セシリアに遅れること数分、ようやくピットから出てきた一夏に対するセシリアの口調は、明らかに見下すかのような口調だった。セシリアは一夏になお、言葉を続ける。

 

 

「……最後のチャンスをあげますわ」

 

「チャンスって?」

 

「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。今ここで謝るというのなら、許してあげないこともなくってよ?」

 

 

その言葉に再びイラッときたのか、一夏は目の前に電子モニターを展開しながらセシリアに反論する。

 

 

「そういうのはチャンスとは言わないな!」

 

 

 つまり一夏にはセシリアに降参する意志など微塵も無いということ。強く訴えた一夏に、セシリアは再び怪しげな笑みを浮かべる。

 

 

「そう? 残念ですわ。それなら……」

 

 

セシリアが喋り出した途端に、一夏のモニターには警告と書かれた二文字が現れる。警告の内容は、セシリアのISが射撃体勢に移行したというもの。

 

 

「お別れですわね!!」

 

 

 セシリアは手に持つスターライトmkⅢを構え、一夏に向けてレーザーを発射した。空気を切り裂きながら一直線に飛んでくるレーザーに対し、モニターの警告表示に夢中になっていた一夏は反応が遅れる。反応が遅れたことで、攻撃を回避することが出来ずに正面から攻撃が当たってしまった。

 

 

「うわぁ!?」

 

 

 手をクロスさせたものの、衝撃を緩和しきれずにそのまま一夏は真っ逆さまに地面に墜落して行く。ジリジリと迫りくる地表ぶつかるまでに、何とか体勢を立て直そうと身体を捻って上下を入れ替えると、足から地面に降り立つ。

 

 

「だぁ!!」

 

 

 足から着地したは良いものの、地面に落ちた衝撃を緩和することが出来ずにバランスを崩し、後ろに二度三度バウンドしながらようやく元の体勢に持ち直した。シールドエネルギーが削られ、左肩付近にダメージを受けたことがモニターに表示される。

 

開始早々手痛い一撃を食らってしまった。とにかく、一回気持ちを落ち着かせたいというのが一夏の本音だが、そんなに悠長な時間をセシリアが与えるはずがない。再び発射されたレーザーが一夏を襲う。

 

 

「くそ! 俺が白式の反応に追い付けていない!!」

 

 

 フォーマットとフィッティングが終わったわけではなく、白式自体が一夏の反応とは違うために思うような行動が出来ず、忌々しげに吐き捨てる。襲い来るレーザーをかわすために、再び空中へと飛び立ち、右往左往にレーザーをかわしながらセシリアのところへ近づいていこうとする。

 

 

「さあ、踊りなさい! わたくし、セシリア・オルコットとブルーティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

 

「何か使える装備は……!」

 

 

 スコープを覗きながら、レーザーライフルを何度も連射する。発射されるレーザーを腕をクロスさせながらガードし、セシリアへ向かっていく。ただレーザーを避けているうちにも、シールドエネルギーの残量は刻々と減らされていく。このままでは打開策も見当たらないままに、圧倒されてしまうだけだ。何とか現状を打開しようと、白式に常備されている展開可能な装備を探す。

 

展開されているモニターの一つに展開可能装備一覧が表示された。しかしそこに表示された装備はたった一つ、日本の量産機にも常備されているような、近接用のブレードだけだった。

 

 

「げっ、これだけか!? ……まぁ、素手でやるよりはいいか!」

 

 

近接用ブレードを展開して右手に持つと、再びセシリアの間合いに近づいていく。 

 

 

「遠距離射撃型のわたくしに、近距離格闘装備で挑もうだなんて、笑止ですわ!」

 

 

一夏に向けて何発ものレーザーを打ち込むセシリアと、それをかわす一夏。攻防は単純で長く、時間だけが刻々と過ぎ去っていった。

 

 

 

 

 

 

「近接ブレードだけだと!? あれではただの生殺しではないか!!」

 

「落ちつけ篠ノ之、お前が慌てたところで戦況が変わるわけじゃない」

 

「だが!」

 

 

―――ところ変わってピット内。そこにはモニターにかじりつく箒と大和の姿があった。

 

 意気揚々と出撃していく幼馴染の後ろ姿を見守ったはいいが、いざ始まれば一夏は防戦一方。何とか攻撃手段を見つけようと一夏が展開した武器は、何の変哲もない近接ブレードだけだった。

初めのうちはブレード以外の装備も積まれているだろうと信じていた箒だったが、一夏がブレード以外の装備に変えない状態が続き、装備がそれしかないことを理解した。

 

その状態に声を荒らげ、ひたすらにかわすことしかできないでいる一夏に不安が募っていた。今は自分達では何も出来ないことを大和に認識させられると、握り拳を作り、恨めしそうにモニターを睨みつけた。

 

 

「しかしきついな。何とか打開策見つけないと、このまま終わるぞ……」

 

 

 大和は腕を組みながらじっとモニターを見つめる。箒に対しては平静を装っているものの、一夏の勝負の行方には不安を募らせていた。防戦一方な上に、これといったダメージもセシリアに負わせていない状況だ。

ISの試合のルールはシールドエネルギーが尽きるまで、尽きた時点でいかなる場合においても試合終了となる。

 

防戦一方の一夏はシールドエネルギーをみるみる減らしていく。かたやセシリアはほとんど消耗していない。どちらが試合を有利に進めているのか一目瞭然だった。

 

二人がこぞってピットに表示される眺めている中、ピットの入り口が開く。

 

 

「……この程度の状況が打破できないようでは、あいつは一生経っても強くならん」

 

「あ、織斑先生に山田先生……」

 

 

ピットに入ってきたのは、千冬と真耶の二人だった。モニターを見ている二人は一旦モニターから視線を外し、千冬の方へと振り返る。

 

 

「そうかもしれないですね。……でもこのまま一夏が終わるとは思わないですよ」

 

「な、何を言っている!? このままでは!」

 

 

 冷静な口調で話す大和に対して、まるで自分のことのように慌てる箒。現在一夏が置かれている状況を危惧して慌てているのだろうが、大和は一夏に期待めいた視線を送りながらモニターを眺める。

 

 

「霧夜、なぜそう思う?」

 

 

一夏はこのままでは終わらないと断言した理由、その理由が何なのか千冬は大和に尋ねる。経験やISに関する技量は間違いなくセシリアの方が上で、戦況もセシリアの方が押している。

 

 

「何となくですかね? 知り合って間もないですけど、ただでは転ばないって感じがします。何より……」

 

 

大和は一夏があくまでこのままでは終わらないと言っているだけで、必ず勝つとは言っていない。つまり勝ち負けについては分からないと遠まわしに言っている。

 

三人は言いかけた後に続く言葉を待つ。

 

 

「……絶対に諦めないって目をしてるんで。このまま終わらないって期待できるんですかね?」

 

「ふっ、そうか」

 

 

 千冬にとって大和から返ってきた答えが納得するものだったのか、満足そうな表情を浮かべる。満足な顔もほんの一瞬、すぐにいつもの教師としての顔に変わると、箒と大和の隣に並んで同じようにモニターを眺める。

 

状況は先ほどとあまり変わらず、セシリアが打つレーザーを大きく左右に移動し、様々な方向に体を反転させながら避け続けている。

 

 

 

「……二十七分。持った方ですわね」

 

「そりゃどうも」

 

 

 ひたすら回避を続けてすでに三十分近い時間が過ぎていた。イギリスの代表候補生相手に稼働した時間がごく僅かながら、ここまで耐え続けてきた一夏はブレードを横に振り、褒めてくれたことに対し感謝で返す。

 

残っているシールドエネルギーも、もうそんなに多い訳ではない。何回も攻撃を食らい続けていたら、それこそ何も出来ずに終わってしまう。

 

一言、一夏に伝えるとセシリアは再びライフルを構える。

 

 

 

しかしライフルを構える様子が、その場で戦っている一夏はもちろんのこと、ピットのモニターで状況を観戦している大和も、先ほどまでと違うことに気がついた。

 

セシリアがライフルを構える時、今まではスコープをしっかりと覗き込むように構えていた。だが今のセシリアの構えは、スコープを覗く行為どころか、ライフルを脇の方に避けて全くライフルを撃つ様子を見せない。

 

構えていてもそれが撃つ気がある構え方なのか、撃つ気がない構え方なのかでこちら側の認識は変わってくる。今のセシリアの行為は明らかに後者の構えだった。

 

 

戦いを放棄したのか。いや、ここまで展開を有利に進めておいて今更降参なんてのはあり得ない話だ。つまりまだ彼女が見せていない手の内が存在するということが容易に想像出来る。

 

……別の何かがくる。不意に感じたその違和感に、一夏は攻撃中でないにもかかわらず臨戦体勢を取り直した。

 

 

「でも、そろそろフィナーレとまいりましょう!」

 

 

セシリアの機体の非固定ユニットから、四つの部品が外れてレーザーを放ちながら攻撃を加えてくる。

ブルー・ティアーズの奏でるワルツとはよく言ったもの。彼女にとって主力武装のレーザーライフルはおまけで、本来のブルー・ティアーズのあるべき姿はこのビット型の武器のことを指している。

 

ライフルと違って発射点が一か所ではなく四か所に変わり、四方八方からの攻撃が一夏目掛けて飛んでくる。当然四か所から飛んでくるということは、一夏の資格からの攻撃も容易になったということで、回避することが非常に困難な状況になっていた。

 

 

「ちっ、面倒だ。なら一か八か!!」

 

 

ライフルに加えてビットまで攻撃に参加するとなると、一夏のシールドエネルギーが無くなるのも時間の問題。セシリアが放ったレーザーをブレードで薙ぎ払うと、一夏はそのまま大きく右に旋回した。

 

地面に着地し、そのまま左右に移動しながらビットの攻撃をかわす。地面についたことで、すべての攻撃は上からに限定した。地面にレーザーが突き刺さり、地面が掘れて多くの砂埃が上がる。

その砂埃に自分の機体をうまく隠しながら、セシリアの下方に接近していく。そしてある程度にまで接近するとそのまま飛来し、空中でセシリアとの距離を詰めていった。

 

 

「なっ!?」

 

 

ただ自分の攻撃を避けるばかりだった一夏が、初めて攻めに転じた。その光景に驚いていたのは対戦者のセシリアだけではなく、ビットで見ている大和達、アリーナの観客席で見ているクラスメイトも同じだった。

 

 

「織斑くん!」

 

「一夏!」

 

「……」

 

「うおおおおおぉぉ!!」

 

 

 数々の攻撃をかわし、自分の届く間合いにまで近づくと一気に加速して、唯一の手持ち武器であるブレードを振りかぶり、セシリアに向かって振り下ろす。

 

セシリアが寸でのところで一夏の攻撃を感知し、その場を離れたために攻撃は当たることなく、無情にも空を切ってしまった。しかし一夏の一撃を避けたセシリアの顔には、明らかな動揺を見ることが出来る。

 

 

「むちゃくちゃしますわね! けれど、無駄な足掻きですわ! ティアーズ!!」

 

 

避けたセシリアはすぐさまビットを一夏のもとへと解き放つ。いくつものレーザーが再び一夏のことを襲うが、先ほどまでと明らかに状況は違っていた。相変わらず一直線にセシリアに向かっていくものの、回避に関しては今までのような大きく旋回するといった無駄がなくなっている。

 

最低限の動作で効率よく攻撃をかわし、一夏の目の前に現れたビットの一つをブレードで叩き切った。

 

 

「はぁぁああ!!!」

 

 

ガシャンという金属と金属のぶつかり合う音が鳴り響き、一夏は力任せにビットを両断した。真っ二つになったビットは制御を失い、ふらふらと落下し始め、一夏の後方で大きな爆発を起こす。

 

まぎれもなく、一夏は完全にビットの動きを見切っていた。展開したビットの一つを破壊され、想定外な出来事にセシリアは大きく驚く。

 

 

「分かったぜ! この兵器は毎回お前が命令を送らないと動かない!!」

 

 

再びセシリアに接近し、ブレードを振り下ろた。しかしこの攻撃もセシリアに届くことはなかった。攻撃をかわしたセシリアは、ビットに命令を送り、一夏に攻撃を仕掛ける。

 

距離があまりにも短すぎたため、ビットの行動範囲は限定され、ビットの一つがレーザーをかわした一夏の前に現れた。その機会を逃さずブレードを振り下ろし、また一つビットを破壊する。

 

破壊した際の爆発に巻き込まれないように、爆心地から遠ざかり、セシリアに対する言及を続ける。

 

 

「しかもその時、お前はそれ以外の攻撃が出来ない! 制御に意識を集中させているからだ。そうだろ!!」

 

 

一夏にとってブルー・ティアーズの特性を完全に理解したこと、それは自分が勝てる見込みが立ったことと同じだった。左手を閉じたり開いたりしながら、セシリアのことを勝ち気がこもった眼差しで見つめる。

 

 

 

同じくその様子と会話は大和達のいるピット内でも映し出されていた。

 

 

「はぁー……凄いですね、織斑くん。ISの起動が二回目とは思えません」

 

 

 一夏が初めの劣勢状況を跳ね返したことに、素直に真耶は感心する。ISを起動して二回目の人間がどうなるかは、自分が元国家代表候補だったこともあり、よく知っていた。自分の考えをひっくり返した一夏がどれだけ凄いか、ただただ感心するばかり。

 

一方、箒も最悪の状況を脱したことに安心したのか、ホッと胸をなでおろした。しかし大和と千冬、特に千冬は厳しい表情を崩さないままでいる。大和は厳しい表情というより、どちらかといえば苦笑いに近い何とも言えない複雑な表情を浮かべていた。

 

 

「あの馬鹿者、浮かれているな……」

 

「え?」

 

「……やっぱり織斑先生もそう思いますか」

 

「ほう? お前も気付いていたのか?」

 

「機体の特性が分かって、活路が見出せると思えば、誰でも浮かれるとは思いますよ。もちろん自分もです」

 

「あ、あの。どうして分かるんですか?」

 

 

 一夏が浮かれていることに気がついた二人とは逆に、取り残される箒と真耶。何となくの予想だった大和はまだしも、なぜ千冬は一夏が浮かれていると分かったのか、疑問に思った真耶が先に口を開く。

 

 

 

「さっきから、左手を閉じたり開いたりしているだろう? あの癖が出る時は大抵簡単なミスをする」

 

 

つまりは慢心。この場合、一夏がセシリアの専用機の特性を見抜いたことによる油断、そして自分にも勝機が出てきたという安心感を指す。

 

人間は一番安心しきっている時が最も無防備な状態になる時であり、不意に起きた些細な出来事にも対処が出来なくなるもの。このまま何事もなく終わればいいものの、何も起こらないという確信はない。

 

 

「さすがはご姉弟ですね……」

 

 

一夏と千冬は姉弟ということもあり、互いのことをよく知っている。だからこそ些細なことを見逃さないし、仕草も理解していた。千冬の姉としての眼力に、真耶は思わず感心する。

 

真耶が感心している間にも、一夏は攻撃を恐れずにセシリアとの間合いを詰めていく。セシリアが稼働させていたビットは四機。そのうち二機は一夏に破壊されたため、残されたビットは二機。これを破壊してしまえば、セシリアの攻撃は再びレーザーライフルによるものになる。

 

ビットに四方から攻撃されるより、ライフルによる一直線上の攻撃の方がかわしやすいのは明らかだ。その状態に持ち込めれば、自分にも勝機はある。

 

自信を持ってセシリアに突進していった。

 

 

「残り二機!」

 

 

セシリアから展開されたビットが一夏の周りを囲い込む。しかし一夏はこれを待っていましたとばかりに、笑みを浮かべた。

 

 

(必ず俺の反応が一番遠い角度を狙ってくる! なら……)

 

 

自分から展開されたビットに寄って行き、一つを叩き落とす。そしてもう一つのビットにも素早く接近して、これも落とす。もうセシリアにビットによる攻撃をする手段は残されていない。残っているのはレーザーライフルによる攻撃だけ、しかし構えている間にも、一夏はセシリアとの一足一刀の間合いに入り込める。

 

よって今からライフルを構えていては間に合わず、一夏の斬撃をモロに受けることは必至。一気に形勢が逆転してしまう。かといってスコープを覗かないノンスコで、一夏を狙うにはリスクがあまりにも大きすぎた。外れてしまえばそれでおしまい。一夏に向かっていったとしてもビットの動きに慣れた一夏は、かわすことにそう難しさを感じない。

 

自分の一撃が当たることを確信した一夏は、何の迷いもなく一気にセシリアとの距離を詰めていった。

 

 

「距離を詰めれば、こっちが優位だ!!」

 

 

ブレード大きく振りかぶる一夏、その時にセシリアの顔が目に入る。一夏の瞳に映ったのはビットを全て破壊されて焦る表情ではなく、してやったりの表情を浮かべ、勝ちを確信した表情だった。

 

 

「……かかりましたわね?」

 

「え!?」

 

「あいにくブルー・ティアーズは、六機ありましてよ!!」

 

 

ビットを動かしている間、セシリアは他の攻撃をすることが出来ず、無防備になる。ブルー・ティアーズにとって一番の弱点だった。しかし白式でも無防備になる瞬間は存在する。

 

攻撃の瞬間……特に成す術の無い相手に決めようとする瞬間は完全な無防備状態に陥る。まさに今は完全な無防備な状態であり、攻撃が飛んできたらかわせない状態にあった。セシリアは一夏がビットは四機しかないと思い込んでいることを知り、わざと全てを落とさせた。

 

ビットを全て落とせば、近接武器しかない一夏なら近寄ってくることが分かったからだ。そこがセシリアの狙いだった。確実に当てるのなら相手を油断させ、回避出来ない位置まで接近させ、確実に当てればいいと。

 

セシリアの腰の左右に取り付けられた筒状のものが、一夏の姿に照準を合わせる。それが何なのか、一夏はすぐに理解することが出来た。

 

 

「しまった……!?」

 

 

一夏が声を上げた瞬間、発射口から二つのミサイルが発射された。寸前で攻撃を中止し、身を翻してミサイルの追撃を振り切ろうと大空高く旋回する。しかしその努力空しく、二つのミサイルは一夏の機体を捉え、大爆発を起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏ッ!!」

 

「っ!?」

 

 

セシリアの発射したミサイルが一夏に着弾したのは、アリーナにいる人間、そしてビットでモニターを眺めている人間にもはっきりと映し出されていた。シールドエネルギーが少ない状態で、二発のミサイルが直撃したらどうなるか。

今の一撃で、誰もが一夏の敗北を疑わなかった。クラスメイトだけではなく箒、真耶、そして大和も。

 

箒は爆煙に包まれる一夏に悲痛な表情を浮かべ、真耶もミサイルが当たってしまったことにハッとした表情を浮かべる。大和は表情こそ大きく崩さなかったものの、目を閉じてここまでかという仕草を見せる。

 

数多くの人間の中で、千冬だけはニヤリと笑いながら、その様子を眺めていた。まるでまだ戦いは終わっていないかのように。

 

 

 

 

 

「ふん、機体に救われたな馬鹿者めが」

 

「え?」

 

「まさか……!!」

 

「……!」

 

 

千冬の言葉に釣られて、三人ともモニターを見直す。相変わらず煙が辺りには立ち込めていて、姿一つ確認することが出来なかった。

 

見えないのも一瞬、徐々に一夏の周りから煙が晴れて少しずつ、その姿が明らかになっていく。

 

 

「……一夏!」

 

「これは……一次移行(ファースト・シフト)?」

 

 

煙が完全に消え去った後に残ったのは、閉じていた白銀の翼を左右に大きく広げ、無傷な状態で立つ一夏の姿だった。大きく翼を広げるその姿はまるで天使にも見える。

フォーマットとフィッティングが完全に終わり、初期状態から一次移行(ファースト・シフト)した白式本来の姿がそこにはあった。

 

完全に勝負はついたと思っていたセシリアは、口を大きく開きながら信じられないといった表情で、その姿を見つめる。

 

一夏の画面にも、フォーマットとフィッティングが終了したことを知らせる画面が映し出される。一夏本人はどうして自分が無事だったのか、何が起こっているのか全く分かっていなかった。

当然と言えば当然。ミサイルが当たる瞬間に思わず目を閉じ、再び目を見開けば変化を遂げた白式の姿がそこにはあったのだから。呆気にとられている一夏よりも早く、白式に何があったのか理解したのはセシリアだった。

 

 

「まさか……ファースト・シフト!? あ、あなた! 今まで初期設定だけの機体で戦っていたというの!?」

 

「よく分からないが、これでやっとこの機体は俺専用になったらしいな」

 

 

近接ブレードに目を見やると同時に、一夏の目の前に新しいモニターが展開され、近接特化ブレード『雪片弐型』の使用が可能となることが知らされた。

 

 

「雪片弐型? ……雪片って、確か千冬姉が使っていた武器だよな?」

 

 

使用可能になった武器が、現役時代に千冬が使っていた雪片と同じものだと気がつく。気がついた一夏はどこか嬉しそうに微笑み。

 

 

「俺は世界で、最高の姉さんを持ったよ」

 

 

そう呟いた。雪片弐型の刀身が二つに割れ、中からビームサーベルのようなものが出てくる。

 

 

「でもそろそろ、守られるだけの関係は終わりにしなくちゃな。これからは俺も、俺の家族を守る!!」

 

 

決意を新たにし、セシリアを見つめ返す。一方セシリアは先ほどから何かを呟いている一夏に、何を言っているのかと言い返す。

 

 

「はぁ? あなた、さっきから何を言って……」

 

「とりあえず千冬姉の名前は守るさ。弟が不出来じゃ、恰好がつかないからな!」

 

「あぁ、もう! 面倒ですわ!!」

 

 

 

 

一夏の様子に痺れを切らしたセシリアが、四発のミサイルを一斉に打ち出してくる。

 

 

「……見える!!」

 

 

襲い来るミサイルを飛翔しながらかわし、一つ一つ的確に撃ち落としていく。その姿は数分前の一夏とは比べ物にならないほど。スピードも初期設定の時とは圧倒的に違い、四発のミサイルをもってしても、一夏を捉える事が出来なかった。

 

一発も機体に掠ることなく真っ二つに切り裂かれたミサイルは、後方で爆発。

 

 

「行ける!」

 

「ああ!?」

 

 

ビット制御に集中していたセシリアは行動が出来ない。完全な立ち往生の状態になってしまった。立ち尽くすセシリアに向かって、勢いそのままに接近して、雪片弐型を振り下ろした。

 

 

(勝った!!)

 

 

今回こそ完全に仕留めたと、一夏は思っていた。

 

しかしその瞬間。

 

 

「試合終了。勝者セシリア・オルコット―」

 

「えぇ!?」

 

「はっ……?」

 

 

 

 

 

 

大きなアラーム音と共に、試合終了を告げる放送が流れた。

 


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