ウチの名前は神原悠。
ただのモブだ。
そんなウチだが今本物の殺し屋に追われている。
「誰でもいいからヒーロー来てくれー!」
あっ、ヒーローウチやんけ(笑)ってそんな場合じゃねー!
自分はかなりピンチだと自覚していた。
そしてそんな現実から逃げるように走りながら笑っていた。
「あははははっ、誰でもいいから助けてー!」
周りには田んぼがある。
しかしそこは完全に田舎という訳でもなく、パン屋、コンビニ、住宅が密集する至極普通な場所。
そんな街の歩道を走っていた。
ハァハァ、ハァハァ。
数分も走っていれば疲れて当然だろう。
このままでは息が持たない。
そう考えたウチは決着をつけることにした。
ウチは物理法則を無視する勢いで思い切り踏ん張った。
スーッ。
草履は数ミリほどすり減る中、腰を低くし無理やり体勢を取った。
目の前には追いかけてくる殺し屋の姿がある。
しかし、殺し屋はチャンスと言わんばかりに加速しそのまま神原を切りつけに行った。
ウチは殺し屋が切りつけると同時に足で踏み込み、相手の溝内に一発撃ちこんだ。
殺し屋に対して僅かにダメージが入ったように見えた。
しかし、視界には誰もいなかったのだ。
数刻ほどであった。
腕が冷たく感じた。
嫌な予感しかなかったウチは腕を確認した。
そこには腱が切れ、ブラブラしてる腕があった。
腕に痛覚が戻ったのはそれを視認してからだった。
真っ先に考えたのは止血方法だった。
このままでは失血多量で死ぬかもしれない。応急処置をすれば、傷口からばい菌が入り悪化するかもしれない。
しかし、今は戦いの真っ最中だ。
考える時間はなかったのだ。
その間に追撃をしてきたのである。
その刃はもう片方の腕の肉を削り、足の肉を削り、どんどん不利になっていく。
無傷は無理だったか。
そう呟くとウチは相手を睨んだ。
しかし、今は体勢を直す時間はなかった。
もちろん、止血する時間も。
ここでウチは腹をくくった。
「いざという時ほど、誰も助けてくれない。だから自分で何とかしなくちゃいけないんだ。」
「にぃっ」と笑った。
自分を鼓舞するかのように。
そして着ている服を全て脱いだ。
相手に見せるように。
「さぁ、殺し合おうじゃねぇか。」
「お前ごときじゃ殺し合いなぞできないわ。」
そう言って、心臓に向けて突進してきた。
喝!
ウチはそう言いながら突進した。
ブチッ!
ウチの腹からは布を引き裂いたかのような音が響いた。
それは皮膚に刃物が刺さった音でもある。
その音の方に目を向けた。
その瞬間、腕に引き続き腹が割かれたことを悟った。
自分の拳が当たったかは分からない。
しかし、自分の腹に刃が刺さったことは明確である。
それを認識したとたんに視界が白くなった。
きろ…起きろ…
その知っている声で目が冴えた。
神原、さっさと起きるのじゃ。
やっと起きたか。
居眠りはするなよ。
では早速本題だ。
今日は特訓する前に知識をつけてもらうぞ。
知識はな…
あれ?さっきまで殺し屋に襲われてなかったけ?
今授業?を受けているてことは今までのことは夢だったのか?
どこまでが?
家出たところまでは起きてた。
あの戦闘も痛みも本物だった…はず。
そうだ!
手を見てみれば全てわかる。
そして腕を確認してみた。
あ、普通に重症だ。
こういうのって夢オチだったり、予知夢的なものだったりするんじゃないの?
そもそも何で重症なのに治療終わって授業を受けてるの?
てかさっき授業終わったら特訓するって言ってなかった?
この怪我でまた瀕死レベルの負荷を体にかけるの?
もう意味分かんねぇよ。
頭の中、ザラキだよ。
バトルロードのとどめの一撃のザラキ並に頭の中にいろいろ流れてるよ。
もう自分でも何言ってるか分らんくなってきたわ!
そこで白井さんに聞くことにした。
「白井さーん、ウチ今怪我してると思うんですけども何で特訓してるんですか?」
「何を言っておるんじゃ。そんなもの怪我の内にもならないじゃろ?」
彼の目には微かだが殺気が宿っている気がした。
常人では察知できないほどのものだった。
「何故ですが?」
「何故とは何じゃ?戦場に行ったら怪我だからという理由で休めるのか?怪我してたら相手が生かしてくれるの か?違うじゃろ?」
う…うん。
ウチは気迫に押されながら答えた。
スゥッッー。ハァー。
白井さんは呼吸を整えてからもう一度話始めた。
「いいか?ヒーローとは市民を守るのが役目だ。だからこそ、何があっても逃げたらいけないんだよ。儂等が諦めたら数千人の人が死ぬんじゃ。いいか?儂等ヒーローは死んでも戦い続けなきゃいけないんだ。」
「白井さん、死んだら戦えないんじゃないですか?」
「バカ野郎!人間はな、脳や心臓が潰されれば死ぬ。寿命を迎えたら死ぬ。病気になったら死ぬ。でもな、気合があれば人間、立っていられんだよ。だから心だけは負けちゃいけない。」
その気迫の前にウチは何も言い返せなかった。
では、「授業を始めるぞ」
こうして大けがの中、生死をさまよう授業が始まることになった。
今から能力について3つ教える。
1つ、能力は必ず幸せにするとは限らない。
神原と出会う前まで炎魔は自分の能力を制御できなかったじゃろ?それじゃ。能力によっては無意識に人を殺傷して人生を壊された者、引き籠もった者と様々じゃ。
2つ、能力は概念によって成長する。
炎魔の火の能力あるじゃろ?周りの火を操る、無から火を創造する、空気を燃やす。人の知識、価値観などによって大きく変わる一方、固定概念によってできることが少なくなることもある。
3つ、能力は覚醒する。
能力が覚醒すると火を扱えるだけではなく、火そのものになれる。しかし、1度覚醒すると覚醒前の状態に戻れない、火の弱点である水に弱くなるなど明確な弱点が生まれる。
そしてここが重要じゃ。
「強靭な心身がないと能力に支配される」
過去には覚醒に失敗して怪物化した者が多く、成功した者は数える程しかいなかった。
S級でも失敗することがほとんどだ。
だけども覚醒するかは自分で選択できるから安心せい!
覚醒を拒否しても後から自由に覚醒できる。
以上!能力についての説明だ。
「あのー、何でそんな詳しいんですか?」
ウチは聞いた。
「簡単じゃ。儂はいつでも覚醒できる状態だからだ。」
「何故覚醒しないのですか?」
炎魔が聞く。
「儂なら自我を保ちながら覚醒できる。だが、大量の情報が頭に流れて廃人になる可能性があるからな。」
覚醒って大変なんだなぁ。色々あるんだなぁと。
今日の授業はここまでじゃ。
えっ?もういいの?
「授業は終わったぞ。あとは基礎練習じゃ。神原、意識が飛ぶまで筋トレ。炎魔、儂と能力の開発、基礎体力をつける。」
こうして地獄よりも苦しい特訓が始まった。
1年以上おまたせしました。書くやる気が出なくて。最終回は〇〇で締めようかなと考えてます。