仮面ライダーゼロワン、今月で終了という寂しい現実が待っていますが来月から始まる第二の令和ライダー、セイバーも期待しています!
感想、評価をいつでもお待ちしています!
『この本によれば…『元』普通の高校生にして錬成師南雲ハジメ。彼には魔王にして時の王者『オーマジオウ』となる未来が待っていた』
『ハルツィナ樹海の大迷宮を探索すべく忌み子として追放された兎人族の少女『シア・ハウリア』の一族を救うため奔走した我が魔王達は、無事にハウリア族の安全を確保することに成功』
『しかし、ハルツィナ樹海を包み込む濃霧が晴れて大迷宮の入口である『大樹ウーア・アルト』にたどり着けるようになるまであと10日の猶予がある。そこで我が魔王達はこの期間でハウリア達を…』
「おっと。先まで読みすぎました」
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「さて…今日から霧が晴れるまでの間、お前たちには戦闘訓練を受けてもらおう」
フェアベルゲンから離れたハジメ達は大樹の近くに拠点を作ってから数十分後。
ハジメの言葉にハウリア達がキョトンとした顔になる。
「あの、ハジメ殿…戦闘訓練とは?」
一族を代表し、カムが尋ねる。
「そのままの意味だよ。どうせ大樹にたどり着くまでは10日の猶予があるわけだし、俺もこの先の迷宮を突破できようが入れまいが、どちらにしろ出ていくことに変わりはない。だからこの間にお前達がせめてこの樹海の中で魔物達に襲われても生きていけるような戦闘技能を身につけられるよう訓練を受けてもらおうと思ってな」
ハジメの言葉を聞いて、カムはその意図を悟る。
彼がハウリアの安全を保護してくれるのはあくまでも大樹への案内が終わるまで。案内が完了するまでのこの10日間はハジメが自分達の安全を保証すると長老達に伝えてはいるが、大樹へ連れて行き案内が終わってしまえば、ハジメとの契約もそこで切れてしまう。
「シアとクロハネはもうその先のことまで考えて、一足先にユエと香織相手に訓練している。だがお前達は考えないようにしていただろ?悪意に対して逃げ隠れることしかできず、フェアベルゲンという隠れ家までお前達は失った。その上俺達の庇護を失ってしまえば、もうお前達の隠れる場所はどこにもない」
「逃げ場もなく、悪意に抵抗する力もないお前達は今度こそ魔物や他の亜人、帝国兵といった脅威にさらされて全滅………お前ら、本当にそれでいいと言えるか?為すすべもなく、大事なものを守ろうともせず無抵抗なまま死ぬ未来を受け入れて死ねるか?」
ハジメの鋭い眼に気圧され、残酷な現実を突きつけられるハウリア。
だが、その中で何人かの青年達が声を上げる。
「…そんなの、いいわけがない」
「このまま…弱くて死ぬだけの人生なんて…嫌だ…!」
その言葉を聞いたハジメは不敵な笑みを浮かべる。
「だったら話は簡単だ。お前達が悪意に決して屈しないほど強くなればいい…食い下がろうと思えれば、人は強くなれるはずだ」
これはハジメ自身の経験でもある。『無能』や『役立たず』の烙印を押され絶望したハジメは、ただ一つの目的のためにどんな敵にも屈しないよう強くなって、この地上に戻ってこれた。
「ただし!途中で折れた奴を連れてくるほど甘くない。力を求めるのも努力するのもお前達自身だということを忘れるな!」
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一方、ツカサはハジメ達から離れてシアと向かい合っていた。
その傍らには香織とユエ、クロハネもいる。
「シア。とりあえずお前がウォッチを使えるってのを確かめたいんだが…」
「わ、わかりました!」
ツカサはネオディケイドライバーを装着し、シアはカブトライドウォッチを取り出すとウェイクベゼルを回し、起動。
《KABUTO!》
ウォッチが起動すると、カブトウォッチは赤いカブトムシ型メカ『カブトゼクター』に変化し、シアの腰には銀色の『ライダーベルト』が装着される。
ツカサもディケイドのカードを取り出し、同時に叫ぶ。
「「変身っ!」」
《KAMEN RIDE…DECADE!》
ツカサはネオディケイドライバーにカードを装填し、ディケイドに。
《HENSHIN》
シアはカブトゼクターをベルトに装着し、重厚な鎧を纏った戦士『仮面ライダーカブト・マスクドフォーム』へと変身を果たした。
「さて…お前からかかってこい」
「は、はい!いくですよ~!!」
カブトは斧型武器『カブトクナイガン』を構え、ディケイドもライドブッカーを取り出し…
「「はあああああああ!!!」」
カブトとディケイド。2人のライダーがぶつかりあった。
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訓練開始一日目
ハジメはカム達にかつて奈落の底での練習で創り出したナイフを配布する。
「とりあえず取り回しやすいナイフを配る。1人一本ずつ用意してあるから順番に受け取れ」
ハジメがカムに武器を配布すると、カムだけでなく他のハウリア達の挙動が止まる。
「どうした?」
「その…もっと安全な武器はありませんか?」
「はぁ?」
カムの言葉に思わず聞き返すハジメだが、カムは顔を青ざめながらナイフを指差す。
「だってこの鋭さ…こんなので斬られたら痛いに決まってるじゃないですか…」
カムの頭部にハジメの右手(生身)によるげんこつが炸裂。
「それが一族の命運がかかっている時に族長が言うセリフか?」
「す、すみません…」
ハジメは盛大なため息をつく。
「いいか。もう一度言うが…『あくまでもお前達自身で強くなること』だ。俺は単なる手伝い…それを忘れるな」
続けて、ハジメはカム達に自信をつけてもらうために大事なことを説明する。
「お前達は亜人族でも弱いが、弱い=全てにおいて他種族より劣っているわけじゃない。何か一つでも取り柄があれば、それをベースに強くなれる可能性がある。実際、『無能』の俺でさえ原型を留めない代償付きだがこうやって強くなれたんだ」
自身が『無能』だったと語るハジメの言葉にカム達は驚きを隠せない。
「能力も一般人並で、魔法適性もゼロ。そんな俺が唯一持っていた武器は『錬成』の魔法と故郷の武器の知識だけ…そいつを頼りに俺は兄貴達と地獄の底からこうして這い出てこれた。そしてお前達の武器は…」
ハジメが指さしたのは、カム達の耳。
「敵を見つける索敵能力と気配を消す隠密行動。そして家族として長年暮らしてきたことによるほかメンバーのだれとでも呼吸のあった動きができることの3つ。お前達はそれをベースとして訓練をする予定だ」
敵を見つけ、先に行動するための索敵。敵から見つからず逃げるための隠密。いずれも、『逃亡』から『攻撃』に転じればハウリアの強みになることは間違いない。
さらに、ハウリアは亜人族の中でも強い『家族の絆』があるためそれを生き残るための武器にできるとハジメは判断していたのだ。
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「てやああああああ!!」
カブトのパンチを受け流し、投げ飛ばすディケイド。
「力任せじゃダメだ!カブトの真髄はパワーのゴリ押しじゃなくスピードを駆使した格闘戦。自身の能力をパワーだけじゃなくスピードに割り振るよう意識して、常に相手の死角を攻める気持ちでこい!」
「は、はいです!キャストオフ!」
カブトはベルトのゼクターの角を反対方向に倒し、装甲をパージ。
《CAST OFF》
弾き飛ばされた装甲が弾丸のように周囲の木々を粉砕し、カブトは高速戦闘に優れた第二形態『ライダーフォーム』に変身。
《CHANGE BEETLE》
「これなら…負けないですよ!」
「その意気だ…かかってこい!」
カブトはカブトクナイガンの斧パーツを引き抜き、ナイフの形状をした『クナイモード』にして逆手に持つとディケイドに攻撃を繰り出した…
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二日目。
「ああ…どうか罪深い私を許してくれ~!」
ナイフでトドメを刺した魔物にハウリアの青年がすがりつく。
まるで、互いにゆずれぬ信念の果て親友を殺してしまったかのように…
「ごめんなさい!ごめんなさい!!それでも…私は生きなきゃならないのおっ!!」
魔物の首を切り裂いたハウリアの女は、まるで愛した人をやむなく殺したかのように謝罪の言葉を殺した魔物に語り続ける…
「ぐああっ!?こ、これが刃を向けた私への報い…か。当然の結果だな…」
死に際のネズミっぽい小さな魔物による反撃の体当たりをくらったカムが倒れながら自嘲するかのように呟く。
まるで苦悩の果てにかけがえのない友を殺したことを悔いるかのように…
なお、ここまで狩った魔物とハウリアは別に友達だとか苦楽を共にした仲間だとかそういうわけではない。
もっと言えば初対面である。訓練のために狩るターゲットと狩人の関係でしかない。
(ぐぬぬ…落ち着け俺………まだ俺は耐えられる…そうだ。香織の笑顔を思い出せ…あの膝枕を…あとはユエの…)
怒りを煩悩で抑え付け、我慢するハジメ。
怒りはすでに限界を迎えつつあったが、ハジメさんは必死に耐える。
すると、カムは突然後ろに下がりこけた。
「おい、何かあったのか?」
「あ、ハジメ殿…いやあお恥ずかしい」
カムは足元を指さした。
「ここに蟻の行列があったもので…危うく踏んでしまうところでした」
「…は?」
お前ら、今何と言った?とハジメは言いたくなった。
「まさか…訓練の最中時折妙なジャンプを入れるのは『アリさん』を踏まないようにするため…とか言うんじゃないだろうな?」
「ハッハッハ…まさかそんな…」
「だ~よ~な~!いくら何でも命懸けの訓練の最中…」
「アリさんだけでなくお花さんにももちろん気を使いますよ?小さき命に愛をこめて。ですから!」
(あ、もう無理だわこいつら…)
瞬間、ハジメの脳内で何かがキレる。
「ふ………フフフフフ…」
「は…ハジメ殿?」
突然笑いだしたハジメにカムが声をかけると………
ハジメはドンナーを取り出し、カムの額めがけて発砲。
いつもの弾丸ではなく魔物の革などをベースに作り、壊れやすい鉱石に『纏雷』を付与させた物などを材料としている『スタンゴム弾』がカムを直撃し、カムは倒れる。
「よ~~~くわかったよ…お前ら兎人族がどういう種族なのか俺は見誤っていたらしいな…俺が甘かったよ、俺の落ち度だ。お前ら…生死がかかった瀬戸際でさえ『虫さん』『お花さん』に気を使っていられるとは…戦闘技術や連携より先に鍛えるべきものがあったらしい…」
ハジメは幽鬼のような表情になりカムの腹に再度スタンゴム弾を撃ち、電撃と痛みでカムが目を覚ます。
「お前らは………お前らは今日この瞬間から薄汚い『ピッー』共だ!この先『ピッー!』されたくなかったら今すぐにでも魔物を狩れ!今後虫だの花だのに気をそらしてみろ!キサマら全員『ピッー』してやる!わかったらビビってないでさっさと狩りに戻れこの『ピッー!!』共が!!」
放送禁止用語を連発したハジメはドンナーではなく奈落で開発していた六連装ガトリングガン型アーティファクト『メツェライ』を取り出し、弾丸を全てスタンゴム弾に切り替えるとハウリア達に発砲した。
「それでも治らなかったら一変死んどけこの駄ウサギどもがあああああああ!!!」
ハジメに差し入れを持ってこようとしてきた香織だったが、ハジメの鬼軍曹ぶりに正直引いていた。
(私…どんな姿だろうとハジメ君への愛は変わらないと思ってるよ…!思ってる。思ってるけど…)
「これは…ちょっと様子を見たほうがいい………かな?かな?」
白崎香織。彼女は今日初めて、愛した少年の姿にドン引きしていた…
次回、ありふれた職業と最強兄弟
第6話 訓練終了と最終試験