元うちはによる鬼殺道中記   作:卑の呼吸・卑劣切り

1 / 4
 書いてて若干それぞれの元のキャラが思い出せなくなった小説始まります。
 
 


元マダラ鬼狩りになる

 雪の中を気絶した少女を少年が背負いながら歩く。その少年の顔は一般人が見ればはだしで逃げ出すほどの鬼気迫るものだった。

 

「禰豆子……お前は絶対に俺が救って見せる。イズナと同じことは繰り返させはしない!!」

 

 少年は妹がどのような経緯で変貌したのかはまだ分からない。もしかしたら、元に戻す方法などありはしないのかもしれない。だが、少年…炭治郎に諦めるという選択肢は微塵も存在しなかった。

 かつては守り切ることができなかった家族…例えどのような犠牲を払おうとも構いはしない。血でできた川など前世で散々泳いできたのだ、今更躊躇いなどありはしない。

 

 「そしてこの匂いの持ち主…こいつは絶対に生まれてきたことを後悔させて嬲り殺しにしてやる!!」

 

 悍ましいほどの憎しみをまだ見ぬ敵に向けて炭治郎は放つ。そもそもこの少年が真の意味で今生に"目覚めた"のは禰豆子以外の家族を殺されたことによる深い悲しみと憎しみによるものだった。

 かつてこことは異なる世界において大きな戦があった。その戦の中心人物の一人は古くから続く因縁深き兄弟のうちの兄の魂を受け継いでおり、最終的には六道と呼ばれる神の領域にいたりさえした。そして六道まで至ったその魂は戦が終わりし後も力をある程度保ち続けさまよい、ついには異世界の炭治郎という少年に宿る。

 

 無論生まれ変わりは生まれ変わりなのでその魂は本来目覚めることはないはずだったのだが、あまりにも深い悲しみと憎しみは炭治郎の魂にある影響を及ぼすこととなる。その影響による体の変化をこことは異なる世界の人々はこう呼んでいた《写輪眼の開眼》と…

 

 「…だれかこっちに近づいてくるな、この匂いは人間か」

 

 それもただの人間ではないこの匂いは…戦場に身を置くもの独特のにおいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なぜ鬼をかばう?」

 

 「…最後の家族だからだ。」

 

 鬼殺隊の要。最高位の柱の一人である冨岡義勇は目の前の少年に足止めされていた。少年の後ろには未だ鬼の気配があり一刻も早く切り捨てに行かなければいけない状況下の中、義勇は動けずに居た。

 

 (この少年、隙がない……一体何者なんだ?)

 

 強者というものは相対した時点で、ある程度相手の力量を推し量る事が出来る。冨岡義勇は実戦、模擬戦共に数多くの戦いを切り抜けてきたが、目の前の少年のような存在は見たことがなかった。鬼ならば子供ぐらいの見た目でも長い年月を生き歴戦を潜り抜けてきたという存在が現れる可能性はあったが、この少年は見たところ鬼にされているわけではなさそうだ。

 にもかかわらずその身は柱と同等かそれ以上の歴戦の勇士のような雰囲気を携えておりどうにも不気味な印象を感じる。

 

 (この男、なかなかに強いな。今の俺の身体能力では勝つのは難しいか…)

 

 一方の炭治郎も自分と相手を比べて考える。この世界では法則や勝手が違うのか、前世では皆が当たり前のように扱っていたチャクラなる力が使えず、その力はかつてとは比べるべくもない。無論それでも持ち前の戦闘センスと経験があれば、近接戦闘で後れを取ることなどよほどのことがない限りありはしないのだが、今の自分は多少運動能力の高い炭焼き少年でしかない。

 つまりは体がイメージに全くと言っていいほど追いつかないというとんでもないハンデを背負っているということになる。

 

 (だからと言ってここで終わるわけにはいかん。)

 

 一方攻めてくる様子を一向に見せない少年に義勇は内心舌打ちをする。守りを固めた強者を打ち崩すには圧倒的な力が必要だ。しかし、僅かの油断も無くこちらを見据える少年にはただならぬものを感じ取り膠着していた。

 

 

 

 しかしそんな状態が長く続くはずもなく戦いは不意に始まった。

 

 

 

「漆ノ型・雫波紋突き」

 

 数ある水の呼吸の型の中で最速の攻撃。神速の突きが腕を狙う。それを炭次郎は攻撃を受け下がるのではなく、前に踏み出す。突きが肉を裂くがまるで痛みというものを感じていないかのように炭治郎は冷静に"目覚めた"目をもってして対応する。 

 

「陸ノ型・ねじれ渦」

 

 それに対し義勇は上半身と下半身の激しいねじりによって生み出された強い渦動を炭治郎に叩き込む。

 

 (攻防一体の技…やはり厄介だな。)

 

 上下左右絶え間なく襲いかかる剣戟を弾く中、炭治郎の動きは一手ごとに最適化される。義勇は知る由もないが、こことは異なる地では体中の神経伝達を滅茶苦茶に乱されたにもかかわらず、わずかな時間で適応した忍がいたぐらいだ。炭治郎(元マダラ)からすればそれぐらいのことは造作もない。

 

 (少しわかりづらいがこの男、呼吸の仕方が独特だ…これが奴の力の源か。この世界独自の技法といったところか。昔親父が言っていた疲れない呼吸法なのかもしれない。)

 

 相手が技を仕掛けるときや維持する際に見せる鼻や口、喉の動きがほんのわずかに変わることから、相手の力の源が呼吸にあると看破する。

 

 (相手の呼吸を乱すことが出来れば一番いいが、それは今のところ難しいか…ならばその技を真似るまで!)

 

 相手が行っている呼吸法が自分にも使えるものかは全く定かではなかったが、試す価値はあると睨んだ炭治郎は鼻や口の動きからその呼吸法を真似る。すると体が先ほどまでよりは思考と反射に付いてこれるようになり、負担も軽減された。

 

 「ほう…こいつはなかなかに面白い技だな。」

 

 「何だと!?(この少年動きが一手ごとに正確になってきている……しかも呼吸まで…これほどとは)」

 

 しかしながら攻撃を防がれながらも義勇は焦ることはなかった。水の呼吸はその名の通り、水の如く変幻自在。どんな相手にも対応できる。

 

 「参ノ型 流流舞い」

 

 水流のごとく流れるような足運びによる、回避と攻撃を合わせた技に対し炭治郎の体力は確実に削られる。そうして無理やりつくられた隙の中に…

 

 「全集中・漆ノ型 雫波紋突き」

 

 突きは本来ならば鬼の頸を斬り落とすには向かないが、今の義勇の目的は目の前の少年の牽制及び無力化なのでこの技をもう一度選択した。

 

 「ぐっ……体が追い付かないか!!」

 

 炭治郎はその突きを目と反射神経では追うことは出来たが、体がそれに対応しきれるわけではない。しかし持ち前の経験と勘で何とか突きの軌道を斧で反らし、軽傷で済ませる。

 

 (不味いな…このままではこちらがジリ貧に追い込まれる。)

 

 相手の身体能力はこちらのずっと上。もしも"目覚めた"のがもっと前ならばなんとかなったであろうが、現状の体ではそれを覆すにはこれまでの経験値でもまだ足りない。しかしだからと言ってあきらめるわけにはいかない。

 

 (チャクラがおそらくこの世界に存在しない概念である以上、かつての術はまず使えない。この世界にあるものだけで奴に対抗するしか…この世界の技術?)

 

 一秒にも満たない思考の中で炭治郎はあることを思い出す。

 

 (この少年…恐らく間もなく何か仕掛けてくるな)

 

 義勇は長年の勘から炭次郎から発せられる雰囲気が微妙に穏やかになったことを感じ取り、攻撃に備える。

 

 (これは一か八かの賭けだ。親父が死ぬ少し前に一度しか見たことがないうえ練習もしたことは当然ないがそれでもやるしかない。)

 

 今生の父が生前最後に見せてくれた奥義。この技ならば今の状況を打開する手立てになると踏んだ炭治郎は呼吸を整え斧を構えそして…

 

 (気配が消え!?いつの間に!!)

 

 ごく自然にかつ全く違和感を感じさせないほどに少年の気配が消えたと思えばいつ近づかれたかもわからないうちに接近していたことに義勇は表面には一切出さないにせよ焦る。その昔一度しか見たことがない技だったが炭治郎はうちはマダラとしての天才的な戦闘センスをもってしてその技をある程度再現して見せた。そして十分に近づいた炭次郎は斧を義勇に向かって振り下ろす。

 

 「…今の一撃は実に見事だったぞ。」

 

 「これでも届かないか…」

 

 斧は義勇の服と皮膚を切り裂き血を流させるところまで行けたが完全に届くことはなかった。炭治郎の体がその技をふるうには足りていなかったことと、義勇の経験に基づいた警戒による結果だった。

 

 「一つ聞きたい、その娘はお前の家族か?」

 

 「そうだ…」

 

 「俺のことは恨んでくれて構わん。だが鬼は必ず斬らねばならない。」

 

 「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 憎しみだけで呪い殺せそうなほどの赤い目に睨まれながらも義勇は己の本分を忘れることはない。鬼は人に仇為すもの、ゆえに必ず斬らねばならない…例えそれでどんな恨みを買おうともだ。

 

 「ううううう!」

 

 しかしここで信じられない事態が発生する。目覚めた禰豆子は義勇にも炭治郎にも襲い掛かることなく不格好ながらも炭治郎に付き添い、義勇を威嚇したのだ。

 

 (馬鹿な⁉明らかな飢餓状態のはずなのに人を襲わぬ鬼など聞いたことがない)

 

 これまでの常識からは考えられない事態に義勇は困惑する。

 

 (この少年といいこいつらは明らかに今までの者たちとは違う…こいつらならばもしかすると…)

 

 しばらく思考したのち義勇はその手に持った刀を納める。

 

 (刀を納めた?一体どういうつもりだ…)

 

 「お前…」

 

 「何だ?」

 

 「お前はその娘のためにどこまでできる?」

 

 「全てだ!!禰豆子を人に戻すならば泥だって喜んですするし何であろうと切り捨ててやる!!たとえ俺の命であってもだ!!」

 

 「ではその娘が人を喰らった場合はどうする。」

 

 その言葉に炭治郎は少し考える。禰豆子は自分とは違い善良で心優しく芯は強いが、それ故に忍びはおろか戦いにも向かない性分だ。例え人に戻れたとしてもそれまでに人を喰らったとすれば生きてはいけないだろう。だから…

 

 「言ったはずだ、人に戻すと。体だけではない、心と人生もだ!それが叶わないというならば俺の命とともに全てを消し去ってやる!!」

 

 その答えを聞いて義勇は…

 

「狭霧山の麓に住んでいる鱗滝左近次という、老人を訪ねろ。」

 

 とだけ言い残しその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 狭霧山にて炭治郎の修業を見ることになった鱗滝は少し疲れていた。この二年間で炭治郎は背丈が大きくなり髪も伸びた。しかし一番大きく変わったのはその実力だ。

 

 「儂もそろそろ年かな。」

 

 「その年齢でそこまで動けるならば健康状態に問題はないだろ。」

 

 模擬戦を経て疲れ気味な鱗滝を他所に炭治郎は余裕がありまだ戦いたいといった風だった。それを見て鱗滝は仮面の下で苦笑いを浮かべる。

 

 『この二人には今までにないものを感じました。もしかしたらこれまでにない風を吹かせられるかもしれません。』

 

 義勇から届いた手紙にはそう書いてあったがそれと同時に

 

 『鬼である妹以上に少年の方の扱いは非常に気を付けてください』

 

 とも記載されていたが、鱗滝は義勇のその言葉の意味をこの二年間で痛感した。

 竈門炭治郎、鬼に家族が惨殺される前は炭焼き職人の長男坊として家族と生活していたらしいが、この少年は異常だった。敬語をほとんど使わないのは置いておくとして、初めて会った時からお堂にいた鬼を手持ちの斧でバラバラに解体し鬼がどのくらいで死ぬかを実験していたのには驚いた。そこまでは家族を鬼に殺された恨みもあるのだろうと無理やり納得したが、いざ修業を始めると本当の異常性が垣間見えてきた。

 …成長があまりにも早すぎるのである。罠を使っての基礎体力向上も慣れているとばかりにこなし、全集中の呼吸を信じられない程の短期間で身に着けたかと思えば、常中を独力で会得し、更に父から少しだけ教わったというそれまでに見たことがない呼吸法まで編み出したのだ。ハッキリ言って天才という言葉だけでは到底片付けられるものではない。

 

 「お前に教えられることはもはやない。ゆえに最終選別に挑んでもらうことになるのだが最後にどうしても聞いておきたいことがある。」

 

 「聞きたいこと?それは何だ?」

 

 鱗滝は珍しく面を外すと真剣な面持ちで話し始めた。

 

 「お前は一体何者なんだ?なぜそんなに戦いなれている?もはやただの天才という言葉では片づけられない程にな。」

 

 鱗滝の言葉に少し考えながら炭治郎はこう答える。

 

「それを語るにはこちらの質問に答えてもらいたい」

 

 「何だ?」

 

 「なぜあんたはそんな得体のしれない奴を引き取ろうと思った?しかもそいつは鬼になった妹がいて、その妹を守るためなら人を殺すのもためらわなさそうときた。冨岡義勇もそうだが悪鬼滅殺を標榜する組織に属する人間なら正直ありえないと思うが。」

 

 「…すべて承知の上だ。だがお前ならばこの停滞した状況に新しい風を吹かせられるかもしれないとも思った。」

 

 「ほう、だが俺のことがすべて明るみに出ればアンタは間違いなくただではすまんぞ。おそらくは自害を命じられるか、暗殺者を差し向けられるかはするだろうな。」

 

 「それも承知の上だ。もしもその時が来れば儂は腹を切ることになるだろう。」

 

 「覚悟の上というわけか、アンタも相当だな。いいだろうそこまで言われれば俺としても話さないわけにはいかないな。ただし長くなるうえに突拍子も無い内容になるがそれでも聞くか?」

 

 「無論だ、話してくれ。」

 

 「いいだろう、ではどこから話そうか…」

 

 そうして炭治郎は過去を語りだす。無論竈門炭治郎としての過去ではない、うちはマダラとしての過去だ。かつてこことは違う世界の戦乱が続く時代の傭兵一族の頭目の長男として生を受けたこと。そうした生い立ちもあって戦いに明け暮れていたこと。兄弟の死、宿敵との死闘、隠れ里の設立、一族に失望し里を抜け愚かしい計画を始めたこと、闇を育て一度死んだ身を生き返し、最後は自らも裏切られもう一度死んだ人生を語った。

 

 「確かに俄かには信じられんな。」

 

 「まぁそうだろうな。俺としても信じてもらいたいとは思わん。頭のおかしい砂利の戯言だと解釈してもらっても結構だ。」

 

 「だがその話が真実だとしたらお前がやたらと戦闘慣れしていることにも納得できる。だからこそ聞きたい、お前はこの世界で何をなそうというのだ炭治郎…いやうちはマダラ。」

 

 「…俺は一度失敗した身だ、この世界で何かをなそうとは思わん。叶うならば三度目はいい加減静かに暮らしたい。」

 

 鱗滝はそう呟く炭治郎の目を見る。その目にはどこか後悔と疲れが浮かんでいた。

 

 「ひと先ずは信じよう。」

 

 「腹を切る羽目になるやもしれんのに随分とお人好しなことだ。…そういえばそんなお人好しなアンタに対して一つ伝言を頼まれていたな。」

 

 「伝言?儂にか?」

 

 「錆兎と真菰とかいう砂利の伝言だ『必ず帰ってくると約束したのに帰ってこれなくてごめんなさい。でも言わせてください、ただいまと』だそうだ。」

 

 「…!!その名前は…一体どこで!?」

 

 鱗滝は炭治郎の言葉に大きく驚く。それもそうだろう。その名は炭治郎には一度も出したことがないはずの名前だったものだからだ。

 

 「確かに伝えたぞ。」

 

 そう言い残し炭治郎は部屋を後にする。一人残された鱗滝は炭次郎の言葉に静かに涙した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「錆兎…」

 

 「何だ?」

 

 「炭治郎…いやマダラさん大丈夫かな?」

 

 「あの山にいる鬼程度なら相手にすらならないだろ。寧ろ鬼を全滅させて次の試験を開催するのが大変になるくらいだ。」

 

 「ううん、そうじゃなくてその先のことだよ。」

 

 「ああ、なるほどそれは確かに心配だ。」

 

 錆兎が炭治郎に抱いた印象は語られた過去とは裏腹に彼は決して優しさを知らない人間などではなく寧ろ誰よりも情に深い人物だろうというものだった。しかしだからこそただ一人自分に残された妹を守るため、そして家族を惨殺した無残に復讐をなすためならばどんなことでもしかねない恐ろしさがあった。

 

 「口は悪いし言うことは結構物騒なところが多かったけどなんだかんだ悪い人じゃないんだけどね。先生にも自分のこと正直に話してたし、私たちの言葉もちゃんと伝えてくれたから。」

 

 「それはわかってる。ただ霊になってしまった俺が言うことじゃないかもしれないが俺はあいつの剣が恐ろしい…」

 

 「…そうだね怖いね。」

 

 修行を重ねる中で炭治郎は恐ろしいほどの速度で成長を遂げていった。いや成長というのは少し語弊があるのかもしれない、彼はもともと歴戦の戦士だったのだ。この場合は元に戻っていっているという表現のほうがふさわしいのかもしれない。ただその中で炭治郎が編み出した呼吸、本人曰く『親父が生きていた時に見せてくれたのをやってみた』というものだったが…

 

 「あれは太陽だよ…しかもただの太陽じゃない、触れるもの全てを焼き尽くしかねない真っ黒な太陽だよ。」

 

 「鬼舞辻無惨…奴はとんでもないものを目覚めさせてしまったんじゃないだろうか。」

 

 本来ならばいくら前世で戦いに明け暮れていた傭兵一族の頭目であったとしても今生においては家族に囲まれて平和に暮らすはずの炭焼き少年だったのだ。それをよりにもよって鬼の頭目である鬼舞辻無惨は目覚めさせてしまった…本来ならば目覚める必要がないあの真っ黒な太陽を。

 

 

 

 

 一方そんな風に噂されているとは知らない炭治郎は藤襲山にて元気いっぱいに最終選別中だった。 

 

 「や、止めてくれ!!頼むからもう止めてくれ!!」

 

 「ふむ、この位置だとまだ死なないようだな。」

 

 手足を何度も何度も切り飛ばされ再生力が衰え泣き叫ぶ鬼を無視して炭治郎は鱗滝から借りた刀を鬼の顎…多分顎であろうという位置から少し下に突き立てる。そしてそのまま刃を引くと鬼から鮮血が噴出した。

 

 「死ぬ!死んじまうぅぅぅぅ!!」

 

 「この辺りまでは耐えるみたいだな。つまり完全に殺しきるには今より少し上を切ればいいというわけか。」

 

 「兄ちゃん助けて!兄ちゃん!!」

 

 「鬼舞辻無惨について話せない鬼の価値など実験材料ぐらいしかないのが相場と決まっている。運がなかったとあきらめろ。」

 

 鬼という生物は顎から首のあたりを日輪刀で切れば死ぬとは聞いていたが、どうせならどこまでを耐えどこから死ぬかを知っておいて損はないだろうと考えた炭治郎は手ごろな鬼を使って実験を行っていた。実際今目の前にいる鬼のように異形化して弱点がわかりづらくなっている鬼もいるのでこういった実験は必要だった。

 

 「そうだ生体サンプルも取っておこう。もしかしたら禰豆子のために役立つかもしれないからな。」

 

 炭治郎は今しがた切ったばかりの鬼の傷口に持ってきた小瓶を当て血を回収し、封をする。

 

 「こいつはもういらないな。」

 

 そしてもう役目は済んだとばかりに鬼の首を確実に殺せる位置で跳ね飛ばす。そんな一連の動作を草葉の陰から見守っていた黄髪の少年がいた。

 

 「やべぇよ…やべぇよ。あいつ何なんだよ?鬼よりやべぇんじゃないの…」

 

 ガミガミ師匠に無理やりこの試験に放り込まれてただでさえSAN値が低かったその少年は鬼よりやばそうな同じくらいの年頃の少年を見つけてさらにSAN値が下がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (生き残ったのは俺を含めて4人か…)

 

 こうしてやることをあらかたやって最終日を迎えた炭治郎は集合場所に来ていた。

 

 (にしても随分と個性的な連中が集まったものだ。)

 

 モヒカンヘアーの目つきが悪い餓鬼(目つきは自分のことを棚に上げて)にやたらと『死ぬわ、俺死ぬわ…』といいまくる黄髪の餓鬼(こいつはもう駄目だな…と炭治郎は思った)、いずれも前の世界ならともかくこの日本においてはかなり変わった個性の持ち主たちだった。

 

 (だが問題はあの女の砂利だ。)

 

 その少女はほかの二人と比較して割と普通の見た目だったが、傷どころか土汚れひとつなく涼しい顔でいるところからそれなりには訓練を受け実力もあるものだと推測できる。しかしそんなことはどうでもよかった。

 問題なのはその少女がまとう雰囲気だった。

 

 (あの砂利の人形のような雰囲気、木の葉の《根》や血霧の里の連中と同じ匂いがするな。鬼殺隊にもそういった暗部が存在する可能性があるということか…)

 

 炭治郎はその少女からかつていた世界に存在した闇組織の連中と同じ匂いを感じ取り、鬼殺隊に対する警戒を強める。一方、そんな勘違いを知らない少女は蝶と戯れていた。…が突如として蝶が何かを感じ取ったのか逃げていく。

 

 (あら…蝶が逃げてく。何か粗相をしてしまったかな?どうでもいいけど…アレ?あの人…懐かしい雰囲気。どこかで見たっけ…思い出したらいけない気がする。)

 

 その少女が感じ取ったのは死のイメージ。普通の人ならばそれに絶対に気づくことはなかったが、少女は幼少時代の体験からそういったものに感づくことができる。それによって炭治郎が持つうちはマダラとしての死のイメージを朧気ながら感じ取ることができたのだ。

 

 (あの人普通じゃない…まぁどうでもいいか。)

 

 その後モヒカンヘアーの少年が案内役とひと悶着あったりしたが、それ以外は滞りなく進み玉鋼を選んだ一行はそれぞれ帰路についた。

 

 

 

 「今戻ったぞ。」

 

 「おお、炭治郎か無事で何よりだ。」

 

 「当然だ、"目覚めたばかり"ならともかく今更あんな連中に後れを取るつもりは毛頭ない。ああ、それと砂利共の仇と思しき鬼がいたから殺しておいたぞ。」

 

 「...そうかそれは何よりだ。これであの子たちも少しは安心して生まれ変われるだろう…礼を言おう。」

 

 「俺は礼を言われるようなことなど何もしていないのだがな。それより禰豆子は!?」

 

 「家の中にいる。」

 

 長い間目を覚まさなかった禰豆子に対して内心気が気でなかったシスコンは一週間以上離れていて不安が爆発しすぐに会いに行こうとする。するとそんな思いが通じたのか家の扉が見知った足に蹴破られ中から禰豆子が出てきた。

 

 「禰豆子!!お前起きたのか!!ずっと起きなかったから心配したんだぞ!!」

 

 炭治郎はすぐさま禰豆子に駆け寄る。その顔は普段の人を殺してそうな顔でも、宿敵と久々に会った時のようなマジキチスマイルでもなく妹を心配する一人の兄としての顔だった。

 

 (こうしてみると本当に妹思いの兄で済むのだがな。いや、あいつの過去を考えればこれもまたあいつの本当の顔なのかもしれん。)

 

 この先この奇妙な兄妹に幸あれ、鱗滝はそう強く願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてそれから約二週間後…炭治郎は自分のために打たれた刀を持ってきたというひょっとこの面をつけた男と話をしていた。

 

 「赫灼の子…それは一体なんだ」

 

 「頭の毛が赤みがかって、目ん玉が赤いだろう。火仕事をする家はそういう子が生まれると縁起がいいって喜ぶんだぜ。」

 

 「なるほど、確かに身に覚えがある。」

 

 かつては写輪眼が開眼した日には一族はお祝いをしていたものだと炭治郎は懐かしむ。…どこぞの卑劣はこれを病気などとのたまっていたがやはりめでたいことなのだ。

 

 「これならきっと刀も赤くなるかもしれん。日輪刀は別名色変わりの刀と言ってな、持ち主によって色が変わるのさ。」

 

 「なるほどそいつは楽しみだ。」

 

 以前も今生も火を扱う家系に生まれた自分ならばまず間違いなく赤色の刀になるだろうと思った炭治郎は若干ウキウキしながらもらった刀を抜く。すると刀は赤ではなく黒に変色した。

 

 「黒っ!?」

 

 「黒だな…」

 

 予想に反して黒に変色した刀を見て炭治郎はなぜそうなったかを考える。そして一つの答えにたどり着いた。

 

 (そういえば俺の生まれ変わり…正確にはインドラの次の生まれ変わりであるうちはサスケは黒い炎を操っていたな。だとすれば同じインドラの因子を継ぐ俺も黒くなる理由はあるか…) 

 

 「何にせよなかなかにいい刀だな。鍛冶職人としての腕は確かなようだ。」

 

 炭治郎は刀の出来に素直に感嘆する。これほどの職人は前いた世界でもなかなかお目にかかることはなかった。そんな人物が自身の担当になったことに対して得をした気分になる。

 

 「キーッ俺は鮮やかな赤い刀身が見られると思って楽しみにしてたのにぃ!!クソガァ!!」

 

 一方納得し満足ができた炭治郎を他所に鋼鐵塚は暴れだす。そしてそれを炭治郎が取り押さえる。

 

 「落ち着け、アンタ一体何歳なんだ?」

 

 「三十七だ!!」

 

 「三十七!?大人げなさすぎるぞ!!少しは冷静さというものを身に着けろ!」

 

 三十七どころか老人になっても大人げなかった黒歴史を棚に上げ炭治郎はあきれ返る。こうして炭治郎もとい元マダラの鬼狩りとしての人生が始まるのだった。




 《大正こそこそ話し》

 炭次郎(元マダラ)の見た目は最初は目つきが悪い炭次郎だったが修業期間中に伸びた髪の影響で若干マダラに近づいてるぞ。
 後、目はマダラの万華鏡写輪眼と同じに見た目になっているがチャクラの概念が存在しないため異常な動体視力と先読み能力と夜闇が見えやすくなっている以外は完全にオミットされているという超弱体化仕様だぞ。
 ただし、前世での経験+今生での幸せな記憶によりブラコン力改めシスコン力は強化されており、禰豆子のためなら殺人も辞さないぞ。…原作どこ行った?
 ちなみに鬼がやってこなかった場合はのちの時代での世界恐慌か戦争で覚醒していて面倒なことになっていたが、無惨様が体を張って憎しみを一身に浴びたため何も問題はなくなったぞ。




 …最初は卑劣様でやろうと思ったのですがいくら何でも本編が終わってない状態でRTAを書くのは無理でしたのは内緒です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。