ありふれた職業と最強兄弟   作:狼牙竜

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お待たせしました、第10話後編です!

『ありふれた職業と最強兄弟』の今年の更新はこれが最後になると思います。


感想、評価は年末年始でもお待ちしています!!


第10話 豹変と再会(後編)

『普通の高校生南雲ハジメ。彼には魔王にして時の王者『オーマジオウ』となる未来が待っていた』

 

『身も心も変貌した我が魔王は、魔物達を倒すために新たな武器を開発。かつて自分の腕を食らった魔物へのリベンジを始めた』

 

 

『しかし、そこに本来はこの世界に存在しないはずの怪人…スマッシュが出現。ピンチに陥る我が魔王達を助けたのは…仮面ライダーディケイド』

 

――――――――――

 

 

爪熊に対して先制攻撃を仕掛けたハジメと香織は、二手に分かれて攻撃をする。

「香織は右から頼む!俺は左から!」

「わかった!」

ハジメはドンナー、香織はレーゲンを持って銃撃を始める。

 

音速を超える攻撃に戸惑う爪熊だが、突然デタラメにその爪を振るう。

 

 

「っ!?」

ハジメの脇腹に微かな痛みが走り、見てみると僅かながら裂傷が出来ていた。

(距離はあったはずなのに!?…いや、確かあの時も!)

ハジメの脳裏に走ったのは、最初に爪熊に襲われたときのこと。

 

バックステップで距離をとり、ハジメは叫ぶ。

「気をつけろ香織!こいつの固有魔法は爪に刃を纏わせる!」

「そっか!だからあの時ハジメ君の腕も…!」

かつてハジメを吹き飛ばし、左腕を切断した衝撃波の正体は、爪熊の放った固有魔法『風爪』だった。

 

 

「なら…!」

ハジメはドンナーをホルスターにしまい、ポケットから残していた閃光グレネードを取り出して爪熊の足元に放る。

 

この洞窟ならば緑光石が豊富にあるうえ、ハジメと香織の魔力も以前より増えていたため閃光グレネードの制作自体は洞窟でも簡単に行えるようになった。

そのため、使うことに躊躇いはない。

 

突然の強烈な光を直視した爪熊は絶叫し、目が見えない状態でデタラメに爪を振るう。

その隙を見逃すハジメと香織ではなく、ドンナーの弾丸が左腕を、レーゲンの弾丸が右腕を吹き飛ばす。

 

 

「はっ…どうだ?腕を持ってかれた気分は?」

ハジメはおもむろに爪熊の左腕を拾うと、それを咀嚼。

激昂した爪熊はハジメに迫ろうと走るが、ハジメは爪熊の背後にいた香織に目配せをする。

 

 

「俺にばっか気ぃ取られてんじゃねえよ、バカが」

次の瞬間、爪熊の首に香織の杖が突き刺さり、香織は『纏雷』を発動。

 

「グルルルオオオオ!?」

本家である二尾狼には及ばないものの、高圧電流を浴びた爪熊は絶叫して動きが止まる。

その隙にハジメのドンナーが爪熊の両足を撃ち抜き、完全に動きを封じた。

 

 

手足を破壊されてもなおハジメ達を睨む爪熊。

それに対し、ハジメはドンナーを向ける。

 

「残念だったな…あの時、俺達を殺し損ねたのが失敗だったってことだ」

ハジメの放つ弾丸が、爪熊の眉間を貫いた。

 

――――――――――

 

 

「ふう…お疲れ様、ハジメ君」

「ああ…香織もな」

ハジメ達は爪熊の毛皮を剥いでから爪熊の肉を口にしたことでステータスの向上を行った。

もっとも、ハジメの場合先ほど左腕を食べたので単に空腹を治めるのが理由だが。

 

 

 

 

「…何か、思ったより達成感とかはなかったね」

「ああ…だけど、これで俺達は前に進めた気がする」

かつて自分達の心を砕いた強敵を打ち砕いたことは、ハジメ達にとって大きな前進だったと言える。

 

 

 

「邪魔する敵は全部殺す…そして」

「うん…ツカサ君も見つけて、私達は帰るんだよね」

ひょっとしたらまだツカサはこの階層のどこかにいるかもしれない。そんな僅かばかりの期待を胸に、2人は歩き出そうとした。

が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、迷宮の壁を突き破って1体の怪物が出現。

 

「なっ!?」

香織とハジメは怪物…『ストロングスマッシュ』の攻撃を受けてしまう。

 

「ガハッ!?」

「くっ!?」

ストロングスマッシュのパンチが思ったよりも強く、ハジメ達は相手が単なる魔物ではないと直感で理解する。

 

 

「何…これ本当に魔物なのかな?」

「さあな…だが、敵なら戦うだけだ!」

強い衝撃を受けたせいで頭がふらつきながらも、ハジメ達はドンナーとレーゲンを握って構え…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ATTACK RIDE…SLASH!》

壁に空いた穴からこの世界に似つかわしくない電子音声が聞こえ、無数の斬撃がストロングスマッシュを切り裂く。

 

「グウオオオ!?」

悲鳴を上げるストロングスマッシュと、突然のことに唖然とするハジメと香織。

 

2人の前に現れたのは、マゼンタカラーのボディをした謎の戦士。

 

ボディと同じ色のバックルが目を引き、戦士…仮面ライダーディケイドはライドブッカーの刀身を手でなぞりながらストロングスマッシュに向かって歩き出す。

 

「あの動き…!」

ハジメは、ディケイドの仕草に見覚えがあった。

剣の刀身を手でなぞるあの動きは、『彼』の癖でもあったから。

 

 

「ハアッ!」

ディケイドは連続でライドブッカーを振り、ストロングスマッシュの硬い体を切り裂く。

 

「これで終わりだ…!」

ストロングスマッシュをハイキックで蹴り飛ばしたディケイドはライドブッカーから1枚のカードを取り出すとそれをネオディケイドライバーに装填。

 

 

 

《FINAL ATTACK RIDE…DE・DE・DE・DECADE!!》

ハイテンションな音声が聞こえると、ストロングスマッシュとディケイドの間に10枚の巨大なホログラム状のカードが出現。

ディケイドはライドブッカーを構えると腰を低く落とし…

 

 

 

「セヤアアアアア!!」

ホログラムカードを潜り抜けながらストロングスマッシュに肉薄、一瞬で切断されたストロングスマッシュはその肉体を爆散させた。

 

―――――――――――

 

 

炎の中に佇むディケイドの姿に、ハジメ達は動けなかった。

 

「お前…まさか」

そんなハジメの声を聞き、ディケイドはドライバーのレバーを引いた。

 

 

 

 

「………」

レバーが引かれたと同時に、ディケイドの鎧がまるで幻だったかのように消失。

鎧と仮面の下に隠されていたのは、彼らにとってよく見知った顔だった。

 

 

「…兄…貴…?」

「ツカサ君…!」

10日も、この奈落で離れ離れになっていた大切な人。

 

身も心も変貌しながら、それでもハジメが助けたいと心から思っていた南雲ツカサの姿がそこにあった。

 

 

 

「あ………!」

思わず手を伸ばしそうになるハジメだったが、その手は止まる。

自分も香織も、少し見ない間に変貌しすぎた。命を奪うことへの躊躇いが消え、ハジメは自分が『化け物』に身を堕としていたと自覚している。

 

 

そんな自分を、ツカサは受け入れてくれるのか?自分を、変わらず家族として接してくれるのか?そんな疑問が頭によぎり、ハジメの手は止まっていたが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハジメ…白崎……」

ツカサは、自分でも気がつかないうちに二人を抱きしめていた。

 

 

「ツカサ…君…?」

「兄貴…俺のこと…わかるのか?」

 

 

 

 

「馬鹿野郎が……お前の顔を、たった10日見ない程度で忘れるもんかよ!」

ツカサは、目の前の白髪の青年と銀髪の女性が自分の弟とその想い人だとすぐに気がついた。

確かに、戸惑っていないといえば嘘になる。

だが、それだけ2人は過酷な時間をここで過ごしていたのだろう。

 

ハジメの左腕は無くなり、その姿もかつての面影は殆ど残っていない。

それほどまでにハジメ達は変わらなきゃ行けない場面にいたのかもしれない。穏やかで争いを好まないかつての性格を捨てなければいけなかったほどの試練があったのかもしれない。

 

 

だが、自分を見たときの表情は幼い頃から守ると誓ったあの時とちっとも変わっていなかった。

 

 

 

「悪かった…早く助けに行ってやれなくて、ごめんな…!それと………よく頑張った!生きててくれて……ありがとう!」

 

その時、ハジメの中で張り詰めていた『何か』が切れた。

 

 

「兄…貴………う……あああああ!!」

爪熊を倒したときにはなんの感情も沸かなかったハジメと香織。

 

 

だが、この時ハジメはようやく『生きていてよかった』と実感できた。

 

 

「ハジメ君……ツカサ君…!」

奈落に落ちてから見ていなかったハジメの嬉しそうな表情に、香織も思わず涙がこぼれる。

 

 

「兄貴…!俺…俺…!決めたんだ…絶対、俺達3人で帰るって…だから…!」

 

ハジメはようやく顔を上げる。

その目に、もう涙は無かった。

 

「一緒に来てくれ…兄貴!俺たちと…この世界を超えてくれ!」

 

 

 

ツカサは、弟の強い視線に驚きを隠せなかった。

 

以前と違い、強い意志の込められた目。その目は、決して折れたりしないというハジメの信念を感じさせた。

チラリと横を見ると、一緒に頷く香織の姿が。

 

(そうか…白崎、お前がハジメの心を…)

 

 

 

「…ああ。これからも頼りにしてるぜ、ハジメ…!」

 

奈落の底で地獄のような経験をしてきたハジメと香織。

だが、この瞬間だけはここが地獄のような場所だということを忘れさせてくれた…

 

 

 

 

 




次回、ありふれた職業と最強兄弟

戦士継承2009
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