ありふれた職業と最強兄弟   作:狼牙竜

11 / 53
お待たせしました!今回は話が長くなったので前後編に分けてお届けします!

令和・ザ・ファーストジェネレーションの公開まであと一週間!
日曜日には観に行きたいと考えています。

感想、評価をいつでもお待ちしています!


追伸。いつものあらすじ紹介が抜けてましたので、追記しました!


第10話 豹変と再会(前編)

『この本によれば、普通の高校生南雲ハジメ。彼には魔王にして時の王者『オーマジオウ』となる未来が待っていた』

 

『クラスメイトの裏切りによって奈落の底に落ち、兄である南雲ツカサと離れ離れになった我が魔王だったが、共に落ちた白崎香織との間に愛が芽生え、彼女や兄と共に故郷へ帰るべく決意を固める』

 

『敵を殺す覚悟を決めた我が魔王。しかし魔物の肉を食らうことで変貌したのは心だけではなく…』

 

 

「おっと。先まで読みすぎたようです」

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

薄暗い洞窟の中を走る二尾の狼の魔物。

狼たちはこの洞窟に住む蹴りウサギを今日も食い殺していた。

それは、彼らにとってごく当たり前の光景。強き者が弱き者を食らう、自然の摂理。

 

強者の側に立っていた彼らは、だからこそ仕掛けられていた罠に気づくのが遅れてしまった。

 

「グルゥァ!?」

二尾狼達が嵌った落とし穴。それを作ったのはハジメだった。

 

 

 

あれから、ハジメは己を襲う飢餓感をねじ伏せながら錬成を磨き続けた。

元々王宮にいた頃からそれなりに練度を高めていた錬成はより範囲を広げることができるようになり、ハジメは無数のトラップを仕掛けて獲物がかかるのをひたすらに待ち続けた。

 

常に襲って来る飢餓感と腕の幻肢痛。それに耐えられたのは絶対に帰るという強い意志と、共にハジメの心を支えてくれた少女の存在が何よりも大きかったのは言うまでもない。

 

 

そして、ついに最初の獲物がトラップにかかった。

 

 

 

「さて…ようやくかかったな。喜べ…お前らが俺達の最初の獲物だ」

かつてのように温和な目つきではなく、別人のように変貌した目のハジメと、横に立っている香織。

ハジメは掘り出していたいくつかの鉱石を複数握ると、錬成によって作り出された槍のような武器を握る。

 

普通の槍と違うのは、先端がドリルのような螺旋状になっており、手元にハンドルにもみえるパーツが付けられたデザインになっていることだ。

 

 

 

「死にな…!」

ハジメは槍の先端を罠に嵌った二尾狼に突き刺すと、二尾狼は悲鳴を上げる。

 

「やっぱりそう簡単には死んじゃくれねえよな!だがこいつは仕掛けがあるんだよ…こうやってな!」

ハジメはハンドル状のパーツを回すと、ドリル状になっていた先端が回転しながら深く二尾狼に突き刺さる。

 

「例え壊れても俺はいくらでも武器を作れるんだよ!お前が死ぬまでな!」

突き刺し、深くねじ込む作業を繰り返すと、やがて二尾狼は事切れた。

 

 

「悪いが、謝罪はしねえぞ?お前らだって生きるためなら俺達を食おうとするんだからな…お互い様ってやつさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落とし穴から二尾狼の死体を引っ張り出すハジメと香織。

やがて、香織はハジメによって改造されたアーティファクトの治癒師の杖から追加武器『仕込みナイフ』を引き抜き、二尾狼の血抜きをする。

 

 

「サンキュ、香織」

「ハジメ君も、お疲れ様」

ハジメは血抜きをして軽くなった二尾狼の死体を担ぎ、香織と共に早足で拠点に戻る。

 

――――――――――

 

 

暗闇の中、調達された緑光石がぼんやりとハジメ達の拠点の中を照らす。

 

ハジメ達の拠点には透き通るような青い宝石が置いてあった。

これこそ、ハジメ達の命をつないだ謎の水(ハジメ達は便宜上『ポーション』と呼んでいる)を作り出している鉱石である。

まだハジメ達は知らないが、この石は『神結晶』と呼ばれる歴史上でも最大級の秘宝であり、現代では遺失物扱いされている代物。

大地に流れる魔力が千年という長い時間をかけて偶然出来た魔力溜まりに集まってできた代物であり、いわば魔力そのものの結晶である。

 

結晶化したあと、さらに数百年もの時間をかけて内包する魔力が飽和状態になることで魔力が液体へと変化して溢れる特性を持つ。

 

ハジメと香織は血抜きをした狼の皮を剥いで、ナイフで切り分けた肉を拠点内の焚き火の前で焼く。

 

正直な話、腹が減っている今は生でもかぶりつきたかったものの香織もこれを食べる以上、少しでもましな状態で食べたほうがいいというハジメなりの配慮だったりする。

 

 

 

(念のためポーチに火打石とか入れといて正解だったな…)

ハジメは肉を焼いている炎を見つめながらぼんやりと考えていた。

 

「そろそろ焼けたみたいだよ、ハジメ君」

香織はハジメから借りたナイフで狩った狼の肉を小分けにして皿に乗せ、ハジメに渡す。

因みに、この皿はハジメがそこらへんの鉱石から錬成したものだったりする。

 

「ありがとな、香織」

ハジメは少し微笑みながら皿を受け取る。

その様子を香織はすこしだけ楽しそうに見つめていた。

 

「………なんだよ?」

「ううん。ただ、今のハジメ君も好きかなって」

真っ向からの好意に弱いハジメは顔を背ける。

 

 

「…いいから、さっさと食べようぜ」

照れているのが丸わかりだったため、香織は微笑ましく感じながらも魔物の肉をハジメとともに食した。

 

 

狼の魔物の肉は、お世辞にも美味いとは言えない。むしろ不味かった。

血抜きをしたとはいえ、未だ僅かながら残る血生臭さ。

筋が多く、普段なら食べようとさえ思わない食感に獣臭さ。

それでも、約10日ぶりの食事はハジメ達につかの間の満足感すら与えてくれた。

 

 

 

 

だが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ!?がああああ!?」

「ハジメ君!?…うっ!?」

ハジメと香織は体の中からの激痛に倒れる。

 

 

「なんだ…これ!?」

「体が…砕ける!?」

自分達の手を見てみると、どんどん体が崩れていき、血が吹き出る。

 

 

 

「が……香…織!水を…飲め!」

ハジメは咄嗟に自作の容器に移していたポーションのうち1本を香織に渡して、自らももう一本を手に取って飲み込む。

 

だが、体が修復されていくそばからまた体が破壊されていく。

 

(壊れて…戻って…いつまで続くんだよ!?)

 

 

―――――――――――

 

 

激痛に苛まれていたのはハジメだけでなく香織も同じだった。

 

だが、香織の視線の先には痛みで声にならない叫びを上げているハジメの姿があった。

 

(ハジメ…君…)

自分の体の崩壊は少しずつ収まっていき、崩壊直後よりはマシになっていた香織。

 

しかし、ハジメの肉体の崩壊は留まらずより一層激しくなっている。

 

(死なせ…ない!絶対!)

香織は無我夢中で杖を取り、杖に刻まれた魔法陣を媒介に治癒魔法を自らにかける。

 

 

「天の…息吹、満ち満ちて…!」

「香…織……何やってんだ…?」

ハジメの視界に入ったのは、ポーションを半分残した香織が自らに治癒魔法をかけているところ。

 

 

「聖浄と…癒し…を、もたらさん…――――天恵!」

香織は自らの体を蝕む魔力を、治癒の力として使う。

 

 

「ハジメ君…これ…を…」

香織は残ったポーションをハジメに渡し、倒れる。

 

「くっそ………ふざけんな…マジふざけんな、香織!」

ハジメは香織の手を必死につかみ、飛びそうな意識を保つ。

 

 

(お前が死んだら…俺が戦おうって決めた意味がねえんだよ!お前が俺を置いて死ぬなんて…絶対に嫌だ!)

ハジメは残ったポーションを取ると、それを崩壊していた手にかけて修復。

その手で香織の手を掴みながら叫んだ。

 

 

「これなら…文句ねえだろ!」

ハジメの手に付着したポーションが香織の手に触れ、暴走していた香織の魔力を正常な状態に戻していく。

 

 

 

(そういや…魔物の肉って食ったら体が崩れるって前読んだ本に書いてたな…腹減りすぎて忘れてるとか、間抜けすぎんだろ俺…)

 

――――――――――

 

「う…あ゛あ゛っ!ようやく収まりやがった…」

それから数十分。崩壊と再生を繰り返したハジメの体はようやく落ち着くがその姿は以前とはまるで異なる外見になっていた。

 

日本人特有の黒髪は魔物の肉を食べたせいか真っ白になり、中肉中背だった彼の体も細身ながらしっかりと筋肉がついた逞しい体に。

その上身長も10センチほど伸びていた。

 

「よかった………ハジメ君…生きてる」

そんな彼と手を繋いでいた香織も外見が多少変化している。

身長こそあまり伸びていないものの、体つきがより女性らしさを意識する体型に。

彼女の黒髪はハジメ同様色が変わっているが、どこか幻想的な銀髪に変化。

 

 

「…何か、お互い外見が変わっちまったな…それに、思い切った無茶しやがって」

「う…ごめんなさい」

バツの悪そうな表情の香織を見ると、怒る気すら失せてくる。

 

「いーよ。とにかく俺達は生きてる。だけど…」

ハジメは、自分の右手に浮かぶ赤黒い線を見る。

 

「この線…魔物にでもなっちまったのか?……そうだ、こういう時こそ…」

上半身を起き上がらせたハジメはポーチからステータスプレートを取り出す。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:8

天職:錬成師 ■の■者

筋力:100

体力:300

耐性:100

敏捷:200

魔力:300

魔耐:300

技能:錬成[+鉱物鑑定]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・■■■■・■■■・言語理解

 

――――――――――――――――――――

「…凄い。ステータスがここまで強くなってるなんて」

 

ハジメのステータスは初期の光輝と同等か、あるいはそれ以上にまで跳ね上がっている。その上、新しい技能が三つも追加されていた。

 

「纏雷…これって、この狼の固有魔法だったやつか?」

二尾狼は電撃を飛ばして相手を焼き殺していた。だとしたら、この狼の肉を食らったことでハジメと香織も相手の固有魔法を自らに宿したということになる。

 

だが、検証の結果固有魔法の特徴が多少変化していることが判明。

二尾狼のように電撃を飛ばすことはできず、あくまでも名前通り『雷を纏う』能力に絞られている。恐らく、人間の体に宿ったことで人の身で使えるレベルまで変化したのだろう。

 

ちなみに、同じ魔物を食らった香織のステータスは…

 

―――――――――――――――――――

 

白崎香織 17歳 女 レベル:10

天職:治癒師

筋力:80

体力:220

耐性:120

敏捷:190

魔力:400

魔耐:400

技能:回復魔法[+回復効果上昇][+イメージ補強力上昇]・光属性適正・高速魔力回復・纏雷[+電気治療]・胃酸強化・魔力操作・言語理解

 

――――――――――――――――――

 

「一部のステータスが俺より低い…妙だな?香織のステータスは俺より高かったはずなのに…」

元々能力の低かったハジメがここまで上がっている以上、香織のステータスは自分よりも高くなっていると予想していた。

しかし、一部のステータスはハジメが上回っているため困惑の声が出る。

 

「多分…さっき水以外にも回復魔法使った影響だったりするのかな…?」

「…だめだ、理由がはっきりとわかんねえ。でも…可能性としては回復魔法を使ったことかもな」

 

香織からステータスプレートを見せてもらったハジメは、やがて香織だけが最初から持っていた纏雷の派生技能に対して注目する。

 

「電気治療…纏雷の使い方は直接攻撃以外にもあるのか…ん?」

ハジメはこれまで周囲から削り取った鉱石を突然集める。

「は、ハジメ君?」

 

「………香織。この状況を打破できる武器が作れるかもしれねえ」

 

――――――――――

 

洞窟の中を跳び回る蹴りウサギは、獲物を探して洞窟の中を進んでいた。

 

すると、一瞬だがウサギの視界に人影が映り…

 

蹴りウサギの意識は永遠に刈り取られた。

 

 

 

 

「試し撃ちは中々…だな」

蹴りウサギを殺したのは、ハジメが作り出した新しい武器。

音速を超える速度で最短距離を突き進み、絶大な威力で目標を殺す現代兵器。

『大型リボルバー拳銃・ドンナー』である。

 

全長35センチ。この階層では最高の硬度を持つ『タウル鉱石』を銃身と弾丸に使用し、さらに弾丸には同じくここで発見した燃焼石を圧縮して入れている。

 

 

「香織の『レーゲン』はどうだ?」

「大丈夫だよ。私としてはドンナーよりレーゲンの方が使いやすいかな…」

香織が使っているのはドンナーと同じリボルバー拳銃の『レーゲン』。

だが、レーゲンはドンナーより銃身がやや短く弾丸の燃焼石も僅かに減っているため威力自体はドンナーと比べ僅かに下がる。

その分軽いため取り回しやすく、扱いやすさではレーゲンに分がある。

 

 

「とりあえず威力に関しては申し分ないみてえだな…纏雷を使えば威力はさらに跳ね上がる」

ドンナーもレーゲンも、2人の手に入れた纏雷によって電磁加速をさせることで小型のレールガンとして使うことが可能。その威力は現代の対物ライフルを遥かに超える性能を誇っていた。

 

 

「さて…奴にリベンジするためには…」

そう言うと、ハジメ達は蹴りウサギを捌いた。

 

――――――――――

 

動き出してから数日。

ハジメも香織も蹴りウサギを食らったことで会得した新しい技能を試していた。

 

「新しく手に入れた技能が『天歩』に『縮地』に『空力』…それに、狼を食べても上がらなかったステータスがまた急上昇したってことは」

「ああ…恐らく、一度食った魔物から技能を得たりステータスを上げるのは一回限りなんだろうな」

いずれも移動系の固有魔法だが、纏雷と比べて癖の強すぎる魔法に最初は悪戦苦闘した。

 

だが、数日かけてどうにかコツを掴み新たな技能をどうにか自分のものにした二人は、ついに行動を開始する。

 

「この階層の魔物は俺たちがこの数日確認しただけで3種類…そのうち狼とウサギは食った」

「ということは…私達が狙うべき相手はただ一つ!」

この階層の主であり、かつてハジメの腕を喰らい二人を絶望の底に叩き落とした爪熊。

 

「残るは…テメェだ!」

爪熊を見つけたハジメが引いたドンナーの銃声が、開戦の合図となる。

 

「よう、久しぶりだな…今日はあの時の礼をしに来た」

香織もハジメも、レーゲンとドンナーを構える。

 

(あの時俺の腕を食い…俺たちの心まで砕いたこいつ)

(この魔物を仕留めない限り…)

 

「「俺(私)達の心は、前に進めない!」」

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

一方その頃…ハジメ達が戦っていた場所からさほど離れていない真っ暗な空間の中で5体ほどの怪物が1人の少年に狙いを定めていた。

「グルル…」

その内の一体『アイススマッシュ』が少年に飛びかかるが…

 

 

「はっ!」

少年はアイススマッシュの攻撃を避け、その瞬間背中を蹴る。

 

 

「スマッシュか…なら、ここに『ビルドウォッチ』がある可能性は高いな」

不敵に笑った少年…『南雲ツカサ』はマゼンタカラーのバックルを取り出すと腰に当てる。

バックルからベルトが伸びて固定され、ツカサはベルトの左に付いた本型のアイテム『ライドブッカー』から一枚のカードを取り出し、宣言。

 

「変身っ!」

カードを裏返し、開いていたバックル『ネオディケイドライバー』に装填。

 

《KAMEN RIDE…》

 

素早く両手でドライバーのレバーを押し込み、閉じた。

《DECADE!》

その瞬間、周囲に浮かんだ20の影がツカサに重なり、ドライバーから現れた10枚のプレートが変身したツカサのマスクに刺さる。

 

 

それは、『世界の破壊者』と呼ばれた戦士。

トータスでも悪魔として言い伝えられてきた『仮面ライダーディケイド』の姿だった。

 

 

「せっかく戻ってきたんだ…早いところハジメ達をみつけねえとな!」

そう言うとディケイドはライドブッカーを剣の形にし、刀身を撫でながら歩き出した…

 

 

 

 

 




香織のステータスの一部が低いのは水を半分しか使わず、暴走していた魔力を回復魔法で強引に消費したことが理由です。

その分、回復魔法を崩壊中に使ったことでハジメの持っていない追加技能が目覚めた形になっています。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。