今回、世界の真実が明らかになります!
感想、評価が作者の力となります!!
『この本によれば…『元』普通の高校生にして錬成師南雲ハジメ。彼には魔王にして時の王者『オーマジオウ』となる未来が待っていた』
『奈落の底に存在したオルクス大迷宮の最深部で最終ボス『クローズヒュドラ』に苦戦していた我が魔王達だったが、絶体絶命の危機でついに我が魔王は『仮面ライダージオウ』へと覚醒』
『続けて仮面ライダービルドの力を継承し、仮面ライダーディケイドこと南雲ツカサと力を合わせ、ついにクローズヒュドラを撃破したのだった…』
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「ん…」
ハジメは目が覚めるとどこかで寝ていたことに気がつく。
硬い迷宮の岩場とは違う柔らかい感触に、自分がベッドで寝ていたことに気が付く。
(どうして俺はベッドで寝てる…それに、ここって…)
覚醒しきらない頭で周囲をキョロキョロしていると、右腕と体に誰かがしがみついていることに気が付く。
「…香織……ユエ…」
右腕にしがみついていたのはユエ、体にしがみついていたのは香織だった。
2人とも薄手の寝間着を来ており、眠りにつきながらもハジメを離そうとしない。
「…どうすりゃいいんだろうか、これ」
しばらく困っていると…
「おう、目ぇ覚めたみたいだな」
部屋のドアを開けてツカサが食事の盛られた皿を持って入ってきた。
「兄貴…ここはどこだ?」
「例の反逆者の住処だよ。ヒュドラを倒したあと、奥の扉が開いてこの屋敷に入ることができたんだ」
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ハジメ達がクローズヒュドラを倒してから、ハジメは疲労と怪我の痛みで気絶。
その直後にヒュドラの体内に入っていたクローズライドウォッチが飛んできてそれを香織が入手すると奥の扉が開いた。
最初は警戒していたものの、トラップの反応も確認できなかったため一同は扉をくぐり、この屋敷を発見したらしい。
「でもよかった…ハジメ君、2日は寝てたからどうしようかと思ってたし…」
「ん…ハジメ、心配かけさせないで」
すぐに目が覚めた香織達に言われ、ハジメはちょっとバツが悪そうな顔をする。
「それで、何か手がかりはあったのか?」
「ああ…お前が起きたら試そうと思ってたやつがな」
ツカサに案内されてハジメ達が訪れたのは屋敷の最上階でもある3階。
そこにあったのは直径七、八メートルはあるこれまで見たことのないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていたのだ。
しかし、それよりもハジメが注目したのは魔法陣の向こう側、豪奢な椅子に座っていた『白骨』である。
黒に金の刺繍が施されたローブを羽織っているその白骨に、ハジメは嫌悪感などは一切感じず、むしろ強者の風格すら感じられた。
「ハジメ君、ツカサ君…そこの魔法陣の上に立ってみて。私とユエはもう試したから」
香織の言葉に従い、ハジメとツカサは魔法陣の上に立つ。
すると、魔法陣から光が放たれ2人の頭の中に『ある魔法』の仕組みと使い方といった知識が刷り込まれていく。やがてその光が弱まっていくと、目の前に白骨と同じローブを羽織ったメガネの青年のホログラムが出現する。
『試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創ったものだ。反逆者と言えばわかるかな?』
青年…『オスカー・オルクス』の登場にハジメ達は驚くがオスカーは話を続ける。
「ああ、質問は許して欲しい。これは単なる記録映像のようなものでね…あいにく君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いたものに世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのかメッセージを残しておきたくてね。このような形をとらせてもらった。どうか聞いて欲しい………我々は反逆者であって反逆者ではないということを」
オスカーが語る内容にハジメ達は驚愕すると同時に、全てが繋がる感覚を覚えた。
それは狂った神とその子孫達の戦いの物語。
神代の時代の少し後、世界は争いで満たされていた。
人間族と魔人族、そして複数の亜人は絶えず戦争を続け、血で血を洗う戦いを繰り広げていた。
その理由は様々。領土拡大、種族的価値観の違い…だが一番の理由は『神敵』だから。それぞれの種族がそれぞれ違う神を奉っておりそれが争いを引き起こしていた。
だが、そんな争いを終わらせるべく集まった集団がいた。それこそがオスカー達『解放者』である。
彼らには共通のつながりが存在した。それは全員が神代の力を持つ強大な魔法『神代魔法』の使い手だということだ。
オスカーを引き入れた解放者のリーダーは幼い頃、神の真の目的を知った。
神の目的はトータスの住人達を使った大々的な『戦争遊戯』をしており、教会の人間を通じてわざと争いを起こしていたのだという。
解放者のリーダーはそれを阻止すべく志を同じとする者を集め、神を滅ぼすべく戦いを起こそうとしていた。
だが………その目的は戦う前に頓挫してしまう。
解放者の目的を察知した神エヒトは教会を通じて情報操作を行い、『解放者こそが神敵』と認識させることで人々と解放者を争わせたのだ。
結果、彼らはその力を人間に振るうことができず解放者達は敗北。最後まで生き残ったのはオスカー達中心の7人だけであり、彼らは後世に希望を託すべくそれぞれが大陸の果てに迷宮を創り、そこに潜伏した。
いつの日か迷宮の試練をクリアし、自らの力をその強者に与え、神の遊戯を終わらせることのできる人間が現れることを願い…
『それと…この映像が流れているということはもう一つの希望も目覚めたということだね…ジオウ。そしてディケイドの継承者』
その言葉が出た瞬間、ハジメとツカサは息を飲む。
『僕達の仲間にも『仮面ライダー』がいたんだよ…君達の前任を含めて20人の同士がね』
オスカーは懐かしそうな顔をして過去を振り返った。
『彼らもまたこの世界の人間じゃない…新たな命と共にその力を手に入れ、僕達と一緒に戦ってくれた。でも…その力の殆どはエヒトが差し向けた刺客…『スウォルツ』と名乗る男によって奪われてしまい、多くのライダーが戦いで命を落とした。スウォルツ達の目的は、彼らの力を完全に手に入れることでトータス以外の世界に到達することだという…』
ゆっくりとオスカーが取り出したのはビルドウォッチとクローズウォッチの二つ。
『僕達は彼らからそれぞれ一つずつ力の残滓としてライドウォッチを受け取って、僕が手に入れたのはこのビルドウォッチ。そしてこのクローズウォッチは、当時のビルドが僕に授けてくれたもう一つの力というわけさ…そして、他の迷宮を攻略した君ならば、それぞれの解放者が同じようにウォッチを二つ持っていることに気づいていると思う』
「ウォッチを…二つ?」
ハジメは自分の手にある二つのウォッチを見つめた。
『クウガからジオウまで20個のライドウォッチを集めること…そうすれば君達の真の力が解放される。尤も、残る11個のウォッチは相応しい人間を見つけ、彼ら彼女らに宿るはずだ…』
オスカーの背後にライダーズクレスト…仮面ライダー達の証が20個出現し、そのうちビルドのクレストが光った。
『神代魔法と仮面ライダーの力…それをどう使うのかは君達の自由だ。君達に僕たちの戦いを強要するつもりはない。けれどもしも君が戦士の力を受け入れたのなら…きっと大きな戦いが待っていると思う』
すると、オスカーの映像が揺らいできた。
『どうやら、そろそろ時間がきたようだね。さきほど語ったように、僕達は君達に戦うことを強要したりはしない。望むのならばその力で逃げても構わない。本来ならば僕達が終わらせるべきだった戦いを押し付けてしまったのは僕達の弱さが原因なのだから………けれど、知っていて欲しかった。君達の天職のことを』
思い出したようにハジメとツカサはステータスプレートを取り出し、天職を確認する。
「時の…王者…?」
ツカサの天職は相変わらず破壊者。だがハジメの天職には錬成師と並んでバグ表記になり読めなかった天職の部分が『時の王者』に変わっていた。
『僕達は最後の力を使い、エヒトの創り出した概念に干渉。そしてジオウとディケイドの力を受け継ぐ素質を持つ人間に対し、その天職が授かれるようにした………先代のディケイドという予想外の存在によって誕生した天職をね』
『僕達の力をどう使うかは君の自由だ。だが…願わくば悪しき心を満たすためには使わないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれて…ありがとう』
その言葉を最後に、オスカーの映像はゆっくりと消えていく。
『君のこれからの人生が…自由な意思の下にあらんことを…』
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「そういう…ことだったのか」
ハジメ達は全てを理解した。
「でも、これで引っ掛かりが全部取れたよ。ずっと疑問だったからな…この世界の宗教的価値観の歪みが」
人の考えは違っていることが当たり前であり、全員が同じ神を崇めていることに疑問を感じていた。
なにせ同じ神を信仰していても宗派が違うことだってありえるのだ。なのにトータスの人間族は全員が同じ神であるエヒトを同じ宗派の元信仰している。
「全員が同じ神を信仰してないと、操れないもんね…」
「ん…それに、仮面ライダーが反逆者…ううん、解放者の仲間だというのなら説明がつく」
「世界の害はエヒトで、それをライダー達が止めようとしていたのか…」
やがて、ツカサが口を開く。
「…今後どうすべきか、ようやくわかった気がするよ。ハジメ」
「…ん?」
ツカサはハジメのほうを向いて話す。
「俺達の目標は地球への帰還…だけど、その前にやらなきゃならないことが増えちまったな」
「………エヒトの討伐…か?」
ハジメの言葉にツカサは頷く。
「正直この世界はどうでもいい…だが、さっきの話を聞く限り無視できない事態が発生するかもしれないからな」
エヒトはスウォルツとやらと手を組み、この世界でライダーの力を完全に手に入れた暁には地球まで進行してくるかもしれない。
そうなれば地球に帰っても結局は同じだ。
「最優先は地球に帰ることだが、同時にエヒトを倒すことも視野に入れる…奴が地球に進む前に倒さないと、同じことが地球で起こりかねない…」
「そいつはゴメンだな…」
――――――――――
その後、屋敷のリビングに集まって今後のことを話し合っていたハジメ達。
「…なあみんな。ものは提案なんだが…しばらくここに残ろうかと思う」
香織達に対してハジメは相談する。
「今回手に入れた力…『生成魔法』は鉱物に魔法を付加させることができる。これを使って俺はここで装備を整えたい」
「そっか…この魔法があればハジメ君、アーティファクトを大量に作れるってことになるもんね」
どうやら神代魔法は適性があるらしく、今回手に入れた『生成魔法』は錬成師のハジメ以外では上手く扱うことができないようだ。
自在に扱えるのはハジメだけで、次点で香織がコントロールできるというレベルだという。
「ここで武器開発や訓練をして、準備を整えたら地上に出ようと思う。オスカーの指輪があれば地上への転移が可能だというのは間違いないから、出ようと思えばいつでも出られるしな」
ハジメ達は今後もライドウォッチや神代魔法を集めるため地上に出たら大迷宮を片っ端から攻略していく予定らしい。
ライダーの力を集めディケイドやジオウの能力を100%開放すれば世界を超えることも可能かも知れないし、仮に揃わなくても神代魔法の中に世界を越える魔法があるかもしれない。
「それに…いい加減この隻腕や片目も煩わしいからな。アーティファクト作れるなら義手でも作ってちゃんと動かせるようにしたい」
ハジメとしては左腕や右目が欠損している今だと不便な面が多いため、義手や義眼の作成は最優先になるのだという…
「じゃあ…当分はここが拠点だね」
香織の言葉に全員が頷いた。
――――――――――
それから半月…
「なあ…兄貴」
「なんだ?」
ハジメはリハビリとして作り上げた左腕の義手を使いこなすべく、ハジメはツカサと一緒に料理作りに励んでいた。
この義手、内部には擬似神経回路が備わっており、魔力操作で腕の神経と接続することによってかつての左腕と変わらないように動かせるようになっていた。
他にもロマンを求める少年の心を持ったハジメが組み込んだ多数のギミックがあるが、それはまたいつか明かされるだろう…
余談だがハジメは好きだった某錬金術ダークファンタジー漫画の影響で義手と神経を繋ぐ際凄まじい痛みがするようにしてしまい、繋げた際痛みのあまり飛び上がったことにより「ここまで再現したのは失敗だったかも…』と一人落ち込んでいた。
「実はさ…俺、ユエに告白されちまった」
「まあ、時間の問題だと思ってたけどよ…」
ハジメのカミングアウトにも特に驚く反応は見せないツカサだったりする。
実際、ツカサにとってハジメが誰かから愛されることは内心嬉しいことだったりするのでこうなることを待っていたりする。
それに、香織と交際していてもユエがハジメに好意を抱いているのは何となく察していたツカサだった。
「で、お前は結局断ったのか?」
「それが…『愛人で構わない。私はハジメと同じくらい香織のことも大切だから』って言いやがった…」
「………悪いハジメ。俺、疲れがたまってるのかな…もっかい言ってくれ?」
「だから…『愛人で構わない。私はハジメと同じくらい香織のことも大切だから』って言われたんだよ俺!どんな顔してあいつに飯持っていきゃいいんだ!」
………どうやら、我が弟には魔王の力だけでなくモテ男の力まで授かったようだ。とツカサは一人心の中で呟くのだった。
次回、ありふれた職業と最強兄弟
第1部最終話 『世界を越える旅人達』