お前は…。
沢山の火の玉によって巻き上がった煙の中からはおそらくウチと同じくらいで有ろうかと見えるような背丈の男が出てきた。
「ま…まさか。お前生きてたのかよ!?」
煙が薄くなってきた。
「炎魔、お前生きてたのかよ。」
「おい、誰が死んだって!?そう簡単に死ぬ訳ねぇだろ。そもそもそんな描写無かったし!」
「人間はな、どんなにゾンビじみててもアーケードゲームでUR級のカードをあっさり引いてしまうほど、死ぬ時は呆気ないんだよ。スマゲーでよくあるだろ?課金してまで欲しいキャラを当てたのにその後に残るのは虚無だけだと。そういうもんなんだよぉ。」
「いや、無駄に説明長いだけで何一つ説得出来てないんだけど。」
「つまり、人は明日にでも死ぬということだ。」
(やっぱり分からないなぁ。)
炎魔はそれ以上ツッコまなくなった。
グルゥッッ!
犬の怪人は煙にも怯まず飛びかかってきた。
その時、
シュパッ!
何故か犬の怪人は胴が真っ二つになっていた。
ッ!
神原は何が起こったか分からなかった。
しかし、犬の怪人を斬ったのが誰かはすぐに分かった。
煙の中から私服に赤いマントを付けた男が歩いてきた。いや、よく見ると手に太くて長いものを握っていた。
「私はパンの王であり、救世主である。」
「あの…。何故手にフランスパンを…」
「これはエクスカリパンだ。私はパンで多くの人を助けてきた。」
長めでストレートな髪、凛々しい姿勢…だけを見れば騎士とも言えなくはないが。
しかし、そこらの私服にマントにダサさも感じたが黙っておこう。
「何故助けた?」
「ヤられている人がいたら助けるのは当然だろ?」
「ウチは助けてとは言ってない。」
「そうだな。なら助けがいる時はこの小麦粉を開けて。」
そう言って渡されたのは小麦の袋だった。
「私が助けるのは困ってる人だ。邪魔して悪かったな。」
そう言ってパンの王は去っていった。
「大丈夫か?炎…」
その時だった。またパンの王が戻ってきた。
建物の壁を蹴りあげて進む姿はトランポリンで跳ねる子供のように軽やかだった。
「そーいえば名乗るのを忘れたな。Sランクのプレスター。ギャグリック星から来た。困ったときは小麦粉を開けるように。」
「はーい。」
プレスターはまた軽やかに去っていった。
変なヒーローだったな。
神原は棒読みで話した。
「設定がカッコ悪いな。」
炎魔も呟いた。
「パンなのにな。」
この後は何事もなくお互い家に帰っていった。
「プレスター、神原はどうじゃったかの?」
そこは本部の一部屋。白井と一緒に座っていた。
「そうだな。あいつは普通とは何かが違う。だが、ヒーローに向いてるとも言えない。」
「これから儂は少し遠出してくる。その間のサポートを頼む。」
白井は少しだけ笑みを浮かべていた。だが、その目は目の前を見ていないようにも見えた。
あれから約2ヶ月が経とうとしていた。
ニュースを見るかぎり日本では怪人が出没しているらしい。だが、ウチの市では怪人が出ていなかった。
まるで3・11の時のようだ。あまりにも危機の重要性が分からない。
それでも筋トレだけは欠かさずにやっていた。
ピンポーン
10月になったばかりなのに暑かった為に出る気にもなれなかったのだが。イヤイヤ インターホンを見てみると杏の姿が映っていた。
これは大事件の予感しかしていなかった。
いや、大事件だ。
何故なら家に女の子が来ているからである。
ウチは急いで上の服を着るとそのまま玄関へと走っていき玄関の戸を開けた。
「久しぶりね。神原。」
さーて!次回のモブだけどヒーロー活動してますはー?
新たな章突入。そしてプライベートに新キャラ、学校にも新キャラ。季節は秋!新キャラの秋!