あの後の話をしよう。いつの事だよって?金剛寺が俺にバナナをくれたあの後だよ。
あの後、金剛寺と昼飯を一緒に食べながら談笑して色々打ち解け、晴れて親友となった。
時間が経つにつれて体調も治っていき、会話も弾んだ事でついつい娯楽部の事も話してしまった。
その結果、金剛寺が部室に見学しに来た。最初はみんなビックリした表情をしていたが、金剛寺の人柄を触れて悪い奴ではないと分かったのかすぐに仲良くなった。
紫乃月に至っては初対面なのに「りきやん」と呼び、肩車をして遊んだりカードゲームをして目一杯遊んだ。
金剛寺も娯楽部が甚く気に入ったのか、軽いノリで入部した。
関係ない話だが太田はお気に入りのフィギュアを壊された事で酷く敵視するようになった。
これが大体2日前ぐらいの出来事だ。
今日も相も変わらず部室に向かおうとしている最中なのだが、一つ問題が発生している。それは───。
「………………」
部室前に女の子が突っ立っている事だ。それだけって思うかもしれないが問題なのはそこじゃない。
あまり人の名前を覚えない俺でも彼女の存在ぐらいは知っている。
【
その理由は可愛すぎる事だ。その容姿はまるで天女の生まれ変わりとも称されるレベルで入学して半日でファンクラブが出来上がるほど。噂では教師たちもファンクラブに所属してるとかなんとか。
そんな彼女がこんな変なところに来るなんておかしいと思わないか?明らかにおかしい。しかし、あんなところに突っ立ってもらっては困る。
なに、大抵の男子は彼女に話し掛けると緊張のあまり「おっふ」してしまうが俺はしない。しないといいなぁ。
「えっと、小鳥遊…さん?そんなところに突っ立って何してるんだ…です?」
「ぴゃっ!?や、八神くん!?あ、えっと…ち、違うんです!私は別に怪しい者ではなくてですね!?その、ここの部長さんにお話があってですね!入るタイミングを窺ってただけで!」
「分かったから落ち着け」
いきなり声を掛けてしまったからか、滅茶苦茶焦りながら何かを弁明している。なんだか悪いことしてしまったみたいで逆に申し訳なくなってしまった。
………あれ?今なんか違和感があったような気が……。気のせいかな?
なんであれ、
「ほあーっ!?僕のケ○が負けたー!?」
「その程度で私のザン○エフに勝てるとでも思ったのかしら?まだまだ修行が足りないんじゃなくて〜?オホホホ!」
「デブ、代われ…次は私の番」
「お?次は俺だべチビ助?俺のリ○ウで姐さんをボコしてやるべ!」
今日はみんなで仲良くス○Ⅱしていたようだ。この光景にも慣れてきた気がする。
だがやっぱりゲームに夢中なのか気付かない。お前ら、一回ゲームやめろ。客が来たんだから無視してゲームするんじゃあない。
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ゲームも一段落し、改めて小鳥遊さんをもてなす。水瀬先輩が部長たちにお茶を汲み、小鳥遊に対しては紅茶と茶菓子を差し出す。
「いや〜ゴメンゴメン!ス○Ⅱがあまりにも楽しすぎて気付かなかったわ」
「部長たちって俺が来た時に限って熱中してますよね。もしかして狙ってます?俺を使って遊んでます?」
「まっさかー!偶々だって、偶々!」
本当かよ……。この人の事だし、わざとやってるようにしか見えない。
俺を揶揄って遊んでいるのではないかとつい勘繰ってしまう。
「いつも良いところで来る結弦が悪い…」
「俺だって狙って来てんじゃねえよ。つか離れろ暑苦しい」
「やだ」
紫乃月は俺の膝に座りながらゲームをしていた。暑苦しいのは勿論の事、身動きが取れない。
お茶を飲もうとしても頭が邪魔で飲めねえし、太田が恨めしそうな顔をしながらこっちを見てくる。なんなんだこいつは。
小鳥遊さんが困った顔をしながらこっちを見てるから一刻も早く離れてほしいのだが離れない。ひっつき虫かオメーは。
「あー奏音ちゃん、でOK?貴女がここに来た理由を教えてもらっても?」
「あ、はい。実は……私を娯楽部に入部させてもらえないかと……」
今なんて言った?入部したい?あの小鳥遊さんが?MA・JI・DE?
「私、昔からゲームが大好きでして。家ではいつもネットゲームとか色々やってるんです。でも私の周りでは話の合う人がいなくて……どうにか共通の話題を話せる人がいないかと考えていた時にこの娯楽部の話を聞きまして……」
意外だ。彼女がそういう趣味を持っているとは思わなかった。失礼かもしれないが、其の手の人間には興味がないと思っていた。
そっか、学年のアイドルとネットゲームするのか。とは言え、この娘の言うゲーム好きとはライトユーザーレベルだろう。
「あーそうなのねー。ちなみになんだけど、今どんなゲームにハマってるの?ツム○ムとかそんなの?」
「最近だとダ○ソシリーズですね。3はもう完全クリアしたので、今はリマスター版をプレイしてるんです!」
想像の斜め上を行くガチプレイヤーだった。
嘘だろ?こんな可愛い娘があんなダークファンタジーやり込んでんの!?もう完全に
「へ、へぇ〜そうなんだぁ〜!あの死にゲーをやり込むなんて大したゲーマーね貴女!でもリマスター版が発売されたのはだいぶ前だけど買ったのはつい最近よね〜!?」
「いえ、発売初日に買ってその日にクリアしました。それから今まで色んな縛りでプレイしてます。7周以上は間違いなくやってると思います!」
「はわわ……」
部長が驚きのあまりはわわ……って言っちゃったよ。どんだけやり込んでるんだこの娘。
紫乃月が興味を持ったのか、小鳥遊さんの方をジーっと見ている。
「……ナイスゲーマー」
こいつが親指を立てながら賞賛の言葉を送る時は、そいつの腕前を認めたって事だ。よかったな小鳥遊さん、こいつに気に入られたって事はつまり「お前はもう逃がさない」と同義だ。
「と、ところで八神くんはどんなゲームが好きなんですか?もし良ければ協力プレイとか一緒にやりませんか?」
「……あっ、そうだ!それだよ小鳥遊さん」
「え?なにがですか?」
「俺、まだ名前とか言ってないのになんで知ってんのかなーって。さっき入る前にも俺の名前言ってたから変だなーって」
「ふぇっ!?そ、それは……」
「結弦の名前、ちょっと珍しい……」
珍しい?俺の名前が?
確かに『八神』は珍しい苗字だとは思うが、言う程珍しいものだろうか?
「名前に神ってついてる人、大体中学の時に「自分は神だー」とか言ってる」
「おうお前今すぐ全国の皆さんに謝れ。つかそれだと俺もその内の一人だよな?なあ?」
「……新世界の神目指した事ある?名前書いただけで人を殺せるノートとか痛い妄想、した事ある?」
「ねえよ!なりたいと思った事もねえし妄想した事もねえよ!!」
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「そんじゃ奏音ちゃん、明日からよろしくねー」
「はい!ありがとうございます!」
あれから色んな話をしてみんなと仲良くなった小鳥遊さんはいつのまにか部員になっていた。あの学年のアイドルが娯楽部にね……。未だに信じられないがこれは現実だ。これからは彼女との接し方も考えないとな。
彼女は人気者、俺は目立ちたくない日陰者。仲良く会話なんてしてるところを見られればどんな噂が立つか想像に容易い。
「結弦、一緒に帰ろ」
「ん、おう」
「……奏音も来る?」
「あ、バカ!おまっ…!」
言った側からこれだよ!一緒に帰るところを誰かに見られでもすれば……!
「お誘いは有り難いのですが、今日は寄るところがあるのでこれで失礼させていただきます。……それから八神くん」
「はい、なんです?」
「私と話す時は敬語でなくても大丈夫ですよ。由依ちゃんと接する時みたいにお願いします。さん付けも不要ですよ」
「……善処します」
それだけ言い残して小鳥遊さ…は去っていく。
由依と同じように……それかなり難しいのでは?まあいいや、その内慣れるだろう、多分。
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「かのーん、お風呂空いたわよー!とっとと入りなさーい!」
「ハーイ、今行きまーす」
ベッドに横たわり、天井を見ながら今日の事を思い出す。
初めて趣味の合う人たちと交わした楽しい時間、初めて下の名前で呼び合える友達、そして────。
『小鳥遊さん』
「初めて八神くんに名前、呼んでもらえた……えへへ────」
明日がとても楽しみだなぁ、と私は心を踊らせる。
明日はどんな話をしようかな、彼はどんな話が好きなのかな?
これからもっと仲良くなれるように頑張ろう。いつの日か、この想いを伝えられるように────。
以上、第5話でした。
これでメインキャラ全員登場させる事ができました。やったね。
恋する女の子に迫られたい人生であった……。
ところで関係ありませんが某英霊召喚ゲームで10連回しても僕のところに金ピカ出ませんでした
なので大人しくBOX周回します。目指せ最低100箱。