「どうした?」
突然家に来た杏に対して少しばかり驚いた。
ウチはサンダルを履いて急いで外に出た。
「ちょっと散歩に付き合ってくれない?」
散歩するには少し張りきり過ぎているような服装だった。
正直、眠いから早く散歩を終わらせたいとも思っている。
その頃、白井は朝とは思えないほど暗い所にいた。
「強いな。だが、我に傷はつけられぬ。」
「どうやらそのようだな。」
白井は闇の王と名乗る怪人のボスにダメージを与えていないらしい。
闇の王は複数の黒い塊を白井に投げた。
白井は軽々く避けるが黒い塊が地面に触れた瞬間に地面が溶けるように崩壊していく。
もはや足場は闇の王周辺にしか残っていない。
白井は足場が消えるよりも前に闇の王の近くに移動していた。
「どうやら儂では無理らしいな。」
その声は少し楽しそうにも聞こえる。
「お前は強い。多分、全力でかかっても倒せないのだろう。しかし、お前も我に傷を付けられぬ。」
闇の王はため息が出そうになるのを堪えながらも無理やり威厳を保つかのように話した。
「少し前に四天王を送りつけた。もはや、我らを止めることは不可能であろう。」
白井は倒せないことを悟り、一度戻ることにした。
その頃、神原は朝の早い散歩に対して切り上げようと声をかけた。
「あ…」
「あのね、今日は少し伝えたいことがあって呼び出したの。」
偶然にも言葉が重なり、ただの散歩じゃないと知ったウチは杏の言葉に耳を傾けることにした。
「実は私、趣味で占いをしてるんだけどね。それがよく当たるの。」
へぇー。と、思いながら聞いていた。まさか、知り合いで占いをしてる人がいるとはな。
「四年後に世界の危機が訪れるの。そうね。公になってから1年半後に医療崩壊が起きるわ。で、3~4年後に第三次世界大戦が勃発するわけ。まぁ、それでも3年後に終わるの。以上よ。」
正直、彼女の言ってることが分からなかった。どうせ起こる筈はないだろう。
「因みに1年前だっけ?結構凄い人が5年後に戦争よりも危険なことが起きるからって警告してたわね。あとあんた、世界はそこまで長くないのよ。だから100歳目指そうとか思わないことね。」
何を言ってるんだ?そもそも未来は誰にも分からないし、長く生きたいとも思ってないしな。
「そうか。」
その一言しか言い返せなかった。
ゴゴゴゴッ!
いきなり地震でも起きたかのような轟音が鳴り響き、揺れも感じた。
「キャッ!」
いきなりの揺れに杏は声を漏らしていた。
不意に襲った揺れには驚いたがすぐに周りの確認をした。
殆どの通行人がしゃがみ、走っている車もいなかった。
何より一番驚いたのは目の前に50mくらいありそうな巨大な何かが立っていた。
揺れよりもその巨大な何かの方に驚いた。
本能的に足が走っていた。いつ自分が踏み潰されるかもしれない。勝てないかもしれない。
いいや、内心生きたいだけかもしれないし、死ぬのが恐いのかもしれない。
声に成らない叫びを出しながら数百メートル走った時だった。
「こんなところで何走っているんじゃ?」
服をガッシリと捕まれたウチは蟻を踏んだ像のような反射速度で後ろを振り返った。
その白い髭には見覚えしかなかった。
(白井さん!?)
ウチよりも早く杏は白井の存在に気づいていた。
(この人の能力は瞬間移動なの!?彼が来た道筋が見えなかった…。)
「こんなところでマラソンの練習してる場合じゃないぞ。さっさと怪人を処分しておかないと。」
「いやいや、無理でしょ。このままじゃ死にますよ!」
「まさか、この程度も倒せないのか?儂の若い頃なんてしがみついてでも倒してたぞ。」
ズバッ!
白井さんが投げた大きめの石が巨大な怪人に直撃した。
「一撃!?」
ウチも杏も。もしかしたら、その場に居合わせた人たちも驚いているであろう。
あまりにも一瞬すぎて信じられなかった。