次回で幕間も完結し、第2章に進んでいきます。
感想、評価をいつでもお待ちしています!
『この本によれば…『元』普通の高校生南雲ハジメ。彼には魔王にして時の王者『オーマジオウ』となる未来が待っていた』
『時間は我が魔王達が地上で戦うための準備をしている最中。八重樫雫と坂上龍太郎を含む勇者メンバーはオルクス大迷宮での探索訓練から一時離脱することになる』
『そこで彼らが出会うのは、彼らにとって二人目となる『アナザーライダー』。そして…『欲望』を司るライドウォッチの継承者。それは…』
「…失礼。先まで読みすぎました」
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宿場町ホルアドを離れてからどれほどの時間が経過したのか。雫は馬車の揺れで目を覚ました。
「お、目ぇ覚めたか雫」
同じ馬車に乗っていたのは龍太郎、光輝、鈴、恵里の4人。
彼らは迷宮探索を一度切り上げ、ハイリヒ王国の王宮まで戻っている最中だった。
65層を突破してからというもののそこから先の階層に関してはなんの情報もなく、マッピングや魔物の情報などを纏めつつ進まなければいけなかったため探索のペースはこれまでと比べ明らかに落ちてしまった。
それに加え出てくる魔物も強さを増し、少数メンバーで挑んでいた雫達も疲労が激しくなってきたことから一度探索を中断し休養を取るべきと判断されたのである。
尤も、休養を取るならホルアドに留まるだけでよかったのだがそれは王宮からの使者が来たことで叶わなかった。何でも、『ヘルシャー帝国』からの使いが勇者一行に会いに来たという。
ヘルシャー帝国とは、トータスの人間族が暮らす領域で最大の勢力を誇る軍事国家である。
元々は300年前にある傭兵が建国した国であり、冒険者や傭兵達が多く住む完全実力主義の国で、エヒトへの信仰心こそあるものの他の国と比べるとまだ宗教的な思想に強く染まる人間はいない。
そういった背景の国でもあるため、当初彼らは勇者という人間が現れても納得はしなかっただろうと雫は密かに考えていた。
(…まあこのタイミングで来た理由は何となく想像できるけどね…さしずめ、私達がベヒモスを倒したことで興味を持ったのかも…)
いきなり現れた光輝が勇者だと説明されても、帝国からしたら彼の下について戦えなど言われたところで納得するものなどいるはずもない。
戦いにおいてのプロフェッショナルが揃う彼らからしたら召喚当時の光輝を紹介されたところで軽んじる可能性も十分存在した。
だが、今回はこれまで突破されたことのなかったオルクス大迷宮の65層が突破されたというニュースが広がったことでようやく帝国も勇者に興味を持ったのだろう。
…だが、ベヒモスを倒したのは『勇者』ではなくその『取り巻きとされている2人』だと知っているのはイシュタルや国王など上位に立つ人間と現場にいたものだけであり、公には『勇者が聖なる力を目覚めさせ、強大なベヒモスを打ち破った』という話になっている。
(結局、私達は光輝を盛り上げるための駒…なのかしらね)
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一行を乗せた馬車が王宮にたどり着き光輝達が馬車を降りると、1人の少年がこちらにやって来る。
そして周囲を見回すが肩を落とし、続けて光輝を睨んだ。
「おい勇者!これほど時間をかけたくせに、まだ香織は見つからんのか!」
「残念ながら…しかし探索は順調に進んでおり、今回の探索でようやく67層まで到達しました。これなら、迷宮全てを踏破するまでさほど時間はかかりません」
その言葉に少年はますます激昂する。
「そんなことは聞いておらん!迷宮を踏破したところで、香織がいなければ何の意味もないのだぞ!それをわかっているのか!」
少年の名は『ランデル・S・B・ハイリヒ』。ハイリヒ王国の王子である。
彼は光輝達が連れてこられた際、香織に一目惚れしてそれ以降アピールを繰り返していたのだが彼女にとっては『弟分』のような存在でしかなかった…
そもそも、香織がハジメに惚れていた時点で叶わない恋だったが、彼はそれを認めようとしなかった。
「全く、勇者ともあろう者がたった一人の仲間を救えずおめおめ帰ってくるとは…だから私はあの無能共を切り捨てろと―――」
「だったら王子様よう。お前の親父さんに頼んで俺達を迷宮に戻らせてくれや。俺達は来たくもないのにわざわざ顔も知らねえ連中の機嫌取るため帰ってきたんだよ…香織を助けて欲しいのなら、まずお前が目上の人に頭下げて俺達を戻すんだな」
「ヒイイッ!?」
後ろにいた龍太郎を見たとたん、ランデルは顔を青くして後ずさり、姉である『リリアーナ・S・B・ハイリヒ』の後ろに隠れた。
何故彼が龍太郎へ苦手意識を抱いているかというと、それは南雲兄弟の死亡報告が原因だったりする。
南雲兄弟、そして香織が奈落に落ちたと聞いたランデルは激怒して光輝に掴みかかり、その場にいた光輝、龍太郎、雫にあらん限りの罵倒を浴びせた。
まあこの程度ならば子供の癇癪レベルだったのだが…次の言葉が雫と龍太郎の逆鱗に触れてしまった。
『ふざけるな!聞けば香織は例の『無能兄弟』に足を引っ張られて落ちたというじゃないか!そもそもそんな雑魚連中まで勇者の仲間として扱う必要などなかったのだ!無能とわかった時点でさっさと処分すれば香織だって…』
その続きをランデルが言うことはなかった。
なぜなら…『処分』という言葉にキレた龍太郎が胸ぐらを掴んでランデルを持ち上げ、加減なしの本気の怒りをゼロ距離でぶつけたからだ。
『おいこのガキ王子…人の上に立つ人間なら言っていいことと悪いことくらいあんだろうが…まだガキだからって許されると思ってんじゃねえぞゴラァ!!』
付き合いこそ長いが、本気の怒りを未だかつて見たことのなかった光輝達は思わずフリーズする。
『処分だぁ!?あいつらは物じゃなくて人間なんだよ!それともお前がゴミみてえに処分されてえのか…』
『ちょ、ちょっと龍太郎君落ち着いて!流石に龍太郎君の本気で殴ったら人なら死んじゃうって!!』
流石に不味いと思った鈴が拳を握っていた龍太郎の右手を掴み、なんとか彼が落ち着きを取り戻したことでその場は収まった。
その後龍太郎の行動が問題視されるかと思われたが、流石にランデルの人を人とも思っていないような問題発言と仮にも勇者メンバーの主力である龍太郎を失うのは痛いとリリアーナが必死に説得をしたことで龍太郎はとりあえず何の処罰も受けることはなかった。
…余談だが、この時持ち上げられたランデルは手を離されて床に尻餅をついたとき、いつの間にか足元に出来ていた黄色い水たまりに尻を打ったりしたとか…
この時の出来事のせいで龍太郎や後ろで同じ目をしていた雫の存在がトラウマになっていたせいか、ランデルはリリアーナの後ろに隠れていたかと思うとそそくさと逃げ出した。
「…流石にあれはやりすぎたかもな」
「うん…完全に怖がられてるよあれ。まあ龍太郎君が怒るのも無理はないけどね…」
ちょっと反省していた龍太郎に同調する恵里と、横で頷く鈴。
「いえ、あの件は龍太郎様に非はありませんよ。ランデルはいずれこの国を引っ張る存在ですから、口にしていいことと悪いことの区別を覚えるべきですし…」
改めて、リリアーナは姿勢を正して微笑むと彼らを一瞥し、優雅なお辞儀とともに口を開いた。
「それと…お帰りなさいませ、皆様。無事のご帰還、心から嬉しく思いますわ」
男子達のほとんどはリアルお姫様の仕草に心を撃ち抜かれているが、正直無理もないだろう。
容姿も立ち振る舞いも国の代表として相応しいような教育を受けており、その上でプラチナブロンドの髪に碧眼という美しさも重なっている。
クラスの女子メンバーも雫達を筆頭に可愛い少女が多いものの、リリアーナの美しさは彼女達とはまた違うタイプなのだと言わざるを得ない。
「ありがとう、リリィ。君の笑顔で疲れも吹っ飛んだよ。俺もまた、君に会えて嬉しい」
「え…そ、そうですか…」
光輝の爽やかな言葉に多少戸惑うリリアーナだったが、彼女はどういうわけかさほど照れたりしない。
彼女は一応光輝が本心から言っていることを見抜いてはいるのだが、何となく距離を取っているように雫は見えた。
(リリィ…光輝と距離をとってるような…?)
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それから三日後。ついに帝国の使者がハイリヒ王国に到着した。
現在は光輝を中心に迷宮攻略に趣いたメンバーと王国の重鎮、そしてイシュタルを中心とした司祭達に対し帝国の使者5人ほどが謁見し、話は進む。
その中で光輝が勇者として呼ばれ、帝国の使者の前に立った。
「ほう、貴方が勇者様ですか…しかし随分お若いですな。本当にあのベヒモスを倒し、65層を突破したと…?」
イシュタルの手前露骨な態度は取らなかったもののまるで値踏みするような目で光輝を観察する使者。
「えっと…では、どのように倒したのかを説明いたしましょうか?それとも…」
「いや、話は結構。それよりもっと分かりやすい方法があります。この私の護衛と模擬戦をしてもらえませんか?この者はかなりの手練でしてね、それで勇者様の実力もはっきりするかと」
「えっと…俺は問題ありませんが…」
光輝の視線を受けてエリヒド陛下はイシュタルに確認を取り、イシュタルは頷いた。
勇者の魔法を見せて帝国に対し光輝を人間のリーダーとして認めさせるより、完全実力主義の帝国に対するなら直接剣を交えて戦ったほうが手っ取り早いと判断したのだろう。
「構わんよ。光輝殿、その実力を存分に発揮されよ」
「決まりですな。では、場所の用意をお願いします」
こうして急遽だが勇者VS帝国の使者の護衛による模擬戦が決まることとなった…
――――――――――
「くそ!くそ!あの勇者めええ!!」
王宮の自室でランデルは1人荒れていた。
「あいつがキチンとしていれば香織は…香織は落ちずに済んだものを!」
香織に惚れていたランデルだが、その思いが彼女に伝わる前に香織は姿を消した。
「何が勇者だ!あんな奴、香織1人助ければ済んだはずなのにどうして助けられなかったんだ、あの役立たずの勇者が!!」
何度も壁を殴り悲痛な声を上げるランデル。
光輝がいる限り、香織がいつ助けられるかわからない。
そうなれば………最悪の予想が頭をよぎり、ランデルは体が震えていた。
「ねえランデル王子。困り事かな?」
「っ!?だ、誰だ!この私の部屋と知って無断で入ってきたのか!?」
いきなり部屋の中から声が聞こえ、ランデルは慌てて周囲を確認する。
気が付くと、窓枠に自分とさほど年齢の変わらないであろう少年が座っていたのだ。
「こ、この無礼者!どこから侵入した!?」
「まあまあ落ち着いてくださいよ…今日は貴方のためにとっておきのプレゼントを持ってきてあげたのですから」
少年はランデルの前に跪くと名を名乗る。
「僕はタイムジャッカーのロージオ。今日は貴方にこちらを授けたくて訪れました…」
ロージオと名乗った少年はランデルに対し、『アナザーウォッチ』を差し出す。
「これは…」
「ライドウォッチ。この世界に眠る大いなる力の一端でありながら、一つ一つが強大なる力を秘めております」
ランデルは不気味な顔が描かれているアナザーウォッチに手を伸ばしていた。
「このウォッチには『王』の力が封じられており、並の人間では扱う前にその力に溺れてしまいます。ですが生粋の王家の人間たるランデル様であれば…その力で邪魔者を排除し、己の思うがままの行動を起こせること間違いなしです」
「排除………そうだ。排除だ」
ランデルはウォッチを手に取り、自己弁護するかのように呟く。
「香織を救うためだ…いずれ私は王になる。それが今だっただけだ!」
アナザーウォッチのボタンを押したランデルは自らの体にウォッチを当てると、その肉体がウォッチの力に飲み込まれ…
「うあああああああああ!!!!!」
『オーズゥ…!』
頭は鳥、腕は虎、足はバッタのようなデザインの怪物。
ランデルは『血の欲望に染まった王』アナザーオーズへと変貌してしまった。
『香織ヲ助けル……だカら、勇者…殺ス!!!』
――――――――――
帝国の使者と光輝の戦いは、圧倒的に光輝の不利で続いていた。
いかんせん強者の雰囲気を感じなかった風体の男に対し油断してしまった光輝は殺気の込められた攻撃を咄嗟に受け止めたことで光輝は相手が本気で自分を殺しに来ていると察知。
模擬戦である以上相手を殺す覚悟の無かった彼は反撃に躊躇いを持っており、持ち前のスペックでどうにか凌いでいる状況だった。
「おらおらどうした!そんなもので俺に勝てるとでも本気で思ってんのか!?」
荒々しい剣筋だけでなく無駄の無い動きで光輝は足を引っ掛けられて転び、彼に向かって剣が振り下ろされて…
「があっ!?」
光輝は咄嗟に切り札の技能『限界突破』を発動させ、窮地を凌いだ。
この限界突破、光輝が強敵との戦いにのみ使う能力でその効果は一定時間だが全てのステータスを三倍に引き上げるというある意味主人公的な振る舞いをしている彼らしいと言える技能だ。
「…どう見える?龍太郎」
戦いの様子を観察していた雫は、横で腕組みしている龍太郎に問う。
「どうもこうも…後先考えず限界突破を使いたがるのはあいつの悪い癖だよ。敵との実力差がわからないうちに使えば自滅する…光輝が勝つには、限界突破が切れるまでの間に勝つしかねえ」
光輝の顔に余裕は無かった。
心のどこかでこれが模擬戦であり、本気で殺し合うわけではないと思っていたため殺意を持った相手の攻撃に混乱しているのだ。
「わかってるんですか…これは模擬戦ですよ!」
「だからなんだってんだ?まさか適当に武器ぶつけあって、それではい終わり。なんてことになるとでも思ってやがったのか?」
男の攻撃に対して必死に反撃する光輝だがその攻撃は届くことはない。
「こんな戦いで死ぬようなら俺もお前も所詮はその程度ってことだ。人の上に立って魔人族と命をかけた戦争なんてやる資格もねえ!お前は一応俺達人間族の上に立って率いるって自覚してるのか?」
「自覚って…そりゃ、俺はもちろん人々を救うために…」
「傷つくことも傷つけることも恐れて自分の手を汚そうともしない綺麗好きのガキが何言ってやがる!そのご立派な剣に殺気の一つも込められないやつがご大層にカッコつけてんじゃねえよ」
男は剣を構え、ゆっくりと光輝を見据える。
「最初に告げたろ…気を抜くと死ぬって!!」
そのまま男は光輝が動揺している間に攻撃しようとして…
2人の間に光の障壁が張られ、攻撃は届くことはなかった。
「それくらいにしましょうか。それ以上は模擬戦ではなく殺し合いになってしまいますので…ガハルド殿もお戯れが過ぎますぞ?」
「…チッ。バレてたのかよ。相変わらず食えねえ爺さんだ」
障壁を張ったイシュタルに対し小さく悪態をついた男は剣を収め、右耳につけていたイヤリング型アーティファクトを外す。
すると男の身体が白い霧のようなものに包まれ、それが晴れると全く異なる姿に変わっていたのだ。
平凡としか言いようのなかった姿から、筋肉質で野生的な雰囲気を醸し出す40代くらいの男性で、短く刈り上げた銀髪と狼を思わせる鋭い碧眼。
彼の姿を見たとたん、周囲の喧騒が大きくなった。
「が、ガハルド殿!?」
そう。護衛として現れた彼こそヘルシャー帝国現皇帝『ガハルド・D・ヘルシャー』だったのである。
「これはどういうおつもりですかな、ガハルド殿」
「いや~、エリヒド殿。すまなかったな、ろくな挨拶もなしに。だがこれから先人間族の未来を担う重要人物だから直接実力を見たほうがいいと思って一芝居打たせてもらったのさ。無礼は許していただきたい」
謝罪の言葉を口にするが最初から謝る気が無いとわかるガハルド皇帝。その姿を見て早々に諦めた表情になるエリヒド陛下。
光輝達は知らなかったのだが、この皇帝陛下はフットワークがものすごく軽く、こういったサプライズは日常茶飯事なのだという。
そんな中、雫と龍太郎はガハルド皇帝を見たとたん言いようのない妙な感覚がした。
「雫…なんかあいつ…」
「ええ…何かしら、何か妙な…」
すると、戦いの舞台となっていた中庭に上空から複数の騎士が落ちてくる。
「ぐああっ!?」
「があっ!?」
突然のことに周囲が騒然となる中、その元凶が姿を見せた。
「ら…ランデル殿下…?」
現れたのはランデル。だが明らかに様子がおかしい。
なにせその体躯とは不釣り合いな騎士を片手で引き摺り、数メートルはある高さから綺麗に着地したのだ。
冒険者や騎士のような体を鍛えた者ならともかく、ランデルは王族の子供。普通ならこれほどの筋力を持つはずがない。
「勇者…オ前が…!」
光輝を見た瞬間、ランデルは怒りと憎しみを込めた目を向ける。
「お前ヲ殺シて…香織を助けル!!」
『オーズゥ…!』
ランデルはアナザーオーズに変身して光輝に狙いを定めるとその爪で切り裂こうとしてくる。
「なあっ!?」
光輝は咄嗟に攻撃を躱し、ランデルに叫ぶ。
「殿下!どうしたんですか!殿下!」
「黙れエエエェェェ!!」
アナザーオーズから距離を取る光輝。それと同時に雫と龍太郎がライドウォッチを起動させて助けに入る。
「光輝!今のうちに神威の準備だ!」
「でも、その怪物には殿下が!」
「バカ!それくらいしないと足止めにすらならないかもしれないでしょ!65層で現れたやつと似てるってことは…殿下も同じだけの力を持つかも知れない!」
以前襲ってきたアナザーディケイドのことを思い出した光輝はすぐに聖剣を構え、神威の呪文を唱える。
「神意よ!全ての邪悪を滅ぼし光を―――」
しかし、その言葉は続くことは無かった…
「はい、この危ない剣は没収ね~」
現れたのはランデルに力を与えたロージオ。
彼はタイムジャッカーの共通能力である『時間停止』を使い、光輝達の時間を止めたのだ。
ロージオは光輝から聖剣を奪い、それをまるでゴミでも捨てるかのようにそこらへんに放り投げる。
「――もたらっ!?」
呪文を唱える最中に聖剣が消えて驚く光輝だったが、目の前に現れた少年に声をかけた。
「君は…まさか、君がやったというのか!?」
「あ!お兄さん鋭いね~!そうだよ。僕はタイムジャッカーのロージオ。今日は勇者のお兄さんにあのアナザーオーズとの戦いで注意するべきことを教えに来てあげたんだ」
ロージオは小馬鹿にするような動きで光輝の周りを歩く。
「あのアナザーオーズは簡単に言えば、ランデル陛下の欲望が膨れ上がった姿。で、倒す方法は簡単!『死ぬまで殺し続ければいい』ってこと」
「死ぬまで…それって、どういうことだ!?」
ロージオは指を鳴らすと、今度はアナザーオーズだけが時間停止を受ける。
そして、ロージオは光輝から奪い捨てた聖剣を拾うと…アナザーオーズの心臓を貫き、それを抉り出す。
「っ!?」
目の前で起きる凄惨な光景に絶句する光輝達。
アナザーオーズは血溜まりに沈むが…
「グル…ウオ…!」
黒い靄に包まれ、アナザーオーズの肉体が急速に再生される。
それと同時に、ロージオが抉り出した心臓もアナザーオーズの身体に取り込まれ、完全に蘇った。
「復活した…!?」
「そ。アナザーライダーはそう簡単にはしなないのさ。止める方法はね…変身してる人間が力尽きるまで殺す。そうすればウォッチは力を失いアナザーライダーを倒すことが出来るのさ…ま、君じゃ無理だろうけど」
そう言うとロージオは姿を消してしまい、残ったのはアナザーオーズ。
「く…どうすれば!」
光輝はアナザーオーズを倒せる方法が他にないか考えるが、その隙すら与えてくれない。
「勇者あああああ!!」
アナザーオーズは光輝に目掛けて爪を振り下ろし…
《誰じゃ?俺じゃ?忍者!フューチャーリングシノビ!シノビ!》
乱入してきたウォズがアナザーオーズの攻撃から光輝を庇う。
「やれやれ…またしてもアナザーライダーと対峙することになるとはね…」
「ウォズさん!」
雫が駆け寄ると、ウォズはため息をつく。
「加勢しに来て早々だが残念なお知らせだよ。今の私ではあのランデル王子の命を守りつつアナザーオーズを倒す方法を持っていない」
「そんな…!」
ウォズはジカンデスピアを構えつつ宣告する。
「一応、対策は存在するしこの場ですぐ行える…だがそのためには」
ジカンデスピアを向け、ウォズはその人物を指名した。
「君に手伝ってもらうよ?ガハルド・D・ヘルシャー」
視線の先には光輝達の戦いを見物していたガハルドの姿があった。
――――――――――
「ほう…俺の持ってる『これ』、知ってるのか?」
ガハルドは不敵な笑みを浮かべると懐から『ライドウォッチ』を取り出す。
「ああ。それは我が魔王が求めている力の一つだ…いずれ我が魔王がそれを狙いに来るかもしれないが、今は君のものとしておく」
アナザーオーズと格闘しながらウォズはガハルドに告げた。
「なるほどな…これは、その怪物を倒すための力だったということか?」
「当たらずとも遠からず、だね。折角だからそれの力を試してみるといい…どうせ君は正義感から王子様を助けるようなお人好しではない。その力を使いたいという君の『欲望』に従いたまえ」
ガハルドはその言葉に笑い、『オーズライドウォッチ』を突き出す。
「おいそこの筋肉ダルマと剣士のお嬢ちゃん!そこの勇者クンを連れてさっさと離れな!」
「ええ…そうさせてもらうわ」
何か言いたげな光輝を強引に連れ出し、雫達は距離を取る。
「さーて…いくか」
ガハルドはウォッチのウェイクベゼルを回転させ、起動。
《OOO!》
ウォッチは光になり、ガハルドの腰に集まると変身ベルト『オーズドライバー』と3枚の『コアメダル』に変化。
「ベルトに変わった…!」
「てことは…俺達よりずっとウォッチに適応してるってことか…?」
ガハルドはドライバーにメダルを装填し、右腰に付いていた『オースキャナー』を取り外しグリップを握ると待機音が鳴り響く。
ドライバーのバックルを斜めに倒し、スキャナーを握るとそれを勢いよくバックルへスライドさせ叫んだ。
「変身!」
スキャンが完了すると、ガハルドの周囲に3枚のメダル型エネルギーが集まる。
《タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タトバタ・ト・バ!!》
そこに立っていたのは、アナザーオーズに酷似しながらも怪物のような印象が無い戦士。
欲望の王とも言われた、英雄の1人『仮面ライダーオーズ』だった。
「さて、この力を使うのは初めてだが…かかってこいよ小僧!」
オーズは専用武器『メダジャリバー』を出現させ、アナザーオーズと向かい合った…
次回、ありふれた職業と最強兄弟
幕間3 皇帝とオーズと物語のはじまり