IS‐護るべきモノ-   作:たつな

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二人の転校生

「じゃあ大和は休みの間ずっと実家に戻ってたのか」

 

「あぁ。久しぶりに家族と会いたくなってな。でも一ヶ月家を空けるだけで、全然違うのな。実家に戻ってきたって実感が無かったよ」

 

「それは確かに分かる。実家でも長い間留守にしてると落ち着かないよな」

 

 

食堂から戻った後、そのまま部屋に鞄を取りに戻って一夏と教室へと向かう。途中までは鈴と一緒だったが、クラスが違うため、昇降口のところで別れて今は一夏と二人きりだ。

 

互いにゴールデンウィークをどんな感じで過ごしていたのかなどと、下らない会話を交わしているといつの間にか教室前の廊下に辿り着く。

 

そわそわと落ち着かなかったのは食堂内だけで、登校中に関しては特に何事もなかった。むしろ何もなかったのはそれはそれで怖いところはあるものの、悪いことが起きなかったと前向きに捉えたい。

 

 

一週間ぶりにくる教室も入学した時ほどではないが、どこか新鮮な気がする。扉に手を掛けて教室に足を踏み入れる。

 

 

「おはよーっす」

 

 

いつも通り挨拶をしながら、ガラガラと引き戸を開いて教室に入る。相変わらずの喧騒に満ちた教室で、中はクラスメートたちの談笑する姿が窺えた。

 

ゴールデンウィーク明けで、親友たちに久しぶりに会えたのもあるんだろう。多くの生徒の頬は綻んで、心の底から楽しんで見えた。

 

 

「あ、おはよー!」

 

「織斑くん、霧夜くんおはよう!」

 

「おっはよー♪」

 

 

 入り口付近で談笑していたクラスメートが数名、俺の声に気付いて挨拶を返してくる。中には手を振ってくれる子までいる。女の子が笑顔で挨拶を返してくれるって素敵だよな。その笑顔を見るだけで、一日頑張ろうと思える。不思議な効力だ。

 

ざらっとクラスを見回してみても、俺が登校したことに気付いた数人が、こちらに向かって控え目に手を振るくらいで、今朝のような雰囲気は感じられなかった。

 

本当に朝のあれは何だったのかと思う反面、もしかして嵐の前の静けさではないかと思う部分もある。

 

 

「何か……話が変にこじれて広まってる……」

 

「ん?」

 

 

俺の心配は杞憂だった思おうとした時のことだった。

 

ふと俺の左手側から声が聞こえる。視線を向けると、教室の廊下側に設置されているガラス窓の前でどこか気難しい表情を浮かべた布仏、谷本、相川の三人組が腕を組んで並んでいた。かすかに聞こえたこじれて広まった話という単語に思わず反応する。

 

 

「あんた、また適当なこと言ったんじゃないの?」

 

「ぅえ? そんなことないと思うけどな~」

 

 

右手を後頭部において苦笑いを浮かべながら弁明をする布仏。話の内容がさっぱり分からないので、こっちとしては何も言えないが、非常に興味をそそられる内容な気はする。というか、話している内容がすごく気になる。一体どの話がこじれて広まっているんだろうか。一歩踏み出して話の概要を聞こうと口を開こうとするが……。

 

 

「席に着け、ホームルームを始める」

 

 

後ろから聞こえてきた冷静である迫力声が行動を止めさせる。もしやるとしたらこの声の主に逆らうことになる。つまり世界最強の人間に喧嘩を売ることとイコールで、下手をすれば明日の朝日が見れるかどうか分からない。

 

振り返った先にはビジネススーツをビシッと着こなした千冬さんが仁王立ちで立っていた。

 

 

「霧夜、お前も早く席に着け」

 

「分かりました」

 

 

 さすがの俺も命は惜しい。三人にこれ以上深いことは聞こうとはせずに素早く自分の席へと着いた。前にはすでに俺の後ろにいたはずの一夏が座っており、最後に席に着いたのは俺。一言で周りをまとめられる千冬さんの統率力はもはやカリスマレベル。世界の頂点を取ったことを差し引いたとしても、発する言葉の一つ一つに何故か説得力がある。

 

席に着き、カバンを机の横のフックに引っ掛けて背もたれに全体重を預ける。それもほんのわずかで、すぐに背筋を伸ばして黒板の方にいる千冬さんへと視線を向けた。千冬さんが教卓に立つと同時に、入り口から山田先生も入ってくる。

 

普段話すことがあまりないせいか、山田先生に何年かぶりに会った感じがしないでもない。すると、教室内の雰囲気は一気に引き締まったものへと切り替わる。例えるなら軍隊統率みたいなものだろう。

 

すでにホームルームの始まる時間になっており、これ以上騒ぎ立てるようなら容赦なく千冬さんからの鉄拳制裁が飛んでいく。生徒に対する指導は厳しく、女性であろうが関係なく出席簿が振り下ろされる。普通の高校なら一発で大問題でも、IS学園では日常茶飯事らしい。現に一組以外に千冬さんが教えに行った時、だらけていた何人かが出席簿で頭に叩かれたと鈴から聞いた。

 

昭和的な指導方針は現代社会では受け付けにくいが、条約で決められたIS操縦者育成の国立校だし普通の高校と違ってもおかしくはない。

 

 

「今日からはより本格的な実戦訓練を行う。訓練機ではあるがISを使った授業になるので、気を引き締めて行うように」

 

 

 教壇に立った千冬さんが今日の伝達事項について話し始める。話している最中のため周囲を見渡すことは出来ないものの、背筋がピンと伸びた着席はさぞかし綺麗なはず。一度前に立って見てみたいものだ。セシリアとの一件で教壇に立って謝罪したことはあっても、あの時は絶対にきちっとした着席では無かったし、一々そんなことを気にする暇はなかったためノーカウント。

 

さらに千冬さんは続ける。

 

 

「其々のスーツが届くまでは学園指定のISスーツを使うので忘れないようにな。忘れたら……そうだな学校指定の水着を着用して受けてもらう。水着も忘れたら……まぁ、下着でも構わんだろう」

 

 

さらっととんでもない爆弾発言を残していく千冬さんに対して、思わず心の中で突っ込みそうになる。以前ならそれが許されても、男二人の前で一糸纏わぬ一歩手前の姿をさらけ出すのはまずい。下手をすれば警察にお縄にもなりかねない。

 

IS学園に入学した男子生徒が二人そろって退学なんて実に笑えない。冗談半分で言ったんだろうが、千冬さんが言うと冗談に聞こえない。

 

 

「以上だ。では山田先生、ホームルームの方を」

 

「は、はい!」

 

 

 話を終えた千冬さんが今度は山田先生へとバトンパスして、自身は教卓の右側へと下がる。今声が上ずったのは、眼鏡を外してレンズを拭いていたから。話を終えて一息つくづく千冬さんの姿を改めて見ると、いつもと雰囲気が違うような気がする。

 

長い黒髪を切ったわけでもなく、化粧が濃くなった訳でもない。そもそも千冬さんはほとんど化粧をしていない。

 

 

考えても分からず、再び山田先生へと視線を向ける。

 

 

眼鏡をかけ直して身なりを整え終わった山田先生が教壇に立ち、一つ小さく咳払いをするといつも通りの笑顔を浮かべながらホームルームを始めた。

 

 

「えーっとですね、今日は転校生を紹介します。しかも二名です!」

 

「おっ……」

 

山田先生の発言にクラス内がざわつき始める。想定内のことのようで、千冬さんはやっぱりかと目を瞑りながら頭を押さえる。無理に生徒たちを静める気は無いようだ。

 

一つ思うとすれば、二人揃ってうちのクラスに編入させた理由くらいだ。

 

悪い訳じゃないけど、普通なら分散させるはず。逆に二人とも……もしくは片方が千冬さんじゃないと手に負えない問題児なら話は別。いくつか想像はできるものの、学園側が決めたことだし俺たちが特に気にするようなこともない。

 

 

「では、入ってきてください!」

 

「はい、失礼します」

 

「……」

 

 

 扉が開いて転校生が入ってきたところで、ざわついていたクラスが水を打ったように静かになる。身なりがだらしないだとか、髪型が奇抜だとか外見的なせいではない。純粋に、本来なら絶対に有り得ないことがそこで起こっていたからだ。クラス中の視線のすべてが一点へと集まる。

 

二人いる転校生の内の一人。どこの国籍だろうか、伸ばせば腰くらいまではあるであろう黄金色の長髪を後ろで束ねている。

 

そして日本人離れした中性的で端正な顔立ちに、とても同じ性別だとは思えないほどの華奢な体つき。このクラスが一瞬にして静まり返った理由、それは……。

 

 

「シャルル・デュノアです、フランスから来ました。皆さん、よろしくお願いします」

 

 

入ってきた二人のうちの一人が男子だったからだ。

 

ニコリとほほ笑む姿は、女性を一目で落としてしまうほどの魅力があった。醸し出す雰囲気はフランス紳士そのもので、非常にまじめで礼儀正しい印象が伝わってくる。

 

制服はいつも見慣れたスカートではなく、俺や一夏が着ているような男性ものの制服。見た目があまりにも中性的で、服装が別のものなら性別を間違えていたかもしれない。しかし現実に着ている制服は男物の制服、そして彼の名前の『シャルル』はフランス語の男性名にあたる。

 

見た目で人を判断するななんて言われても、どうにもにわかには信じきれない部分があった。改めて見ても、男性というには体が華奢な気もするし、身長に関しても男性の平均身長に遠く及ばない。

 

俺が考えすぎなだけなんだろうか。ただ今は変に気にすることでもないし、くだらないことを考えていて出席簿の餌食になるのだけはごめんだ。一旦このことは忘れるとする。

 

 

「お、男?」

 

 

クラスメートの一人が控えめに質問する。目の前で起こっていることがにわかには信じられないのだろう。事実、男性のIS操縦者が発見されたなんてニュースはここ数日で、一度もなかったのだから。

 

一夏の時も俺の時も、少なからずメディアは色々な情報機関を使って大々的な宣伝を行った。が、今回に関しては一切音沙汰もなしに転校してきたわけだし、いささか裏があるんじゃないかと思ってしまう。もちろん事例としては三件目で、今までのように物珍しさは薄れていると言われればそれまで。結局のところ一つの想像にしか過ぎない。

 

質問をしたクラスメートに応えるべく、デュノアは再び口を開く。この先の展開が何となく読め、無意識に両手で耳を塞ぐ。あくまで勘のためで実際に起こるかどうかは分からないが、備えあれば憂いなしともいう。何事も準備していて損はないはずだ。

 

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方たちがいると聞いて、本国より転入を……」

 

 

「キャ――― っ!!!」

 

「はい?」

 

 

まるで教室全体が揺れたのではないかと思うほどの大音量の歓声が、両手で塞いだはずの耳奥まで突き抜けてくる。もし耳を寸前で塞いでいなかったらどうなっていたかと、想像するのも嫌になる。現に耳を塞ぎ損ねた一夏が、机に屈伏したまま耳を押さえていた。

 

そしてクラスメートたちの反応に、教壇に立っているデュノアはどうしたらいいか分からず、冷や汗をかきながら苦笑いを浮かべるしかない。

 

 

「男子! 三人目の男子!」

 

「またうちのクラス! そして美形!」

 

「それも守ってあげたくなる系の!」

 

「これはまたバリエーションが増えたわ……どのシチュエーションが良いかしら?」

 

 

 新たな男子の登場に騒ぎ立てるクラスメートたち。入ってきたのが男子で美形ともなれば多少ざわつくのは分かるが、この盛り上がり方は尋常ではない。唯一慣れたとすれば、夏に出る薄い本関係の話には反応しなくなったところくらいで、あまり嬉しいものではない。

 

更にヒートアップして騒がしくなるクラス。まるで合唱団でも来て、音量最大で楽器演奏をしているようだ。流石にこればかりは鬱陶しくなったようで、今まで腕を組ながら我関せず状態だった千冬さんが重たい腰を上げる。

 

 

「静かに! いつまでも騒ぐな。先に進まん」

 

「み、皆さんお静かに! まだ自己紹介は終わって居ないんですから!」

 

 

千冬さんに続くように山田先生もこの喧騒を静めにかかる。デュノアのインパクトが強すぎて、俺も完全に忘れかけていたが、転校生はもう一人いる。クラス中がこれだけ騒がしかった中で、何一つ反応を示さずに黙りを決め込んでいた生徒が一人。

 

デュノアよりも更に小柄な体格で、長く伸びた白にも近い銀髪が特徴的だ。年頃だというのに、あまりファッションにはこだわらないらしく、髪の毛を手入れした様子は見受けられず、無造作に下ろしているだけのようにも見えた。

 

そして彼女を際立たせるのは、左目を覆う真っ黒な眼帯。それだけでも異様な雰囲気だというのに、こちらを見つめる瞳は、他人のことなど一切興味を持たない非常に冷めた眼差しをしていた。

 

信じられるのは己のみ、彼女の見つめる先には何が写っているのか。目の前にいる、あるもの全てがくだらない―――そんな風にも思えた。

 

一括りにするのなら、いくつもの戦場を生き延びてきた冷酷な軍人。イメージとしてはそれが一番近かった。

 

 

千冬さんと山田先生の声かけにより、漸く静まり返ったクラスが先程とは一転し、冷たい空気が流れ始める。眼帯の転校生が醸し出す雰囲気で、誰一人口を開こうとはしなかった。見えない呪縛にとりつかれているかのように。

 

 

「……」

 

 

引き続き、あくまでも沈黙を突き通す転校生。もはや数分前まであった賑やかさは完全に消え失せ、残っているのは気まずさのみ。しかしこのまま何も言わないのでは埒があかない。

 

徐々に気まずさが強くなっているのは誰もが分かっている。だからこそ誰も切り出せないままだった。山田先生も困った表情を浮かべながらもどうすることもできず、ただ立ち尽くすだけ。

 

……何だろうか?ふと、一瞬だけ転校生の視線が千冬さんの方へと向く。次の瞬間にはすでに視線は元に戻っていたが、間違いなく千冬さんのことを確認している。するとそれを皮切りに、沈黙に包まれるこの状況を打開するべく一言だけ声を発した。

 

 

「……ラウラ、挨拶をしろ」

 

「はい、教官」

 

 

何と素直に命令を聞いたことか。その場で千冬さんに向かって敬礼する姿は、まさに軍人そのもの。そして今の一言で確信できた、彼女がどこかで千冬さんと面識があることを。それも相当に尊敬しているように見えた。

 

教官という呼び方をするのはどこかの訓練校や、軍隊などしかない。古風な学園では呼ぶことがあるかもだが、まぁそうそうないだろう。

 

 

「私はもう教官でもないし、ここでは私もお前も教師と生徒の関係でしかない。これからは織斑先生だ」

 

「了解しました」

 

 

千冬さんの言うことを素直に聞き、そして頷くボーデヴィッヒ。二人の関係については聞いている範囲内では分からないままだ。

 

実際に正面から見てみると、女性の中でもかなり小柄な部類に入るのに、その小さな体から発せられる存在感は、とても同じ十五歳の少女には見えなかった。

 

千冬さんの命令通り、一歩今いる場所から前に出ると。

 

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 

たった一言、そう呟いて再び何も話さなくなる。

 

もはや自己紹介と呼ぶにもおこがましいレベルだ。これが企業の面接なんかだったら間違いなく落とされている。新学期最初のホームルームで行った誰の自己紹介と比べても短くておざなり。

 

しかし誰も何も言えないのは、彼女の放つ雰囲気に毒されているから。

 

本当に自己紹介はこれで終わりなのかと、少しビクつきながらも出来る限りの笑顔を浮かべ、山田先生がボーデヴィッヒに言葉を投げ掛ける。

 

 

「あ、あの……ボーデヴィッヒさん? もう終わりですか?」

 

「以上だ。他に言うことはない」

 

 

バッサリ切り捨てられたことに、山田先生が少し半泣きぎみになっている。いくら反抗期とはいえ、教師に冷たく接するのはいただけない。

 

ところで一つ気になることがある。気のせいか、銀髪の転校生……ラウラ・ボーデヴィッヒとどこかで会ったような気がする。他人の空似なんてよくあることだから、あまり深くは考えていないけど、実際どうなんだろうか。

 

 

「―――ッ! 貴様はっ!」

 

 

少し考え込んでいると怒気の強い声が聞こえてきた。何だろうと思い顔を上げると、一点を見つめて睨み付けるボーデヴィッヒの姿が。苦虫を噛み潰したような表情からは、深い憎悪や嫉妬の感情を受けとることが出来た。

 

そしてそのボーデヴィッヒの視線の先にいる人物は……。

 

 

「え?」

 

 

一夏だった。

 

いきなり睨まれたことに驚きを隠せないんだろう、ボーデヴィッヒの顔をポカンと見つめるしかない。そもそも自分が睨まれる理由を理解していない。一夏も彼女のことを知らないようだし、彼女の一方的な恨みのようにも見えた。

 

すると教壇から降りて、一夏の方へと歩み寄ってくる。眉がつり上がった怒りの表情は変わらず、一夏に対する明確な敵意、軽蔑といった感情が消えることはなかった。

 

一夏の目の前に立つと、一言も声を発さないまま右手を身体に巻き付けるように振りかぶる。もう彼女が何をしたいのかすぐに理解できた。筆箱の中から親指の爪サイズの消しゴムを取り出すと、それを親指に乗せてぐっと力を込める。

 

そして右腕が振り下ろされる瞬間、狙いを定めて強めに消しゴムを弾き飛ばした。時代劇みたいに綺麗には出来なかったが、発した消しゴムはボーデヴィッヒに一直線に飛んでいき……。

 

 

「くっ!?」

 

 

彼女が振り下ろした右手の甲に直撃した。手の甲に当たった消しゴムは、反動で座席側へと転がっていく。力加減はしているものの、叩くのを止めさせる程度には強く弾いたため、結構痛かったんだろう。ボーデヴィッヒは反射的に手首を押さえて、手の甲を見つめる。

 

起こった事態が把握出来ずにいるのは、一夏を初めとしたクラスメートたち。一夏もどうしてボーデヴィッヒが痛がっている理由が分からずに首をかしげるのみ。気付いているのはやった本人の俺と、やられた側のボーデヴィッヒ。そして教壇の隣で、こちらを腕を組ながらじっと見つめる千冬さんの三人だ。

 

一夏が影になって見えなかったか、それとも単純に見ていなかったかは分からないが、山田先生も反応からして気付いている様子は無かった。

 

手首を押さえながら顔だけこちらに向けて、俺のことを睨み付けてくる。邪魔をするなと言わんばかりに。

 

 

「何をするっ!」

 

「何をするはこっちの台詞だ。出会い頭に人を叩くなんて、普通やることじゃないよな?」

 

 

今回の場合標的は一夏のため、一夏がやり返すのならまだしも、ボーデヴィッヒを止めたのは俺で、当然正当防衛は認められない。

 

ボーデヴィッヒが俺に怒るのも何ら不自然なことではない。でも一夏を叩こうとするのとこれとは別で、暴力に踏み切ろうとした時点で間違っている。

 

 

「貴様に私のことなど何も分かるまい! 邪魔をするな!」

 

「殴られるのを黙って見ていろと? そんな虫の良い話があるかよ」

 

 

反論してくるボーデヴィッヒに、少し強めの口調で言い返す。怒りの矛先は一夏から俺へと移り、鬼のような剣幕でこちらを睨み付けられる。

 

確かに俺はボーデヴィッヒのことなど何も知らないし、暴力に踏み切ろうとした理由も分からない。ただ殴るのを黙って見過ごすほど、薄情な人間でもない。

 

 

「私は認めるものか……織斑一夏があの人の弟などと!」

 

「認めないのは勝手だ。だが、それでもお前が一夏を殴る権利なんて無い」

 

「ぐっ……その減らず口、すぐにでも!」

 

 

 すでにボーデヴィッヒの眼中には一夏の存在はなく、あるとすれば俺に対する明確な敵意のみ。つかつかと俺の元へ歩み寄ってくると、今度はほぼノーモーションに近い素早い腕の振りで俺の顔を叩こうとする。

 

迫ってくる手の甲に対して右手を差し出し、手のひらで勢いある動きを強引に止めた。手加減なしだったのだろうか、受け止めた右手がじんわりと痛んでくる。かわすのが一番ダメージとしては少ないものの、振りきった反動で他の生徒に危害が及ぶとも限らない。

 

まさか受け止められるとは思わなかったんだろう、ボーデヴィッヒの表情が怒りから驚きの表情へと変わる。

 

 

「本当に何もかもいきなりなのな。日本じゃあまり感心しないぜ?」

 

「このっ!」

 

 

からかわれたと思ったようで、今度は空いている左手を振りかぶり、そのまま俺の方へと向けようと……。

 

 

「いつまでやっている。そこまでにしておけ、時間の無駄だ」

「―――っ! ……はい」

 

 

する直前に、電源を急に切られた機械が止まったかのように、ボーデヴィッヒの動きが制止する。声をかけたのは言わずもがな、千冬さんはこちらの様子を見ながら鬱陶しそうに腕を組み替える。その言葉に渋々了承しつつ、俺に背を向けて教壇横へと戻っていく。

 

 

「ではこれでHRを終わる。それぞれ準備してグラウンドに集合。今日は二組との合同模擬戦闘を行う! 以上。解散!」

 

 

手を叩いて強引にHRを終わらせると、クラスメートは各自席を立ち始める。中には今のことが気になる子も居たんだろうが、気にしているらしく誰も俺に近寄ろうとしてこない。

 

ボーデヴィッヒはいつの間にかクラスから居なくなり、いつも通りのクラスの風景が戻ってくる。

 

 

「……なぁ、今の何だったんだ?」

 

「さぁな。ところで一夏、あの転校生と会ったことってあるか?」

 

「あの転校生って、銀髪の転校生か? いや、会ったことはないな。むしろ会ってたら話しかけてるし」

 

「ふむ、分かった。とりあえず俺らも着替えに行こうぜ」

 

 

 一夏は自分が何をされそうになったか分からずに、俺に聞いてくる。普通に考えれば初対面の相手に殴られるなんて思わないだろうし、当然の反応といえば当然の反応か。

 

消しゴムを飛ばしたことはばれていないようで、特にそこについて突っ込まれることはない。逆にどうして俺にボーデヴィッヒが怒っているのか分かっていなかった。

 

こっちとしても変に気にされるよりはいいし、さっきのことはさっきのことで片づけられる。俺も切り替えてさっさと更衣室に向かうとしよう。この後のことを考えると早くいかないとグラウンドに出る前に始業ベルが鳴りそうだ。

 

クラスにいる男子はデュノアが来なかったとしても二人だけで、他は全員女子ともなれば教室での着替えは女子に譲ることになる。だから着替える度にそれぞれの場所に設置された更衣室に行かなければならない。

 

これが中々面倒で、着替えがあるIS実習や保健体育は時間ギリギリになることも多い。移動距離が長いとどうしてもその分時間を使ってしまうから。

 

話すのは後にしようと席を立つ。

 

すると。

 

 

「ちょっと待て織斑、霧夜。お前たちがデュノアの面倒を見てやれ、同じ男子だろう」

 

 

更衣室に向かおうとした俺たちへ、千冬さんがデュノアのサポート頼んでくる。ある意味貴重な三人目の男子生徒になるわけだし、仲良くやっていきたいと思う。

 

 

「君たちが織斑くんと霧夜くん? 初めまして、僕は―――」

 

「あぁ、その前に女子が着替え始めるから早く行こうぜ」

 

 

自己紹介の挨拶を終える前に、一夏が先にデュノアの手を掴んでクラスの外へと向かう。気のせいか、手を握られたデュノアの顔が赤かったようにも見えた。いきなり手を握られれば、例え相手が男であっても顔が赤くなることくらいはあるだろう。しかも周りには年頃の女の子が満載と来ている。

 

今の光景を目の当たりにしてクラスメートの何人かがキャイキャイと騒ぎ立てている。この年になれば男同士で手を繋ぐことも殆ど無くなるわけだし、それがあまり男性と関わりがないこの学園内でやれば、反応する生徒がいるのも頷ける。

 

まさか一夏があそこまで強引に手を引いて連れていくとは思っていなかったけど、あれがもし普通の女性だったとしても同じようにやるかどうか、興味深いところではある。

 

さて、あまり長居しても仕方ないし、俺もさっさと二人の後を追うとしよう。

 

 

「あ、大和くん。おはよう」

 

「ん、あぁ、おはよう―――」

 

 

名前を言いかけるところで、言葉を失ってしまう。更衣室に向かおうと席を立ち、入り口の扉に向かって走り出そうとしたが、不意の挨拶で足を止めた。声の性質からすぐに誰かを断定することは出来たものの、この後のことを考えるとあまり長くは話せられないと判断し、挨拶だけは返そうと思って振り向いたのだが……。

 

まさかのまさかだった。IS学園では特に制服に関する規則はなく、制服の改造はある程度までは自由。そして装飾品、つまりアクセサリーの類もあまりにも派手で目立たないものであれば、原則許可されている。

 

ようは俺が言いたいのは何かというと。

 

 

「……」

 

「ど、どうしたの?」

 

「い、いや。何でもない」

 

 

本人は無意識なんだろうが、こちらとしてはいつぞやプレゼントしたものを使って貰えているとなれば気が気ではない。嬉しいと思う反面、もしこれが周りに知られたとしたらと考えると恥ずかしくてならない。使って貰う前提でプレゼントしたもののため、使ってくれたのであれば嬉しいに越したことはないが、まさか学校に着けてきてくれるとは思わなかった。

 

 

「じゃあ、俺行くから! また後で!」

 

「え? あ、うん」

 

 

 

 

誤魔化しながらも教室を出て、先に更衣室へ向かった二人の後を追いかける。そこまで時間は経っていないので、十数メートル先に二人の姿を確認することが出来た。小走りのスピードを少し速めて、二人の後を追う。本来なら見つかれば叱責を食らっても文句は言えないが、グラウンドが遠いからとうまく理由付けすれば何とかなる……はず。

 

走っているうちにみるみる二人との距離は縮まっていき、あっという間に二人の後ろに追い付いた。足音が増えたことに気付いた一夏が、後ろを振り向く。

 

 

「おう、やっと来たか大和。さっさと行こうぜ」

 

「あぁ」

 

 

上手く合流できたのはいいがあまりいい予感がしない、何故だろうか。その予感が当たるまでそう時間が掛からないことだった。

 

 

「あっ! 噂の転校生発見!」

 

「しかも織斑くんと霧夜くんも一緒だ!」

 

 

ここまで予想通りに当たってしまっては逆に怖い。俺たちの進行方向にはすでに数人の女生徒たちの群れが出来ていた。もう少し早く行動してればと思うのは結果論だが、早く行動しようが捕まっていた気がする。

 

恐らくここで来るのを待ち伏せていたんだろう。どこのクラスに誰が入学してきたことくらい、この学園の情報網ならあっという間に学園中に行き渡る。それが悪い噂なら尚更だ。

 

このまま真っ直ぐ突っ切るのがグラウンドまで一番早くつける道のりだったのに、塞がれたせいで遠回りしなければならなくなる。

 

それを皮切りに、他のクラスからもドカドカと人が雪崩れ込んできて周りを囲む人数が膨れ上がっていく。これだけを見ると、自分が有名人になった気分だ。

 

もしこれに捕まったら最後、授業が始まるまでの拘束はおろか、下手をすれば放課後まで捕まったままの可能性もある。あまり想像したくはないが、リアルにその風景を想像できてしまう辺りが怖い。

 

 

「織斑くんと霧夜くんの黒髪もいいけど、金髪ってのもいいわね!」

 

「しかも瞳はアメジスト!」

 

 

……このままだとヤバイな、どんどん人数が増えている。ついさっきは後ろに下がって反対側から更衣室まで向かおうと考えたものの、すでに後ろにも数多くの生徒が配備されていた。前進も出来なければ後退も出来ない、ここが戦場だとするのならまさに背水の陣の絶対絶命の状態。

 

 

「な、何でこんなに皆騒いでいるの?」

 

「デュノアは今日転校してきたばかりだからまだ分からないよな。まぁ、ある意味IS学園の名物だと思ってもらえれば良い」

 

「だな。俺と大和が入学した時もしばらくこんな感じだったし、慣れて貰うしかないよな」

 

「え、え?」

 

 

言っている意味が分からずに、キョロキョロと俺と一夏の顔を交互に見る。転校初日だから実感が湧かないが、男性操縦者として入学してきた以上は『これ』に慣れて貰うしかない。

 

 

「ようは物珍しいんだよ。世界中探し回っても、男性操縦者は俺たち三人だけだしな」

 

「あ、あぁ! そうだね!」

 

 

改めて自分の立場を認識し、大きく頷くデュノア。

 

俺と一夏も、一日が終わるとよくベッドの上に倒れ込んでいたし、もしかしたらデュノアも同じようになることだって考えられる。ただ同じ男子として精神的なサポートは、俺たちの方でやらないと。

 

とにかく、今はこの現状の打破を考えよう。

 

 

「よし、横道だ!」

 

 

合図で一直線に駆けていく。そして生徒たちが陣取っているほんの少し手前に右へ曲がる道がある。いつもよりもかなり遠回りになるけど、こればかりは仕方ない。三人で一気に右に曲がると、視線の先に入ったのは廊下の突き当たりにある壁だった。

 

近道さえ潰しておけば何とかなると思って、完全にノーマークにしていたんだろう。誰一人見守っている生徒はいなかった。走っていると、逃げられたとぼやく声が聞こえてくるが、今は気にしている時間が惜しい。

 

後ろから何人かの生徒が後を追いかけてくるものの、足の早さでは流石に追い付けずにぐんぐん距離は離れていく。俺たちは上手く包囲網を潜り抜けて、第二グラウンドの更衣室まで向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……どうにか撒いたか。むしろ更衣室の中まで入ってこられたらそれはそれで怖いけど」

 

「確かに。まさか第二、第三の陣を伏せているなんて思わないもんな」

 

「ご、ごめんね? 初日からこんなことに巻き込んで」

 

「あんまり気にすんな。逆に初日はもう割り切るしかないしな」

 

 

何とか更衣室に辿り着いたは良いものの、散々遠回りをさせられたためもう体はヘトヘトだ。デュノアに至っては初めから慣れないことに巻き込まれたから、想像以上に疲れたんだろう。両手を膝の上に乗せ、肩で息をしながら呼吸を整えていた。

 

その呼吸の仕方がどうにも色っぽく感じるのは、俺がおかしいだけなのか。誰かに聞こうにもここには一夏しかいないし、聞いたところで女性に関することで、まともな回答が返ってくるとは思えない。

 

女性のことに関しては鈍感なんだよな、一夏って。周りの空気を読むのはかなり敏感なのに。

 

世の中、全てが完璧な人間がいないっていうのはこういうことらしい。これで女心まで完全に把握できていたら、もはや非の打ち所のない完璧人間で、全世界の男を敵に回す存在もなれる。つくづく人間って上手く出来ていると思える。

 

 

「さて、じゃあ改めて自己紹介だな。俺は霧夜大和、気軽に大和って呼んでくれると嬉しい」

 

「そういえば中途半端に終わってたっけな。俺は織斑一夏、一夏って呼んでくれ」

 

「それかワンサマーって呼ぶと嬉しいらしいぞ」

 

「なわけあるか! ただの悪口じゃねぇか!」

 

「じょ、冗談だって! そんな真顔になるなよ」

 

 

俺としては冗談半分で言ったつもりだったことが、一夏にとっては割と本気で嫌がるものだったらしい。それかどこかで、同じような呼ばれ方でからかわれたことがあるとすれば分からなくもない。真顔で俺に顔を近づけてきた迫力に気圧されながら、両手を一夏の前に差し出して必死に冗談だとアピールする俺の姿は、何て滑稽なことだろう。

 

俺たち二人の漫才のようなコントがデュノアにどう伝わったか、初めはポカンとしながら見つめていたデュノアだが、やがてクスクスと笑い始める。両手で口元を押さえる動作が、あまりにも優雅で様になりすぎている。同じように真似をしろと言われても、到底真似できるようには思えなかった。

 

 

「ふふっ♪ 二人とも仲良いんだね、ちょっと羨ましいかも。僕はシャルル・デュノア。僕のこともシャルルでいいよ。よろしくね、一夏、大和!」

 

「あぁ、こちらこそ」

 

「何かすっきりしねぇけど……こちらこそよろしくな! シャルル!」

 

「よし。自己紹介も終わったことだし、さっさと着替えるか。結構時間も押しているし」

 

 

時間的にはまだ余裕があるが、ここにいる以上何が起こるか分からない。

 

ちなみにさっきは急がないとと再三急かしていたが、実はもう中にはスーツ自体は着ているため、それほど急ぐ必要もない。急ぐ必要はないといっても、なるべく早くグラウンドに出るに越したことはないので、さっさと着替え終えるとしよう。

 

制服の背広を脱いで、ワイシャツのボタンを一つずつ外していく。

 

 

「わぁっ!?」

 

 

どこからか驚きの声が聞こえてくる。一旦ボタンを外す手を止めて、声のする方へと振り向く。高めの声質だったため、声の主はすぐに分かった。

 

そして振り向いた先には予想通り、赤くなった顔を両手で覆い隠しながら、指の隙間からチラチラと覗くシャルルの姿が。悲鳴をあげた原因もすぐに分かった。

 

シャルルの視線の先には、一夏が上半身素っ裸になって、俺たちの方を不思議そうな眼差しで見つめている。悲鳴をあげた原因が分からないって顔だ。

 

男の裸を見たところでなんとも思わないが、人によっては恥ずかしさから目を背けてしまう男もいる。シャルルもあまり男性の裸をまじまじと見つめるタイプでもないだろうし、フランスと日本では物の感じ方も違う。

 

一つ引っ掛かるとすれば、今の驚き方がやけに大袈裟だった気がしないでもない。今まであまり男性の裸を見てこなかったような……そんな感じにも見えた。

 

 

「うん、どうしたんだ? 早く着替えないと遅刻するぞ?」

 

「一夏、さすがに着替えが大胆すぎるだろ。初対面の男子に上半身裸を見せられたら、それはそれでビックリするって」

 

「うーん……そうか? てか、大和は大和で着替えるの早いな!」

 

「そんなもんだろ。俺は先に着てきたからな。今日みたいに朝から実習が入っている日だったら、先にスーツを着てくるのをお勧めするぞ。余裕がない時なら、制服脱げばそのまま出れるし」

 

 

季節が季節だと多少暑苦しいかもだが、ISスーツはそもそも通気性に優れたもののため、あまり暑いとは思わない。着ていたからと言われても特に怒られるわけでもないし、朝一発目の授業で使うのであれば、先に着ておくのも方法の一つだ。

 

 

「それもそうか。……ってあれ? シャルルは着替えないのか?」

 

「えっ!? そ、そんなことないよ? 今から着替えようと思ってたんだ。だから、その……ちょっとあっち向いててもらって良い?」

 

「? まぁそういうなら」

 

 

シャルルに別の方向を向くように促されて、俺と一夏は二人揃って反対側を向く。

 

 

「IS動かすの久しぶりだから、ちょっと不安だな。最後に動かしたのって結構前だったし」

 

「あれ、そうだっけか。大和前実演した時は特に問題は無かったよな?」

 

「前はな。期間が空いてるし、前みたいに動かせる保証はねぇよ。ま、動かしてみれば何とかなるさ」

 

 

ここ最近あまりISを動かしてなかったのは事実。最後に動かしたのはいつだったかと思い返さないと思い出せないほどで、実際最後にキチンと動かしたのは鈴が来る前、セシリアと一夏とIS実演をした時か。

 

それからはまともに動かしたことがないような気がする。動かしていたとしても、あまり記憶に残っていない。

 

 

「発想が大和らしいな。あっ、そういえばシャルルって……」

 

「う、うん? 何かな?」

 

 

不意に一夏が振り向く。着替えるから顔を逸らしていてくれといった約束をすでに忘れているらしい。それでもシャルルの言葉からは変な動揺は感じられない。もう着替えも終わったんだろう。ちょっとつっかえたのは、急に声を掛けられて驚いたからかもしれない。一夏と同じように俺も振り向くと、すでにISの上下を着終えていた。

 

これだけ早いってことは俺と同じように元々着替えて来たか、それか純粋に着替えが早いかの二択になるが、可能性として高いのは前者になる。

 

 

「へぇ、シャルルも着替えるの早いな。ってか一夏が遅いだけか?」

 

「地味に傷つくなおい。次からは俺も着てくるよ。さすがに二人が着替え終わっているのに、俺だけ着替えているのもバカらしいし。それにこれ、着替える時に引っかかりやすいんだよな」

 

「ひ、引っかかって!?」

 

「おう」

 

「……」

 

 

引っかかるという単語に、ほんのり赤み掛かっていた頬が熱い風呂にでも浸かったように真っ赤に染まっていく。

 

ISスーツは元々身体にフィットするようにギリギリで作られているもののため、身体の凹凸に引っかかりやすいって意味なんだけど。

 

今の会話のどこにそこまで赤面する箇所があったんだろうと、思わず突っ込みたくなる。

 

ともあれ着替え終わったことだし、もうグラウンドへ出よう。時間的にも良い時間になってきている。遅くいって遅刻するくらいなら、早く行って待っていた方が利口。悪いことは何もない。

 

 

「ひとまず雑談はこれくらいにして、一旦出ようぜ」

 

「そうだな」

 

「う、うん。分かったよ」

 

 

俺たち三人は着替えを終えて、第二グラウンドへと向かうのだった。


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