2話目です。今回は娯楽部のメンバー紹介回
ちょっと短めかもしれぬ
前回までのあらすじ。紫乃月との勝負にジュースを奢った。以上。
あれから2日経ったんだがあれから何の音沙汰もない。特に声を掛けられることもなくそのまま過ぎていた。
俺から部室に行った方がいいのか?それとも紫乃月から来るまで待った方がいいのだろうか…。
でももし俺が部室に行ったとして、「お前誰やねん」みたいな雰囲気になったりしないだろうか?いやなる。俺はそういう空気を感じ取ることができる隠キャなのだ。空気の読める隠キャなのである。
そんなこんなで考えていると紫乃月が教室に入ってきた。ちなみに俺たちは別クラスだ。俺Aクラスで紫乃月はCクラス。
「結弦、部室行くよ」
「お、おう……」
クラスの視線を掻い潜りながら教室から出る。
あれから友人に紫乃月について聞いてみたんだが、彼女はそれなりに有名人らしい。なんでも親が超大手企業の娘さんだとか、政治家の孫娘だーなんて噂もある。あくまで噂程度なので本当かどうかは分からない。
なんで紫乃月は学年の、いや学園でも注目の女生徒という訳だ。さっきの視線もそれが原因。俺?一般人です。
黙って紫乃月の後ろを歩いていると部室前まで到着する。娯楽部…何をするにしても自由な部活。漫画を読み耽るのも良し、ゲームをするのも良し、文字通り何でもありである。
「昨日先輩たちには新しい玩具…じゃないや新入部員が来ることは伝えてある。だから今日は先輩たちいる筈」
もはや隠すねえなこいつ?人のことを玩具呼びする奴は大抵性格悪いってそれ一番言われてるから。
しかし「先輩たち」ねぇ……、こんな部活に所属してるくらいだし結構変人ばっかじゃねえの?
うん、多分そんな感じはする。絶対変人だらけだ。
「先輩、結弦連れてきた」
部室のドアを開けるとそこには3人の人影が。片目が前髪で隠れた女性に穏やかそうな女性、あとは……如何にもオタクっぽい見た目の太った奴。
見た目が既に変な奴が一人いるが、問題は外見ではない。重要なのは性格面だ。恐る恐る部屋に入るとメカクレ女が話しかけてきた。
「貴方が由依が言ってた新入部員だね、私は部長の【
「はぁ、どうも…….」
「で、その隣にいる小動物みたいなのが【
「えっ?」
「はじめまして。水瀬です。これからよろしくね」
「あっ、八神です、えっ、おと、えっ?」
うわぁ…手柔らかっ。この人本当に男?同じ人類?よく見たらズボン履いてんじゃん。詐欺やん。
一ノ瀬先輩も気さくで良い人っぽいし、早とちりだったかな。で、だ。そこのバンダナ巻いて眼鏡クイクイやってるそこの奴は……。
「あぁ、んでこいつは【
「ちょっ!僕の紹介酷くないですかな!?もっと何かあるでしょ!?娯楽部一のイケメンとか色々!」
「あんた目ェ腐ってんの?どこにそんな私好みの金持ちボンボンのイケメンがいるってのよこの豚骨野郎。寝言は寝て言えカス」
「豚骨野郎!?」
「いやぁゴメンね新入部員クン。こいつ無駄にデカイしうるさいしで邪魔でしょう?しかも汗臭いし、正直不快でしょ?」
オッケー分かった。何となくだけど分かった。一ノ瀬先輩は親しい相手には毒舌で太田(ネクタイの色同じだから同級生だな)はその標的だ。俺もいつこの毒舌の餌食になるか分からんから適度に距離置こ。
水瀬先輩は……まだ分からん。まあさっきの対応からしてこの中で一番まともな人なのかもしれない。
「次、結弦の番。先輩たち、まだ結弦のこと知らない」
「……なあ紫乃月。さっきから気になってたんだが何で下の名前で呼んでんだ?普通知り合ったばかりなら苗字で呼ぶだろ」
「逆に聞くけどなんでダメなの?別に問題ない」
「ないけどよ…まあいいや」
ダメだ……こんな目で見られたら女の子に名前で呼ばれるのは小っ恥ずかしいからやめてくれなんて言えねえ。オイコラそこの上級生共、なに笑てんねん。太田テメェも……スゲェムカつく顔だなお前!
用意されていた椅子に座り軽く自己紹介を済ませる。
途中、一ノ瀬先輩から「由依相手に将棋で勝つなら最低でも四段は連れてこなきゃな」と言われた。どんだけ強えんだこいつ。
「それで十阿、今日はどうする?いつもみたいに自由にする?決まってないなら歓迎会でもしない?ウチに新入部員が来るなんて多分この先ないと思うし」
と、水瀬先輩が提案する。天使かな?可愛い上に気遣いもできるとか最高かよ。だが男だ。
これが女性なら間違いなく惚れてるね。だが男だ、俺にそういう趣味はない。
遠回しに娯楽部のことディスってる気もするけど俺の知ったことではない。
「あぁいいね。やろっか歓迎会。……と、言いたいところなんだけどぉ。私これから用事あるんだわ」
…………ん?なんか雲行きが怪しくなってきたな……。
「え?でも今日は予定ないって言ってたんじゃ……」
「それがねぇバイト先の従業員が今日風邪引いちゃったみたいでさ〜。昨日の夜に店長から電話が来たのよ。断る訳にはいかなかったし、その〜…ゴメンね?テヘッ☆」
ば、バイト先の人が病気なら仕方ないな……。うん、仕方ない。
「実は僕も用事があるだなこれが。予約していた『巫女っと!ミコちゃん!』のフィギュアと『その花』のBlu-rayが発売なんですなぁ」
「ええ……(困惑)」
おいテメェふざけんな。ンなもん明日にでも買いに行きゃいいだろうが!
あとその眼鏡クイクイキラーンやめろやオラァン!ぶっ壊すぞ!!
お前に至っては事前に俺が来ること知ってんだったら予定空けとけや!
えぇい、この際デブはいてもいなくてとどうでもいい、紫乃月!お前は残ってくれるよな!?な!?(期待の眼差し)
「……私も用事ある。ケーキバイキングにLet's Goする予定」
それこそ明日行けやオルルァン!!!俺の歓迎会<<<<ケーキバイキングってマジかこいつ!!!せめてお前は残るべきだろーが!
一人身支度を終えてお疲れーと手を振りながら先輩は部室を出ていく。それに続くように紫乃月とデブも帰っていった。残ったのは俺と水瀬先輩のみ。
「え、えぇっと……か、歓迎会はまた今度やろっか?」
「いや、もういいッス……」
歓迎会は死んだ、奴はもうどこにもいない。
ちなみに関係ありませんが僕はケーキバイキングに行って3〜4個ケーキ食って撃沈したことあります。
次話更新も出来れば一週間以内を目処にしております。