今回は第1話となりますので、どうぞご覧下さい!
感想、評価が作者の力となります!
『私の名はウォズ。この物語を見てくれているあなた方には是非、我が魔王達の旅立ちの前に確認して欲しいいくつかの物語があります…』
『今回紹介するのはこちら。我が魔王を突き落とした大罪人、檜山大輔…彼の前に現れた『悪魔』達との邂逅の物語と…』
『我が魔王の死後、とある少年に焦点を当てた二つの物語をお送りしたいと思います。では…』
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前編 裏切り者達の蠢き
「やっぱり、君の仕業だったんだね♪異世界最初の殺人がクラスメイトだなんて…どんな感想?」
あの日の夜、檜山に話しかけてきたクラスメイトは正真正銘の悪魔だった。
「っ!お前………」
自分がハジメを突き落としたことを、ましてやそれに欠片も反省していないことを目の前の人物に見破られ、檜山は焦りを感じていた。
「どうして…ここに?」
「そんなのどうでもいいじゃん。それよりさ…ねえ今どんな気持ち?恋敵を戦いの混乱で殺そうとしたらうっかり恋焦がれてた相手ごと殺した間抜けをやらかした気分は?」
目の前のクラスメイトのことを檜山はそれなりに知っているが、このような表情を一度たりとも見たことがなかった。
「…それが、お前の本性…なのか?」
「そんな大袈裟なものじゃないよ。誰だって猫かぶりくらいするし…それより~、このことを僕が誰かに言いふらしちゃったら、君はどうなるのかな~?」
その言葉に檜山は背筋が寒くなるのを感じた。
自分が南雲兄弟を狙ったというのは全員に知れ渡っているが、現状光輝による判断で『不慣れな魔法を使った事故』という結論に無理矢理ながら納得させているのが今の状態だ。
「で、でも天之河が俺を許したんだ!あれは事故って結論が…」
「でもさ~…僕がクラスでどんな印象か考えてみなよ?そんな僕の言葉なら、多少なりとも耳を傾けてくれると思うんだけどな~…」
「っ…!」
そう。目の前のクラスメイトは表向きは誠実でクラスメイトを騙したり陥れたりするような人間ではないうえ、クラスの中心である光輝と比較的距離が近い方のメンバーだ。
そんな人物の言葉に加え、これまで檜山が中心となってハジメに行ってきたイジメを考えれば、もはや檜山に対する疑惑は光輝の言葉でも拭い去ることは不可能だろう。
「じゃ、じゃあ俺に何をしろって言うんだよ!?」
「そんな怯えないでよ。まるで僕が脅迫でもしてるみたいじゃないか」
目の前の人物はやれやれといった表情で首を振る。
「とりあえず~…しばらくは僕の手足として働いて欲しいなってね。もちろん、君には前金として僕の『とっておき』をプレゼントしてあげる♪」
そう言うと〝彼女〟は手に持っていたうち、一つの『アナザーウォッチ』を檜山に差し出した。
「こ、これって…!」
「そ。あの紫のオッサンが持ってたやつと同じものだよ。尤も、変身する姿は違うらしいけどね…」
「お、お前これどこで手に入れた!?」
狼狽える檜山に対し、彼女は説明した。
「少し前かな~。僕の計画のことをわかってくれて、ある程度力を貸すことを条件にほら、こんなにくれたんだよ」
彼女は3つのアナザーウォッチを取り出し、見せつけた。
「君に渡したのは、その中でも最強らしいよ…力を貸せなんて無理言うんだもの。これくらいのサービスはしてあげる。それにね…」
檜山に対し、彼女は重要な事実を耳打ちする。
「僕の力とそのウォッチの力を組み合わせれば、君の欲しかったもの…白崎香織を手に入れることだって可能なんだよ」
「は…っ!?」
彼女からウォッチに秘められた力を聞いて、檜山は笑みを浮かべる。
「で、どうする?僕に力を貸すか、それとも…」
これが悪魔の囁きだと、檜山はわかっていた。
だが、この力のことを知ったとき、檜山の胸にあったのは恐怖より高揚。
「そうだ…これで、俺が白崎をあのキモオタ野郎から救ってやるんだ…!」
檜山はアナザーウォッチを起動。
《ジオウゥ…!!》
起動音が鳴り、檜山は右手に持っていた『アナザージオウウォッチ』を腰に当てる。
すると、禍々しい光とともに檜山の肉体が変異し…
真っ白なボディに、白目を向き歯茎が剥き出しになった顔面。
時計の針を模したアンテナ部が折れ曲がり、体には『zi-O』、『2019』の文字が刻まれていた。
「これが…オレの新しい力か!!」
檜山…否、『アナザージオウ』が不気味な笑い声を上げた。
(あーあ、マジで信じてるよこのバカ…)
目の前で笑うアナザージオウを見て、彼女は内心嘲笑する。
仮に香織がどのような形で見つかっても、100%檜山の思い通りになるとは限らない。
だが彼はそんな可能性すらみようとせず、目先の欲にまんまと釣られてくれた。
(ま、しばらくは僕の小間使いとして役に立ってよね…トータスなんて最高の舞台に来れたんだもの。ようやく僕の願いが叶う…!)
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後編 ある闇術師の決意
ある日の晩。『氷術師』の少女宮崎奈々は何となく寝付けなかったため、夜の王宮を歩いていた。
「………はあ」
思い出すのは、あの日橋から落ちた3人。
自分達が召喚されたこの世界で、人の命など簡単に消えてしまうことをはっきりと理解してしまい、彼女を含む多くの生徒が心折れてしまい、ほとんどは引き篭ってしまった。
それだけならまだしも、最近は王宮内部で使用人や貴族達がこちらを見てヒソヒソと話をしているのが聞こえてしまい、精神的にも大きな負担がかかっていた。
やれ『勇者様の仲間として来ておきながら情けない』だの『戦えない者に価値などあるのか』だのと言われ、何も言い返せなかった。
一応勇者の仲間として扱われているため国賓に匹敵する扱いではあるものの、戦わない勇者の仲間ほど役に立たないものはないのだろう。
「………ん?」
ふと、宮崎は窓の外を歩く人影を目撃。
「あれって…清水?」
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「はあ………はあ……クソッ!」
深夜。黒いローブを着た少年『清水幸利』は複数の狼型魔物に囲まれていた。
「まずは…1体!」
迫ってきた狼に対し、清水はアーティファクトの杖を向け何らかの魔法を放つ。
杖から発生した黒い光が狼の頭に命中すると…
「…グルウゥゥ…」
「…よし!」
清水の前で座り込み、おとなしくなった。
「このペースならまだいける!」
一度成功させたことで自信をつけたのか、清水は次々と黒い光を狼に打ち込んでいく。
やがて、その場にいた5匹の狼は全て彼の言うことを聞くようになっていた。
「やった!実験成功………っ!」
清水は突如顔を険しくし、物陰に杖を向けた。
「誰だ!?」
清水が杖を向けると狼は物陰に走り…
「キャッ!?ちょ、待って待って!!」
「………宮崎?どうして…」
物陰にいたのは宮崎だった。
「どうしてって…偶然清水が外歩いてたから気になってついて来たんだよ…この山、大結界の外だから魔物も出るし、こんな夜中に出て行くんだもの…」
偶然外に向かう清水の行方が気になった宮崎はこっそり彼の後を追いかけていたのだという。
「何だ…そうだったのか」
清水が杖を振るうと狼の魔物は全て気絶する。
「とりあえず戻ろうか。ここじゃゆっくり休むこともできねえし…」
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大結界内部の王都に戻った清水と宮崎は、街中を流れる川にかけられた橋の上で話をする。
「ねえ…清水はどうしてこんな遅くに…それに、さっきの魔法って…」
「さっきのは闇魔法の応用っていうか…相手の体調とかに干渉できるなら、精神支配とかも使えるんじゃないかって思ってさ。夜中にやってたのは、そっちの方が人目につかなくて集中できるから…」
清水の話によると、彼の一番得意な魔法の闇属性魔法は相手の意識や精神に干渉する魔法であり、ある程度極めると体調不良なども引き起こせるとか。
そんな中図書館で書物を漁った彼は偶然にも闇魔法の究極の形と言える『洗脳支配』の技術を見つけたのだという。
「ま、人だと自我が強すぎて魔物しかまともに操れないんだけどな」
清水は借りていた本を開き、説明する。
「で、思ったんだよ。魔人族が人間族を追い込めるようになったのは魔物を使役してたからだって」
「ってことは………その魔法使えるようになれば、逆に魔物を奪えるってこと?」
「確証は無い…けど、何もせず引き篭って地球に帰れるのを祈るより、ずっと有意義だと思ってる」
その時、宮崎は清水の目を見て驚いた。
彼はまだ『折れていない』と。
「ねえ…清水は、どうしてそこまで戦おうと思えるの?」
気が付いたら、自然と口に出ていた。
「私は、正直怖い。南雲っち達が死んで、もしまた戦いの場所に行ったら今度こそ死ぬんじゃないかって…」
震えながらも宮崎は言葉を紡ぐ。
「………死ぬのが怖いのは、俺もだよ」
「…え?」
清水の言葉に顔を上げた宮崎。
「正直言うと、さっきだってビビって逃げたかった。いくら強い力があっても、何も出来なきゃさっさと死ぬ…いや、半端に強い分、死ぬのにも時間がかかるんだろうからひょっとしたら俺達の方が死に方って悲惨になるかもしれない」
「それでも、俺は戦わなきゃいけないって思ってる。じゃなきゃ俺は…一生自分を許せないし、このまま逃げて生き続けるくらいなら泣きたくなるくらい痛い思いをして死んでいったほうがマシだ」
彼の手は強く握られており、血が滲んでいた。
「じゃなきゃ…俺はいつまでたっても臆病で卑怯な裏切り者なんだよ…!」
その時の目を見て、思わず宮崎は絶句した。
「清水…」
その目に映るのは後悔、苦悩…まるで、大切な友達を失ったかのような目。
「…悪い。ここまで話すつもりなかったんだけどな」
清水は顔を上げ、王宮に歩き出す。
「はやく帰ったほうがいいぞ。王宮抜け出して夜な夜な町ほっつき歩いてたなんてもし畑山先生に知られたらお説教コース確定だしな」
普段の無口でクラスに埋没しているとは思えない揶揄うような口調。
それが無理をしていると宮崎は気がついた。
「ねえ清水…今夜も、また特訓するの?」
「ん?…まあな」
「だったら………私にも手伝わせて!」
まだ、戦うのは怖い。
それでも、どんな理由だろうと前を向いて彼は自分の武器で戦う道を選んでいるのだ。
だったら、私にもできることをまずはじめよう。
「…ああ。サンキュ!」
氷術師の少女と、ある闇術師の少年。
2人を祝福するかのように、朝日がゆっくりと登った。
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『いかがだったでしょうか?本日の物語はここまでとなります』
『次回もまた、お楽しみに…』
次回、ありふれた職業と最強兄弟
幕間2 帝国とメダルとアナザーライダー