で、昨日の敵は何者だったんだ?
神原はいあつ的な態度で問い詰めていた。
「あれだけ隠してるんだ。あの男にそれだけの何かがあるんだろ?」
何もない。
白いお鬚をたくわえたおじいさんがそう答えた。
「何故そんなにも知りたいんじゃ?」
おじいさんは問うように質問した。
「ただ、何故死にかけたのか知りたかっただけですが。」
ウチはそう答えた。
「分かった。教える。ただし、やつの能力に関することだけじゃ。」
ありがとうございます。白井さん。
すぅー。
白井は軽く息を吸い込んだ。
そして吐き出す息とともに声が漏れていく。
「やつの能力は特別でのぉ。能力の先に到達している。
これまでは能力者が使用する能力を封じてくるだけの能力だったんじゃ。
だからやつの能力は能力者がいなけば一般人と変わらない。
儂と同じなのじゃ。
だがな、やつは考えるようになったんじゃ。
自分の能力を知るために。
それからやつの能力は成長し始めたのじゃ。
その結果、とてつもないアンチアビリティを習得してしまった。
これ以上はまだ喋れぬ。
神原が更に強くなった時、教えてやる。」
ウチは納得いかなかった。
あいつのどこが危険なのか分からなかった。
これ以上何も聞き出せないと判断したウチは
「おー」と、一言返事だけして白井と別れた。
その帰り…
何故、あそまで隠すんや?
能力が強くなるだけやろ?
うーん。
神原ー!
知ってる声が呼びかけてきた。
「今から帰り?少しお話しながら帰りましょうよ。」
ウチは全然乗り気ではなかった。
とにかく早く帰りたい。
時間通りに家に帰ってご飯食べてゲームして寝たい。
頭の中はそれでいっぱいだった。
「今から帰るから…」
「実は変な夢を見てね。神原と白井さんと…あと数人の人が闇の中にいるの。光さえ 飲み込むくらい深い闇の中に。その大きな闇と戦うの。だから、とっても不安なの。」
そうか、じゃあ帰るわ。
ウチは早歩きで離れていく。
「ちょっと待ちなさいよ!」
それでも足を緩めない。
ちょっとー!
杏は無視して通り過ぎようとする神原にドロップキックをきめた。
ぐふっ!
不意に食らった神原は意識が飛びかけたが気合いで耐えた。
「何してんじゃー我はー!」
そう喉から声を振り絞った。
「なんで女の子をほっといて帰ろうとしてるのよ。」
「だって5時になるから。」
「だからってそんなことする?普通。」
ウチはこの言葉で少し機嫌が悪くなった。
というよりも少しだけプッツンプリンしてしまった。
だがこんなことで怒ってはいけない。
と言い聞かせて感情を押し殺した。
で、何で夢見ただけそんな大げさなん?
ウチは軽く尋ねた。
「べ…別に。」
口調はいつもと一緒だった。
しかし、何となーく杏が不安そうな感じにも見えた。
「バイバイ」
そうさよならの挨拶をした。
「ちょっと待って」
杏はウチの裾を掴んでぼそっと呟いた。
一つだけ約束。何かあったらすぐに知らせること。
「分かった」一言だけ返してそのまま解散した。
翌日、朝起きてパン食べてスマホの電源付けて出かけると着信音が鳴り響いた。
水の滴る音である。
ウチのお気に入りの音である。
まるで血が滴っている感じだったからだ。
いつもは着信をスルー自分であったが、何となく出る気になったので何となく出ることにした。
電話の主はウチがもしもしと言う前に喋りだした。
「神原、週末暇か?おー、それは良かった。じゃあ土曜の昼、五六川の下に集合で」
白井は1人会話をされたのち、そのままプチっと切られてしまった。
まったくとんでもない師匠だ。
ウチは朝から不機嫌になって学校に行くはめになった。