来週からゼロワンも総集編になりましたね…はやくこの外出自粛が解除される事を願うばかりです。
感想、評価をいつでもお待ちしています!
『この本によれば…『元』普通の高校生にして錬成師の南雲ハジメ。彼には魔王にして時の王者『オーマジオウ』となる未来が待っていた』
『オルクス大迷宮の最深部で強敵クローズヒュドラを撃破した我が魔王達はついに仮面ライダービルド、そしてクローズのライドウォッチを入手。そしてオスカー・オルクスの遺言からこの世界の真実を知ることとなった』
『準備を整えるべくまだ彼らは迷宮の最深部にあったオスカーの屋敷に留まり、最後の準備を進めている…』
『手にした神代魔法は生成魔法1つ。そして王の道を進むため必要なライドウォッチは残り17個…』
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ある日の夜。香織は屋敷の外にいたユエに呼び出されていた。
「ユエ…話ってなに?」
「ん…香織に、お願いがある」
真剣な表情のユエは、すぅっと息を吸うと香織に衝撃的な提案をしてきた。
「香織…私、二人目でも構わないからハジメの恋人にさせてほしい!」
「………え?」
香織はユエが前々からハジメに好意を抱いているのは何となくだがわかっていた。
基本的にハジメにしか吸血しないのも、おそらくは彼に好意があった故のことだろうと。だからてっきりハジメの心を自分が掴むといった内容のことを言われると思った香織は少し混乱してしまった。
「えっと…どうしてそういうことに?」
「これは…今考えられる私にとって最善の選択だと思えたから…」
ユエは真っ直ぐに香織を見据えた。
「私は…ハジメのことが好き。でも………同じくらい香織も好き。意味は少し違うけど、私がハジメ達のことが好きだってのは変わらない。だから…ハジメにも香織にも、泣いてて欲しくない…悲しんで欲しくなんてない」
ハジメを独り占めすることで自分が幸せになっても、香織を傷つけてしまうのではユエが望んだ未来にはならない。だからこそユエは二人でハジメを愛していきたいという選択をした。
尤も、この考えは地球と違う環境で育ったユエだからこそ至った考えなのだが…
「…そっか」
香織にとって、ユエは単なる恋のライバルといった関係ではない。
奈落に落ちた中で同じ相手を愛し、一緒に背を預けてきた対等な友達でもあった。
「ユエ…確かに、このトータスでならユエの考えも通るかも知れない。でも……私達も貴女も、最終目的は地球に渡ることなんだよ。地球では二人で愛するなんて認められないし、その考えを貫くことでいろんな問題に直面する」
地球、それも日本の考え方とユエの考えはどうしてもぶつかってしまう。
恐らく、今後ハジメは二股などと後ろ指さされるようなこともあるかもしれない。
「下手したらハジメ君を苦しめることにもつながるかもしれない…それでも、ユエはその考えを貫きたい?」
香織から目をそらすことなく、ユエはまっすぐ答えた。
「当然………私が言い出したからには、ハジメや香織が辛い思いをしないように…私が前に出る。私のワガママに大切な人を巻き込むから…これ以上悲しませないように頑張る」
その答えに、香織は息を吐いた。
「わかったよ…ユエがどれだけ本気なのか」
何があってもユエは自分一人ではなく、ハジメと香織の幸せを考えて答えを出した。
ここまで覚悟を決めている以上、香織から言えることは何もない。
「じゃあ…早速ハジメ君に報告しようか!これからは2人ともよろしくね。って」
「ん!」
奈落の底に輝く偽りの月灯りの下で、2人の少女が共に歩き出した。
「ねえユエ…ちなみに聞くけど、どうやってハジメ君にアピールするつもり?」
「ふ…決まってる。お風呂の時の『自主規制』やベッドの上で『ピー』…」
「これ以上は言っちゃダメえええ!!」
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そして時間は現在。
ハジメはツカサに『香織とユエから告白された』ことを説明していた。
「…まあ一つ言いたいのは。さっさと付き合えこの野郎」
「適当じゃねえか兄貴!?」
見るからに慌てているハジメの姿にケラケラと笑うツカサは夕食にと作っていたスープの味付けを整える。
「でもまあ、正直お前が女から好かれるのは嬉しいことだよ。2人ともお相手としては申し分ないって、俺は思うぜ?」
「でもよ…二股ってのはやっぱり常識的に…」
「常識も良識も多少捨てて魔王の道を現在進行形で進んでるお前が言うことかこのヘタレ」
ツカサにバッサリと切られ呻くハジメ。
「それによ…他人の目とか、常識とかそういうので理由つけて逃げるんじゃねえよ。大事なのは『南雲ハジメは白崎香織とユエの2人をどう思っているか』だろ?」
ハジメは主菜を作る手を緩めて考える。
「地球に戻ればやれ倫理だの常識だの言われるかもしれないけど…あの白崎がそれに合意している以上、あいつらもそこらに関しては覚悟決めてるんだろ。だったら、答えを出すべきなのはハジメ自身だ。そこに俺の介入はできねえ………ま、せいぜい悩め若者よ」
そう言ってツカサは自分の担当料理を完成させた。
「若者って…俺ら双子じゃねえか」
毒づくハジメだったが、その顔から悩みが消えたということだけはすぐわかった。
その後、ハジメはユエと香織を呼び出し自分の考えを伝える。
結果は………言うまでもないだろう。
ただ一つ明かせるのは…その日から3人の寝泊りが同じ部屋になったことだ。
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それからさらに時が過ぎ、気が付けばこの部屋にたどり着いて2ヶ月が経過していた。
もちろん、ハジメ達はありとあらゆる準備を整えこの日を迎えていた。
「さて、3人とも準備はいいか?」
ハジメは大胆にも服装を変えた。
以前の服はクローズヒュドラとの戦いでボロボロになって服として使えなくなったので、オスカーのクローゼットから丁度いい服を見つけそれを仕立てた。
真っ黒なコートに中にはオスカーの残したワイシャツや袖なしのベストを着て、さらに右太腿にはドンナーのホルスターを巻きつけ、コートの内側には彼の近接武器でもある短剣をしまっている。
義手になっている左腕はあのあと更なる改造を施し、強度を高めるため肩まで覆い尽くす鎧パーツを付けることで完成した。
さらに潰された右目に関しては生成魔法を使い神結晶の欠片にこれまで魔物を喰らい続けたことで入手した技能『魔力感知』や『先読』など複数の技能を付与させて特殊な視界を得られる『魔眼石』を完成させ、それを右目に入れた。
尤も、欠点として常にぼんやりとした光を放つためハジメは常日頃から右目に眼帯をすることで光を抑えることになった。
鏡を見て自分の変わりように悶絶してしまい、3人から慰めされたのはどうでもいい話かもしれない…
「ああ。準備は出来てるよ」
ツカサは黒いスーツを着て、中にはマゼンタのシャツという地味なのか派手なのかよくわからない格好になり、首には地球でツカサが愛用していたトイカメラをハジメが錬成で再現したカメラが提げられている。
また、ツカサの腰にはハジメが彼のためにと作った短剣型武器『ディメンション』が鞘に収められている。
「…ん!いつでも」
ユエはハジメのものと色違いの白コートにブラウス、フリルのついた黒いドレススカートといった服装になっており頭には黒いリボンを着けている。
彼女は生粋の魔法攻撃型なので武器はないものの護身用の小型拳銃『ネブラ』を念のためにと渡されている。
「ようやく始まるね…ここから」
香織は以前着ていたプリーステスの服装から一転、ハジメとほとんど同じ服装に変化していた。
違いはズボンではなく黒のミニスカートとロングブーツになっており、ユエが首元に着けているものと同じリボンをネクタイの代わりにつけていることだろう。
杖は香織のレーゲンと併用が難しかったため破棄することになったが、回復用の魔法陣は大胆に改造したレーゲンに刻まれているためこれまでどおり問題なく回復も行える。
「俺達の力は地上では異端だ。この奈落で手に入れた力も、俺が創った武器もな。聖教教会や各国が黙っていることはまずありえない」
「ああ」
「武器やアーティファクト、その創り方を要求されたり、戦争への加担を強制されるかもしれない」
「ん」
「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共が来るかもしれない…それに例のタイムジャッカー。きっと奴らは俺達の持つ力を狙って襲ってくるかもしれない」
「そうだね…でも、下がる気はないでしょ?」
香織の言葉に頷くハジメ。
「ああ。絶対に退かないし負けねえ。俺達4人が力を合わせれば、最強無敵だ!地球に帰る魔法もライダーの力も全部手に入れて…」
ハジメ、ツカサ、香織、ユエは右手を重ねる。
4人の指に輝いていたのはハジメが見つけたアーティファクト『宝物庫』である。
あらゆる道具を保管することができるアーティファクトで、複数個あったそれを彼らはそれぞれ一つずつ身につけていた。
「俺達で世界を越えるぞ!」
「ああ!」
「んっ!」
「進もう…!」
今、4人は地上へと上がるべく屋敷と地上を繋ぐ出口の魔法陣へと入る。
ここから先は、彼らの新しい物語。
世界の破壊者と時の王者の力を継承した兄弟と、愛する者たちの戦いの物語である。
次回、ありふれた職業と最強兄弟
『逢魔降臨歴・第1章時点』
日が立ち上る地上のとある場所。
渓谷で2人の少女が隠れていた。
「うう~…怖いです~!」
「『シア』…もうしっかりして!もうすぐなんでしょ、『未来視』に映ってた助けが来るのって!」
渓谷で怯えるシアと呼ばれたウサ耳の少女を励ましていたのは、まるで神が作った造形と言わんばかりの黒髪の美少女。
「そうでした…この先に、私達の希望が待っているんですよね、『クロハネ』さん!」
クロハネと呼ばれた少女の励ましを受け、シアは立ち上がる。
すると、シアとクロハネの周囲に機械的な造形の赤いカブト虫が飛来する。
「あ、カブちゃんお帰りなさい!!」