では、開幕です!
プロローグ
薄暗い洞窟で負傷した少年達の前に、まるで『悪魔』としか表現できない怪物が立ちはだかっていた。
鬼の角のような物がつき、21枚のプレートが突き刺さった顔は歯が剥き出しになったような醜悪な人相になっており、腰のベルトのような装飾品は中央が血走った目にも見えるデザインとなっている。
「貴様は…いずれオーマジオウとして私の前に君臨する可能性がある…なら、今ここで葬るのみ」
「ハジメ!」
左腕を抑える少年『南雲ハジメ』を守りながら『南雲ツカサ』は怪物を相手に戦っていた。
最初は余裕そうな振る舞いを見せていた怪物だが、ツカサの纏う力に触れることで彼の力の片鱗に気がついた。
「貴様…そうか。貴様が『ディケイドの継承者』か…」
「なんの話だ…!」
怪物…『アナザーディケイド』は何かに納得したような顔をすると、黒いオーラを拳に纏わせて攻撃しようとするが…
その顔面に小さな物体が命中すると、爆発する。
「兄さん!今のうちに!」
ハジメは所持していた『お手製の手榴弾』をアナザーディケイドに投げながら、ツカサと共に脱出を図る。
「今だ!総員、魔法詠唱!」
既に距離を取り、橋の上にいたクラスメイト達が一斉に魔法をアナザーディケイドに放って足止めをする。
「急げ!ハジメ!ツカサ!」
「ハジメ君!ツカサ君!こっち!」
仲間達の呼び掛けに答えるかのように必死で走るハジメとツカサ。
しかし…
「なっ!?どうして…うわああああ!?」
援護として放たれていた筈の魔法のうち、一発の火球がハジメに直撃。
直後、橋が崩れてハジメは崩落に巻き込まれる。
『もし…この物語に本来の歴史との相違点があるとしたら…間違いなくここもその一つです』
崩落に巻き込まれるハジメ。
だが、その耳に聞き覚えのある声が聞こえた。
「うあああああ!」
「ハジメ君!!!」
ハジメのよく知る『二人の人影』がこちらに飛び込んでくる。
気がつくと、ハジメは誰かに抱き締められたまま共に奈落の底へと落ちていく。
「白…崎…さん…兄さん…」
ハジメのクラスメイト『白崎香織』は決して離すまいとハジメを抱きしめ、ツカサと共に深い闇へと消える。
そのなかで誰かの悲鳴が聞こえた。
それはクラスメイトが落ちた事へのショックか…アナザーディケイドに詰め寄られたことで上げた絶望の悲鳴なのか…はたまた、目論見が外れた事への嘆きなのか…それは誰にもわからなかった。
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『この本によれば…ごく普通の高校生南雲ハジメ。彼は異世界トータスで少し先の未来、魔王にして時の王者『オーマジオウ』となる未来が待っていた』
『クラスメイト達と共にトータスに連れてこられたハジメは、周囲が次々と超人的な力を発現させるなかで唯一『錬成師』という戦いに不向きでごくありふれた能力しか発現できなかったことに密かな悩みを抱く』
『そして迎えた運命の日。彼はあるクラスメイトの裏切りの末に奈落の底へと…』
「おっと失礼。この時点でまだ貴方達にとってこれは『未来の出来事』でしたね?では…今後とも我が魔王とその妃達、そして魔王の兄の冒険をお楽しみに…」
次回 ありふれた職業と最強兄弟
第1話 『魔方陣2018』