少しづつ仕事が増え、中々手がつかず…
今回から少しずつではありますが展開が変わっていくかもしれません。
感想、評価はいつでもお待ちしています!
『この本によれば、『元』普通の高校生南雲ハジメ。彼には魔王にして時の王者『オーマジオウ』となる未来が待っていた』
『オルクス大迷宮を脱出した我が魔王達は兎人族の一部族ハウリアと取引を行い、彼らの身の安全を確保する代わりにハルツィナ樹海の大迷宮への案内と、シア・ハウリアの所持するカブトライドウォッチの譲渡を条件にする』
『帝国兵との戦いこそあったが乗り越え、我が魔王達は樹海へと足を踏み入れるがそこには樹海に暮らしている亜人族の歓迎が待ち構えていた…』
――――――――――
「キサマら…そうか!報告にあったハウリア族は貴様達のことか!」
シア達を睨みつける虎人族の男は、化物でも見るような眼でシアを睨む。
「忌み子を匿い続けた亜人族の面汚し共め!この場で処刑して――」
虎人族の男が最後まで言い切る前に、彼の真横を何かが掠め後ろの木が大きく抉れる。
目の前にいたハジメはドンナーを構えており、銃口からは硝煙が上がっていた。
「今の攻撃は一瞬の間に数十発単位で連射可能だ。お前が下手な動きを見せれば今度はお前の顔面を吹き飛ばす」
「それと…周囲を取り囲んでいる14人にも告げる。お前達の数と位置は全て把握済みだ。お前たちのいずれかがこちらに攻撃をしようとした途端、俺達の攻撃はお前達全員を葬ると思え」
ハジメとツカサの告げた言葉に虎人族のリーダーは表情が歪んだ。
人間族だろうとこの樹海の中でなら勝機があると踏んでいたのかもしれないが、既にこちらの数までバレている以上、下手すれば殺されるとすぐに理解した。
「言っておくが後ろの女達もお前ら程度なら一人で全滅させることくらい容易い…悪いが俺達もこいつらと契約したもんでな。こいつらの身の安全を確保するまで誰一人として殺させないと約束をしている。こちらに危害を向けて………ただの一人も生きて帰れると思うな…!」
威圧的な雰囲気を纏ったハジメの姿に虎人族達は無意識に後ずさった。
「…お前達。何が望みでこの地に足を踏み入れた?」
「俺たちの目的は樹海の大迷宮…その入口である大樹に行くことが目的だ」
ハジメの言葉に訝しげな顔になる虎人族のリーダー。
「迷宮の入口…?何を言っている?七大迷宮とはこの樹海そのものだ。一度踏み込んでしまえば最後、亜人以外には進むことも帰ることも叶わなくなる、天然の迷宮…それこそが七大迷宮の一つであるこの樹海だ」
「いや…それはありえない」
「なに?」
ハジメは相変わらず鋭い目つきで虎人族のリーダーを睨みながら語った。
「俺達はすでに迷宮を一つ攻略しているが、そこの魔物は地上の数倍…いや数十倍は強かった。もしもこの樹海が迷宮ならば、ここの魔物はいくら何でも弱すぎるんだよ」
「それにだ…大迷宮は『解放者』が後世に残した希望を繋ぐ試練だ。お前達にとってここが庭ならば、亜人族にだけ簡単な試練になってしまう…それっておかしいからな?」
『解放者』や『試練』など、迷宮に関する言葉を知らなかった虎人族は困惑していたが、圧倒的な実力差を感じ取ってか対話に切り替える。
「…つまり、同胞や亜人族に対して危害を加えるつもりはないのだな?」
「ああ、約束しよう…少なくとも、俺の目的は大迷宮の攻略だ。そちらが適当な理由をつけて俺達に危害を向けない限り、俺たちからは絶対に危害を向けたりしない」
「―――であれば、大樹へ向かうのは構わないと私は判断する」
虎人族のリーダーが選んだのは、戦うよりもハジメ達の要求を受け入れ、同胞を守ることだった。
「だが、一警備隊隊長の私ごときが独断で下していい判断ではない。一度本国に指示を仰ぎたい」
それでも、恐らくこれがリーダーの出せるギリギリの譲歩案なのだろう。
「わかった。ただ、きちんと俺の言葉を伝えてくれよ?」
――――――――――
それから数十分後。リーダーが送った伝令のメンバーと共に新たな亜人が現れた。
もっとも、他の亜人と違い動物的な特徴ではなく長い耳を持つ、所謂エルフというべき種族。
その中で中央にいた長老らしき男が近づいてきた。
「ふむ…お前さん達が例の人間族かね。名は何という?」
「…俺はハジメ。南雲ハジメだ」
「私は、白崎香織です」
「…ユエ」
「俺は南雲ツカサ。ハジメの兄だ…あんたは?」
「私はアルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座の一つを預からせてもらっている。さて…お前さんの要求は先ほど聞いたのだが………その前に聞かせて欲しい。『解放者』という言葉、どこで知った?」
「俺達が攻略したオルクス大迷宮の奈落の底…その中にあった、オスカー・オルクスの隠れ家でこの世界の真相を知った」
ハジメは証拠品となるオルクスの遺品である『宝物庫』を見せた。
「これは…確かにオスカー・オルクスの隠れ家にたどり着いていたようだな」
納得した様子のアルフレリックは、ハジメ達に頷く。
「よかろう。とりあえずフェアベルゲンに来るがいい。私の名で滞在を許そう。もちろん、ハウリアも一緒にな」
アルフレリックの言葉に周囲の亜人族がざわつく。
本来ならば人間族を樹海に滞在させるなど、前代未聞のことであるからだ。
「おい待て。俺達は大樹に用があるのであって、フェアベルゲンに興味はないんだ…問題ないのなら、このまま大樹に向かわせて欲しいのだが」
ツカサの言葉にアルフレリックは首を振った。
「それは無理じゃよ。大樹の周辺は特に霧が濃くてな…一定周期で霧が弱まるから、亜人族の案内があっても、入れるのは早くてあと10日ほどかかる。亜人族なら誰でも知っているはずなのだが…」
ハジメ、ツカサの視線が後ろのカム達にゆっくりと向けられる。
「…あ」
どうやら、このことを今思い出したらしいカムの顔が青ざめる。
「………ええい、お前達!何故もっと早く言わなかった!?」
「ぞ、族長何言い出すんですか!?てっきり今日が周期かと思ってましたよ、だってやたら自信たっぷりでしたし!」
「そうですよ父さま!私達、てっきり父さまなら霧の周期を把握してるとばっかり…」
美しい種族間の愛情など、単なる幻想だったのだろうか。目の前でハウリア達はお互いに責任をなすりつけ合っている醜い光景が広がっていた。
「………シアもカムさん達も、ちょっと幻滅しました」
クロハネの辛辣な一言が樹海に響いた…
――――――――――
森の中を歩くハジメ達一行だが、ハウリア族の頭頂部には見事なタンコブが出来ていた。
「う~…なんで私たちまで…」
「ハッハッハ。ハウリア達はいつでも一緒だ!」
頭をさするシアと豪快に笑うカムをよそに一行はアルフレリック達の案内で樹海の奥…『フェアベルゲン』にたどり着いた。
「………綺麗」
「うん…」
香織とユエが思わずそうつぶやくほど、眼前に広がる『亜人の国』は人間族の国とはまた異なる異界の美しさを持っていた。
「どうやら、我らの故郷フェアベルゲンを気に入ってくれたようだな」
アルフレリックの言葉に、ハジメは素直に答えた。
「ああ…自然と人の技術が見事に混じり合っている…空気もうまいし、多分これまで来た街の中で一番だ」
ハジメ達は住人たちからの困惑、警戒などを含めた視線を無視しつつアルフレリックの案内してきた亜人族の集会所へとたどり着く。
「…なるほど。試練に神代魔法。それに神の盤上である世界か…」
ハジメとツカサはアルフレリックにこれまでオスカーの屋敷で入手した情報を明かす。
迷宮の本当の意味。そしてこの世界がどういう存在なのかを。
「驚かないのか?」
「この世界は元から我らに優しくないのだ。今更であろう」
そう言ってアルフレリックはこれまでフェアベルゲンの長老に伝えられていた言葉を伝える。
彼らの祖先に言伝を残したのはオスカーと同じ『解放者』のリューティリス・ハルツィナであり、彼女はアルフレリックと同じ森人族…すなわちシア同様魔法を使える亜人族だったという。
彼女の言葉によると『神殺し』を成せる可能性のある攻略者とは敵対せず、丁重に扱うべしと言われていたらしい。
そして、『時の王者』の資格を持つ者には『鬼の力』を授けるという伝承もあったのだが…
(なんか妙じゃねえか、兄貴?)
ハジメは小さな声でツカサに話しかける。
(ああ…リューティリスも解放者ならば神代魔法の使い手…すなわちシア同様魔力を操れる亜人だ。なのにどうしてリューティリスは忌み子として伝えられていない…?)
それに、彼女の言葉からしてリューティリスもライドウォッチを所持している可能性が高い。
実際、ツカサのライドブッカーからは『仮面ライダー響鬼』のライダーカードが淡く発光していたのだ。
(魔力を操れて、ウォッチという異端の力を持っている…何故奴だけが忌み子扱いなんだ?)
そんな疑問がハジメの頭を駆け抜けるが、突然部屋の扉が蹴破られ、大柄な熊野耳を持つ亜人…『熊人族』の男が叫びながら現れる。
「アルフレリック…貴様、どういうつもりだ!?何故人間を招き入れた?それにこいつらハウリアもだ。忌み子にこのフェアベルゲンの地を踏ませるなど…返答によっては長老会議で貴様に処分を下すぞ!」
ふと後ろを見た香織は、カムとシアが頬を少し腫らしている姿を見る。
どうやら、あの熊人族の男に殴られたらしい。
「なに、口伝に従っただけだ。お前も長老の座についているのなら理解しているのだろう」
「なら、こんな人間族の小僧共が例の資格者だというのか!?敵対してはならない強者だと!」
熊人族の男…『ジン』はハジメ達を睨むとその拳を強く握り…
「なら、今この場で試してやる!」
ジンの拳はハジメに振り下ろされる。
「ハジメさん!」
シアが叫び、大木をへし折れるほどの豪腕がハジメに迫るが…
「なにっ!?」
ハジメはそれを左手の義手で受け止め、その力を利用して軽く投げる。
「くっ!」
ジンが体勢を立て直そうとするが、ハジメはそれより早く『両手を合わせる』と左手に仕込んだ『アザンチウムプレート』を高速錬成し左手にメリケンサックを創りだす。
「ふっ!!」
ステータスに任せた左ストレートがジンの腹に突き刺さり、その衝撃波で後ろの壁が粉々になった。
「………で?やり合いたいなら相手になるぞ?」
ハジメは再び手合わせ錬成を行い、メリケンサックを解除すると近くの石柱に触れて錬成を行い警棒を作った。
――――――――――
それから数十分後。
ジンは内臓破裂や粉砕骨折などで一命はとりとめたものの戦うことは二度とできないというが…
現在、今の長老たちである虎人族のゼル、翼人族のマオ、孤人族のルア、土人族(ドワーフ)のグゼ、そしてアルフレリックの5人がハジメ達と会談を行っていた。
「ふ~ん。確かにこれはオスカー・オルクスの紋章だね。実力もジンを瞬殺するレベルだ」
ルアはハジメ達に対して『本物』だと認識し、彼らを資格者として認めることにした。
「僕は彼らを資格者として認めるけど…君は?」
ゼルは首を振って拒絶の意を示す。
「俺は認めんぞ。こやつは我らの仲間を再起不能にしておいて、認められると思っているのか?」
グゼも同じ返答だったが、ハジメは言い返す。
「はっ。先に俺が雇ったハウリアを殴ったうえ俺達に殺意を向け攻撃したのはあの熊野郎だろ?俺は反撃で留めたし、奴も自分がやられることくらい承知の上で攻撃したんじゃねえか?」
「き、貴様!ジンはな!ジンはいつもこの国の事を思って行動して…」
「だからといってそれがいきなり相手を下に見て殺そうとする理由になるのか?だとしたらお前ら、頭の中まで獣畜生じゃないのか?」
「そ、それは…しかしだ!」
まだ非を認めないグゼ達に対し、ハジメは『威圧』を軽く発動しながら言い返す。
「勘違いもいいかげんにしろよ。俺が被害者で、あの熊が先に手を出した加害者。長老ってのは犯罪に関して平等な判断を下す立場だろ?だったら…どっちが罰せられる立場かはき違えることだけはするな」
グゼとゼルはジンと仲が良かったのだろうというのは何となくわかったが、だからといってそれが向こうのやり方を正当化していいはずがない。
「で、結局そっちの判断をまだ聞かせてもらってないが…どうなんだ?」
そこから話は難航し、結局のところは…
「悪いが、翼人族と虎人族、土人族に熊人族がお主らを拒んでしまったからな…済まないが、大樹への案内はできないだろう」
結局、ハジメ達を快く思わない種族が半数を超えてしまう。
「そういうことだ。言っておくがハウリアの力を借りることはできんぞ?こいつらはすでに森を追放された罪人。すでに長老会議で処刑が決まっている」
その言葉を聞いたシアが叫んだ。
「ま、待ってください!せめて処刑するなら私だけで…他のみんなは、父さま達は普通の兎人族なんです!罪なら私だけのものです!」
しかし、そんなシアをカムが止める。
「…いいんだ。お前を守ると決めた日から、皆覚悟は決めている。その日が来ただけのことだ」
「父さま………」
カムはシアの涙を拭い、語る。
「お前が生まれてきたことには何の落ち度もない。家族を見捨てて生き延びたいなどと考えるものは私たちの一族にはいないのだよ」
すると、クロハネがシアの肩を優しく叩く。
「シア…わかってるでしょ?カムさん達はきっと、貴女の死んだ世界で生きようとは思わないって」
カムの考えが変わることがないと知ったシアの涙は止まらず、ゼルはいい気味だとばかりに笑いながらハジメに問いかけた。
「これで大樹に行く方法が尽きたが…どうする?我らに謝罪して力を貸して欲しいと頼むか、それとも運良くたどり着けるかに賭ける…どちらか一つだ」
しかし、ハジメの返事は決して変わることがない。
「お前ら…底抜けのアホだな」
絶対零度と表現できそうな視線を向け、ハジメは決して変わらない考えを告げた。
「俺達にとってお前らの事情なんざ関係ないんだよ。ハウリアを処刑して俺達の大樹行きを邪魔するってことは俺たちの前に立ちはだかる『敵』ってことになるだけだしな」
ハジメはシアの頭に手を置く。
「俺の行く道を拒むってんなら…お前ら全員覚悟を決めてもらうぞ」
彼の『本気』を垣間見たアルフレリックは再度問いただす。
「…本気なのかね?」
「当然」
「フェアベルゲンから案内人を出すと言ったら?」
「何度も言わせるな。俺の要求する案内人はハウリア族だけだ」
「…何故そこまでハウリアに拘る?大樹に行きたいのなら案内は我々でも良いはず…」
ハジメは首を振る。
「よかねえよ。元々、迷宮へ案内してもらうまで安全を保証するって約束を果たしてるんだ。なのに途中でもっといい条件が出たからってホイホイ変えるのは俺の性分に反するし、何より………それは最悪の『裏切り』だ」
最後の言葉を低い声で言ったハジメにアルフレリック達は背筋が寒くなる感覚を覚えた。
「…なら、ハウリアはお前さん達の奴隷になったということにしよう。この国の掟では奴隷となり樹海の外に連れ出されたものは死亡扱いとなる。我々は魔法が使えんし、テリトリーである樹海から出てしまえば人間族や魔物にも勝てんからな」
アルフレリックは顔を上げ、宣言する。
「よってハウリアはすでに死亡扱いとする。そうなれば我々も殺すことはできない」
「だがアルフレリック!そんな屁理屈通じるわけ…」
ゼルが反対しようとするが、アルフレリックに止められる。
「お前もわかっているだろう…ハウリアを処刑すれば彼らは直ちに私達を攻撃する。その時、私達はただの一人も生きていられると思うか?」
その言葉を聞いてゼルは悔しげな顔をしながらもおとなしく引き下がった。
「というわけだ。済まないな、口伝の資格者とこうして出会えても歓迎できないのは心苦しいが…」
「いや。俺の方も随分暴れた上ワガママを言った自覚はあるんだ。むしろこの程度にしてくれてそこそこ感謝しているよ」
そう言うとハジメは椅子から立ち上がり、ツカサはハジメの肩を叩く。
「お疲れさん、ハジメ。交渉役まで全部任せちまったな」
「気にすんな兄貴。ハウリアの交渉くらいは俺が中心でやるべきだと思っただけさ」
ハジメは未だに状況についていけていないシア達に声を掛ける。
「おい、さっさと行くぞ」
「え?え、ええ?」
すると、香織とユエが笑いかける。
「もう大丈夫だよ。これでもう、シアちゃんが狙われることはないんだから」
「ん…とりあえず覚えておくべきは…『ハジメ達がアナタ達ハウリアを救った』。それだけでも覚えてて欲しい」
何でもないように歩くハジメ達。
だが、シアにはその背中が余りにも大きく、眩しく見えた。
「あ、あの…ありがとうございます。シアのこと、助けてくれて」
クロハネが頭を下げるが、ハジメは手をひらひらと振る。
「いいっての。俺はあくまで約束を果たしただけだ…約束一つ守らないんじゃ、俺が俺を許せなかっただけだよ」
――――――――――
今、シアの胸の内では不思議な熱が灯っていた。
『約束』。それは樹海の案内といつしか手に入れていた力と引き換えにシアと彼女の親友、家族の命を守る。
彼女にとって最後の希望とも言える約束だった。
それを、ハジメは守ってくれた。
他者の血で手を汚そうと、フェアベルゲンという亜人族の全てを敵に回すリスクを背負ってでも彼はあの小さな約束を果たしてくれたのだ。
(こんな未来…見えてませんでした…)
胸を打つ熱い思い。
この感情は家族がこれ以上死なずに済んだことへの嬉しさなのか…それとも親友とこれからも一緒に生きていける嬉しさなのか。
いや。すでに彼女の中で答えは出ていた。
「……………ハジメさん」
「ん?」
足を止めて振り返ったハジメに対し、シア・ハウリアは堂々と宣言をした。
「私も………貴方達の旅に連れて行ってください」
「貴方たちの…未来を見たくなってきちゃいましたから!!」
次回、ありふれた職業と最強兄弟
第5話 ハー○○ンキャンプ1987