彼は周りの医者を守りながら建物の出口へと向かっていた。筈だった。
怪人は今にでも周りを囲む勢いで進軍していた。
周りの医者は簡単な戦闘くらいなら出来るように仕込まれていた。
しかし、倒しても倒しても周りを囲んでいく怪人たち。
医者たちの戦闘スタイルは皆、様々であった。
ある者はメスを投げ、ある者は白衣の中に隠し持っていた薬品を投げていた。その中には超能力者も居て驚きもした。
超能力者と能力者では根本的に仕組みが違っており、超能力を実用的に扱えるものは居ないとされておりまた、超能力があると言えば、「マジックだ」「トリックだ」など批判的な言葉を返されることもあるくらいだ。
(それにしてもメスを器用に投げるわ、どっかから薬品を出すわ何かすげーなぁ。)
と、ぼーっとしてる。
気がつくと何故か自分の周りには他の人よりも多くの怪人が襲ってきていた。
ついには一匹の狼怪人の殴りを受けてしまう。
(流石に数で押されている。)
しかし、その目は怯えていなかった。
寧ろ希望に満ちあふれていた。
まるで新しいゲームを買ってもらった子供のように。
狼怪人は神原に数発の拳を体中に浴びせていく。
「流石怪人だなぁ。一瞬の余裕すらない。
しかし何故だ?この高揚感。
そうか、自分の弱さを知れたから。まだまだ強くなれ
ることを知れたから嬉しんだ。」
その言葉は喜びに満ちていた。
気づけば体が軽くなっているように感じた。
医者たちの体力が尽き、戦力も無くなりかけていたその時、ウチは前線を駆けていった。
迫り来る怪人の攻撃を避けながら一発一発攻撃を当てていく。
ぐはっ!
くわー!
次々と怪人を行動不能にしていく。しかし、流石に数が多すぎる。そろそろ体力の限界が近づいているのを悟った。
(くっ!全部倒すまでは倒れる訳には…。)
霞み始めた目、消えかけていた意識の中、突然と絶命し出す怪人の姿のみを写して…。
バタン!
次目を覚ました時は既に病室の中であった。倒れる前の記憶が曖昧である。ウチは頑張って思い出そうとする。
一瞬だが倒れゆく怪人のことが脳裏に映像化した。
あっ、そうだ。あのとき…。
見る限り病室は無事そうであった。
と、言ってもあれだけの怪人が襲ってきたのだ。あちらこちらが傷だらけになっているのも言うまでもない。
心を落ち着かせた。そして、周りの観察を始めた。傷だらけなのは自分と病室の壁、備品だけではなかった。あのとき、共に戦っていた多くの医者がベッドの上にいた。ある者は死んだかのように眠り、ある者はあのときの戦いの酷さを語り合っていた。
コンコンッ!
ノックと共に白井さんが入ってきた。
「 怪我の方は大丈夫かい?」
「ええ。お陰さまで。あの…、聞きたい事が…」
「分かっておる。あの怪人の大群じゃろ?」
「ええ。」
「あれは鷲がやった。」
「やはりそうでしたか。」
「鷲はこれから用事がある。帰らせて貰うよ。」
「分かりました。」
そう言って、神原のいる病室を後にした。
白井さんと入れ替わるように杏が入ってきた。
「あんた、怪我は大丈夫なの?」
「うん。能力のお陰で少しだけ回復が早いにたいだ。」
「そうなのね。元気そうで良かったわ。じゃあ、私も行くわ。」
杏はそう言って、杏を置いて出ていった。
(あれ…。お見舞いって言ったら桃じゃね?)
そんな疑問を抱きながらも軽く手を振りながら見送った。
一方、その頃。
「やはり、光の者たちは一筋縄ではいかないようだな。だが、最後に勝つのは私だろうな。」
(それにしても本当にSランクヒーローは強いのだろうか…。少し不安だなぁ。)
さて、次回は???