ありふれた職業と最強兄弟   作:狼牙竜

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お待たせしました、第1章幕間もこれで完結です!

感想、評価が作者の原動力になりますので、いつでもお待ちしています!


幕間3 皇帝とオーズと物語のはじまり

『この本によれば、『元』普通の高校生南雲ハジメ。彼には魔王にして時の王者『オーマジオウ』となる未来が待っていた』

 

『彼らが地上へと出る少し前、ハイリヒ王国の皇太子ランデルがアナザーオーズへと変身し暴走。ですがそれを止めたのはヘルシャー帝国の皇帝ガハルド・D・ヘルシャー』

 

『彼こそ、オーズライドウォッチを継承していた人物であり彼は仮面ライダーオーズに変身。アナザーオーズと激闘を繰り広げることになりました…』

 

――――――――――

 

「はあっ!」

 

オーズはメダジャリバーでアナザーオーズに攻撃し、アナザーオーズは爪でガードする。

 

「能力は同じか…だが、地力は俺のが上だな!」

 

オーズの足がバッタのように変化し、強烈な蹴りでアナザーオーズを蹴り飛ばす。

 

 

「邪魔…すルな!」

 

アナザーオーズは銀色のメダル『セルメダル』を取り出すと、逃げ遅れた貴族やその場に残っていた兵士達目掛けてメダルを投げ入れる。

 

「ひいっ!?ぐ、あああ!?」

「助け…がああ!?」

 

メダルが体に入り、兵士達は次々と体に包帯の巻かれた真っ黒な怪物『黒ヤミー』に変身してしまった。

 

 

「チッ!鬱陶しい雑魚増やしてきたか!」

 

オーズは5体の黒ヤミーの攻撃を受け流しアナザーオーズと戦うが、黒ヤミーの妨害で思うように攻撃できずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら、私達も加勢してあげよう」

《一撃カマーン!》

 

一陣の風とともに放たれた斬撃が黒ヤミーを1体撃破。

 

「お前…」

「それとも、1人で余裕だったのかな?」

 

ウォズの挑発めいた言葉にオーズは面白そうに笑う。

 

「はっ!だったらお前の力ってやつを見せて欲しいもんだな!」

 

 

 

 

オーズはタカとバッタのメダルを抜き、別のメダルに交換。

そのままスキャンを再度行う。

 

《ライオン!トラ!チーター!》

 

タトバコンボとは比べ物にならないエネルギーの奔流がオーズを包み、頭部と脚部が変化。

 

《ラタ・ラタ・ラトラァータァー!!》

 

タトバとは異なる音楽が流れ、オーズは猫系メダルによる強化形態の一つ『ラトラーターコンボ』へと変身。

 

(BGM Ride on Right time)

 

「ウオアアアアァァァ!!」

 

湧き上がる力に叫ぶオーズは目にも止まらぬスピードで黒ヤミーを両断。

さらに全身から熱光線『ライオディアス』を放ち、黒ヤミーの残る3体に大きなダメージを与えた。

 

「やるね…なら、私も!」

 

ウォズはドライバーのレバーを操作し、必殺技を発動。

 

《ビヨンド・ザ・タイム!忍法、時間縛りの術!!》

 

無数に分身したウォズが連続でジカンデスピアを用い切り裂くことで、全ての黒ヤミーが消滅。

 

「あとは君に任せるとしようか…じゃあね」

 

そう言うとウォズは紫のマフラーを使い、忍者のように姿を消した。

 

 

 

「ふん…まあいい。先に片付けるのはこいつだ!」

 

 

《スキャニングチャージ!》

 

オーズは再度オースキャナーを使いベルトをスキャンし、コアメダルの秘められた力を解放。

 

すると、アナザーオーズとオーズの間に3つのエネルギーリングが出現。

 

「ハアアア…」

 

腰を落としたオーズは両腕に展開された爪『トラクロー』を構え、走り出す。

 

 

 

「はあああ…セイヤアアアア!!」

 

一気にアナザーオーズの前に現れ、両腕のトラクローでメッタ斬りにする必殺技『ガッシュクロス』が炸裂。

 

 

「ウ…あぁ…香織………!」

 

全身から火花を散らせたアナザーオーズは膝をついて倒れ、ついに爆発。

 

爆風の中からボロボロになったランデルが倒れ、横に落ちたアナザーオーズウォッチは音を立てて砕け散った。

 

 

――――――――――

 

 

あの後、オーズの力をガハルドが使ったことにより教会が騒然となった。

何せ仮面ライダーの力はエヒトを狙った反逆者の力。それをよりによって帝国のトップが手に入れていたというのだから無理もないのだろう。

だが帝国も一応ながら教会の信者であることと反逆の意思を感じないこと。そして何よりアナザーオーズに変身していたランデルの命を救ったことを考慮し、特に罰などは与えられなかった。

流石に王族を救った事実だけは覆しようがなかったからである。

 

 

 

そして次の朝。

雫と龍太郎は日課となっている早朝の訓練を行っていた。

 

 

「お!やってるやってる!」

 

すると、王宮からガハルドが現れ2人に話しかけてきた。

 

「ガハルド皇帝陛下…どうして?」

「いや、ちょっと気になってな…勇者チーム事実上最強と言われてるお二人さんがどんな実力かよ」

 

ガハルドは龍太郎と雫の先程までの戦いを見て口にする。

 

「なるほどな…俺と同じ『コレ』を持ってるだけあって何かほかの連中とは違うな」

 

ガハルドはオーズウォッチを取り出し、見せると龍太郎達は息を呑む。

 

 

「そんな警戒すんなよ。お前らも持ってんだろ?これ」

 

観念したように雫と龍太郎はそれぞれ鎧武ウォッチとゲイツウォッチを取り出した。

 

「…妙な感覚がしたと思ったら、ウォッチの力…だったんですね」

「みてえだな。どうやら、他にウォッチを持ってる奴が近くにいると何となくだがわかるっぽいな」

 

そう言うと、3人ともウォッチをしまう。

 

「だが、昨日使わなかったってことはお前さん達、まだその力を引き出せているわけじゃないな?」

 

この男の鋭さに舌を巻く思いだった雫と龍太郎。

だが、ガハルドは真剣な表情で続ける。

 

 

「なあ、物は相談だが…お前ら、帝国に来ないか?」

「…なぜ、私達を?」

「お前さん達2人の目を見てわかったのさ。ウォッチの力をモノにしたいって貪欲な目をしてるしな………同じ力を持つ人間のよしみってやつだ」

 

ガハルドと目を合わせた2人は…

 

 

 

 

 

「いえ、申し訳ないですが断らせていただきます」

「…ほう?どうしてだ?」

 

龍太郎が真っ先に断ったことに驚くガハルド。

 

「確かにそっちに行けばすぐ強くなれるかもしれない…だけど、何よりも先に俺達は成し遂げなければいけないことがあるんですよ」

 

オルクス大迷宮に潜り、ハジメ達を救い出す。

それまでは他のことをしている余裕などない。

 

 

 

「…はっ!そうかよ。なら冗談もこれくらいにしておくか」

 

そう言うとガハルドはその場を立ち去っていった。

昨日聞いた話だと、どうやら今日の昼にでも帝国に帰るらしい。

 

 

「…何ていうか、滅茶苦茶なオッサンだったな」

「ええ…でも、ウォッチを持つ以上また顔を会わせそうな気がするのよね…」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

その日の帰り道、ガハルドは護衛の者に尋ねられた。

 

「何?勇者のことをどう思ったかだと?」

「ええ…何分、彼が我々人間族を率いるものですから。皇帝陛下が勇者と戦って感じ取ったことを聞きたくて…」

 

一応、帝国としては光輝を勇者と認め、これから全力で支援するという話には持ってきている。

だが同行したもの達はそれがあくまでも教会に対する建前だと見抜いていたのだ。

 

 

ガハルドは嫌なものを見たような表情で語った。

 

 

「ありゃダメだな。あいつは単なる子供だよ…理想とか正義を何の根拠もなく信じているようなタイプのな」

 

帰るときガハルドは雫に対し半分冗談、半分本気で『俺の愛人にならないか?』とアプローチした際、横に居た光輝が本気で食ってかかったのを思い出す。

 

『おい、なんでわざわざお前さんが出向く?別にこの女と恋人関係でも夫婦でもあるまいに』

『雫は俺の大切な仲間で幼馴染です!口を挟むのに問題なんてありますか?』

 

後ろを見たとき、雫は小さなため息をついていたのを思い出した。

 

 

 

「あいつは周りの人間との関係すら自分の思い通りじゃないと気がすまないタイプだろうよ………いや、そんな生ぬるいもんじゃねえ」

 

雫だけでなく龍太郎もどことなく光輝に対して淡白な反応を見せていたことが彼にとって印象的だった。

 

光輝は2人を『大切な仲間』と言っているが、言われた方はさほどそう思っているようには見えなかったからだ。

 

「きっとあいつは自分の妄信している理想と正義、そして仲間との関係まで全部が自分の思い通りになっていると心から信じてるんだろうよ。まるで『主人公』みたいにな…」

 

恐らく、光輝は無意識のうちに自分がこの世界の主人公か何かと思っているのだろうとガハルドは推測した。

絶対的な力を持つイケメン勇者。確かにおとぎ話の主人公としては理想的だろう。

主人公は言動で間違えることなどありえないし、周囲は主人公である勇者に必ず賛同する。賛同しない者は魔人族などの『敵』しかいない。

 

(自分自身が抱えている『欲』をまともに直視できねえようじゃ、いつか手痛い現実を突きつけられるかもしれねえが…そうなってもあいつは自分の醜い部分を見ようとはしないだろうな)

 

オーズの力を得て自らの『強欲』と向き合ったガハルドは、いずれ光輝が自分の欲から逃げる先に待ち受ける破滅の未来を何となくだが予期していた…

 

「やれやれ…一体どんな環境と能力がありゃあんなふうに育つんだろうな」

 

 




次回、ありふれた職業と最強兄弟

第2章1話 騎士とウサギ2006



タイムジャッカー・ロージオ

人間族の少年タイムジャッカーで、他人を小馬鹿にした行動が目立つ。
スウォルツが選んだ少年だが、身元などは一切不明。
名前の由来はイタリア語で時計を意味する『オロロージオ』から

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